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福祉事業経営コラム
公開日:2026.05.21
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士・公認会計士・中小企業経営コンサルタント

社会福祉法人の本部経費配賦方法

11分で読めます
社会福祉法人の本部経費配賦方法

社会福祉法人の本部経費・管理費は、すべてを本部会計に残せばよいわけではありません。理事会、評議員会、法人役員報酬など、本部に帰属することが妥当な経費は本部会計で処理します。一方で、複数の拠点やサービスに共通して発生している費用は、実態に即した合理的な配分基準で各区分へ配賦し、どの基準を使ったかを記録しておくことが重要です。

特に、障害福祉、児童福祉、介護事業を複数運営している法人では、本部経費の扱いによって拠点別の黒字・赤字が大きく変わります。配賦が曖昧なままだと、事業所ごとの収支判断、加算取得後の人件費管理、資金繰り判断、理事会への説明が難しくなります。この記事では、2026年5月時点の実務として、社会福祉法人の本部経費・管理費をどう整理し、どのような基準で配賦すべきかを解説します。

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報酬、加算、人件費、資金繰り、月次管理を、事業所の実態に合わせて整理します。

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本部経費と共通費は分けて考える

まず整理したいのは、「本部経費」と「共通費」は似ていますが、同じではないという点です。

社会福祉法人会計の実務では、本部会計を拠点区分またはサービス区分として設定できます。本部に係る経費としては、理事会・評議員会の運営費、法人役員の報酬など、特定の拠点やサービスに直接属さないものが想定されます。これらは、法人全体を維持するための費用であり、無理に特定の事業へ直接付け替えるものではありません。

一方で、経理担当者の人件費、共通システム利用料、事務所家賃、通信費、車両費、研修費などは、実態として複数の拠点やサービスで利用している場合があります。このような費用は、共通支出及び費用として、合理的な基準で配分することを検討します。

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区分主な内容会計上の考え方
本部経費理事会・評議員会運営費、法人役員報酬、法人全体の管理費本部会計に帰属させることが妥当な費用
共通費経理・総務人件費、共通システム、共用事務所、共通消耗品実態に応じて拠点・サービスへ配賦する費用
個別費各事業所専用の人件費、家賃、備品、利用者支援費発生した拠点・サービスに直接計上する費用

実務上の注意点は、「本部で支払ったからすべて本部経費」と判断しないことです。支払口座や請求書の宛名ではなく、費用の発生原因と利用実態で整理します。

ここがポイント
本部経費の配賦は、節税や利益調整のために行うものではありません。目的は、拠点別・サービス別の実態に近い収支を把握し、理事会や所轄庁への説明に耐えられる会計管理を行うことです。

配賦基準は費用の性質ごとに決める

本部経費・管理費の配賦では、全費用に一律で売上割合を使うと、実態からずれることがあります。たとえば、経理担当者の作業量は収入規模に比例しないこともありますし、家賃や水道光熱費は床面積に近い場合があります。

現行の社会福祉法人会計の実務では、共通支出及び費用について、具体的な科目ごとの配分方法が示されており、それによりがたい場合は実態に即した合理的な方法によることができます。つまり、費用の性質に合った配賦基準を選ぶことが基本です。

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費用の種類配賦基準の例向いているケース
共通人件費勤務時間割合、職種別人員割合、届出人員割合経理・総務・管理者が複数事業を兼務する場合
事務所家賃・水道光熱費建物床面積割合、使用面積割合本部事務所や共用スペースがある場合
通信費・事務消耗品費使用実績、延利用者数割合、給与費割合個別使用額の把握が難しい場合
車両関係費使用高割合、送迎利用者数割合複数サービスで車両を共用する場合
システム利用料ID数、利用事業所数、職員数、収入割合記録・請求・勤怠システムを共用する場合
研修費研修目的、参加者所属、延利用者数割合参加者や対象事業が特定できる場合

たとえば、法人本部の経理職員が就労継続支援、共同生活援助、放課後等デイサービスの請求・経理を担当している場合、勤務時間の記録があるなら勤務時間割合が自然です。記録がない場合でも、月次処理件数、事業所数、職員数、利用者数などを使い、説明可能な基準を定めます。

実務上の注意点は、配賦基準を毎年都合よく変えないことです。事業内容の変更、拠点追加、システム入替など合理的な理由がある場合を除き、一度選択した基準は継続して使う方が説明しやすくなります。

配賦の手順は5段階で整理する

本部経費の配賦は、決算時にまとめて考えると混乱しやすくなります。月次の段階で費用を分類し、期末に見直す流れを作ることが重要です。

1つ目は、勘定科目ごとに費用を一覧化することです。人件費、旅費交通費、通信費、賃借料、保守料、業務委託費、減価償却費など、本部で発生している管理費を洗い出します。

2つ目は、各費用を「本部固有」「共通」「個別」に分けることです。理事会運営費のように本部固有のもの、全事業で利用する会計システムのように共通のもの、特定事業所専用の備品のように個別のものを分けます。

3つ目は、共通費ごとに配賦基準を決めることです。勤務時間割合、床面積割合、延利用者数割合、収入割合、職員数割合などから、費用の発生原因に近い基準を選びます。

4つ目は、配賦計算表を作成することです。総額、配賦対象、配賦基準、各区分への配賦額、端数処理を残します。会計ソフト上の仕訳だけでなく、計算根拠のExcelや資料を保存しておくと、理事会や監査対応で説明しやすくなります。

5つ目は、理事会・決算前に見直すことです。期中に新規事業を始めた、事業所を移転した、管理者の兼務状況が変わった、職員数が大きく変動した場合は、配賦基準の見直しが必要になることがあります。

