クリニックの開業を検討している医師の方にとって、開業資金がどれくらいになるかは気になると思います。開業資金がどれくらい必要なのかを把握していれば、いつまでにどれくらい用意すべきか、といった資金計画を立てやすくなります。
この記事ではクリニックの開業に必要な資金について、資金の内訳や診療科目ごとの資金の違いなど、知っておきたいポイントについて解説します。
\経営に関する相談は辻総合会計へ/
クリニックの開業資金の内訳
クリニックの開業資金がどのような内訳になっているかについて、以下で見ていきましょう。
初期費用と運転費用
クリニックの開業資金は、大きく分けて初期費用と運転費用の2つで構成されます。
運転費用は、クリニックを経営するにあたり毎月かかる費用のことです。開業直後は経営が軌道に乗るまで時間がかかることが多いので、開業資金に運転費用を含めておくと、安心して開業することができます。
初期費用と運転費用には具体的にどのようなものが含まれるのか、以下で解説します。
物件取得に関する費用
初期費用として最も重要なのが、クリニックとして利用する物件を取得するためにかかる費用です。
土地を購入して新しく建物を建てる他に、賃貸物件を借りるという選択肢もあります。賃貸であれば、一から建てるよりも費用を安く抑えることができますが、仲介手数料や保証金などの初期費用が必要になります。また、内装工事にかかる費用の相場は、一坪につき大体30~60万円程度です。
医療機器や備品に関する費用
診療科目によっても異なりますが、医療機器をどの程度導入するかによっても異なります。
医療機器の数が多い方が高額になりやすいですが、機器によっては1台だけでもかなりの金額になる可能性もあります。最低限の機器を揃えるためにかかる費用は、大体1000万円前後くらいです。
運転費用
運転費用を開業資金に含める場合は、何か月分計上するかを事前に決めておく必要があります。
クリニックの診療報酬は、2か月後に経営者である院長の口座に振り込まれます。そのため、最低でも3か月分以上の運転費用を用意しておく必要があります。
診療科目による開業資金の違い
診療科目によって、開業資金および自己資金に違いが生じることがあります。以下で詳しく解説します。
開業資金は5000万円以上が相場
開業資金は5000万円以上必要となる場合が多いですが、5000万円以下で開業できる場合もあります。
診療科目 | 開業資金の相場 |
内科 | 5000万~8000万円 |
皮膚科 | 2000万~6000万円 |
精神科・心療内科 | 1500万~3000万円 |
上記の例を見ると、内科は5000万円以上が相場となっています。皮膚科は2000万円以上でも開業可能で、精神科・心療内科医ば資金の上限が3000万円以下でも開業可能となっています。ただし、状況に応じて必要な資金が多くなることは十分に考えられます。
内科
内科は、必要な開業資金は5000万~8000万円程度、自己資金は500万~1600万円程度になります。
一般内科なのか、消化器内科や腎臓内科など専門的な内科なのかで、資金の額が変わります。専門的な内科であれば専門的な診療を行うための設備が必要になります。医療機器の導入の他にも、検査のためのスペースも必要になるので、一般内科よりも資金が高額になる傾向にあります。
整形外科
整形外科は、必要な開業資金は5000万~9000万円程度、自己資金は500万~1800万円程度になります。
クリニック内でのリハビリテーションをどの程度行うかによって、資金が大きく変動します。リハビリには理学療法士や作業療法士が必要になるので、人材確保について考えることも重要です。どのようなリハビリ設備にするかが、どれくらい資金が必要かの目安になります。
耳鼻咽喉科
耳鼻咽喉科は、必要な開業資金は5000万~8000万円程度、自己資金は500万~1600万円程度になります。
聴力検査のために防音室が必要となるので、大きなスペースを要することが多いです。クリニック内で中耳炎や副鼻腔炎などの手術を行う場合は、手術に必要な設備を準備する必要があります。
皮膚科
皮膚科は、必要な開業資金は2000万~6000万円程度、自己資金は200万~1200万円程度になります。
皮膚科は、保険診療であれば高額な医療機器を使う必要がないため、設備費を節約することができます。しかし、美容皮膚科の分野の治療も行う場合はレーザー機器などを導入するため、必要な開業資金が増加します。特に美容皮膚科専門のクリニックを開業する場合は、様々な医療機器が必要になり、開業資金が1億円を超える可能性もあります。
