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調剤薬局経営コラム
公開日:2026.05.21
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士・公認会計士・中小企業経営コンサルタント

薬局の赤字店舗を閉店前に見直す収支と固定費

11分で読めます
薬局の赤字店舗を閉店前に見直す収支と固定費

薬局の赤字店舗は、すぐに閉店を決める前に、店舗別の収支、固定費、在庫、処方箋枚数、技術料の内訳を分けて確認する必要があります。特に複数店舗を運営している場合、全社では黒字でも、特定店舗が資金繰りを圧迫していることがあります。閉店か立て直しかを判断するには、感覚ではなく、店舗別損益と資金流出額を見える状態にすることが出発点です。

赤字店舗の問題は「売上が少ない」だけではありません。人員配置、家賃、門前医療機関との関係、在庫の滞留、加算算定の不足、薬剤料の粗利構造などが重なっていることがあります。閉店前に数字を整理すれば、改善すべき店舗なのか、撤退を検討すべき店舗なのか、金融機関や取引先にどう説明するかが明確になります。

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処方箋枚数、技術料、在庫、人件費、資金繰りを、月次数字で整理します。

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赤字店舗で最初に見るべき数字

赤字店舗の立て直しでは、まず「会計上の赤字」と「資金繰り上の赤字」を分けます。試算表で赤字に見えていても、減価償却費の影響が大きい場合と、毎月現金が流出している場合では判断が異なります。

最初に確認したいのは、次の4つです。

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確認項目見るべき内容判断のポイント
店舗別売上技術料、薬剤料、OTC等の内訳技術料が低いのか、薬剤料構成の影響か
店舗別粗利薬価差益、廃棄、返品、値引き売上規模より粗利額を重視する
固定費人件費、家賃、リース、システム費処方箋枚数に対して重すぎないか
資金流出借入返済、在庫増加、未収入金損益ではなく現金が減る原因を確認する

薬局経営では、売上の大部分を薬剤料が占めることがあります。そのため、売上高だけを見ても利益の実態はつかみにくくなります。処方箋1枚あたりの技術料と粗利額を見なければ、店舗の採算性は判断できません。

ここがポイント
赤字店舗の判断では、全社合算の試算表だけでは不十分です。店舗別に、売上、粗利、人件費、家賃、在庫、借入返済を分けて確認することで、改善可能な赤字か、構造的な赤字かを切り分けやすくなります。

閉店前に確認したい固定費の重さ

赤字店舗で特に重要なのが固定費です。処方箋枚数が増えれば吸収できる固定費なのか、そもそも商圏や医療機関の状況から回収が難しい固定費なのかを分けて考えます。

主な固定費は、人件費、家賃、リース料、システム費、保守料、水道光熱費、通信費、管理本部費です。このうち、人件費と家賃は改善余地が大きい一方で、短期的には削りにくい費用でもあります。

固定費を見るときは、単に「高い・安い」ではなく、次のように判断します。

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固定費確認すること見直しの方向性
薬剤師人件費処方箋枚数、営業時間、シフト応援体制、営業時間、配置の見直し
事務人件費入力業務、会計業務、請求業務業務分担、標準化、店舗間兼務
家賃売上・粗利に対する割合賃料交渉、面積活用、移転可能性
リース料調剤機器、レセコン、什器契約期間、更新時期、不要設備
本部配賦管理部門費、共通費店舗損益を見る際の配賦基準

実務上の注意点として、本部費を過度に配賦すると、店舗単体では改善可能な赤字まで悪く見えることがあります。閉店判断では、まず店舗が直接負担している費用と、本部の共通費を分けて見ることが重要です。

一方で、直接費だけでは黒字でも、本部人件費や借入返済を含めると全社資金繰りが苦しい場合もあります。複数店舗経営では、店舗単体の採算と、全社の資金繰りの両方を見なければなりません。

処方箋枚数だけで判断しない

赤字店舗の相談では、「処方箋枚数が少ないから赤字」と考えがちです。しかし、処方箋枚数が同じでも、技術料、薬剤料、加算、在庫効率、人員配置によって利益は大きく変わります。

見るべき指標は、次のようなものです。

  • 処方箋枚数
  • 処方箋1枚あたり売上
  • 処方箋1枚あたり技術料
  • 処方箋1枚あたり粗利
  • 薬剤師1人あたり処方箋枚数
  • 人件費率
  • 在庫回転期間
  • 廃棄・期限切れ金額
  • 未収入金の回収状況

特に重要なのは、処方箋枚数と人員配置のバランスです。枚数が少ない店舗でも、最低限の薬剤師配置や営業時間を維持する必要があるため、固定費負担が重くなりやすいからです。

調剤基本料や各種加算は、薬局の体制や機能、集中率、受付回数などと関係します。制度上の要件は変わるため、2026年5月時点でも、最新の公表資料や施設基準を確認しながら、算定できているもの、取りこぼしているもの、体制整備に費用がかかりすぎているものを整理する必要があります。

ここがポイント
赤字改善では、加算を増やすことだけを目的にしないことが大切です。体制整備のために人件費や事務負担が増え、結果として利益が残らないケースもあります。加算による増収額と追加コストをセットで確認します。

在庫と仕入れが資金繰りを悪化させていないか

薬局の赤字店舗では、損益だけでなく在庫も確認する必要があります。試算表上は大きな赤字でなくても、在庫が増え続けていると資金繰りは悪化します。特に、処方内容が偏っている店舗、門前医療機関の処方変更が多い店舗、供給不安の影響を受けやすい店舗では注意が必要です。

