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公開日:2026.05.21
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士・公認会計士・経理BPOコンサルタント

月次決算が遅い会社の原因と改善手順

12分で読めます
月次決算が遅い会社の原因と改善手順

月次決算が遅い会社では、単に経理担当者の作業が遅いのではなく、請求書、領収書、通帳、カード明細、給与、在庫、売上確定などの情報が月初に集まらない仕組みになっていることが多いです。経営者や経理責任者が10営業日以内に数字を見たい場合は、入力作業のスピードだけでなく、月初何営業日目に何を締めるかを決め直す必要があります。

月次決算の早期化は、完璧な決算書を毎月作ることではありません。資金繰り、利益、固定費、未回収債権、納税見込みを早めに把握し、経営判断に使える数字を出すことが目的です。この記事では、月次決算が遅れる原因と、10営業日以内に試算表や月次レポートを出すための見直し手順を整理します。

月次決算・試算表の個別相談

この記事の内容を、月次決算の早期化と数字管理に落とし込む相談をする

締め日、証憑回収、試算表、資金繰り表まで、月次で止まっている箇所を整理します。

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月次決算が遅い会社で起きていること

月次決算が遅い会社では、経理処理そのものよりも、処理前の情報収集で止まっているケースが目立ちます。たとえば、月末を過ぎても請求書が未発行、領収書が社内に散在、カード明細の用途が不明、売上計上の基準が部署ごとに違うといった状態です。

経営者側から見ると「試算表が出てこない」という問題に見えますが、経理側から見ると「判断に必要な資料がそろっていない」「不明点を確認する相手が決まっていない」という問題です。ここを整理しないまま会計ソフトや外注先だけを変えても、月次決算は早くなりません。

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遅れる場面よくある原因影響
資料回収領収書、請求書、通帳、カード明細が月初に集まらない入力開始が遅れる
売上確定請求締め、検収、入金消込のルールが曖昧売上・売掛金が確定しない
支払確認買掛金、未払金、口座振替の把握が遅い資金繰り表と試算表がずれる
給与・人件費勤怠締め、給与データ連携が遅い利益の見込みが大きく変わる
在庫・原価棚卸や仕入計上の基準が毎月変わる粗利が読めない
承認・質問不明取引の確認先が決まっていない経理担当者の手元で止まる

実務上の注意点は、月次決算の遅れを「経理部門だけの責任」にしないことです。営業、購買、現場、代表者の経費精算まで含めて、会社全体の締め作業として設計する必要があります。

10営業日以内に数字を出すための目安

10営業日以内に月次の数字を出すには、月初から順番に作業するだけでは間に合いません。月末前から準備できるもの、月初3営業日以内に集めるもの、5営業日以内に仮締めするもの、10営業日以内に経営判断用として確定させるものに分けることが重要です。

ここがポイント
月次決算の早期化では、税務申告用の決算と同じ精度を毎月求めるよりも、経営判断に必要な数字を早く固定する考え方が有効です。未確定部分は「仮計上」「概算」「翌月調整」のルールを決めておくと、試算表の提出が止まりにくくなります。

たとえば、以下のように営業日ごとの締めを決めます。

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期限主な作業目標
月末前請求予定、給与予定、固定費、借入返済予定を確認月次の大枠を先に把握する
1〜3営業日通帳、カード、領収書、請求書、売上資料を回収入力できる状態にする
4〜6営業日会計入力、入金消込、未払計上、給与計上試算表の原案を作る
7〜8営業日不明点確認、部門別確認、資金繰り確認経営判断に必要な修正を行う
9〜10営業日試算表、月次レポート、納税・資金繰り見込みを共有経営会議で使える数字にする

10営業日以内を目標にする場合、全取引を完全に確認してから入力するのではなく、重要性の高い取引から優先順位を付けます。金額が大きい売上、主要仕入、給与、借入返済、税金、役員貸付・借入などを先に確認し、少額経費の細かな分類で月次全体を止めない運用が現実的です。

