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補助金・助成金ブログ
公開日:2026.05.21
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士・公認会計士・補助金活用コンサルタント

補助金で買った固定資産の減価償却と圧縮記帳

10分で読めます
補助金で買った固定資産の減価償却と圧縮記帳

補助金で機械、車両、システム、内装設備などを購入した場合、まず考えるべきことは「補助金を受け取ったから経費がゼロになる」のではなく、購入した資産を固定資産として計上し、耐用年数に応じて減価償却するという点です。さらに、一定の補助金では圧縮記帳を検討できる場合がありますが、これは税金が完全に消える制度ではなく、課税を将来に繰り延べる処理です。

経営者・経理担当者にとって問題になりやすいのは、補助金入金時の処理、固定資産台帳の登録、減価償却費の計算、消費税の取扱い、実績報告後の証憑保管が別々に進んでしまうことです。この記事では、2026年5月時点の一般的な実務を前提に、補助金で買った固定資産の基本処理を整理します。

補助金の会計・税務処理相談

この記事の内容を、補助金の収益計上・消費税・法人税処理に落とし込む相談をする

入金時期、対象経費、圧縮記帳、消費税区分を、決算処理に合わせて整理します。

会計処理を相談する

補助金で買った設備も固定資産として処理する

補助金で購入した設備であっても、会社や個人事業の業務に使用する固定資産であれば、通常は取得価額をもとに固定資産として計上します。補助金は設備代金の一部を補てんするものですが、設備そのものの取得事実がなくなるわけではありません。

たとえば、300万円の機械を購入し、後日200万円の補助金を受け取る場合、会計上は機械を取得した事実と、補助金を受け取った事実を分けて考えます。購入時には機械装置などの固定資産を計上し、その後、耐用年数に応じて減価償却を行います。

ここで重要なのは、補助金の入金日と設備の取得日が一致しないことが多いという点です。補助金は、交付決定、発注、納品、支払、実績報告、確定通知、入金という流れを経ることが多く、決算日をまたぐ場合もあります。決算期をまたぐときは、固定資産の取得時期、事業供用日、補助金の収益計上時期を分けて確認する必要があります

ここがポイント
固定資産の減価償却は、単に「支払った日」だけで判断するのではなく、その資産を事業の用に供した日、耐用年数、取得価額、補助金の確定状況を合わせて確認します。

減価償却は補助金控除後だけで考えない

補助金を受けた場合でも、減価償却の基本は「取得した固定資産の価値を使用期間にわたって費用化する」ことです。補助金を受け取ったからといって、購入時に全額を消耗品費や修繕費にできるわけではありません。

特に間違いやすいのは、自己負担額だけを固定資産として登録してしまう処理です。圧縮記帳を適用しない場合、原則として固定資産は取得価額で登録し、補助金収入は別途収益として処理します。圧縮記帳を適用する場合でも、税務処理、会計表示、固定資産台帳の管理方法を整理しておく必要があります。

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確認項目見るべきポイント間違いやすい処理
取得価額本体価格、付随費用、設置費など補助金を差し引いた自己負担額だけで登録する
事業供用日実際に事業で使い始めた日支払日だけで償却開始を判断する
補助金収入交付額の確定、入金、返還可能性入金時だけで機械的に処理する
消費税課税仕入、仕入税額控除、補助金返還税込経費と補助対象額を混同する
台帳管理圧縮前後の価額、耐用年数、処分制限会計ソフトだけで証憑管理を終える

減価償却費は毎期の利益に影響します。初年度の処理だけでなく、翌期以降の償却費、金融機関に見せる決算書、償却資産申告、将来の売却・除却まで見ておくことが大切です。

圧縮記帳は節税ではなく課税の繰延べ

圧縮記帳は、国や地方公共団体などから受けた補助金等で固定資産を取得した場合に、一定の要件のもとで固定資産の帳簿価額を圧縮し、補助金収入に対する課税負担を平準化するための制度です。法人税では、国庫補助金等で取得した固定資産について、一定の場合に圧縮記帳が認められています。

ただし、圧縮記帳は税金を永久に免除する制度ではありません。圧縮損を計上することで補助金収入に対応する課税を当期に抑えられる一方、圧縮後の帳簿価額が小さくなるため、翌期以降の減価償却費も少なくなります。つまり、当期の税負担は軽く見えても、将来の費用化額が減るため、長期的には課税のタイミングをずらす効果が中心です。

たとえば、300万円の設備に対して200万円の補助金を受け取り、圧縮記帳を適用する場合、税務上の帳簿価額や償却計算に影響します。当期利益、翌期以降の減価償却費、資産管理をまとめて見ないと、処理後に違和感が出やすい点に注意が必要です。

圧縮記帳を使うかどうかは、補助金名だけで決めるのではなく、交付要綱、補助金の性質、取得資産、法人・個人の別、決算状況を確認して判断します

圧縮記帳を検討する前に確認する資料

圧縮記帳を検討する段階では、仕訳だけを考えるのではなく、補助事業全体の資料を集めることが先です。実績報告で使った資料と、税務申告で必要になる資料が分断されていると、後から説明が難しくなります。

