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歯科医院経営コラム
公開日:2026.05.21
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士・公認会計士・中小企業経営コンサルタント

歯科用CT導入前に見る資金繰りと減価償却

11分で読めます
歯科用CT導入前に見る資金繰りと減価償却

歯科用CTは診断精度や自費診療の提案力を高める一方で、導入時の支出が大きく、資金繰りに与える影響も小さくありません。導入前に見るべきポイントは、機器価格だけでなく、月々の返済額、保守料、設置工事、撮影件数、診療単価、減価償却、税制優遇の可否まで含めた投資回収の全体像です。特に、利益が出ている医院ほど「節税になるから買う」という判断に傾きやすいですが、実際には納税額よりも先に手元資金が減ります。CT導入は、税金対策ではなく、診療体制と資金繰りを同時に確認して決める設備投資です。

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歯科用CTは「買えるか」より「返済しながら使い切れるか」で判断する

歯科用CTを導入する前に、まず確認したいのは購入価格ではなく、導入後の月次資金繰りです。現金購入であっても、借入やリースであっても、医院のキャッシュフローに負担が出る点は同じです。

例えば、CT本体の価格だけを見て導入を決めると、設置工事、電気工事、保守契約、保証延長、ソフトウェア更新、既存機器の撤去費用などが後から加わります。さらに、CTを活用するためにインプラント、根管治療、矯正、外科処置などの診療体制を整える必要がある場合、広告費やスタッフ教育費も発生します。

高額医療機器の投資判断では、導入初月の支払いだけでなく、最低でも今後3年程度の月次資金繰り表で確認することが重要です。売上が増える前に返済やリース料が始まるため、導入直後の数か月は資金が先に出ていく構造になります。

ここがポイント
CT導入の判断では「利益が出ているか」だけでなく、「返済後に現預金が残るか」を確認します。会計上は黒字でも、借入返済や設備更新が重なると資金繰りが厳しくなることがあります。

導入前に確認したい費用項目

CT導入時の見積書では、本体価格に目が行きがちですが、実務では付随費用を含めて総投資額を把握する必要があります。減価償却の対象になるもの、修繕費や保守料として毎期費用になるもの、建物附属設備として別管理になるものが混在するためです。

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確認項目主な内容資金繰り上の注意点
CT本体撮影装置、画像処理装置、操作端末本体価格だけで判断しない
設置工事電源、LAN、床補強、搬入、撤去建物附属設備と区分が必要な場合がある
防護工事鉛ボード、防護扉、管理区域表示物件条件により金額差が出やすい
保守契約定期点検、故障対応、保証延長毎月または毎年の固定費になる
ソフトウェア画像管理、シミュレーション、連携費用更新料やライセンス料を確認する
教育・運用スタッフ研修、撮影フロー整備稼働までの時間もコストとして見る

実務上の注意点は、見積書の総額と会計処理上の資産区分が一致しないことです。CT本体、パソコン、ソフトウェア、内装工事、防護工事、電気設備を一括で「CT代」として処理すると、耐用年数や償却方法を誤る可能性があります。

投資回収は撮影件数だけでなく診療単価で見る

CTの投資回収を考えるときは、「月に何件撮影すれば元が取れるか」という考え方だけでは不十分です。CT撮影そのものの収入だけでなく、診断の精度向上によって自費治療の説明がしやすくなる、外部紹介を減らせる、治療計画の質が上がるといった効果もあります。

ただし、これらの効果は導入しただけで自動的に発生するものではありません。院長や勤務医がCT画像を活用して説明できるか、カウンセリング導線があるか、自費診療のメニューが整理されているかによって、投資回収のスピードは大きく変わります。

簡易的には、次の順で確認します。

  1. CT導入で増える診療収入を見積もる
  2. 保守料・リース料・返済額などの固定費を見積もる
  3. 材料費・技工料・紹介料など変動費を差し引く
  4. 月次利益の増加額で総投資額を回収できる年数を計算する
  5. 返済期間中に現預金が不足しないか確認する

投資回収期間は短いほど安全ですが、歯科医院の場合は診療方針や患者層によって大きく変わります。保険診療中心の医院、自費補綴やインプラントが多い医院、根管治療や矯正相談が多い医院では、同じCTでも収益への影響が異なります。

減価償却は節税効果と資金流出を分けて考える

歯科用CTは、取得した年に全額が経費になるわけではなく、原則として減価償却により複数年に分けて費用化します。医療機器の耐用年数は、機器の種類や用途により区分され、レントゲンその他の電子装置を使用する機器として取り扱う場合には、該当する耐用年数表を確認します。2026年5月時点では、国税庁の耐用年数表に基づいて個別に判断します。

ここで重要なのは、減価償却費は会計上の費用であり、借入返済とは別物だという点です。購入時に借入をした場合、会計上は減価償却費が損益に反映されますが、資金繰り上は元金返済も発生します。元金返済は原則として経費にならないため、利益と納税、返済資金のバランスを見なければなりません。

たとえば、CT導入で減価償却費が増えれば課税所得は下がります。しかし、同時に返済額や保守料も発生します。節税額だけを見て導入を決めると、納税は減っても現預金が減ることがあります。

