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経理BPO・月次決算ブログ
公開日:2026.05.21
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士・公認会計士・経理BPOコンサルタント

クラウド会計を入れても経理が回らない理由

11分で読めます
クラウド会計を入れても経理が回らない理由

freeeやマネーフォワードを導入しても経理が回らない会社は、ソフトの選定を間違えたというより、運用設計が未整理のまま使い始めていることが多いです。クラウド会計は銀行明細やクレジットカード明細の取得、仕訳候補の作成、請求・経費精算との連携を助けますが、資料回収、承認、勘定科目の判断、月次締めの責任者まで自動で整えてくれるわけではありません。

特に、経理担当者が少ない中小企業では「クラウド会計を入れたから経理が楽になるはず」と考えて導入したものの、実際には未処理明細、証憑不足、二重入力、締め日の遅れが残り、月次決算がかえって見えにくくなることがあります。クラウド会計導入後の失敗原因は、ツールではなく、業務フロー・権限・チェック体制の不足にあります。

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連携設定、勘定科目、証憑保存、未処理データを確認し、運用改善の順番を整理します。

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クラウド会計を入れても経理が回らない主な理由

クラウド会計は、経理業務の一部を効率化する仕組みです。しかし、会社の中で「誰が、いつ、どの資料を、どの状態で確認するか」が決まっていなければ、未処理が積み上がります。

よくある原因は次のとおりです。

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起きている状態表面上の問題本当の原因
銀行明細が未処理のまま残る自動連携しているのに仕訳が増えない摘要だけでは内容判断できず、証憑確認が必要
請求書・領収書が見つからない入力担当者が止まる資料提出ルールが決まっていない
自動仕訳が毎月バラつく試算表の数字が信用できないルール登録の見直しがされていない
月次締めが遅い経営判断に使えない締め日と責任者が曖昧
税理士への確認が毎月後手になる修正が多い社内処理と専門判断の境界が不明確

クラウド会計は、明細を取得して仕訳候補を出すことは得意です。一方で、取引の実態、税区分、役員関連取引、立替精算、資産計上の判断は、人が確認する必要があります。実務上の注意点として、クラウド会計の「自動」は、経理判断の完全自動化ではありません。

ここがポイント
クラウド会計の導入効果は、ソフト単体ではなく、資料回収、承認、入力、チェック、月次報告までの流れをセットで整えたときに出やすくなります。

freee・マネーフォワードで止まりやすい業務

freeeやマネーフォワードを使っていても、会社によって止まりやすい箇所は異なります。重要なのは、どの画面で止まっているかではなく、どの業務工程で止まっているかを確認することです。

代表的な停止ポイントは、次の4つです。

資料回収で止まる

領収書、請求書、通帳コピー、カード明細、売上資料がそろわないと、経理処理は進みません。クラウド会計に銀行明細が連携されていても、支払先名や摘要だけでは、広告費なのか、外注費なのか、備品なのか判断できないことがあります。

この段階で必要なのは、経理担当者の努力ではなく、資料提出のルール化です。たとえば、毎月何日までに、誰が、どのフォルダへ、どの形式でアップロードするのかを決めます。

自動仕訳の確認で止まる

自動仕訳は便利ですが、最初に登録したルールが不正確だと、間違った仕訳が繰り返されます。特に、同じ支払先でも内容が毎月変わる取引、個人立替、役員カード、複数部門で使う経費は注意が必要です。

自動仕訳ルールの放置は、月次決算の精度を落とす原因になります。便利だからこそ、定期的な見直しが必要です。

承認・確認で止まる

経理担当者が入力できても、社長や部門責任者の確認が遅れると月次は締まりません。特に、少人数の会社では「これは社長に聞かないと分からない」という取引が多く、確認待ちが経理のボトルネックになります。

実務上の注意点として、確認事項はチャットや口頭で散らばらせず、未確認リストとして残すことが重要です。後から見返せない確認は、翌月も同じ質問を生みます。

税務判断で止まる

消費税区分、インボイス、固定資産、役員関連取引、交際費、給与課税の可能性がある支出などは、単純な入力作業では処理しきれません。現場で判断が難しい取引は、税理士や外部経理担当に確認する流れを決めておく必要があります。

経理が回らない会社に共通する運用不全

クラウド会計導入後に経理が止まる会社には、いくつか共通点があります。次のチェック項目に複数当てはまる場合、ソフトの使い方ではなく、経理体制そのものを見直す段階です。

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チェック項目該当する場合のリスク
月次締め日が決まっていない試算表が毎月遅れ、資金繰り判断が後手になる
未処理明細の担当者が決まっていない誰も処理せず、月末にまとめて混乱する
領収書・請求書の保存場所が複数ある証憑確認に時間がかかり、入力漏れが増える
社長確認が口頭中心になっている判断履歴が残らず、同じ確認が繰り返される
税理士に渡す前のチェックがない修正依頼が多く、月次が遅くなる
経理担当者しかルールを知らない退職・休職時に業務が止まる

特に危険なのは、経理担当者の経験や記憶に頼っている状態です。クラウド会計を使っていても、処理ルールが文書化されていなければ、担当者が不在になった瞬間に業務が止まります。属人化したクラウド会計は、紙の経理と同じように引き継ぎリスクがあります。

