相続した不動産の売却手順と税金のポイントについて解説

相続した不動産を売却する際には、通常の不動産取引とは異なる手順や注意点があります。

本記事では、相続不動産の売却に関する基本的な流れから税金の特例まで、詳しく解説します。売却を検討している方や税金対策を知りたい方に役立つ情報を提供します。

この記事からわかること
  1. 相続不動産を売却する際の基本的な流れと必要な手続き
  2. 相続不動産のメリットとデメリット
  3. 相続不動産の売却時に注意すべきポイントとリスク

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目次

相続した不動産を売却する際の基本知識

相続した不動産を売却する際には、以下の3つの基本知識を理解することが重要です。

1. 相続不動産の売却が必要なケース
2. 相続不動産のメリット
3. 相続不動産のデメリット

上記の知識を理解すれば、相続不動産の売却を検討する際の判断材料となり、適切な意思決定ができます。また、売却に伴うリスクや注意点を事前に把握することで、トラブルを回避し、スムーズな売却プロセスを実現することができます。

相続不動産の売却が必要なケース

相続不動産の売却が必要となるケースには、以下のような状況があります。

  1. 相続税の納税資金を確保する必要がある場合
  2. 遠方に住んでいて管理が困難な場合
  3. 複数の相続人で現金化して分配したい場合
  4. 維持費や固定資産税の負担が大きい場合
  5. 空き家となっており、活用の予定がない場合

上記の状況に該当する場合、適切な選択肢として相続不動産の売却の検討が必要になるケースがあります。特に、相続税の納税資金確保のために売却を検討する場合は、相続税の申告期限(相続開始から10ヶ月以内)に注意が必要です。

相続不動産のメリット

相続不動産を保有すれば、さまざまなメリットがあります。1つ目は、資産価値の上昇が期待できる点です。特に都市部や人気エリアに所在する不動産であれば、長期的な視点で資産価値が上がる可能性があります。

2つ目は、賃貸物件として貸し出せる点です。賃貸収入が得られ、固定資産税や維持管理費の支出を補えられます。同時に、将来的に居住用不動産として利用する選択肢も維持できるため、居住地の確保にも役立ちます。

3つ目は、一定の条件を満たす場合、相続税の納税猶予制度を活用でき、相続税負担を軽減できる可能性です。相続不動産は不動産投資の基盤としても活用でき、収益や資産運用の手段としての価値を持っています。

ただし、3つのメリットを最大限に活かすためには、不動産の適切な管理が不可欠です。

相続不動産のデメリット

相続不動産を保有することには、デメリットも存在します。1つ目は、固定資産税や維持管理費がかかるため、保有するだけで一定のコストが発生する点です。

さらに、空き家として放置されている場合、防犯上のリスクも高まります。また、相続税の評価額が高いと、税負担が大きくなる可能性があり、資金的な負担が生じる可能性があります。

2つ目は、不動産市況の変動によっては、資産価値が下落するリスクがともなう点です。また、相続人とのあいだで意見の相違がトラブルの原因となり、売却や管理方針についての合意形成が難しくなる場合もあります。

1つ目のデメリットのように、空き家のまま放置している不動産では、固定資産税や管理費の負担が大きくなるため、デメリットを考慮した上で、売却の是非を慎重に判断することが重要です。

相続した不動産を売却する流れ

相続した不動産を売却する際には、以下の4つのステップを踏む必要があります。

  1. 遺産分割協議と相続登記
  2. 相続登記の義務化と名義変更手続き
  3. 不動産会社への依頼と売却活動の開始
  4. 売買契約締結から譲渡完了までの流れ

上記のステップを理解し、適切に進めることで、スムーズな相続不動産の売却ができます。また、各ステップにおける注意点や必要な書類を事前に把握できれば、トラブルを回避し、効率的に売却プロセスを進められます。

売却のステップ①:遺産分割協議と相続登記

相続不動産の売却プロセスの1つ目は、遺産分割協議と相続登記です。相続人全員で遺産分割協議を行い、不動産の帰属を決定します。

次に、合意内容を反映した遺産分割協議書を作成し、すべての相続人から署名と捺印を得ます。その後、相続登記に必要な書類である戸籍謄本や遺産分割協議書などを準備し、法務局に相続登記の申請を行います。

最後に、登記完了証を受け取ることで、相続登記の完了を確認します。遺産分割協議には相続人全員の合意が必要であり、協議を円滑に進めることが重要です。また、相続登記は売却手続きの前提条件となります。

売却のステップ②:相続登記の義務化と名義変更手続き

2024年4月1日から相続登記が義務化されたことに伴い、以下3つの点に注意が必要です。

1. 相続開始を知った日から3年以内に相続登記を行う必要がある
2. 義務を怠ると過料(10万円以下)が科される可能性がある
5. 相続登記の義務化に伴い、専門家への相談需要が増加している

相続登記の義務化により、不動産の名義変更を迅速に行うことが求められており、相続不動産の売却プロセスもスムーズに進めやすくなると考えられます。

参照:所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し(民法・不動産登記法等一部改正法・相続土地国庫帰属法)|法務局