確認したい資料は次のとおりです。

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資料確認する内容
交付決定通知書補助対象事業、補助対象経費、補助率、条件
交付要綱・公募要領圧縮記帳の対象になり得る補助金か、財産処分制限があるか
見積書・発注書・契約書資産の内容、金額、発注時期
請求書・領収書・振込記録支払事実、支払日、支払先
納品書・検収書・写真取得日、事業供用日、設置状況
補助金確定通知・入金記録収益計上時期、金額の確定
固定資産台帳取得価額、耐用年数、償却方法、圧縮処理の有無

補助金は採択された時点で終わりではなく、入金後も一定期間の財産管理や報告が求められることがあります。単価が一定額以上の設備については、取得財産等管理台帳や処分制限の対象になる場合があります。補助金で買った資産を売却、廃棄、目的外使用する前には、交付要綱上の手続きが必要か確認してください

ここがポイント
会計ソフト上の固定資産台帳だけでは、補助金の実績報告・財産管理・税務申告の根拠資料として不足することがあります。交付決定から入金後までの書類を、資産ごとにひも付けて保存しておくと確認がスムーズです。
申請前に対象・期限・自己負担を整理

消費税と補助金の返還にも注意する

補助金で固定資産を購入した場合、法人税や所得税だけでなく、消費税の確認も必要です。設備購入時の消費税について仕入税額控除を受ける場合、補助金の交付要綱によっては、補助金に係る消費税等仕入控除税額の報告や返還が必要になることがあります。

特に、実績報告時点では消費税の確定申告がまだ終わっていないケースがあります。その場合、後日、消費税の確定申告で控除税額が判明した後に、所定の報告を行う必要がある制度もあります。税込で補助対象経費を申請した場合は、消費税の処理を後回しにすると、返還や修正対応が発生する可能性があります。

また、免税事業者、簡易課税事業者、2割特例の適用事業者、課税売上割合が低い事業者では、消費税の影響が異なる場合があります。自社の消費税区分と補助金の交付条件をセットで確認することが重要です。

仕訳だけでなく資金繰りと決算説明も整理する

補助金で設備を購入すると、設備代金の支払いが先に発生し、補助金の入金が後になることが一般的です。そのため、会計処理と同時に資金繰りの確認も必要です。補助金が入る前に借入や自己資金で支払っている場合、固定資産、借入金、補助金収入、減価償却費が決算書にどのように表れるかを説明できる状態にしておきましょう。

金融機関や経営会議で見られやすいのは、利益だけではありません。設備投資によって減価償却費が増えた理由、補助金収入で一時的に利益が増えた理由、圧縮記帳で当期利益が調整された理由など、数字の背景を説明できることが大切です。

補助金採択後の処理では、次の順番で整理すると実務上の漏れを減らせます。

  1. 補助対象資産と補助対象外経費を分ける
  2. 取得価額、事業供用日、耐用年数を確認する
  3. 補助金の確定日、入金日、返還可能性を確認する
  4. 圧縮記帳の適用可否と効果を試算する
  5. 消費税の仕入税額控除と返還報告を確認する
  6. 固定資産台帳と証憑を資産ごとに保存する

よくある質問

補助金で買った設備は自己負担額だけを資産計上すればよいですか?

通常は、自己負担額だけで機械的に処理するのではなく、取得価額、補助金収入、圧縮記帳の有無を分けて確認します。圧縮記帳を適用する場合でも、税務上の処理と資産管理のための記録を整理しておく必要があります。まずは請求書、支払記録、補助金確定通知をそろえて確認しましょう。

圧縮記帳を使えば税金はなくなりますか?

圧縮記帳は、補助金収入に対する課税を将来に繰り延べる効果が中心です。圧縮後は減価償却費が少なくなるため、翌期以降の利益が大きくなりやすくなります。当期だけでなく、数年分の税負担と決算への影響を見て判断することが大切です。

補助金が入金される前に決算を迎えた場合はどうなりますか?

設備の取得・事業供用と、補助金の確定・入金は別々に確認します。決算日時点で補助金額が確定しているか、返還可能性があるか、未収計上すべきかによって処理が変わる場合があります。交付決定通知だけで判断せず、確定通知や実績報告の状況を確認してください。

固定資産を売却や廃棄する場合に注意点はありますか?

補助金で取得した資産は、一定期間、処分制限や報告義務の対象になることがあります。売却、廃棄、転用、貸付などを行う前に、交付要綱や取得財産管理台帳を確認してください。税務上も売却損益や圧縮記帳後の帳簿価額に影響するため、事前確認が必要です。

まとめ

  • 補助金で購入した設備も、原則として固定資産として計上し、耐用年数に応じて減価償却を行います。
  • 圧縮記帳は節税そのものではなく、補助金収入に対する課税を将来に繰り延べる処理です。
  • 固定資産の取得日、事業供用日、補助金の確定日、入金日を分けて確認することが重要です。
  • 消費税の仕入税額控除、補助金返還、財産処分制限は、採択後に見落とされやすい論点です。
  • 交付決定通知、請求書、支払記録、確定通知、固定資産台帳を資産ごとに整理しておくと、決算・税務申告・実績報告後の確認がしやすくなります。

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この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士・公認会計士・補助金活用コンサルタント

公認会計士 / 税理士 / 認定経営革新等支援機関

補助金活用コンサルタント資金計画支援会計・税務処理設備投資支援

税理士法人 辻総合会計の代表。公認会計士・税理士として、補助金・助成金の申請前確認、資金計画、採択後の会計・税務処理を支援している。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

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