確認すべきポイントは、次のとおりです。

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在庫項目確認すること経営への影響
月末在庫店舗別の在庫残高資金が寝ていないか
滞留在庫長期間動いていない薬品廃棄リスクがないか
期限切れ期限間近・廃棄実績粗利を圧迫していないか
返品可能性卸との条件、返品実績損失を減らせるか
仕入条件値引率、支払サイト資金繰りに合っているか

在庫は利益ではなく資金を使う項目です。黒字店舗の資金で赤字店舗の在庫を支えている状態が続くと、全社の資金繰りが急に悪化することがあります。

実務上の注意点として、供給不安に備えた在庫確保と、過剰在庫の削減は単純に両立しません。必要な医薬品を切らさない体制を守りつつ、動いていない在庫、代替可能な在庫、店舗間移動できる在庫を分けて管理する必要があります。

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立て直す店舗と閉店を検討する店舗の分け方

赤字店舗は、すべて閉店すべきとは限りません。改善余地がある店舗、地域戦略上必要な店舗、将来の承継や売却に影響する店舗もあります。一方で、赤字を放置すると、黒字店舗まで資金繰りに巻き込まれることがあります。

判断の目安は、次のように整理できます。

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状況立て直しを優先しやすいケース閉店・統合を検討しやすいケース
売上一時的な減少、改善施策がある医療機関の閉院・移転で回復見込みが乏しい
固定費家賃交渉や人員再配置の余地がある固定費が重く、契約変更も難しい
在庫店舗間移動や返品で圧縮できる滞留・廃棄が恒常化している
人員シフト調整や兼務が可能採用難で応援コストが高い
資金繰り改善までの運転資金を確保できる毎月の資金流出が大きい

閉店を検討する場合でも、すぐに実行すればよいとは限りません。賃貸借契約、リース契約、従業員対応、患者対応、在庫処分、行政手続き、金融機関説明などを整理する必要があります。閉店費用や違約金を見込まずに判断すると、短期的な資金繰りがさらに悪化することがあります。

一方、立て直しを選ぶ場合は、期限を決めることが重要です。「いつか改善する」ではなく、3か月、6か月などの期間を区切り、処方箋枚数、粗利、人件費、在庫、資金繰りの改善目標を設定します。

相談前に整理しておく資料

赤字店舗の相談では、資料が揃っているほど判断が早くなります。すべて完璧でなくても、現状の数字を出せる範囲で整理することが大切です。

準備したい資料は、次のとおりです。

  • 直近の試算表
  • 店舗別損益
  • 店舗別の処方箋枚数
  • 技術料・薬剤料・その他売上の内訳
  • 人件費明細
  • 家賃、リース、保守料などの固定費一覧
  • 店舗別在庫残高
  • 借入返済予定表
  • 資金繰り表
  • 閉店や移転を検討している場合の契約書類

特に、店舗別損益と資金繰り表があると、改善余地のある赤字なのか、資金流出を止めるべき赤字なのかを判断しやすくなります。

実務上の注意点として、会計ソフト上で店舗別に部門管理していない場合でも、売上、給与、家賃、在庫、リース料から簡易的に店舗別損益を作ることは可能です。閉店判断に進む前に、まずは概算でも店舗別の実態を把握することが重要です。

よくある質問

赤字店舗は何か月続いたら閉店を検討すべきですか?

一律に何か月とは言えません。重要なのは、赤字の原因が一時的か構造的かです。医療機関の一時休診、採用コスト、在庫調整などが原因なら改善余地があります。一方で、処方箋枚数の回復見込みが乏しく、固定費も下げられない場合は、早めに閉店・統合の試算を行う必要があります。

全社では黒字なら赤字店舗を残してもよいですか?

全社黒字でも、赤字店舗が資金繰りを圧迫している場合は注意が必要です。黒字店舗の利益で赤字店舗の固定費や在庫を支え続けると、将来の設備投資、採用、借入返済に影響します。店舗単体の役割と、全社資金繰りへの影響を分けて判断します。

加算を増やせば赤字店舗は改善しますか?

加算は改善策の一つですが、万能ではありません。体制整備のために人件費、研修、事務負担が増える場合があります。加算による増収額と追加コストを比較し、利益が残る設計になっているかを確認する必要があります。

閉店を決める前に金融機関へ相談すべきですか?

借入返済や資金繰りに影響がある場合は、早めに整理した資料をもとに相談することが望ましいです。中小企業向けには、認定経営革新等支援機関が関与する経営改善計画策定支援の制度もあります。金融機関へ説明する前に、店舗別損益、資金繰り、改善計画を整理しておくと話が進めやすくなります。

まとめ

薬局の赤字店舗は、閉店か継続かを感覚で決めるのではなく、店舗別の数字をもとに判断することが重要です。

  • 赤字店舗では、まず店舗別損益と資金流出額を確認する
  • 売上高だけでなく、処方箋1枚あたりの技術料、粗利、人件費を見直す
  • 人件費、家賃、リース料、本部費などの固定費を分けて整理する
  • 在庫の増加、滞留、廃棄が資金繰りを悪化させていないか確認する
  • 立て直す場合も閉店を検討する場合も、期限と試算を決めて進める

赤字店舗の改善は、早く数字を見える化するほど選択肢が増えます。店舗別の収支、在庫、固定費、資金繰りを整理し、改善可能性と撤退コストを同じ表で比較することが、閉店前に行うべき最初のステップです。


参照ソース

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士・公認会計士・中小企業経営コンサルタント

公認会計士 / 税理士 / 認定経営革新等支援機関

代表クラウド会計導入支援経理DX支援資金繰り支援

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

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