ここがポイント
配賦計算表には、少なくとも「対象費用」「配賦しない費用」「配賦基準」「基準数値」「配賦額」「作成日」「承認者」を残しておくと、後から説明しやすくなります。

よく使う配賦基準と判断の目安

配賦基準を決めるときは、「簡単だから」ではなく、「費用の発生原因に近いか」で判断します。以下のように、費用の性質と配賦基準を対応させると整理しやすくなります。

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判断したい費用第一候補代替候補確認すべき資料
経理・総務人件費勤務時間割合職員数割合、事業所数割合業務日報、担当表、給与台帳
請求ソフト利用料利用ID数事業所数、請求件数契約書、ID一覧、請求件数
本部事務所家賃使用面積割合職員数割合賃貸借契約書、席配置図
車両費使用高割合送迎利用者数割合運行記録、送迎表
広報費対象事業別収入割合、利用者数割合広告内容、掲載媒体
研修費参加者所属職員数割合研修案内、参加者名簿

たとえば、法人全体の採用広告費を一括で支払った場合でも、求人内容が特定のグループホーム職員だけであれば、その拠点またはサービスの個別費とする方が自然です。反対に、法人全体の採用ブランド広告であれば、職員数割合や採用予定人数割合で配賦する方法が考えられます。

実務上の注意点は、売上割合を使いすぎないことです。売上割合は計算しやすい一方、報酬単価の高いサービスに費用が偏りやすく、実際の管理工数と合わないことがあります。特に障害福祉や児童福祉では、利用者数、職員配置、請求件数、支援時間などの方が実態に近い場合があります。

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配賦しない方がよい経費もある

本部経費を適切に配賦することは大切ですが、何でも配賦すればよいわけではありません。配賦しない方がよい経費、または慎重に判断すべき経費もあります。

たとえば、理事会・評議員会の運営費、法人全体の意思決定に関する費用、法人役員報酬などは、本部会計に帰属させることが妥当な場合があります。また、特定の補助金や委託事業に関する費用は、補助目的や自治体の精算ルールに従って処理する必要があります。

さらに、資金使途に制限がある事業から本部へ資金移動する場合は、単なる費用配賦とは別に、繰入金・貸付金の扱いを確認しなければなりません。年度内返済、明細書の作成、理事会での審査などが問題になるケースもあります。

配賦は収支を整えるための調整ではなく、実態を反映するための会計処理です。赤字拠点を黒字に見せるため、または黒字拠点の利益を減らすために配賦基準を操作すると、後から説明が難しくなります。

決算前に確認したいチェックリスト

本部経費・管理費の配賦は、決算直前だけでなく、月次試算表の段階から確認しておくと精度が上がります。特に複数拠点を運営している法人では、次の項目をチェックしておきましょう。

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チェック項目確認内容
本部経費と共通費を分けているか本部固有の費用と各事業に関係する費用が混在していないか
配賦基準が費用の性質に合っているか人件費、家賃、車両費、システム費で同じ基準を使い回していないか
配賦基準を記録しているか計算表、根拠資料、承認履歴が残っているか
期中の変更を反映しているか新規事業、移転、職員数増減、兼務変更を反映しているか
理事会で説明できるかなぜその基準にしたか、前年と違う点は何かを説明できるか
補助金・委託費の制限を確認したか自治体精算や使途制限に反していないか

実務上の注意点は、配賦後の数字だけを確認しないことです。拠点別の利益率や人件費率が大きく変わった場合は、配賦基準そのものが実態に合っているか、元データに誤りがないかを確認します。

FAQ

本部経費は必ず各拠点に配賦しなければなりませんか?

必ずすべてを配賦するわけではありません。本部に帰属することが妥当な費用は本部会計で処理します。一方、複数の拠点・サービスに共通して発生している費用は、実態に即した合理的な基準で配賦を検討します。

配賦基準は売上割合だけでもよいですか?

売上割合が実態に合う費用であれば使えますが、すべての費用に売上割合を使うのは慎重に判断すべきです。人件費なら勤務時間や職員数、家賃なら床面積、車両費なら使用高など、費用の発生原因に近い基準を選ぶ方が説明しやすくなります。

配賦基準は毎年変更できますか?

事業内容や利用実態が変わった場合は変更できます。ただし、利益調整のように見える変更は避けるべきです。変更する場合は、変更理由、変更前後の影響額、承認記録を残しておくことが重要です。

小規模法人でも配賦計算表は必要ですか?

小規模法人でも、複数拠点・複数サービスを運営している場合は作成しておくことをおすすめします。簡単な表でも、配賦対象、基準、計算結果を残しておけば、決算時や理事会説明で役立ちます。

まとめ

社会福祉法人の本部経費・管理費の配賦では、次の点が重要です。

  • 本部経費、共通費、個別費をまず分類する
  • 共通費は費用の性質に合った合理的な基準で配賦する
  • 勤務時間割合、床面積割合、延利用者数割合、収入割合などを使い分ける
  • 配賦基準と計算根拠を記録し、継続的に使う
  • 決算前だけでなく、月次で拠点別収支と配賦額を確認する

本部経費の配賦が整うと、拠点別・サービス別の収支が見えやすくなり、理事会での説明、事業所別の改善判断、将来の人員配置や投資判断にもつながります。複数事業を運営する社会福祉法人ほど、早い段階で配賦ルールを文書化し、会計処理と経営管理を一致させておくことが大切です。


参照ソース

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士・公認会計士・中小企業経営コンサルタント

公認会計士 / 税理士 / 認定経営革新等支援機関

代表クラウド会計導入支援経理DX支援資金繰り支援

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

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