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調剤薬局経営コラム
公開日:2026.05.21
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士・公認会計士・中小企業経営コンサルタント

かかりつけ薬剤師の算定と経営効果

10分で読めます
かかりつけ薬剤師の算定と経営効果

かかりつけ薬剤師の評価は、単に点数を積み上げるための制度ではなく、患者との継続関係、服薬情報の一元管理、薬局内の業務設計を見直すきっかけになります。管理薬剤師にとって重要なのは、「算定できるか」だけでなく、継続して算定できる運用体制を作れるかどうかです。2026年5月時点では、従来の「かかりつけ薬剤師指導料」という名称だけで捉えるのではなく、服薬管理指導料の区分、フォローアップ、訪問対応、記録管理まで含めて経営効果を確認する必要があります。

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かかりつけ薬剤師は薬局経営にどう効くのか

かかりつけ薬剤師の運用が経営に与える影響は、主に3つあります。第一に、患者との関係が継続しやすくなり、処方箋受付の安定につながることです。第二に、服薬状況や残薬、重複投薬への介入が増えることで、対人業務の実績を示しやすくなることです。第三に、薬剤師ごとの業務品質や記録のばらつきが見えやすくなり、店舗運営の改善材料になることです。

ただし、経営効果を点数だけで判断すると誤りやすくなります。かかりつけ対応には、同意取得、手帳確認、薬歴記載、時間外相談体制、必要に応じた医療機関への情報提供など、通常業務に上乗せされる負担があります。管理薬剤師は、算定件数だけでなく、1件あたりの対応時間と記録品質も合わせて見る必要があります。

特に中小規模の薬局では、担当薬剤師の不在、異動、退職、短時間勤務などにより、継続的な対応が崩れることがあります。担当者個人の努力に依存した運用は、算定漏れや患者対応の属人化につながりやすいため、店舗としての標準手順を整えることが重要です。

ここがポイント
かかりつけ薬剤師の取り組みは、「加算を取るための説明」ではなく、患者が薬局を継続利用する理由を作る取り組みです。経営面では、点数収入、再来局、在宅・フォローアップ対応、地域連携の入口として評価します。

算定で確認したい基本論点

2026年5月時点の実務では、従来の名称に引きずられず、現行の調剤報酬上どの区分で評価されるかを確認することが大切です。かかりつけ薬剤師が服薬指導を行う場合、服薬管理指導料の区分や、フォローアップ加算、訪問加算との関係を整理して運用する必要があります。

確認すべき主な論点は次のとおりです。

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確認項目見るべきポイント経営上の意味
患者の同意手帳等での記載・保管・薬歴記録が整っているか算定根拠の不備を防ぐ
担当薬剤師施設基準や勤務経験、研修認定等を満たすか算定可能な人員を把握する
継続管理服薬状況、残薬、副作用、併用薬を追えているか対人業務の質を高める
時間外相談連絡体制と対応記録があるか患者説明と実務負担を整理する
不在時対応他薬剤師対応時の扱いを理解しているか算定漏れ・誤算定を防ぐ
月次集計件数、対象患者、薬剤師別実績を見ているか経営改善につなげる

同意取得と記録の整合性は、最初に整えるべき部分です。患者に説明した内容、手帳への記載、コピーや画像データの保管、薬歴への記載がばらばらだと、後から算定根拠を確認しにくくなります。

また、患者が別の薬局でかかりつけ薬剤師を登録している場合や、かかりつけ薬剤師を変更する場合には、手帳や薬歴での扱いに注意が必要です。前の記載を安易に上書きするのではなく、変更の理由や日付を記録する運用を決めておくと、現場の判断がぶれにくくなります。

運用負担を見える化する

かかりつけ薬剤師の算定を増やそうとすると、現場では「説明する時間がない」「同意取得が後回しになる」「薬歴記載が長くなる」「担当薬剤師が不在のときに困る」といった問題が起こりやすくなります。これらは制度理解だけでは解決できません。業務フローとして設計する必要があります。

管理薬剤師がまず確認したいのは、次の4点です。

  1. 対象患者をどの基準で選ぶか
  2. 説明と同意取得を誰が行うか
  3. フォローアップや残薬確認をいつ行うか
  4. 薬歴・手帳・情報提供の記録をどこまで標準化するか

対象患者は、単に来局頻度が高い人だけでなく、多剤併用、残薬が多い、複数医療機関を受診している、副作用や服薬不安がある、家族の支援が必要といった視点で選ぶと、患者にとっての必要性を説明しやすくなります。「算定しやすい患者」ではなく「継続管理の価値がある患者」から始めることが現実的です。

一方で、対象患者を広げすぎると、フォローや記録が追いつかなくなります。月に対応できる件数の上限を薬剤師別に把握し、受付件数、服薬指導時間、薬歴入力時間と合わせて管理することが必要です。

ここがポイント
算定件数だけを目標にすると、説明品質や記録品質が落ちることがあります。最初は対象患者を絞り、説明文、同意確認、薬歴テンプレート、フォローアップ予定表を整えてから拡大する方が安定します。