眼科
眼科は、必要な開業資金は5000万~7500万円程度、自己資金は500万~1500万円程度になります。
眼科の場合は、手術を行うかどうかで必要となる資金が大きく変わります。手術を行う場合、設備代が数千万円プラスされると考えた方がいいでしょう。いざという時に総合病院に紹介できる体制を整えていれば、手術用の設備は必須という訳ではありません。
泌尿器科
泌尿器科は、必要な開業資金は3000万~5000万円程度、自己資金は300万~1000万円程度になります。
どのような医療機器を導入するかによって、必要な資金が変わります。例えば、結石粉砕装置は高額なので、導入する際は資金を準備できるかどうか熟考した方がいいでしょう。泌尿器科は病気の特性上、非常にデリケートな側面があるので、患者が受診をためらうこともあります。目立たない場所などにクリニックを建てると、患者が受診しやすいだけでなく、土地代を安く抑えることもできます。
小児科
小児科は、必要な開業資金は4000万~6000万円程度、自己資金は400万~1200万円程度になります。
他の科と比較すると、導入が必要な医療機器は少ない傾向にあります。小児科は基本的に保護者同伴での来院となるので、クリニック内が非常に混みやすくなります。そのため、待合室を広くしておく必要があります。
産婦人科
産婦人科は、必要な開業資金は5000万~6000万円程度、自己資金は500万~1200万円程度になります。
不妊治療や分娩を行うかどうかで、必要な資金が異なります。分娩を行う場合は病床を確保しなければいけないので、必要資金が大幅に上がります。ちなみに上記の開業資金の相場は、分娩を行わない場合の金額です。
精神科・心療内科
精神科・心療内科は、必要な開業資金は1500万~3000万円程度、自己資金は150万~600万円程度になります。
診療に置いて医療機器を使うケースは少なく、導入していないクリニックも珍しくありません。自身の病気について知られたくないと考えている患者も多いので、クリニックの立地はあまり目立たない場所にするなど、工夫が必要です。
クリニック開業時に受けられる融資
開業資金の準備にあたり、融資が必要になる方は多いと思います。クリニック開業時に受けることができる融資について、以下で紹介します。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は、クリニックの開業資金の調達先の候補として、最もメジャーと言えるでしょう。
政府系の金融機関で、低金利で融資を受けることが可能です。融資を受けられる条件は融資によって異なりますが、無担保で利用できる場合もあります。
参照:日本政策金融公庫
銀行や信用金庫
民間の金融機関である銀行や信用金庫では、開業医向けの融資プランを提供していることもあります。
審査は厳しめな傾向にありますが、審査が通れば開業資金だけでなく、運転資金も融資してもらえる可能性があります。金融機関によって条件や融資額がことなるので、事前にチェックしておきましょう。
補助金・助成金
国や地方自治体から受ける補助金・助成金は、クリニックの開業資金として使うことが可能です。
申請には一定の条件が必要ですが、補助金・助成金は基本的に返済不要なのが大きなメリットです。補助金や助成金だけで必要な開業費を全てまかなうことは難しいですが、資金に関する不安の解消につながるという点で、心強い存在となります。
リース会社
リース会社から融資を受けると、融資と同時に医療機器のリースができるので便利です。
他の金融機関などに比べて金利が高くなる傾向にありますが、審査が通りやすいといったメリットもあります。
まとめ
クリニックの開業資金がどれくらい必要かは、診療科目によって様々です。新しく建てるか賃貸にするか、医療機器をどの程度導入するかでも大きく異なります。運転費用も含めた資金計画を行えば、開業資金の準備をスムーズに行うことができるでしょう。クリニックの開業を検討している医師の方は、この記事を参考にして、開業資金の準備に役立てていただけたら幸いです。
クリニック・医院の開業や経営については「辻総合会計」へ
辻総合会計は開業医の医師たちが医業に集中できるように、経営や税務に関するサポートを行います。
大阪にある辻総合会計は、医療分野の開業や承継などのサポートをしてきた豊富な実績と知識がある事務所です。
クリニックをはじめとする医療分野の経営は、医業に強い税理士法人 辻総合会計にぜひお任せください。