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調剤薬局経営コラム
公開日:2026.05.21
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士・公認会計士・中小企業経営コンサルタント

薬局の人件費率はどこまでが適正か

9分で読めます
薬局の人件費率はどこまでが適正か

薬局の人件費率は、単純に「何%なら適正」と決めるより、処方箋枚数、技術料、薬剤料、薬剤師の配置、営業時間、在庫負担を合わせて判断する必要があります。公表されている小企業の経営指標では、調剤薬局の人件費対売上高比率は平均で20%台半ばの水準が示されていますが、店舗の立地や処方内容によって見え方は大きく変わります。薬局オーナーにとって大切なのは、人件費率だけを下げることではなく、必要な人員を確保しながら利益が残る構造にすることです。

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処方箋枚数、技術料、在庫、人件費、資金繰りを、月次数字で整理します。

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薬局の人件費率は売上高だけで判断しない

調剤薬局では、売上の中に薬剤料が大きく含まれます。そのため、人件費率を売上高だけで見ると、薬価の高い処方が多い店舗では低く見え、技術料中心の店舗では高く見えることがあります。売上高人件費率は便利な指標ですが、薬局経営では粗利に対して人件費がどれだけ重いかも同時に確認する必要があります。

日本政策金融公庫の小企業向け経営指標では、調剤薬局の人件費対売上高比率は平均24.6%、中央値23.9%、黒字かつ自己資本プラス企業平均24.4%とされています。また、同じ指標では売上高総利益率、経常利益率、従業者1人当たり売上高も示されており、人件費率だけを単独で見るのではなく、粗利・利益・生産性を並べて判断することが重要です。

ここがポイント
人件費率の目安を見るときは、売上高に対する割合だけでなく、粗利に対する割合、処方箋1枚当たり人件費、薬剤師1人当たり処方箋枚数をセットで確認します。

実務上の注意点として、薬剤料が増えて売上が伸びた月は、人件費率が一時的に下がって見えることがあります。反対に、薬価改定や後発品への切り替えで薬剤料が下がると、同じ人員でも人件費率が上がることがあります。

人件費率を見るときの主な指標

薬局の人件費管理では、次のような指標を月次で並べると、採用が必要なのか、配置を見直すべきなのか、単価改善が必要なのかが見えやすくなります。

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指標見る目的確認したい状態
人件費対売上高比率売上全体に対する人件費の重さを見る急上昇していないか
人件費対粗利比率粗利で人件費を吸収できているかを見る粗利の大半を人件費が食っていないか
処方箋1枚当たり人件費業務量に対する人件費を見る枚数減少時に悪化していないか
薬剤師1人当たり処方箋枚数薬剤師配置の生産性を見る過重労働や余剰配置になっていないか
1人当たり粗利採用後に利益が残るかを見る採用コストを吸収できるか

特に見落としやすいのは、人件費対粗利比率です。調剤薬局では売上高が大きく見えても、薬剤仕入れを差し引いた粗利が十分でなければ、給与、法定福利費、家賃、システム利用料、借入返済をまかなえません。

また、人件費には給与だけでなく、賞与、法定福利費、派遣費、採用費、教育研修費も含めて考える必要があります。月次試算表で給与手当だけを見ていると、社会保険料や賞与引当の影響を見落とし、決算時に利益が想定より少なくなることがあります。

採用すべきか迷ったときの判断基準

薬剤師を追加採用するかどうかは、「忙しいから採る」だけでは判断できません。処方箋枚数の増加が継続的なのか、一時的な繁忙なのか、加算や在宅対応によって粗利が増えるのかを確認します。

採用を検討する場面では、次の順番で数字を見ると判断しやすくなります。

  1. 直近6〜12か月の処方箋枚数の推移を見る
  2. 技術料、薬剤料、粗利の内訳を見る
  3. 現在の薬剤師・事務スタッフの勤務時間を整理する
  4. 採用後の月額人件費を給与、賞与、法定福利費込みで試算する
  5. 採用後も営業利益が残るか確認する

採用判断の基準は、追加人件費を追加粗利で吸収できるかです。たとえば薬剤師を1名増やしても、処方箋枚数が増えず、加算取得や在宅対応にもつながらない場合、利益は圧迫されます。一方で、残業削減、離職防止、在宅対応、営業時間の安定化により、長期的に利益を守れる採用もあります。

実務上の注意点として、採用費や紹介手数料は一時費用であっても、資金繰りには大きく影響します。採用月だけでなく、入社後3〜6か月の資金繰り表に入れて確認することが大切です。

人件費率が高くなる主な原因

人件費率が高い場合、原因は必ずしも給与水準だけではありません。薬局の場合、処方箋枚数の減少、薬価差の縮小、在庫負担、営業時間、業務フローの非効率が重なって悪化していることがあります。

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原因起きていること見直しの方向性
処方箋枚数が減っている固定人件費を吸収できない門前依存、営業時間、地域対応を確認
薬剤料売上が下がっている売上高人件費率が上がる粗利と技術料で再分析する
薬剤師業務が分散している本来業務以外に時間を取られる事務分担、入力、発注ルールを整理
残業が常態化している忙しい時間帯に人員が合っていないシフトとピーク時間を見直す
採用単価が高い紹介料・高給与で固定費化する採用前に損益分岐点を試算する