遅れの原因を資料・入力・確認に分ける

月次決算が遅い原因は、大きく「資料が来ない」「入力が進まない」「確認で止まる」の3つに分けられます。原因を分けずに「もっと早く処理してほしい」と伝えるだけでは、改善策が見えません。

まず確認すべきは、資料回収の遅れです。紙の領収書が社長の財布や営業車に残っている、請求書がメール、郵送、クラウド、LINEなどに分散している、通帳コピーが月末後にまとめて届く、といった状態では、経理担当者が作業を始められません。ここは資料の入口を一本化することが先です。

次に、入力ルールのばらつきがあります。摘要の書き方、勘定科目、補助科目、部門、税区分、インボイス確認、立替経費の扱いが毎月変わると、確認作業が増えます。特に消費税の課税区分やインボイス関係の確認は、後からまとめて直すと負担が大きくなります。

最後に、確認フローの問題です。不明点を誰に聞くのか、いつまでに返答するのか、返答がない場合に仮処理してよいのかが決まっていないと、月次決算は止まります。実務上の注意点として、確認待ちの一覧を作っても、返答期限と判断権限がなければ改善にはつながりません。

月次決算を早めるためのチェックリスト

月次決算の早期化では、最初から大きなシステム変更をするより、現在の詰まりをチェックリストで洗い出す方が効果的です。以下の項目に複数当てはまる場合は、経理体制、外注範囲、クラウド会計の使い方を見直すタイミングです。

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チェック項目確認すること改善の方向性
月初3営業日以内に資料が集まらない誰が、何を、どこへ提出するか決まっているか提出先と期限を固定する
請求書発行が月初にずれ込む売上確定の責任者がいるか請求締め日を前倒しする
領収書の用途確認が多い使途、相手先、参加者の記録があるか経費精算ルールを統一する
カード明細の不明取引が多い利用者別に明細確認できるかカード利用ルールを決める
税区分の修正が多いインボイスや軽減税率の確認方法があるか取引先・科目ごとの処理基準を作る
試算表を見ても判断できない売上、粗利、固定費、資金繰りが見えるか月次レポートの形式を見直す
担当者しか分からない処理があるマニュアルや処理履歴があるか属人化している作業を外に出す

**重要なのは、月次決算を早める目的を明確にすることです。**銀行提出用なのか、資金繰り判断なのか、部門別損益の確認なのか、納税予測なのかによって、優先して締める数字が変わります。

ここがポイント
月次決算が遅い会社ほど、会計ソフトへの入力後に経営者が初めて数字を見る傾向があります。早期化するには、入力前の資料回収と入力後のレビューだけでなく、月中から売上・支払・資金繰りの見込みを共有する仕組みも必要です。
経理BPOで月次と資料整理を止めない

経理BPOで改善しやすい業務と社内に残す業務

月次決算を10営業日以内に近づける方法として、経理BPOや記帳代行を使う選択肢があります。ただし、すべてを外に出せば早くなるわけではありません。外注しやすい業務と、社内で判断すべき業務を分ける必要があります。

外注しやすいのは、資料整理、会計入力、通帳・カード明細の処理、請求書や領収書の整理、月次試算表の作成、定型レポートの作成などです。逆に、売上計上の最終判断、部門別の責任者確認、取引の実態判断、資金繰り上の優先順位、経営判断は社内で決める必要があります。

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業務BPO化しやすさ社内で必要な対応
領収書・請求書の整理高い月初の提出期限を守る
通帳・カード明細の入力高い不明取引の回答担当を決める
売掛金・買掛金の消込中程度請求・入金のルールを共有する
給与仕訳の反映中程度給与締めと支給データを渡す
在庫・原価の反映中程度棚卸や原価計算の基準を決める
経営判断・資金繰り判断低い経営者・責任者が確認する

外注で早くなる部分は、判断が定型化できる作業です。一方で、社内の意思決定が遅いままだと、外注先も確認待ちになります。実務上の注意点として、経理BPOを検討する前に、月次で必要な資料、提出期限、確認担当者、承認期限を整理しておくと、導入後の効果が出やすくなります。

