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経理BPO・月次決算ブログ
作成日:2026.05.15
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士・公認会計士・経理BPOコンサルタント

医療法人の月次決算で見る項目|院長が10営業日で数字を確認する仕組み

13分で読めます
医療法人の月次決算で見る項目と院長向け月次レポートのアイキャッチ画像

結論:医療法人の月次決算は「10営業日で院長が見る数字」に絞る

医療法人の月次決算は、会計ソフトへ入力する作業ではなく、院長が経営判断に使える数字を翌月10営業日ごろまでに揃える運用として設計するべきです。

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保険診療、自費、給与、医療機器、月次損益を、医院経営に使える形に整理します。

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年度決算では貸借対照表や損益計算書を整える必要がありますが、月次では最初から完璧な決算書を目指すより、医業収益、窓口収入、未収金、人件費、材料費、借入返済、分院別採算を毎月同じ順番で見ることが重要です。

ここがポイント
この記事は2026年5月17日時点で確認した厚生労働省・国税庁の公開情報をもとに、医療法人の月次経理を実務で早めるための整理です。月次決算は内部管理の運用であり、個別の会計処理・税務判断は法人の状況に応じて税理士へ確認してください。

要点まとめ

医療法人の月次決算で見るべき項目は、次の3つにまとめられます。

  • 医業収益、窓口収入、未収金、人件費率、材料費率、借入返済、分院別採算を毎月同じ形式で確認する。
  • レセプト入金、窓口現金、カード入金、給与、材料費、借入返済予定表の提出日を固定し、翌月10営業日ごろに院長レビューを置く。
  • 経理BPOへ出す場合も、支払承認、給与確定、税務判断、資金移動は院内・税理士側に残るため、責任分界を先に決める。

厚生労働省は医療法人会計基準や事業報告書等の様式を公開しています。月次決算では、年度決算に必要な会計情報を日々の資料回収から崩さないことが、経営判断と決算準備の両方に効きます。

医療法人の月次決算が遅れやすい理由

医療法人の月次が遅れる原因は、一般企業の経理遅延とは少し違います。売上、入金、現金、給与、材料費がそれぞれ別のタイミングで動くためです。

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遅れる原因医療法人で起きやすいこと放置した場合の影響
レセプト入金のずれ診療月と入金月がずれ、未収金の確認が後回しになる医業収益と資金繰りの見方が混ざる
窓口現金・カード日計表、現金、カード入金、返金の照合が遅れる現金差額や未収の原因が追いにくい
給与・社保常勤、非常勤、役員報酬、賞与が同じ人件費に混ざる人件費率を見ても打ち手が決めにくい
材料費発注月、納品月、使用月、請求月がずれる材料費率の変動理由が見えない
借入・リース元金、利息、リース料の処理が月末に追いつかない資金繰りと損益の判断がずれる
分院管理院ごとの収益・費用が混在するどの拠点の採算が悪いか分からない

「入力が遅い」のではなく、「資料が揃う日と確認する人が決まっていない」ことが本当の原因になっているケースが多くあります。

月次で見るべき7項目

院長向けの月次レポートは、勘定科目を細かく並べるだけでは使われません。まずは経営判断に直結する7項目に絞ります。

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項目見る数字判断につながること
医業収益診療報酬、自由診療、健診、その他収入患者数・単価・診療日数の変化
窓口収入現金、カード、未収、返金受付オペレーションと入金漏れ
未収金保険請求、患者未収、返戻・査定資金繰りと回収管理
人件費常勤、非常勤、役員報酬、賞与、社保採用・シフト・給与設計
材料費医薬品、診療材料、検査委託、在庫仕入条件とロス管理
借入返済元金、利息、リース、設備投資予定手元資金と追加投資余力
分院別採算院別売上、院別人件費、院別固定費分院継続・人員配置・投資判断
注意点
月次レポートで税務上の判断まで完結させようとすると、かえって遅くなります。月次では経営判断に必要な概算・異常値・未処理項目を早く出し、決算・申告に関わる判断は税理士レビューへ分ける方が現実的です。

10営業日で締める月次カレンダー

月次決算を早めるには、資料ごとの提出日を先に固定します。経理担当だけに「早くしてください」と言っても、窓口、給与、材料、借入の資料が揃わなければ試算表は締まりません。

