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福祉事業経営コラム
公開日:2026.05.21
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士・公認会計士・中小企業経営コンサルタント

サビ管・児発管不足を防ぐ採用と定着策

11分で読めます
サビ管・児発管不足を防ぐ採用と定着策

サービス管理責任者や児童発達支援管理責任者の採用が難しい理由は、単に求人応募が少ないからではありません。資格要件を満たす人材の母数が限られる一方で、個別支援計画、職員指導、関係機関連携、監査対応などの責任が重く、給与・業務量・裁量のバランスが合わない事業所ほど離職しやすくなります。2026年5月時点では、障害福祉分野全体で人材確保と賃上げが重要課題とされており、サビ管・児発管の不足は「採用広告の問題」ではなく、処遇・業務設計・育成体制の問題として捉える必要があります。

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給与設計、処遇改善、採用条件、労務リスクを、現場体制に合わせて整理します。

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サビ管・児発管が採用できない本当の理由

サビ管・児発管は、障害福祉事業所の運営において配置基準やサービス品質に直結する重要職種です。欠員が出ると、指定基準、人員欠如、加算、監査対応に影響する可能性があるため、経営者にとっては緊急度の高い採用課題になります。

ただし、求人票に「高待遇」「働きやすい職場」と書くだけでは、経験者には響きません。応募者は、給与額だけでなく、現場の混乱度、管理者との役割分担、支援記録や計画作成の負担、職員教育の責任範囲まで見ています。

特に採用に苦戦する事業所では、次のような問題が重なりがちです。

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採用できない原因応募者から見た不安改善の方向性
仕事内容が曖昧どこまで責任を負うのか分からない業務範囲と権限を明文化する
給与が相場より弱い責任に見合わないと感じる処遇改善加算や役職手当を再設計する
管理者との分担が不明現場責任を丸投げされそう管理者・サビ管・児発管の役割を分ける
書類業務が多い残業が常態化しそう記録・会議・モニタリングの仕組みを整える
育成体制がない一人で判断を背負わされそう相談先、会議体、研修計画を用意する

実務上の注意点は、サビ管・児発管を「採用できれば解決」と考えないことです。採用後に業務が集中すれば、数か月で退職し、再び採用費と紹介手数料が発生します。

求人票で伝えるべき条件は給与だけではない

サビ管・児発管経験者が求人票で見ているのは、月給だけではありません。むしろ、経験者ほど「この職場で長く働けるか」を具体的に確認します。

求人票では、次の情報を曖昧にしないことが重要です。

  • サービス種別、定員、利用者層
  • 個別支援計画の作成件数
  • モニタリング、担当者会議、請求関連業務の分担
  • 管理者との兼務の有無
  • 送迎、現場支援、保護者対応、関係機関連携の範囲
  • 残業時間、休日、持ち帰り業務の有無
  • 研修受講、更新研修、外部研修の支援
  • 処遇改善加算による手当や賞与への反映方針

求人票で最も重要なのは「責任と裁量の見える化」です。給与だけを上げても、業務範囲が不明確なままでは応募者は不安を感じます。

ここがポイント
サビ管・児発管の求人では、「経験者歓迎」だけでなく、「個別支援計画は何名分か」「管理者とどう分担するか」「記録・請求・職員指導のどこまでを担当するか」を書くと、応募前のミスマッチを減らせます。

また、求人媒体や人材紹介会社に任せきりにするのではなく、面接時に説明する資料を事前に作っておくことも有効です。事業所の支援方針、1日の流れ、会議体、書類業務のフローを示せると、応募者は入職後の働き方をイメージしやすくなります。

定着しない事業所に多い業務設計の問題

採用できても定着しない事業所では、サビ管・児発管に業務が集中しています。個別支援計画、モニタリング、職員指導、家族対応、相談支援専門員との連携、行政対応、監査資料の整備まで、すべてを一人に背負わせると、早期離職につながります。

特に危険なのは、管理者が経営・請求・シフト・営業を担い、サビ管・児発管が現場全体の問題を一手に引き受ける状態です。この場合、本人は「専門職」ではなく「何でも屋」として疲弊します。

定着のためには、次のような業務分担表を作ることが有効です。

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業務管理者サビ管・児発管現場職員
事業所運営方針主担当相談共有
個別支援計画確認主担当情報提供
日々の支援記録確認指導主担当
職員面談主担当同席・助言対象
請求・加算管理主担当必要情報の確認記録作成
家族・関係機関連携分担主担当または分担必要時同席
監査・運営指導資料主担当支援関連資料を整備記録提出

実務上の注意点として、サビ管・児発管に「現場に入ってほしい」と考える場合でも、計画作成やモニタリングの時間を勤務表上で確保する必要があります。現場支援に入り続けると、書類業務が勤務時間外に回り、残業や持ち帰りの原因になります。

処遇改善加算を採用・定着に活かす考え方

サビ管・児発管不足を解消するには、人件費を単なるコストではなく、稼働率・加算・監査リスクに関わる投資として見る必要があります。給与水準が低いままでは、経験者採用は難しく、未経験者や候補者を育てる余力も生まれません。

障害福祉分野では、処遇改善加算や職場環境改善に関する制度が人材確保・定着の重要な土台になります。2026年5月時点でも、国の資料では障害福祉分野の人材確保、賃上げ、職場環境改善が継続的な論点とされています。