実務上の注意点として、CT本体と同時に取得する画像管理ソフト、パソコン、サーバー、内装・電気工事は、同じ耐用年数で処理できるとは限りません。見積書の内訳を確認し、資産ごとに会計処理を分けることが大切です。

購入・借入・リースの比較で見るべきポイント

CT導入では、現金購入、金融機関からの借入、リース契約のいずれかを検討することが多くなります。どれが有利かは、金利、税務処理、手元資金、契約期間、更新予定によって変わります。

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方法メリット注意点
現金購入金利負担がない、所有権が明確導入時に現預金が大きく減る
借入購入手元資金を残しやすい、所有できる元金返済は経費にならない
リース月額費用化しやすく資金計画を組みやすい中途解約や総支払額を確認する必要がある
割賦購入所有前提で分割払いにできる契約条件により会計処理が異なる

リースは毎月の支出が平準化されるため、資金繰りを読みやすい反面、総支払額が購入より高くなる場合があります。また、中小企業向けの税制優遇を検討する場合、リースの種類によって特別償却が使えないことがあります。税制優遇の可否は、導入後ではなく契約前に確認すべき項目です。

ここがポイント
中小企業経営強化税制などの優遇措置は、対象設備、取得時期、認定手続、事業供用のタイミングなどの条件があります。使える前提で契約するのではなく、契約前に制度要件と手続の順番を確認しましょう。
歯科医院の設備投資・材料費・月次管理を確認

CT導入前に月次で確認するチェックリスト

導入判断では、診療上の必要性と財務上の安全性を分けて確認します。特に、すでにユニット増設、内装改修、採用、広告投資を進めている医院では、設備投資が重なることで資金繰りが急に悪化することがあります。

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チェック項目確認する資料判断の目安
現預金残高月次試算表、通帳残高導入後も運転資金を確保できるか
借入余力返済予定表、金融機関資料既存借入と返済が重ならないか
月次利益試算表、部門別売上返済・リース料を吸収できるか
自費診療比率売上内訳、患者別データCT活用による単価改善余地があるか
保守料見積書、契約書毎年の固定費を織り込んでいるか
税務処理資産明細、見積内訳本体・工事・ソフトを区分できるか

実務上の注意点は、CT導入による売上増加を楽観的に見積もりすぎないことです。導入後すぐに撮影件数や自費成約が増えるとは限らないため、保守料や返済額は確定支出、売上増加は保守的に見るのが安全です。

相談前に整理しておくとよい資料

CT導入を専門家に相談する前には、見積書だけでなく、月次の経営資料をそろえると判断が早くなります。特に、金融機関に借入を相談する場合は、導入目的、投資効果、返済原資を説明できる資料が必要です。

整理しておきたい資料は、直近の試算表、決算書、借入返済予定表、CTの見積書、保守契約案、現在の患者数・自費売上・撮影件数、導入後に増やしたい診療メニューです。これらをもとに、導入後の月次損益と資金繰りをシミュレーションします。

判断の中心は、CTを入れることで医院の診療方針と収益構造がどう変わるかです。単なる節税や設備更新ではなく、患者説明、治療計画、自費診療、紹介対応、スタッフ運用まで含めて検討すると、導入後の失敗を防ぎやすくなります。

よくある質問

Q: 歯科用CTは節税目的で導入してもよいですか?
節税だけを目的に導入するのは慎重に考えるべきです。減価償却により税負担が下がる可能性はありますが、購入資金や返済、保守料の支出が先に発生します。診療上の必要性と投資回収の見込みを確認してから判断しましょう。
Q: 歯科用CTの減価償却は何年で見ればよいですか?
医療機器の耐用年数表をもとに、機器の種類や用途ごとに判断します。レントゲンその他の電子装置を使用する機器として扱う場合がありますが、付属工事やソフトウェアは別区分になることがあります。見積書の内訳を確認したうえで処理することが重要です。
Q: リースと借入購入はどちらが有利ですか?
一概には決められません。リースは月額支出を平準化しやすい一方、総支払額や中途解約条件を確認する必要があります。借入購入は所有できる反面、元金返済が経費にならないため、資金繰り表で比較することが大切です。
Q: CT導入前に金融機関へ相談する資料は何が必要ですか?
見積書、直近の決算書、試算表、借入返済予定表、導入後の売上見込みを用意すると説明しやすくなります。特に、返済原資をどの診療収入で確保するかを示すことが重要です。自費診療や撮影件数の見込みは、過大にせず保守的に作成しましょう。

まとめ

  • 歯科用CTは本体価格だけでなく、工事、保守料、ソフトウェア、教育費まで含めて総投資額を確認する
  • 導入判断では、利益ではなく返済後の現預金が残るかを月次資金繰りで見る
  • 減価償却は節税効果がある一方、借入元金の返済とは別に考える必要がある
  • 購入、借入、リースは総支払額、税務処理、手元資金、契約条件を比較する
  • CT導入後の売上増加は保守的に見積もり、診療体制と自費導線まで確認してから契約する

参照ソース


この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士・公認会計士・中小企業経営コンサルタント

公認会計士 / 税理士 / 認定経営革新等支援機関

代表クラウド会計導入支援経理DX支援資金繰り支援

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

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