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日程作業主担当確認ポイント
月末窓口現金・日計表の締め受付・事務長現金差額、返金、未収、カード決済
翌月3営業日請求書・領収書・カード明細の回収経理担当資料不足、私用混在、支払予定
翌月5営業日勤怠・給与資料の確定労務担当常勤・非常勤・賞与・役員報酬
翌月7営業日会計入力と不足資料リスト化BPO・経理担当未入力、仮払、未払、未収
翌月9営業日税理士・責任者レビュー税理士・事務長消費税区分、役員給与、異常値
翌月10営業日院長向け月次レビュー院長・事務長採用、設備投資、資金繰り判断

このカレンダーは目安です。大切なのは日数そのものではなく、毎月同じ順番で資料を集め、同じ日に院長が数字を見ることです。

院長向け月次レポートの型

院長が見る月次レポートは、1枚目に経営判断、2枚目以降に会計明細を置くと使いやすくなります。

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レポート欄書く内容院長が判断すること
今月の要点売上、人件費、材料費、資金残高の大きな変化すぐ見るべき論点があるか
前月比・前年同月比単月の増減と季節性一時的な変動か、構造的な変化か
院別・部門別分院、診療科、自由診療、健診など人員配置・広告・投資判断
未収・返戻・査定未回収、返戻、再請求、回収予定資金繰りへの影響
人件費・材料費率、金額、主な増減理由採用・シフト・仕入条件
次月アクション確認待ち資料、支払予定、相談事項誰が何をいつまでに動くか

税理士法人 辻総合会計グループでは、医療法人の月次決算を「試算表を作って終わり」にせず、院長・事務長・税理士が同じ数字を見て判断できる月次レポートの型づくりから整理します。

BPOへ渡す前に決める責任分界

経理BPOを使う場合でも、すべてを外部へ投げれば月次が早くなるわけではありません。医療法人では、承認・支払・給与確定・税務判断の責任をどこに残すかが重要です。

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業務院内に残すべき判断BPOへ渡しやすい作業税理士が見る論点
支払支払可否、資金移動、承認請求書整理、支払予定表作成消費税区分、未払計上
売上返金、未収、自由診療区分日計表・入金明細の突合売上計上、返戻・査定処理
給与勤怠承認、給与確定、役員報酬給与資料回収、会計連携役員給与、源泉・社保、賞与処理
材料費発注方針、在庫管理請求書整理、主要費目の集計棚卸、固定資産、経費区分
月次報告経営判断、次月アクションレポート作成、資料不足管理決算・税務リスク、節税・資金繰り

BPO化で効果が出るのは、資料回収、証憑整理、会計入力、不足資料リスト、月次レポート作成を標準化できたときです。支払承認や給与確定のような院内判断まで曖昧にすると、外部化しても月次は止まります。

経理BPOで月次と資料整理を止めない

よくある失敗と修正策

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失敗起きる問題修正策
試算表だけを作る院長が何を判断すべきか分からない1枚目に売上・人件費・材料費・資金繰りを置く
部門が細かすぎる入力負担が増えて月次が遅れる最初は院別・主要費目に絞る
窓口現金だけ後回し差額や未収の原因が追えない月末時点で日計表と入金を確認する
給与資料が遅い人件費率が翌月まで見えない勤怠締めと給与確定日を固定する
借入返済を損益だけで見る手元資金の減少を見落とす元金返済と利息を分けて資金繰り表へ反映する
税理士レビューが決算前だけ役員給与・消費税・設備投資の判断が遅れる月次の異常値だけでも早めに共有する
ここがポイント
月次決算を早める目的は、経理担当者を急かすことではありません。資料の流れ、確認者、承認日、税理士レビュー日を決めて、判断が止まる場所を減らすことです。

税理士へ共有する月次メモ

月次決算を税務・資金繰りの判断につなげるには、試算表だけでなく、院内で起きた出来事を短く添えることが有効です。数字だけでは、売上増減や費用増加の理由が分からないためです。

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メモ項目書く内容税理士・BPO側で確認しやすくなること
診療日数・休診日祝日、臨時休診、院長不在、分院休診売上減少が構造問題か一時要因か
採用・退職入職、退職、非常勤シフト増減人件費率、賞与、社保、採用費の見方
設備投資医療機器、内装、リース、保守契約固定資産、減価償却、資金繰り
返戻・査定大きな返戻、再請求、未収の増減医業収益と未収金の整合性
材料・薬剤高額材料の仕入、在庫増減、仕入先変更材料費率の変動理由
賞与・昇給予定支給予定月、対象者、概算額資金繰りと人件費見込み
借入・補助金新規借入、返済変更、補助金入金予定キャッシュフローと税務処理