月次決算を経営判断に使うための見直しポイント

月次決算は、税務申告のためだけでなく、経営判断のために使うものです。試算表が出ても、売上総利益、固定費、資金繰り、借入返済、納税見込みが分からなければ、早期化の効果は限定的です。

特に中小企業では、利益が出ていても資金が不足することがあります。売掛金の回収遅れ、在庫の増加、前払い、借入返済、税金納付が重なると、損益計算書だけでは判断できません。そのため、月次決算では試算表だけでなく、資金繰り表や未回収リストも合わせて確認することが大切です。

月次で確認したい数字は、次のように整理できます。

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確認項目見る理由
売上高前月、前年同月、計画との差を確認する
売上総利益粗利率の悪化や原価上昇を確認する
固定費人件費、家賃、システム費などの増加を確認する
営業利益本業で利益が出ているか確認する
売掛金回収遅れや請求漏れを確認する
買掛金・未払金支払予定と資金繰りを確認する
借入返済・税金今後の資金流出を確認する

**月次決算が早くなるほど、対策を打てる時間が増えます。**たとえば、固定費の増加、粗利率の低下、回収遅れを翌月上旬に把握できれば、月内に支払条件、請求管理、経費削減、資金調達の検討ができます。

よくある質問

月次決算は何営業日以内を目標にすべきですか?

中小企業では、まず10営業日以内を現実的な目標にすると取り組みやすいです。すでに資料回収や請求締めが整っている会社であれば、5営業日以内を目指すことも可能です。最初から短すぎる期限を設定するより、遅れている工程を特定して段階的に早める方が定着します。

月次決算が遅い場合、会計ソフトを変えれば改善しますか?

会計ソフトの変更だけで改善するとは限りません。資料提出、確認担当、入力ルール、承認期限が曖昧なままだと、新しいソフトでも同じ場所で止まります。ソフト変更を検討する前に、どの工程で何日止まっているかを確認することが重要です。

経理担当者が少ない会社でも10営業日以内にできますか?

可能ですが、すべてを社内担当者が抱える形では限界があります。紙資料の回収、入力、確認、レポート作成を分け、定型作業は外注やクラウド連携で軽くする必要があります。特に一人経理の場合は、担当者の頑張りに依存しない仕組みにすることが大切です。

月次決算を早める前に準備する資料は何ですか?

通帳明細、カード明細、売上資料、請求書、領収書、給与データ、借入返済予定、税金や社会保険の支払予定を整理します。業種によっては在庫表、工事台帳、案件別原価、部門別売上も必要です。資料名だけでなく、提出期限と提出方法まで決めておくと月次決算が止まりにくくなります。

まとめ

月次決算が遅い会社は、入力作業だけでなく、資料回収、売上確定、確認フロー、承認体制に原因があることが多いです。10営業日以内に数字を出すには、月初に全作業を始めるのではなく、月末前から締め作業を設計する必要があります。

  • 月次決算の遅れは、資料不足、入力ルールの不統一、確認待ちに分けて原因を確認する
  • 10営業日以内を目指すなら、月初3営業日以内の資料回収と5〜6営業日目の仮締めが重要
  • 少額経費の分類より、売上、粗利、給与、資金繰り、税金など経営判断に影響する数字を優先する
  • 経理BPOを使う場合は、外注できる定型業務と社内で判断すべき業務を分ける
  • 試算表だけでなく、資金繰り、未回収、支払予定まで確認できる月次レポートにすると効果が高い

月次決算の早期化は、経理担当者に急がせることではなく、会社全体の締め方を変える取り組みです。まずは、現在の月次決算が何営業日目にどこで止まっているかを見える化し、資料回収、入力、確認、報告の順に改善していくことが現実的です。


参照ソース

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士・公認会計士・経理BPOコンサルタント

公認会計士 / 税理士 / 認定経営革新等支援機関

経理BPOコンサルタント月次決算支援記帳代行・経理代行クラウド会計運用支援

税理士法人 辻総合会計の代表。公認会計士・税理士として、経理BPO、月次決算、紙資料整理、クラウド会計運用を中小企業向けに支援している。

ご注意事項

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