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補助金・助成金ブログ
公開日:2026.05.21
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士・公認会計士・補助金活用コンサルタント

助成金と補助金の違い|申請前の整理

11分で読めます
助成金と補助金の違い|申請前の整理

助成金と補助金は、どちらも返済不要の公的支援として語られることがありますが、制度の目的、審査方法、申請のタイミング、必要資料は異なります。特に雇用・賃上げ・人材育成に関係する制度を探している経営者は、まず労務系助成金は雇用管理や賃金改善の実施要件が重視されることを押さえる必要があります。一方、補助金は設備投資や新規事業、IT導入などの事業計画を審査するものが多く、採択されなければ交付に進めない制度もあります。

税理士に相談する前には、「何を買いたいか」だけでなく、「誰の賃金を上げるのか」「雇用契約書や賃金台帳が整っているか」「資金を先に支払えるか」を整理しておくと、制度の向き不向きを判断しやすくなります。2026年5月時点でも、厚生労働省の雇用関係助成金や業務改善助成金、中小企業庁系の補助金はそれぞれ目的が異なるため、名称だけで判断しないことが大切です。

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助成金と補助金の基本的な違い

助成金と補助金の大きな違いは、制度の目的と審査の考え方です。一般に、労務系助成金は雇用の安定、賃上げ、人材育成、働き方改善などを目的にした制度が多く、所定の要件を満たした事業主に対して支給されます。補助金は、設備投資、新規事業、販路開拓、IT導入などの政策目的に沿った事業計画を公募し、審査を経て採択される形式が多く見られます。

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比較項目助成金補助金
主な目的雇用維持、賃上げ、人材育成、労働環境改善設備投資、新規事業、販路開拓、DX、省力化
主な所管厚生労働省系が中心経済産業省・中小企業庁・自治体など
審査の特徴要件充足型が多い公募・採択型が多い
重要資料就業規則、雇用契約書、賃金台帳、出勤簿事業計画書、見積書、決算書、資金計画
注意点取組前の計画提出や労務管理の整備が重要採択前の契約・発注・支払が対象外になる場合がある
入金時期取組実施後・支給申請後が多い事業実施後・実績報告後が多い

どちらも「先にもらえるお金」ではなく、原則として支出や取組の後に支給される制度です。そのため、自己資金や借入で先に資金を用意できるかを確認しないまま申請を進めると、採択や支給決定の後に資金繰りで困ることがあります。

ここがポイント
助成金・補助金は、名称が似ていても制度ごとに申請先、締切、対象経費、必要書類、事前着手の可否が異なります。検討段階では「制度名」だけでなく、「対象となる取組」と「申請前に済ませてはいけないこと」を確認することが重要です。

労務系助成金で特に確認されやすいこと

労務系助成金では、設備や経費そのものよりも、雇用管理の実態が重視されます。たとえば、キャリアアップ助成金は非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善、人材育成などを支援する制度であり、取組前の計画提出や対象労働者の雇用区分、賃金規定の整備が問題になります。

業務改善助成金は、生産性向上に資する設備投資等と、事業場内最低賃金の引上げを組み合わせて検討する制度です。単に機械やシステムを購入したいだけではなく、事業場内最低賃金の引上げ計画と設備投資等の計画が制度趣旨に合っているかを見られます。

労務系助成金で事前に確認したい資料は、次のとおりです。

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確認資料見るべきポイント
労働条件通知書・雇用契約書雇用形態、所定労働時間、賃金額、契約期間が明確か
賃金台帳最低賃金、手当、残業代、昇給前後の金額が確認できるか
出勤簿・タイムカード実労働時間と賃金計算の整合性があるか
就業規則・賃金規程正社員転換、昇給、手当、退職規定などが整っているか
社会保険・雇用保険の加入状況対象労働者が制度要件に合う加入状況か
解雇・賃下げの有無不支給事由に該当するリスクがないか

実務上の注意点として、労務書類が後から整っているように見えても、実態と異なる場合は支給対象外となるリスクがあります。助成金は「書類を作れば受けられる制度」ではなく、普段の雇用管理が制度要件に合っているかが前提になります。

補助金は事業計画と資金繰りの確認が重要

補助金では、労務書類よりも事業計画、投資内容、収益改善の見込み、資金計画が重視されることが多くあります。たとえば、省力化投資、IT導入、設備更新、販路開拓などでは、「なぜその投資が必要か」「投資後にどのような効果があるか」を数字で説明する必要があります。

補助金は採択されても、すぐに入金されるわけではありません。交付申請、契約、発注、納品、支払、実績報告、検査といった流れを経て、後払いで補助金が入金される制度が多くあります。そのため、採択額だけを見て資金計画を立てないことが重要です。

補助金で相談前に整理したい内容は、次のとおりです。

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整理項目具体的に確認すること
投資内容設備、システム、工事、外注費などの内容
見積書相見積もりの要否、発行日、仕様、支払条件
資金繰り補助金入金前に全額立替できるか
決算書・試算表売上、利益、借入、債務超過の有無
事業効果人手不足解消、売上増加、原価削減、生産性向上
実施時期申請前に契約・発注・支払をしていないか

実務上の注意点として、補助金では制度によって「交付決定前の発注・契約・支払」が対象外になる場合があります。急いで設備を購入した後に相談すると、制度の対象にできない可能性があるため、投資前に確認することが安全です。