ただし、処遇改善加算を取得していても、職員に伝わっていなければ採用効果は限定的です。求人票や面接では、次のように具体化して説明することが大切です。

  • 基本給、役職手当、資格手当、処遇改善手当の内訳
  • 賞与や一時金への反映方針
  • 経験年数や役割に応じた昇給ルール
  • 更新研修、外部研修、資格取得支援の扱い
  • 職場環境改善として行っているICT化、記録負担軽減、会議時間短縮

処遇改善加算は「申請して終わり」ではなく、採用広報と定着施策に結び付けて初めて効果が出ます。職員にとって分かりやすい給与表やキャリアパスを整えることで、「この事業所で続ける理由」を作れます。

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候補者を育てる仕組みを持つ

経験者採用だけに頼ると、サビ管・児発管不足は長期化します。実務経験、基礎研修、実践研修、更新研修の流れを踏まえ、候補者を計画的に育てる視点が必要です。

自治体の研修案内では、サービス管理責任者等研修には基礎研修、実践研修、更新研修があり、配置には研修修了だけでなく実務経験や相談支援従事者初任者研修の修了等が関係します。要件や取り扱いは指定権者の確認が必要です。

育成計画では、次の項目を整理します。

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確認項目整理する内容
候補者の実務経験相談支援・直接支援の経験年数、日数、職種
研修受講状況基礎研修、実践研修、更新研修、相談支援従事者研修
配置可能時期いつから要件を満たせる可能性があるか
現場で任せる業務アセスメント補助、記録確認、会議参加、計画作成補助
退職リスク給与、負担、家庭事情、キャリア希望

実務上の注意点は、「将来のサビ管候補」と言いながら、研修費用や勤務時間内の学習時間を用意しないことです。候補者に責任だけを期待すると、育つ前に離職します。

ここがポイント
サビ管・児発管候補者は、採用時から「何年後にどの役割を目指すか」を共有しておくと定着しやすくなります。研修受講、現場経験、書類業務、面談同席を段階的に設計しましょう。

採用費をかける前に確認したい経営数字

サビ管・児発管の採用では、紹介手数料や求人広告費が高額になることがあります。そのため、採用単価だけを見て判断するのではなく、欠員による売上機会損失や稼働率低下、加算取得への影響も含めて考える必要があります。

確認すべき数字は次の通りです。

  • 現在の稼働率と、サビ管・児発管不足による受け入れ制限の有無
  • 1人採用した場合に増やせる利用者数、サービス提供量
  • 人件費率、役職手当、処遇改善手当の原資
  • 求人広告費、人材紹介料、採用後の研修費
  • 離職した場合の再採用コスト
  • 加算取得・維持に関わる人員体制

採用費は「高いか安いか」ではなく、採用後に収支が成立するかで判断することが重要です。給与を上げても稼働率が改善し、加算や請求体制が安定するなら、結果的に経営改善につながる場合があります。

一方で、赤字の原因が稼働率不足、請求漏れ、加算未取得、記録不備にある場合、単に高給与で採用しても収支は改善しません。採用活動と同時に、月次の収支、職員配置、加算算定、業務フローを見直す必要があります。

FAQ

サビ管・児発管は給与を上げれば採用できますか?

給与は重要ですが、それだけでは不十分です。経験者は、業務量、責任範囲、管理者との分担、残業、職場の支援方針まで見ています。給与を上げる場合も、役割と評価基準を明確にすることが必要です。

未経験者をサビ管・児発管候補として採用してもよいですか?

将来候補として採用することは考えられますが、配置には実務経験や研修要件があります。採用前に、本人の職歴、研修受講状況、配置可能時期を確認し、指定権者にも確認することが大切です。

人材紹介会社を使うべきですか?

緊急度が高い場合は選択肢になります。ただし、紹介手数料だけで判断せず、採用後の定着可能性を確認する必要があります。求人票、面接資料、業務分担表が整っていない状態で紹介に頼ると、早期離職のリスクがあります。

サビ管・児発管の離職を防ぐ一番のポイントは何ですか?

一番のポイントは、責任を一人に集中させないことです。個別支援計画、職員指導、家族対応、監査資料、現場支援をすべて任せるのではなく、管理者や現場職員との分担を明確にすることが定着につながります。

まとめ

サビ管・児発管不足は、求人広告だけで解決する問題ではありません。採用と定着を同時に考え、事業所の体制そのものを見直すことが必要です。

  • サビ管・児発管の採用難は、資格者不足だけでなく、責任と処遇の不一致が原因になりやすい
  • 求人票では、給与だけでなく業務範囲、裁量、管理者との分担を具体的に示す
  • 定着には、個別支援計画、記録、会議、家族対応、監査資料の業務分担が重要
  • 処遇改善加算は、給与表やキャリアパスに反映し、採用広報にも活用する
  • 経験者採用だけに頼らず、候補者を育てる研修・実務経験の計画を持つ

採用がうまくいかないときは、求人媒体を増やす前に、給与原資、処遇改善加算、業務分担、稼働率、加算取得状況を整理することが大切です。サビ管・児発管が安心して働ける体制は、職員定着だけでなく、利用者支援の質と事業所の収支安定にもつながります。


参照ソース

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士・公認会計士・中小企業経営コンサルタント

公認会計士 / 税理士 / 認定経営革新等支援機関

代表クラウド会計導入支援経理DX支援資金繰り支援

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

ご注意事項

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