月次で見るべき経営指標

かかりつけ薬剤師の取り組みを経営に結びつけるには、毎月の数字で確認することが欠かせません。調剤報酬の評価は制度上の点数で見えますが、経営上は粗利、人件費、薬剤師の稼働、患者継続率と合わせて判断する必要があります。

月次で見たい指標は次のとおりです。

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指標確認する目的注意点
対象患者数継続管理の母数を把握する同意済みと候補患者を分ける
算定件数実績の推移を見る受付回数との比率で見る
薬剤師別件数属人化や偏りを確認する特定薬剤師に集中しすぎない
フォロー実施数継続的な介入状況を見る電話・訪問・情報提供の記録を確認
算定漏れ件数運用不備を把握するレセコンと薬歴の突合が必要
対応時間採算と人員配置を見る薬歴入力時間も含める

特に重要なのは、算定件数と対応時間をセットで見ることです。例えば、算定件数は増えていても、残業時間や薬歴遅延が増えている場合、店舗全体の生産性は下がっている可能性があります。加算収入だけを見て「利益が増えた」と判断しないことが大切です。

また、薬剤師別に見ると、説明が得意な人、薬歴記載が丁寧な人、フォローアップを忘れにくい人など、運用上の差が見えてきます。これは評価や教育の材料になりますが、個人責任にするのではなく、店舗としてテンプレートやチェックリストを整える方向で改善することが重要です。

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患者説明で押さえるポイント

かかりつけ薬剤師の説明では、制度や点数の話から入るよりも、患者にとってのメリットから伝える方が理解されやすくなります。たとえば、「薬の重複や飲み合わせを継続して確認する」「副作用や残薬を相談しやすくする」「複数の医療機関の薬をまとめて確認する」といった説明です。

説明時には、次の点を明確にします。

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説明項目患者に伝える内容
役割服薬状況を継続的・一元的に確認する担当薬剤師であること
相談体制開局時間外を含む相談方法や折り返し対応の考え方
情報管理手帳や薬歴をもとに情報を確認・記録すること
変更可能性希望や事情により担当変更があり得ること
費用調剤報酬上の自己負担が発生する場合があること

患者が納得して選ぶことが前提です。薬局側が一方的に「この薬剤師をかかりつけにします」と進めるのではなく、患者や家族が役割を理解したうえで同意する流れを作ります。

高齢患者や家族が薬を管理しているケースでは、本人だけでなく家族への説明も重要です。特に残薬、飲み忘れ、副作用、受診科の重複がある場合は、家族が相談先を把握しているだけで服薬管理が安定しやすくなります。

よくある質問

Q: かかりつけ薬剤師は、収益改善に直結しますか?
一定の点数評価はありますが、直ちに大きな収益改善につながるとは限りません。説明、記録、フォロー、時間外相談体制などの業務負担があるため、算定件数と対応時間のバランスを月次で確認する必要があります。経営面では、患者継続率や対人業務の質向上も含めて評価します。
Q: 管理薬剤師は何から整備すべきですか?
最初に整えるべきなのは、対象患者の選定基準、説明手順、同意取得、薬歴記載、手帳確認、フォロー予定の管理です。特に同意と記録が不十分だと、後から算定根拠を確認しにくくなります。まずは少人数の対象患者で運用を試し、店舗内で手順を標準化するのが現実的です。
Q: 担当薬剤師が不在の場合はどう考えればよいですか?
不在時対応は、算定可否や記録方法に関わるため、現行の通知や疑義解釈を確認して運用する必要があります。患者対応としては別の薬剤師が相談を受ける場面もありますが、算定や薬歴記載の扱いはケースごとに確認が必要です。不在時の連絡体制、引き継ぎ、薬歴への記載ルールを店舗内で決めておくことが重要です。
Q: すべての患者に勧めた方がよいですか?
すべての患者に一律で勧めるより、継続管理の必要性が高い患者から始める方が運用しやすくなります。多剤併用、複数医療機関の受診、残薬、服薬不安、家族管理、在宅移行の可能性がある患者などは、かかりつけ薬剤師の価値を説明しやすい対象です。

まとめ

かかりつけ薬剤師の運用は、薬局経営における対人業務の質と収益管理をつなぐ重要なテーマです。

  • 2026年5月時点では、従来の「かかりつけ薬剤師指導料」だけでなく、服薬管理指導料や関連加算との関係で確認する
  • 経営効果は点数だけでなく、患者継続、対応時間、記録品質、薬剤師別の稼働で判断する
  • 同意取得、手帳確認、薬歴記載、フォローアップ予定を標準化しないと運用が属人化しやすい
  • 対象患者は、算定しやすさではなく、継続的な服薬管理の必要性で選ぶ
  • 月次で算定件数、算定漏れ、薬剤師別件数、対応時間を確認すると改善点が見えやすい

管理薬剤師がまず行うべきことは、制度の点数を追うことではなく、自店舗で継続できる運用体制を作ることです。加算運用を経営に活かすには、調剤報酬、薬歴、患者説明、人員配置、月次数値を一体で確認する視点が欠かせません。


参照ソース


この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士・公認会計士・中小企業経営コンサルタント

公認会計士 / 税理士 / 認定経営革新等支援機関

代表クラウド会計導入支援経理DX支援資金繰り支援

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

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