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補助金・助成金ブログ
公開日:2026.05.21
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士・公認会計士・補助金活用コンサルタント

補助金申請で見られる決算書の確認ポイント

10分で読めます
補助金申請で見られる決算書の確認ポイント

補助金申請では、事業計画の内容だけでなく、決算書から「この会社は補助事業を最後まで実行できるか」も確認されます。赤字や債務超過があるから必ず不採択になるとは限りませんが、説明なしに提出すると、資金調達力や事業継続性に不安があると見られやすくなります。申請前には、直近決算書、試算表、借入返済予定、資金繰り表を並べて、赤字の理由・改善見込み・自己負担資金の準備を説明できる状態にしておくことが重要です。

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補助金申請で決算書が見られる理由

補助金は、採択されればすぐ入金される資金ではありません。多くの制度では、交付決定後に設備やITツールを導入し、支払いを済ませ、実績報告や確定検査を経てから補助金が入金されます。つまり、申請時点では「補助金をもらえるか」だけでなく、先に支払う資金を用意できるかが重要になります。

そのため審査では、売上や利益の推移、自己資本、借入状況、手元資金、納税状況などを通じて、補助事業を実行できる財務体力があるかを見ます。制度によって提出書類は異なりますが、法人であれば貸借対照表、損益計算書、納税証明書などが求められることがあります。個人事業主の場合も、確定申告書、青色申告決算書、収支内訳書などで財務状況を確認される場合があります。

ここがポイント
2026年5月時点でも、補助金ごとに提出書類や審査項目は異なります。申請する制度の公募要領で、直近決算書、納税証明書、財務情報、資金調達に関する記載の有無を必ず確認してください。

実務上の注意点は、「決算書を出せば終わり」ではないことです。決算書の数字と事業計画の売上予測、投資額、借入予定、賃上げ計画がつながっていないと、計画の実現可能性に疑問を持たれやすくなります。

赤字でも申請できるかを見るポイント

赤字決算でも、補助金申請そのものができなくなるとは限りません。ただし、赤字の中身によって説明のしやすさは大きく変わります。たとえば、一時的な大型修繕、広告投資、役員報酬の調整、在庫処分、コロナ後の売上回復途上など、理由を説明できる赤字であれば、今後の改善計画とセットで整理できます。

一方で、売上減少が続いている、粗利益率が低下している、固定費をまかなえない、借入返済で資金繰りが詰まっている場合は、単に「補助金で改善します」と書くだけでは弱くなります。補助金で導入する設備やITツールが、どの売上増加、原価削減、人件費効率化につながるのかを数字で示す必要があります。

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確認項目見られやすい内容申請前に整理する説明
営業利益本業で利益が出ているか赤字要因が一時的か構造的か
経常利益借入利息や営業外損益を含めた収益力今後の利益改善見込み
当期純利益税引後の最終損益特別損失や一過性要因の有無
売上総利益率商品・サービスの採算値上げ、仕入改善、業務効率化の余地
販管費固定費の重さ人件費、家賃、広告費の見直し状況

赤字そのものよりも、赤字の理由を経営者が説明できるかが重要です。申請前には、決算書だけでなく、直近月までの試算表を用意し、改善傾向があるかを確認しておくと説明しやすくなります。

債務超過や借入過多の場合の注意点

債務超過とは、貸借対照表上で資産より負債が多く、純資産がマイナスになっている状態です。債務超過でも直ちに申請できないとは限りませんが、審査上は財務安定性に不安があると見られやすくなります。特に設備投資型の補助金では、自己負担分の支払い、借入返済、運転資金の確保を同時に説明する必要があります。

借入が多い場合も同様です。借入金の総額だけでなく、毎月返済額、返済期間、金利、追加融資の見込み、金融機関との関係が重要です。補助金は原則として後払いであるため、採択後に資金不足で事業を実行できないリスクを避ける必要があります。

債務超過や借入過多がある場合は、次の資料を準備すると説明がしやすくなります。

  • 直近決算書と直近試算表
  • 借入金一覧表
  • 返済予定表
  • 月次資金繰り表
  • 金融機関からの融資見込み資料
  • 役員借入金や増資予定がある場合の整理資料

実務上の注意点として、役員借入金が多い会社では、決算書上の負債が大きく見える一方で、実質的には返済を急がない資金である場合があります。その場合も、ただ「役員借入だから問題ありません」と書くのではなく、返済方針や資金繰りへの影響を整理して説明することが大切です。

資金繰りで見られる自己負担と入金時期

補助金申請で見落としやすいのが、採択額ではなく自己負担額です。たとえば補助率が2分の1であれば、1000万円の投資に対して補助金見込みは500万円でも、いったん1000万円の支払いが必要になるケースがあります。加えて、消費税分、対象外経費、振込手数料、追加工事費、保守費用などは自己負担になることがあります。

資金繰りを確認するときは、次の順番で考えると整理しやすくなります。

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項目確認する内容
投資総額見積書上の税込・税抜金額、対象外経費
補助対象額公募要領上、補助対象になる経費
補助見込み額補助率と上限額を踏まえた概算
先払い資金補助金入金前に必要な支払額
つなぎ資金自己資金、融資、リース不可否など
入金までの期間実績報告、確定検査、請求後の入金時期