税理士に相談する前に整理すること

税理士に相談する前には、制度名を決め切る必要はありません。むしろ、自社の課題、予定している支出、雇用や賃上げの状況を整理しておく方が、助成金と補助金のどちらを優先すべきか判断しやすくなります。

まず整理したいのは、「何に困っているのか」です。人手不足、最低賃金対応、非正規社員の正社員化、教育訓練、設備更新、バックオフィスDXなど、課題によって候補制度は変わります。次に、「いつ実施する予定か」を確認します。助成金も補助金も、取組前の計画提出や交付決定が必要になることがあるためです。

相談前チェックリストは、次のように整理できます。

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チェック項目相談前に用意したい情報
自社の課題賃上げ、人材定着、設備更新、業務効率化など
対象者どの従業員の賃金・雇用形態・教育訓練に関係するか
支出予定何を、いつ、いくらで購入・導入する予定か
資金余力入金前に立替払いできるか
労務書類雇用契約書、賃金台帳、出勤簿、就業規則
会計資料決算書、試算表、借入残高、資金繰り表
申請スケジュール締切、実施時期、支払予定、報告期限
ここがポイント
税理士は、補助金の資金計画、会計処理、税務上の影響、決算書の見え方を整理する役割を担いやすい一方、労務系助成金では社会保険労務士の関与が必要になる場面もあります。相談時には、税務・会計の論点と労務手続きの論点を分けて確認すると進めやすくなります。
申請前に対象・期限・自己負担を整理

助成金と補助金を比較するときの判断基準

助成金と補助金を比較するときは、「どちらが得か」ではなく、「自社の取組に合っているか」で判断します。賃上げや雇用改善が主目的であれば労務系助成金、設備投資や新規事業が主目的であれば補助金が候補になりやすいです。ただし、業務改善助成金のように、賃上げと設備投資が組み合わさる制度もあります。

判断基準としては、次の順番で確認すると整理しやすくなります。

  1. 取組の中心が「人」なのか「投資」なのかを分ける
  2. すでに契約・発注・支払をしていないか確認する
  3. 賃金台帳、雇用契約書、就業規則に不備がないか確認する
  4. 補助金入金前の立替資金を用意できるか確認する
  5. 税務処理と入金時期が決算に与える影響を確認する

労務系助成金は普段の労務管理が土台であり、補助金は事業計画と実績報告が土台です。どちらも申請書だけを整えるのではなく、制度に合う実態があるかを確認することが欠かせません。

実務上の注意点として、複数制度を同じ経費や同じ取組に重ねて使えるとは限りません。国、自治体、厚生労働省系の制度を同時に検討する場合は、併給調整や重複申請の可否を必ず確認しましょう。

よくある質問

助成金と補助金はどちらが受けやすいですか?

一概にはいえません。労務系助成金は要件を満たせば支給対象になりやすい制度もありますが、雇用契約書、賃金台帳、就業規則などの労務管理が整っていることが前提です。補助金は公募・審査型が多く、事業計画の内容や政策目的との合致が重要になります。

税理士に相談すれば労務系助成金も申請できますか?

税理士は資金計画、会計処理、税務上の影響、決算書の確認を相談しやすい相手です。一方で、労務系助成金の申請実務は社会保険労務士の専門領域になることがあります。税理士に相談する場合も、必要に応じて社労士との連携が必要か確認するとよいでしょう。

すでに設備を購入した後でも補助金や助成金の対象になりますか?

制度によって異なりますが、申請前や交付決定前に契約・発注・支払をしたものは対象外になることがあります。業務改善助成金でも、賃上げ計画と設備投資等の計画を立てて申請し、交付決定後に進める流れが基本です。購入前に制度要件を確認することが安全です。

相談前に最低限どの資料を用意すればよいですか?

労務系助成金を検討する場合は、雇用契約書、賃金台帳、出勤簿、就業規則、雇用保険・社会保険の加入状況を用意すると判断しやすくなります。補助金を検討する場合は、決算書、試算表、見積書、資金繰り表、投資内容の説明資料が役立ちます。制度名が決まっていなくても、課題と支出予定を整理しておくことが大切です。

まとめ

  • 助成金は雇用・賃上げ・人材育成などの労務改善、補助金は設備投資・新規事業・DXなどの事業計画に関係する制度が多いです。
  • 労務系助成金では、雇用契約書、賃金台帳、出勤簿、就業規則など、普段の労務管理が重要になります。
  • 補助金では、採択後すぐに入金されるわけではないため、自己資金や借入を含めた資金繰り確認が必要です。
  • 申請前や交付決定前の契約・発注・支払が対象外になる制度もあるため、投資や賃上げの前に確認することが安全です。
  • 税理士に相談する前には、制度名よりも、自社の課題、支出予定、労務書類、会計資料を整理しておくと比較しやすくなります。

参照ソース


この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士・公認会計士・補助金活用コンサルタント

公認会計士 / 税理士 / 認定経営革新等支援機関

補助金活用コンサルタント資金計画支援会計・税務処理設備投資支援

税理士法人 辻総合会計の代表。公認会計士・税理士として、補助金・助成金の申請前確認、資金計画、採択後の会計・税務処理を支援している。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

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