
執筆者:辻 光明
代表税理士
重加算税とは?課される条件と回避方法|税理士法人が実務解説

重加算税とは、申告漏れの中でも隠蔽・仮装があるケースに課される、最も重い部類の加算税です。税務調査で否認されるだけでなく、加算税率も高く、資金繰りや信用に直結します。特に中小企業・クリニック経営では「売上計上」「外注費・交際費」「源泉徴収」の管理が甘いと、意図せず疑念を招きやすい点が実務上の課題です。
重加算税とは(加算税の位置づけと対象)
重加算税は、国税の申告・納付に関して不正があった場合に課される附帯税(ペナルティ)の一つです。一般的には、過少申告加算税・無申告加算税・不納付加算税が課される場面で、隠蔽・仮装が認定されると「それらに代えて」重加算税が適用されます。重加算税の判断は税目を問わず問題になり得ますが、実務上は法人税・所得税・消費税・源泉所得税(不納付)などで争点化しやすい傾向があります。
税理士法人 辻総合会計では、税務調査の立会い・事前診断の現場で「単なるミス」か「不正の外形があるか」を切り分け、証憑と業務フローの両面から再発防止まで含めた支援を行っています。
重加算税が課される条件(隠蔽・仮装の判断基準)
重加算税は、単なる計算誤りや知識不足ではなく、「課税標準等の計算の基礎となる事実を隠す・偽る」行為がある場合に問題になります。国税庁の事務運営指針では、不正事実の例として、いわゆる二重帳簿の作成、帳簿書類の破棄・隠匿、改ざん(偽造・変造)などが挙げられています。これらは「意図」を直接証明するというより、外形的な不自然さ(証憑の欠落、説明不能な数字の作り方、証言の整合性)で判断されやすい領域です。
参照:国税庁「法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)」
実務で疑われやすい典型例
- 売上の一部を入金口座・レジ締めと切り離して除外(現金売上の除外、レジジャーナル不保存等)
- 架空外注費・架空広告費(実在しない取引先、同一筆跡の請求書、役務提供の実態なし)
- 私的支出を経費化し、説明資料を後追いで作成(領収書の名義・内容が不自然)
- 源泉所得税の徴収・納付を意図的に回避し、指摘後に辻褄合わせ(不納付+証憑不整合)
重加算税はいくら?税率と加重措置(35%・40%・反復で45%・50%)
重加算税の加算割合(税率)は、原則として次のとおり整理できます(代表例)。
- 過少申告加算税に代えて課される重加算税:35%
- 無申告加算税に代えて課される重加算税:40%
さらに、一定の要件下で「短期間に繰り返して無申告又は仮装・隠蔽が行われた」場合には、5年以内の反復等により加重され、35%が45%、40%が50%となる取扱いが示されています。
参照:国税庁「加算税制度(国税通則法)の改正のあらまし」
他の加算税との比較(目安)
下表は「調査対応の実務で頻出する目安」の比較です。実際の適用は、調査通知の有無や、予知後の提出かどうか等で変動します。
参照:国税庁「加算税制度(国税通則法)の改正のあらまし」
| 区分 | 典型的な場面 | 加算割合の目安 |
|---|---|---|
| 過少申告加算税 | 期限内申告はあるが不足税額が判明 | 10%(一定超は15%等の区分あり) |
| 無申告加算税 | 期限内申告がない | 15%(一定超は20%等の区分あり) |
| 不納付加算税 | 源泉所得税などの不納付 | 税目・状況により取扱い |
| 重加算税 | 隠蔽・仮装がある過少申告・無申告等 | 35%・40%(反復で45%・50%) |
税務調査で「重加算税」になりやすいパターン(現場の視点)
重加算税の入口は、「数字の誤り」ではなく「説明の不能」と「証憑の不自然さ」です。特に次のパターンは、調査官が“意図性”を疑う導線になりやすい点に留意が必要です。
パターン1:証憑が体系的に欠落している
特定科目(外注費、交際費、広告宣伝費)だけが継続的に薄い、支払先が固定で実態が追えない、契約書・発注書・成果物が存在しない、といった状態は「偶然」では説明しづらくなります。
パターン2:帳簿が“後から整えられた形跡”を持つ
会計ソフトの入力日が調査連絡後に集中、摘要が一括で似通っている、支払の事実と計上のタイミングが不自然、といった外形は「仮装」の疑念につながります。
パターン3:同種の指摘が繰り返される(反復)
5年以内に無申告加算税や重加算税が課された履歴があると、以後の加算税が加重され得ます。結果として、税額そのものよりも、追加負担(加算税・延滞税)が資金繰りを圧迫するケースが目立ちます。