補助金は資金繰りを楽にする制度であっても、最初から資金不足を埋めてくれる制度ではありません。そのため、申請前に「いつ、いくら支払い、いつ、いくら入金されるか」を月次で確認する必要があります。

ここがポイント
設備投資やIT導入を急ぐ場合でも、交付決定前の契約・発注・支払いが補助対象外になる制度があります。制度ごとのルールを確認し、資金繰り表には発注日、納品日、支払日、実績報告日、入金見込み日を分けて記載してください。
申請前に対象・期限・自己負担を整理

決算書と事業計画をつなげる説明方法

補助金申請では、決算書の数字を隠すことはできません。大切なのは、財務上の弱点をそのまま放置せず、事業計画の中で改善の道筋を示すことです。赤字であれば、なぜ赤字になったのか、今後どの費用が減るのか、どの売上が伸びるのかを整理します。債務超過であれば、利益回復、役員借入金の扱い、金融機関の支援状況などを説明します。

たとえば、ITツール導入であれば、単に「業務効率化」と書くのではなく、入力作業時間、請求書発行時間、在庫確認時間、残業時間などを現状と導入後で比較します。設備投資であれば、生産数量、歩留まり、外注費、修繕費、人員配置、稼働率などを数値化します。

審査上伝わりやすい説明は、次のような流れです。

  1. 現在の決算書に表れている課題を示す
  2. 課題が起きている原因を説明する
  3. 補助事業で改善する業務や設備を示す
  4. 売上、利益、資金繰りへの効果を数値化する
  5. 自己負担資金をどう準備するかを明記する

実務上の注意点は、売上予測だけを大きく見せすぎないことです。売上増加の根拠が弱い場合は、利益改善や省力化効果も疑われます。見込み客、受注状況、単価、稼働時間、既存顧客への販売可能性など、根拠資料と合わせて説明できる数字にすることが重要です。

申請前に確認したい財務チェックリスト

申請前には、次のチェックを行うと、決算書の不安点を早めに把握できます。

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チェック項目確認内容不安がある場合の対応
直近期の利益営業利益、経常利益、純利益赤字理由と改善見込みを整理
純資産債務超過かどうか役員借入、増資、利益計画を確認
現預金投資前後の手元資金月次資金繰り表を作成
借入返済毎月返済額と返済余力返済予定表と金融機関相談を整理
納税状況法人税、消費税、社会保険等滞納がないか事前確認
試算表直近月の業績決算後の改善・悪化を説明
投資額税込・税抜、対象外経費見積書と補助対象経費を照合
自己負担補助金入金前に必要な資金自己資金と融資可能性を確認

この段階で不安が見つかった場合でも、申請をあきらめる必要はありません。ただし、説明しないまま申請するのではなく、財務面の弱点を事業計画と資金計画で補強することが必要です。特に、赤字、債務超過、借入過多、納税遅れ、直近売上の急減がある場合は、申請書を作る前に決算書の読み合わせをしておくと安全です。

よくある質問

赤字決算でも補助金申請はできますか?

制度によって要件は異なりますが、赤字だから必ず申請できないとは限りません。ただし、赤字の理由、改善見込み、補助事業による効果を説明できないと、事業継続性や実行可能性に不安があると見られやすくなります。直近試算表で改善傾向がある場合は、その数字も合わせて整理しましょう。

債務超過だと不採択になりますか?

債務超過だけで一律に不採択と断定することはできません。ただし、自己負担資金や追加融資の見込みを説明できない場合、補助事業を最後まで実行できるか疑問を持たれます。役員借入金、金融機関の支援状況、今後の利益計画を含めて説明できる資料を準備することが重要です。

決算書は何期分確認すればよいですか?

申請制度によって提出年数は異なりますが、社内確認では少なくとも直近2期分と直近月までの試算表を見ておくと安心です。売上、利益、借入、現預金の流れを時系列で見ることで、一時的な悪化なのか、構造的な資金繰り悪化なのかを判断しやすくなります。

補助金が入る前の支払い資金はどう考えればよいですか?

補助金は後払いになることが多いため、交付決定後から入金までの資金を事前に用意する必要があります。自己資金だけで足りない場合は、金融機関融資やつなぎ資金の相談を早めに行います。見積額、支払予定日、補助金入金見込み日を月次資金繰り表に落とし込んで確認してください。

まとめ

  • 補助金申請では、事業計画だけでなく決算書から実行可能性や資金調達力も見られます。
  • 赤字や債務超過でも申請できる場合はありますが、理由と改善見込みの説明が必要です。
  • 補助金は後払いが多いため、採択額よりも先に支払う資金と自己負担額を確認することが重要です。
  • 決算書、試算表、借入返済予定、資金繰り表をそろえると、財務面の不安を整理しやすくなります。
  • 申請前に財務上の弱点を把握し、事業計画と資金計画で補強してから進めることが安全です。

参照ソース

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士・公認会計士・補助金活用コンサルタント

公認会計士 / 税理士 / 認定経営革新等支援機関

補助金活用コンサルタント資金計画支援会計・税務処理設備投資支援

税理士法人 辻総合会計の代表。公認会計士・税理士として、補助金・助成金の申請前確認、資金計画、採択後の会計・税務処理を支援している。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

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