売却のステップ③:不動産会社への依頼と売却活動の開始

不動産会社に依頼し、売却活動を開始する際には、いくつかのステップを踏むことが重要です。

まず、複数の不動産会社に査定を依頼し、適正な売却価格を把握後、売却を依頼する不動産会社を選定し媒介契約を締結します。選定した不動産会社は、物件情報の整理と販売戦略の立案を行い、物件情報をウェブサイトや広告を通じて公開し、買主候補を募集します。

内見希望者への対応や価格交渉は不動産会社の担当です。不動産会社の選定は、売却のスピードや成約価格に大きく影響するため、慎重に行うことが求められます。また、相続不動産の売却経験が豊富な不動産会社を選択すれば、スムーズな売却プロセスが期待できます。

売却のステップ④:売買契約締結から譲渡完了までの流れ

売買契約締結から譲渡完了までの流れは以下のとおりです。

1. 買主との価格交渉が成立し、売買契約を締結する
2. 買主が手付金を支払い、残金の支払いまでのスケジュールを決定する
3. 必要に応じて、残置物の撤去や簡単な修繕を行う
4. 決済日に、残金の支払いと引き渡しを同時に行う
5. 所有権移転登記を行い、譲渡完了となる

売買契約締結後は、決済日までのスケジュール管理が重要です。また、譲渡所得税の確定申告や相続税の修正申告が必要となる場合があるため、税理士への相談も検討しておくことをおすすめします。

相続不動産の売却で注意すべき点とリスク

相続不動産の売却には、以下の3つの注意点とリスクがあります。

1. 最適な売却タイミングと早期売却のリスク
2. 売却価格が下がる可能性とその回避策
3. 不動産の管理コストや維持費負担と売却判断

上記を適切に対処できれば、相続不動産の売却におけるリスクを最小限に抑えられます。また、専門家のアドバイスを受けながら、慎重に売却を進めることも重要です。

最適な売却タイミングと早期売却のリスク

相続不動産の売却タイミングについては、以下の点に注意が必要です。

1. 相続開始から3年以内の売却が税制上有利な場合がある
2. 不動産市況や季節性を考慮して売却時期を選ぶ
3. 早期売却は相続税の納付には有効だが、価格面でのリスクがある
4. 相続人間の合意形成に時間がかかる場合は、売却が遅れる可能性がある
5. 売却を急ぐあまり、適正価格を下回る価格で売却してしまうリスクがある

相続開始から3年以内の売却であれば「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」が適用できる可能性があります。一方で、早期売却にこだわりすぎると、適正価格での売却機会を逃す可能性もあるため、バランスの取れた判断が求められます。

参照:No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例|国税庁

売却価格が下がる可能性とその回避策

相続不動産の売却には、価格下落のリスクがあります。適正な価格で売却するためには、不動産市況の動向を注視し、最適な売却タイミングを見極めることが重要です。同時に、物件の価値を維持・向上させるために、適切なリフォームや修繕を行うことも効果的と言えます。

価格設定の際には、複数の不動産会社に査定を依頼し、市場価値を正確に把握することが欠かせません。さらに、専門家による不動産鑑定評価を取得すれば、客観的で根拠のある価格設定ができ、不当に安い価格での売却を防ぐ上で重要な役割を果たします。

一方で、相続人間での意思決定の遅れは、価格下落のリスクを高める要因です。特に、空き家として放置されている相続不動産の場合、時間の経過とともに建物の劣化が進み、売却価格の下落を招く可能性が高くなります。

相続人間で迅速な合意形成を図り、適切な維持管理を行いながら、タイムリーな売却判断が極めて重要です。適切な対策を総合的に講じることで、相続不動産の価値を最大限に維持しながら、適正な価格での売却が実現できます。

不動産の管理コストや維持費負担と売却判断

相続不動産の売却を判断する際には、管理コストや維持費の負担を十分に考慮することが重要です。例えば、固定資産税や都市計画税などの税金負担の把握が挙げられます。これに加えて、建物の修繕費や管理費、空き家の場合には警備費用なども試算し、総合的なコストの把握が必要です。

賃貸収入がある場合には、収支バランスも考えなければなりません。将来的な不動産価値の変動予測を行うことで、長期的な視点からの判断材料が得られます。さらに、相続人それぞれの経済状況や将来計画を踏まえたうえで、売却の判断を必要があります。

管理コストや維持費が高額になる場合、長期保有よりも売却を選択するケースが増える傾向にあります。相続人が遠方に住んでいる場合や、複数の相続人で負担を分け合う必要がある場合には、売却を検討する価値があると判断できます。

相続不動産の売却をスムーズに進めるために注意すべきポイント【まとめ】

相続不動産の円滑な売却には、いくつかの重要なポイントがあります。相続人間での早期の意思統一、速やかな相続登記の完了、慎重な不動産会社の選定が基本です。

加えて、事前の税金対策と適切な売却タイミングの見極めも重要です。これらの点に注意を払い、必要に応じて専門家に相談することで、スムーズな売却プロセスが実現できます。適切な準備と対策により、相続人全員が納得できる結果を得ることが可能となるでしょう。

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