
執筆者:辻 光明
代表税理士・公認会計士・中小企業経営コンサルタント
歯科医院の材料費率の目安と改善策

歯科医院の材料費率は、単に「高い・低い」だけで判断すると危険です。保険診療中心か、自費補綴・インプラント・矯正が多いか、技工料を材料費に含めているかによって、適正な水準は変わります。まず見るべきなのは、材料費率そのものよりも、診療内容別の粗利益が残っているかです。材料価格の上昇、在庫の過剰、発注単価の見直し不足、自費価格の据え置きが重なると、売上は増えていても利益が残りにくくなります。
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歯科医院の材料費率は何を含めて見るべきか
材料費率とは、一般的には「材料費 ÷ 医業収益」で見ます。ただし、歯科医院では会計処理の分け方によって数字の意味が変わります。歯科材料、薬品、感染対策用品、技工料、インプラント関連部材、矯正材料などをどこまで含めるかで、同じ医院でも材料費率が大きく変わります。
たとえば、保険診療中心の医院と、セラミック・インプラント・矯正などの自費診療が多い医院では、材料費率の見え方が違います。自費診療は単価が高い一方で、技工料や専用部材も高くなるため、材料費率だけを見ると高く見えることがあります。しかし、最終的な粗利益が十分に残っていれば、必ずしも悪い状態とは限りません。
実務上の注意点は、材料費と技工料をまとめて管理している医院では、どちらが増加要因なのか分からなくなることです。材料費率を改善したい場合は、最低でも「院内材料」「技工料」「自費専用材料」「感染対策・消耗品」に分けて見る必要があります。
| 区分 | 主な内容 | 見るべきポイント |
|---|---|---|
| 歯科材料費 | 印象材、レジン、セメント、バー、滅菌関連消耗品など | 使用量と発注単価が増えていないか |
| 技工料 | 補綴物、義歯、CAD/CAM、セラミックなど | 診療メニュー別に粗利益が残るか |
| 自費専用材料 | インプラント部材、矯正材料、審美補綴関連 | 価格設定に原価上昇を反映できているか |
| 感染対策用品 | グローブ、マスク、紙コップ、滅菌バッグなど | 固定的に増えていないか |
材料費率の目安は一律ではなく診療構成で変わる
歯科医院の材料費率は、医院の診療構成によって変わります。保険診療中心であれば、材料費・消耗品費は医業収益に対して一桁後半から十数%程度をひとつの確認ラインとして見ます。一方で、自費補綴、インプラント、矯正の比率が高い医院では、技工料や専用部材を含めると、材料関連費が20%を超えるケースもあります。
ここで重要なのは、医院全体の平均率だけで判断しないことです。自費比率が上がると材料費率も上がることがありますが、同時に粗利益額が増えていれば経営上はプラスです。逆に、保険診療中心で材料費率がじわじわ上がっている場合は、単価改定が難しいため、発注方法や在庫管理の見直しが優先になります。
材料費率の目安は、比較対象を間違えないことが大切です。 他院平均と比べるより、自院の過去12か月の推移、診療メニュー別の粗利益、患者数・診療単価との関係を確認した方が、改善につながりやすくなります。
| 診療構成 | 材料費率を見るときの注意点 | 改善の優先順位 |
|---|---|---|
| 保険診療中心 | 材料価格上昇を価格転嫁しにくい | 在庫・発注単価・使用量の管理 |
| 自費補綴が多い | 技工料と材料費を分けないと判断しにくい | 自費価格と原価の再計算 |
| インプラントが多い | 部材単価が高く、症例ごとの粗利差が大きい | 症例別の原価管理 |
| 矯正が多い | 収入時期と材料費発生時期がずれる | 期間損益と前受金管理 |
材料費率が上がる主な原因
材料費率が上がる原因は、材料価格の値上げだけではありません。実際には、発注の分散、在庫の過剰、使い切れない材料の廃棄、診療メニュー別の価格設定不足、技工料の上昇などが重なっていることが多いです。
特に注意したいのは、売上が増えているのに利益が増えていないケースです。患者数や自費売上が増えていても、材料費・技工料・人件費が同時に増えていると、利益率は改善しません。材料費率だけを下げようとすると、診療品質やスタッフの使いやすさに影響するため、削減ではなく管理として考えることが重要です。
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この記事を書いた人

辻 光明
代表税理士・公認会計士・中小企業経営コンサルタント
公認会計士 / 税理士 / 認定経営革新等支援機関
税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。
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