参照:国税庁「加算税制度(国税通則法)の改正のあらまし」
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重加算税を回避・軽減する方法(平時の統制と調査対応)
重加算税の回避は、「正しく申告する」だけでなく、「不正と見られない証拠設計」に尽きます。特に調査通知が入った後は、提出タイミング等により加算税の取扱いが変わり得るため、初動が重要です。
参照:国税庁「加算税制度(国税通則法)の改正のあらまし」
Step 1: リスク科目を決めて証憑ルールを統一する
売上(レジ・予約台帳・請求書)/外注費(契約・成果物・振込)/交際費(相手先・目的)/源泉(支払調書・納付書)の4領域を優先し、証憑の揃え方を社内標準にします。
Step 2: “第三者に説明できる”証跡を残す(証憑+業務ログ)
領収書だけでなく、発注メール、作業報告、納品データなど、実在性を補強する資料を紐づけます。特に証憑管理は「ある/ない」ではなく「説明できるか」が評価軸です。
Step 3: 月次で異常値チェックを行う(未然防止)
粗利率の急変、現金残高の不自然、特定科目の突出、期末の売上・経費の偏りを定点観測し、原因を文書化します。文書化は将来の調査対応で効きます。
Step 4: ミスを把握したら、提出前に“事実整理”を完了する
誤りが見つかった場合、慌てて数字だけ直すと、後追い作業が「仮装」と誤解される危険があります。原因・経緯・再発防止を整理したうえで、修正申告等の方針を決めます。
Step 5: 税務調査の連絡が来たら、対応方針を一本化する
担当者ごとに説明がブレると、疑念が増幅します。窓口を固定し、提示資料の範囲とストーリーを整えます。特に「証憑がない取引」をどう説明するかは、税理士と事前に方針を作るべきポイントです。
よくある質問
Q: 申告漏れがあったら必ず重加算税になりますか?
A:
いいえ。重加算税は、単なる誤りではなく隠蔽・仮装がある場合に問題になります。帳簿書類の隠匿・改ざんや二重帳簿など、不正の外形があるかが重要です。参照:国税庁「法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)」Q: 重加算税の税率は何%ですか?
A:
代表的には、過少申告に代えて課される場合は35%、無申告に代えて課される場合は40%が目安です。また、一定期間内の反復等で加重され、45%・50%となる取扱いがあります。参照:国税庁「加算税制度(国税通則法)の改正のあらまし」Q: 税務署から調査の連絡が来た後に修正申告すると不利ですか?
A:
一概には言えませんが、調査通知後の提出や「更正等を予知してされたもの」かどうかで加算税の取扱いが変わり得ます。連絡を受けた時点で、事実関係と証憑を整理し、提出のタイミングと説明方針を検討することが重要です。参照:国税庁「加算税制度(国税通則法)の改正のあらまし」まとめ
- 重加算税は、申告漏れ等のうち隠蔽・仮装があるケースで、他の加算税に代えて課される重いペナルティ
- 典型例は二重帳簿、帳簿書類の隠匿・改ざん、架空経費など「不正の外形」がある場合
- 税率は35%・40%が目安で、反復等により45%・50%へ加重され得る
- 回避の核心は、証憑と業務ログを整え「第三者に説明できる」記録を平時から作ること
- 調査連絡後は対応のブレがリスクになるため、窓口一元化と事前方針の策定が重要
参照ソース
- 国税庁「加算税制度(国税通則法)の改正のあらまし」: https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/kasan.pdf
- 国税庁「法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)」: https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/hojin/100703_02/00.htm
- 国税庁「法人税の過少申告加算税及び無申告加算税の取扱いについて(事務運営指針)」: https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/hojin/100703_01/00.htm
この記事を書いた人

辻 光明
代表税理士
税理士 / 認定経営革新等支援機関
税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。
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