改善するときはソフト変更より先に業務分解をする

経理が回らないと、「freeeからマネーフォワードへ変えた方がよいのか」「別のソフトにした方がよいのか」と考えがちです。しかし、運用不全の原因が資料回収や承認フローにある場合、ソフトを変えても同じ問題が残ります。

まずは、経理業務を次のように分解して確認します。

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工程確認すること改善の方向性
資料回収どの資料が毎月遅れるか提出期限・保存場所・担当者を決める
明細連携銀行・カード・決済サービスが連携できているか連携漏れと重複登録を確認する
仕訳処理自動ルールが正しく機能しているかルール登録と例外処理を見直す
確認誰の確認で止まるか未確認リストを作る
月次締め何営業日で試算表を出すか締め日とチェック項目を固定する
報告経営者が何を見たいか資金繰り、利益、未収未払を整理する

この分解をすると、社内で対応できる作業と、外部に任せた方がよい作業が見えます。たとえば、資料回収は社内でルール化し、仕訳処理と月次チェックは外部に任せる、といった切り分けができます。

ここがポイント
クラウド会計の改善は「入力を早くすること」だけではありません。経営者が月次の数字を見て、資金繰りや利益改善の判断ができる状態にすることが目的です。
経理BPOで月次と資料整理を止めない

外注を検討すべきタイミング

クラウド会計の運用不全は、社内の工夫で改善できる場合もあります。一方で、経理担当者が不足している、月次が常に遅れる、税理士への確認前に資料が整わない場合は、経理BPOや記帳代行を検討するタイミングです。

外注を検討すべき目安は次のとおりです。

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状況外注検討の目安
未処理明細が毎月残る入力・確認フローを外部と分担する
月次試算表が翌月中旬以降になる月次締めスケジュールを再設計する
経理担当者が1人しかいない退職・休職時のバックアップを作る
社長が経理確認に時間を取られすぎる確認項目を整理し、例外だけ社長判断にする
税理士への資料提出が毎月遅い会計入力前の資料整理から支援を受ける

外注すべき範囲は、会社ごとに異なります。すべてを外に出す必要はありません。請求書発行は社内、支払管理も社内、記帳と月次チェックは外部、という分担も可能です。

実務上の注意点として、外注前には「現在どこで止まっているか」を整理しておくと、相談時に見積もりや支援範囲が明確になります。逆に、業務範囲が曖昧なまま依頼すると、外部に任せても確認待ちが残ることがあります。

専門家に相談する前に整理する資料

クラウド会計の運用改善を相談する前に、次の資料を整理しておくと、現状把握が早くなります。

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資料・情報確認目的
利用中の会計ソフト名freee、マネーフォワードなどの運用状況確認
銀行口座・カード一覧明細連携の漏れや重複確認
請求書・領収書の保存場所証憑回収フローの確認
月次試算表の作成時期締めスケジュールの把握
未処理明細の件数ボトルネックの特定
経理担当者の業務一覧社内対応と外注範囲の切り分け
税理士への提出資料月次・決算前の連携状況確認

相談時には、ソフトの画面だけでなく、社内の経理フローも確認します。クラウド会計の設定、証憑保存、消費税区分、部門管理、支払管理、請求管理がつながっているかを見ることで、改善すべき順番が見えます。

よくある質問

freeeやマネーフォワードを入れたのに経理が楽にならないのはなぜですか?

クラウド会計は明細連携や仕訳候補の作成を効率化しますが、資料回収、内容確認、税務判断、月次締めの責任者までは自動で決めてくれません。経理が楽にならない場合は、ソフトよりも業務フローが未整理の可能性があります。

会計ソフトを変えれば経理は回るようになりますか?

ソフト変更で改善する場合もありますが、原因が資料不足や確認待ちにあるなら、別のソフトに変えても同じ問題が起きます。まずは、どの工程で止まっているかを確認することが先です。

クラウド会計を使っていても経理代行は依頼できますか?

依頼できます。むしろ、クラウド会計を使っている会社ほど、外部と画面や資料を共有しやすく、記帳、月次チェック、未処理明細の整理を分担しやすいです。ただし、社内でしか分からない取引内容の確認ルールは必要です。

どの段階で専門家に相談すべきですか?

未処理明細が毎月残る、月次試算表が遅い、経理担当者に業務が集中している、税理士への提出が遅れる場合は相談の目安です。早めに現状を整理すれば、すべてを外注するのではなく、必要な部分だけを切り出せます。

まとめ

  • freee・マネーフォワードを導入しても、資料回収や確認フローが未整理だと経理は止まります。
  • クラウド会計の自動化は、経理判断の完全自動化ではなく、ルール設計と確認体制が必要です。
  • 経理が回らない原因は、未処理明細、証憑不足、自動仕訳ルールの放置、社長確認待ちに表れます。
  • ソフト変更の前に、資料回収、仕訳処理、確認、月次締め、報告の工程を分解することが重要です。
  • 社内で抱えきれない場合は、記帳代行、月次決算支援、経理BPOとして外部に任せる範囲を整理すると改善しやすくなります。

参照ソース


この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士・公認会計士・経理BPOコンサルタント

公認会計士 / 税理士 / 認定経営革新等支援機関

経理BPOコンサルタント月次決算支援記帳代行・経理代行クラウド会計運用支援

税理士法人 辻総合会計の代表。公認会計士・税理士として、経理BPO、月次決算、紙資料整理、クラウド会計運用を中小企業向けに支援している。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

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