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歯科医院経営コラム
作成日:2026.02.14
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長・公認会計士・税理士・相続事業承継コンサルタント

義歯管理料改定2026の損益影響|税理士が解説

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義歯管理料改定2026の損益影響|税理士が解説

義歯管理料の算定単位変更とは(口腔単位→装置単位)

結論から言うと、2026改定案では新製有床義歯管理料が「1口腔単位」から「1装置単位」に変わり、局部義歯・総義歯ともに140点/装置へ一本化されます。これにより、義歯の「両顎装置が多い医院」は増収寄り、「片顎装置が多い医院」は減収寄りに動きやすくなります。

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中医協資料では、従来の新製有床義歯管理料(1口腔につき190点/困難230点)を、改定案として新製有床義歯管理料(1装置につき140点、局部・総義歯いずれも140点)に見直すとされています。あわせて義歯の指導・調整の要件や、歯科口腔リハビリテーション料1との運用の整理も示されています。

ここがポイント
本記事は中医協「個別改定項目について」に基づき、経営インパクト(増減収)の考え方を整理したものです。告示・通知で最終点数や算定要件が調整される可能性があるため、院内ルール化は最終版の確認後に行ってください。

口腔単位と装置単位の違い(なぜ損益が動くのか)

ポイントは「1回の新製義歯製作」が、これまで口腔(口全体)で1回評価だったものが、装置(上顎義歯・下顎義歯など)ごとに評価される点です。

  • 口腔単位(従来):上顎+下顎を同時に新製しても、原則「1口腔」で1回(190点/困難230点)
  • 装置単位(改定案):上顎・下顎それぞれが「1装置」となり、2装置なら140点×2=280点

つまり、同じ患者でも「両顎新製」の比率が高いほどプラスに振れやすく、「片顎新製」の比率が高いほどマイナスに振れやすい構造です。

まず押さえる数字(試算の基礎)

経営試算では、保険点数を円に直すために「1点=10円」を使うのが一般的です(あくまで概算)。

  • 従来:190点(1,900円)/困難230点(2,300円)
  • 改定案:140点/装置(1,400円/装置)

部分義歯・総義歯が多い医院の増減収シミュレーション

ここでは「困難加算(230点)該当は一旦置く」前提で、190点→140点×装置数の差額を見ます(最終的な運用は通知で必ず確認してください)。

装置数別の差額(1件あたり)

  • 片顎(1装置):改定案 140点 − 従来 190点 = −50点(−500円)
  • 両顎(2装置):改定案 280点 − 従来 190点 = +90点(+900円)
  • 3装置(例:特殊なケースの想定):改定案 420点 − 従来 190点 = +230点(+2,300円)

ケース別の「損益が動く医院」早見表

横にスクロールできます
ケース(新製有床義歯管理料の算定想定)従来(口腔単位)改定案(装置単位)差額(点)差額(円の目安)
片顎のみ新製(上or下)190点140点-50点-500円
両顎同時に新製(上+下)190点280点+90点+900円
両顎だが月を跨いで新製(片顎×2回のイメージ)190点×2回140点×2回-100点-1,000円

「両顎同時新製が多い医院」はプラス、「片顎の置換が多い医院」はマイナス、さらに「両顎でも時期をずらす運用が多い医院」はマイナスになりやすい、という見立てが立ちます。

ここがポイント
経営管理上は「患者ベース」より「装置ベース」で集計した方が、今回の改定の影響がブレにくくなります。レセコンの抽出軸(上顎/下顎、局部/総)を先に決めるのが実務上の近道です。

自院の義歯患者構成で増減収を出す方法(3ステップ)

税理士法人 辻総合会計では、改定の影響は「件数」よりも「構成比(片顎/両顎)」でほぼ決まるケースが多いと整理しています。院内で短時間に概算するなら、次の手順が現実的です。

Step 1: 直近3か月の「新製有床義歯管理料」算定件数を抽出する
患者数ではなく、算定行為の件数で抽出します(B013相当の管理料)。

Step 2: 片顎(1装置)・両顎(2装置)に分類する

  • 上顎のみ/下顎のみ:1装置
  • 上顎+下顎同時:2装置
    この分類ができれば、局部義歯・総義歯の別は「経営試算」上は二次的になります(改定案では点数が同じため)。

Step 3: 差額式で月次の増減収を計算する

  • 片顎件数をA、両顎件数をBとすると
    • 増減点数(合計)=(-50点×A)+(+90点×B)
    • 増減円の目安=増減点数×10円

例:義歯が多い医院の月次インパクト(概算)

  • 片顎:40件(A=40)
  • 両顎:25件(B=25)

増減点数=(-50×40)+(90×25)=(-2000)+(2250)=+250点
増減円=250×10円=+2,500円/月

この例では「義歯が多い」わりに増減が小さく見えますが、要はAとBのバランス次第です。両顎比率が少し下がるだけでマイナスに転じます。

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併算定・運用面で注意したい論点(現場の落とし穴)

今回の資料では、新製有床義歯管理料における説明(文書提供)と、歯科口腔リハビリテーション料1の「義歯の調整・指導」の違いを明確化し、併算定も可能とする運用見直しが示されています。ここは算定漏れ・二重算定リスクが出やすいので、次を先に整備してください。

  • 説明(文書提供)と調整・指導の「記録要件」を分けてテンプレ化する
  • 上顎/下顎の装置識別(技工指示書、カルテ記載、画像管理)を統一する
  • 月跨ぎ製作が多い医院は「片顎運用の理由」を説明できるようにする(監査対応)

よくある質問

Q: 部分義歯(局部)と総義歯で損益は変わりますか?
改定案では新製有床義歯管理料が「局部義歯・総義歯とも140点/装置」で同点のため、損益を決める主因は「局部/総」よりも「片顎か両顎か(装置数)」です。
Q: 両顎同時の新製が多い医院は、概ね増収と考えてよいですか?
概算では増収寄りになりやすいです。従来190点が、改定案では両顎なら280点(+90点)となるためです。ただし、同月算定の前提や運用(文書提供、記録、併算定の扱い)は最終通知で確認してください。
Q: 「困難な場合(230点)」が多い医院はどう見ればいいですか?
困難(230点)から140点/装置への置き換えは、片顎だと差が拡大します(-90点)。一方、両顎なら280点となり、230点との差は+50点です。困難該当率が高い医院ほど、片顎比率の管理がより重要になります。

まとめ

  • 義歯管理料は口腔単位→装置単位へ変更され、改定案は140点/装置
  • 片顎(1装置)は-50点、両顎(2装置)は+90点になりやすく、構成比で損益が決まる
  • 試算は「片顎件数A」「両顎件数B」に分け、(-50×A)+(+90×B)で概算できる
  • 併算定や記録要件の整理は、算定漏れ・監査対応の観点で早めにテンプレ化が有効
  • 最終点数・要件は告示・通知で確定するため、運用変更は最終版確認後に実施する

参照ソース

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長・公認会計士・税理士・相続事業承継コンサルタント

公認会計士 / 税理士 / 行政書士

会長医療経営支援相続・事業承継支援

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

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