このメモは長い報告書にする必要はありません。月次レビュー前に5行程度でよいので、数字の背景を共有すると、税理士レビュー、BPOの不足資料確認、院長の判断が同じ前提で進みます。

ここがポイント
月次メモは、決算直前に思い出すためのものでもあります。設備投資、役員報酬、賞与、借入、補助金、分院費用のように決算・申告へ影響しやすい出来事は、発生月に記録しておくと後から確認しやすくなります。

相談前に準備するとよい資料

経理BPOや月次決算の相談では、きれいに整理された資料だけを持ってくる必要はありません。むしろ、何が揃っていて何が足りないかを見た方が、復旧と月次化の順番を決めやすくなります。

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資料確認すること
前期決算書・申告書期首残高、借入、固定資産、税務処理の前提
試算表月次がどこまで締まっているか、科目の偏り
通帳・ネットバンク明細入出金、借入返済、未処理の支払
日計表・窓口資料現金、カード、未収、返金、自由診療
レセプト・入金明細診療月と入金月のずれ、未収管理
給与・勤怠資料人件費率、役員報酬、賞与、社保
請求書・領収書・カード明細材料費、経費、電子取引データ、保存方法
借入返済予定表・リース契約資金繰り、元金・利息、設備投資余力

国税庁は法人の帳簿書類等について、原則として確定申告書の提出期限の翌日から7年間の保存を案内しています。月次を早めるときも、入力の速さだけでなく、保存・検索・証憑との紐づけを崩さないことが重要です。

よくある質問

Q: 医療法人の月次決算は必ず10営業日で締める必要がありますか?
法定期限として10営業日が決まっているわけではありません。経営判断に使うための実務目標です。法人の規模、分院数、資料量に応じて、まずは毎月同じ日に院長が数字を見ることを優先します。
Q: 分院別の月次管理は最初から細かく作るべきですか?
最初は院別売上、院別人件費、主要材料費、共通費の配賦方針から始めれば十分です。部門を細かくしすぎると、入力負担が増えて月次が遅れます。
Q: 経理BPOへ任せれば税理士は不要になりますか?
不要にはなりません。BPOは資料整理、入力、不足確認、月次レポート作成を担いやすい一方、役員給与、消費税、決算・申告、税務リスクの判断は税理士レビューが必要です。
Q: 紙資料が多い医療法人でも月次化できますか?
できます。ただし、郵送・スキャン・原本保管・返却・電子取引データの保存ルールを先に決める必要があります。紙を残したままでも、資料提出日と不足資料リストを固定すると月次は早くなります。

まとめ

医療法人の月次決算は、年度決算のためだけに作るものではありません。院長が採用、設備投資、分院管理、資金繰りを判断するために、毎月同じ型で数字を見る仕組みです。

まずは次の順番で整えます。

  1. 医業収益、窓口収入、未収金、人件費、材料費、借入返済、分院別採算に絞る
  2. 資料提出日と院長レビュー日を固定する
  3. 院内、BPO、税理士の責任分界を決める
  4. 月次レポートの1枚目を経営判断用にする
  5. 保存・電子取引・証憑管理を崩さずに月次を早める

税理士法人 辻総合会計グループでは、医療法人・クリニック向けに、資料回収、月次入力、税理士レビュー、院長向けレポートまでを一連の運用として設計します。月次が遅れている場合は、まず「資料が遅い」「入力が遅い」「確認が遅い」を分けるところから始めると改善しやすくなります。

参考資料

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士・公認会計士・経理BPOコンサルタント

公認会計士 / 税理士 / 認定経営革新等支援機関

経理BPOコンサルタント月次決算支援記帳代行・経理代行クラウド会計運用支援

税理士法人 辻総合会計の代表。公認会計士・税理士として、経理BPO、月次決算、紙資料整理、クラウド会計運用を中小企業向けに支援している。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

記事の内容は法令の改正等により変更される場合があります。 最新の情報については、関係省庁の公式サイト等でご確認ください。

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