人件費率が高い店舗では、人を減らす前に業務量と配置を分解することが重要です。薬剤師が入力、発注、在庫確認、書類整理に多くの時間を使っている場合、事務スタッフの活用や業務フローの見直しで、薬剤師の生産性を改善できる可能性があります。

ここがポイント
人件費率が高い店舗ほど、給与を下げる発想だけではなく、処方箋1枚当たりの作業時間、薬剤師が担う業務、在宅対応や加算取得の余地を確認することが重要です。
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利益を残すための月次管理の方法

薬局の人件費率は、決算時にまとめて確認しても対応が遅れます。毎月、処方箋枚数、売上、粗利、人件費、営業利益を並べて、店舗別に確認することが必要です。複数店舗を運営している場合は、店舗ごとの営業時間、薬剤師配置、在庫水準、門前医療機関の状況も合わせて見ます。

月次管理では、次の項目を最低限確認します。

  • 売上高、薬剤料、技術料の推移
  • 粗利額と粗利率
  • 給与、賞与、法定福利費、派遣費
  • 処方箋枚数と1枚当たり粗利
  • 営業利益と資金繰りへの影響

人件費率が適正でも営業利益が残らない場合は、家賃、リース料、システム費、借入返済、在庫回転に問題がある可能性があります。反対に、人件費率がやや高くても、地域支援、在宅、かかりつけ対応などにより粗利が確保でき、離職も少ない店舗であれば、経営上は許容できる場合があります。

実務上の注意点として、月次試算表の人件費と実際の勤務実態が一致しているとは限りません。役員給与、家族従業員、応援勤務、派遣費、他店舗からの兼務をどの店舗に配賦するかで、店舗別の採算は大きく変わります。

専門家に相談する前に整理したい資料

薬局の人件費率を見直すときは、感覚的な相談よりも、数字を整理しておくと原因分析が早くなります。特に、薬剤師採用を検討している場合は、採用前後の損益を試算できる状態にしておくことが大切です。

準備しておきたい資料は次のとおりです。

  • 直近12か月の試算表
  • 店舗別の売上、粗利、人件費
  • 処方箋枚数、技術料、薬剤料の推移
  • スタッフ別の勤務時間、給与、雇用形態
  • 採用予定者の給与条件、紹介手数料、入社予定時期
  • 在庫金額、買掛金、借入返済予定

これらを整理すると、単に「人件費が高いか」ではなく、「採用しても利益が残るか」「人件費よりも粗利不足が問題か」「固定費や在庫負担が原因か」を切り分けやすくなります。

よくある質問

Q: 薬局の人件費率は売上高に対する割合だけで判断してよいですか?
売上高に対する人件費率だけで判断すると、薬剤料の構成に引っ張られます。高額薬が多い薬局では売上が大きく見えても粗利が薄いことがあり、逆に技術料の比率が高い薬局では同じ人件費率でも利益の残り方が違います。売上高比率に加えて、粗利に対する人件費、処方箋1枚当たり人件費、薬剤師1人当たり粗利を確認するのが現実的です。
Q: 薬剤師を1人採用する前にどんな試算をすべきですか?
給与、賞与、法定福利費、採用費、教育期間中の生産性低下を含めた年間コストを出します。そのうえで、追加人件費を処方箋枚数の増加、在宅対応、加算取得、残業削減でどの程度吸収できるかを試算します。採用後に固定費だけ増えると資金繰りが重くなるため、採用前に保守的なケースも作るべきです。
Q: 人件費率が高い場合、すぐ人員削減を考えるべきですか?
最初に見るべきなのは人員削減ではなく、業務配分と粗利の構造です。薬剤師が発注、在庫整理、入力、書類作成に時間を取られている場合、事務分担や業務手順の見直しで改善することがあります。人件費を減らすだけでは、待ち時間や服薬指導の質が落ち、処方元や患者対応に影響する可能性があります。
Q: 複数店舗では人件費をどう比較すればよいですか?
店舗別に処方箋枚数、粗利、人件費、応援勤務、本部関与、管理薬剤師の兼務状況を分けて見ます。本部費や役員関与を配賦しないままだと、黒字に見える店舗と赤字店舗の実態を誤ることがあります。月次では店舗別損益と勤務シフトを並べて確認し、過剰配置なのか、売上構成の問題なのかを切り分けます。

まとめ

  • 薬局の人件費率は、売上高比率だけでなく粗利比率、処方箋1枚当たり人件費、1人当たり粗利で判断する
  • 調剤薬局では薬剤料の変動により、人件費率が実態以上に良く見えたり悪く見えたりする
  • 薬剤師採用は、追加人件費を追加粗利で吸収できるかを試算してから判断する
  • 人件費率が高い原因は、給与だけでなく処方箋枚数、業務分担、残業、在庫、固定費にもある
  • 月次で店舗別の売上、粗利、人件費、営業利益を確認すると、採用と利益のバランスを取りやすくなる

参照ソース


この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士・公認会計士・中小企業経営コンサルタント

公認会計士 / 税理士 / 認定経営革新等支援機関

代表クラウド会計導入支援経理DX支援資金繰り支援

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

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