相続で株式を引継いだ場合、株式の名義変更は税務上、必要な手続きの1つです。
株式の名義変更をせずそのまま放置すると、法的リスクや税務上のトラブル発生の可能性があります。
本記事では、株式の名義変更手続きの方法や期限、名義変更をしない場合のリスクについて解説します。
相続した株式の名義変更方法とは
相続した株式の名義変更は、相続手続きの一環として行う必要があります。
株式の名義変更の必要書類一覧
株式の相続手続きに必要な書類は、以下の表にある7種類が挙げられます。
書類名 | 内容 |
株式名義書換請求書 | 名義変更を行うための基本的な書類。証券会社や株式を発行した会社に提出 |
取引口座引き継ぎの念書 | 証券会社が指定する書類で、相続人が被相続人の口座を引継ぐために使用 |
相続人全員の同意書 | 遺産分割協議が必要な場合、相続人全員の同意を得るための書類 |
相続人全員の印鑑証明書 | 相続人が正式に同意していることを証明するために必要 |
被相続人の戸籍謄本 | 被相続人が相続人に財産を引き継ぐために必要な書類。(出生から死亡まで連続するものが必要) |
相続人の戸籍謄本 | 相続人であることを証明するために必要な書類 |
遺産分割協議書 | 複数の相続人がいる場合、相続財産の分割方法を決定した文書 |
上場株式を相続する場合、証券会社と発行元の会社の両方で手続きを行います。証券会社では、相続人全員の同意書や被相続人の戸籍謄本、遺産分割協議書などが必要です。
一方、非上場株式の名義変更手続きでは、発行企業ごとに異なる書類が必要となるため、事前に発行元に確認する必要があります。
名義変更が必要なケース
名義変更が必要になるのは、株式を正式に相続人が引継ぐ場合です。
相続が発生した際には基本的に名義変更を行う必要があります。例外として、相続人全員が同意し、名義を変更せずに相続財産として一括して管理する場合は名義変更を行わないことも可能です。
ただし、名義変更を行わないまま長期間放置すると、さまざまなリスクがともなうため、可能な限り早めに手続きした方がよいでしょう。
上場株式と非上場株式の株券の名義変更の違い
上場株式では証券会社を通じて手続きを行うと、手続きが比較的スムーズに進みます。
一方で、非上場株式は、発行元企業との直接の手続きが必要です。手順は企業ごとに異なります。また、非上場株式では、株式の取引に制約を設けていることが多く、名義変更手続きの複雑さもあります。
いずれの場合でも、発行元の指示に従って必要な書類を準備し、手続きを進めていきましょう。
株式の名義変更の期限と費用
株式の名義変更には、税務申告を円滑に行うための期限と証券会社によっては費用が発生します。ここでは、以下3点を中心に解説します。
- 株式の名義変更に期限はないが申告納税には期限がある
- 名義変更の費用の目安と手数料の違い
- 名義変更が遅れた場合に発生するリスク
株式の名義変更・申告納税の期限
株式の名義変更は、法的な期限はありませんが、相続税の申告と納税には期限が定められています。
相続開始から10か月以内に相続税の申告を行わなければならず、そのためにも名義変更を早めに完了しておく必要があります。
名義変更が遅れることで、申告手続きに支障が出る可能性があるため、期限内に対応しましょう。
名義変更の手数料
株式の名義変更にかかる費用は証券会社や手続き内容によって異なります。
上場株式の場合、証券会社によって手数料が異なり、非上場株式では発行企業ごとに費用が異なります。
書類作成費用や手数料として、数千円から数万円程度が必要になることが一般的です。また、証券会社により名義変更手数料は無料でも、相続手続きで手数料が発生する場合もあります。
手数料は相続する株式の評価額によって変動することが一般的なため、事前に証券会社や発行企業に確認しておくとよいでしょう。
名義変更が遅れた場合に発生するリスク
名義変更を長期間行わずに放置してしまうと、さまざまなリスクが発生します。
例えば、配当金が受け取れなくなる、株主としての権利を行使できなくなるといった問題です。
また、相続税の申告期限が過ぎてしまうと、税務上のペナルティを受ける可能性もあるため、名義変更は早めに対応することが推奨されます。
名義変更しないとどうなるか
名義変更をしないと、以下3つのリスクと影響が考えられます。
- 株式を放置した場合の法的リスク
- 親子間でも死後に名義変更をしないことで起こり得る税務上の問題
- 株主名簿の更新がされない場合の影響
株式を放置した場合の法的リスク
名義変更を行わずに株式を放置してしまうと、法的リスクが生じます。
例えば、株主名簿が更新されず、配当金の受け取りや株主総会での議決権が行使できなくなるケースです。
また、他の相続人との間で相続権を巡るトラブルが発生する可能性もあります。特に相続財産が複数にわたる場合は注意が必要です。
親子間でも死後に名義変更をしないことで起こり得る税務上の問題
親子間での相続であっても、名義変更を行わないと税務上の問題が発生します。
特に相続税の申告において、株式の名義が被相続人のままであると、税務署が相続財産を適切に把握できず、追徴課税の対象となります。
また、二次相続が発生した場合、相続財産から漏れてしまうケースも否定できません。
株主名簿の更新がされない場合の影響
株式の名義変更が行われない場合、株主名簿が更新されず、株式に関する権利が適切に行使できなくなります。
株主としての権利が制限されるだけでなく、将来的に株式を売却する際にも手続きが複雑になる可能性があります。
名義変更は、株主としての権利を保護するためにも早めに行いましょう。
相続後の株式売却の方法と手続き
株式は相続後であれば、売却あるいは保有のどちらを選択してももんだいありません。ただし、相続後に売却する場合には、手続きが必要です。ここでは、以下の3つを中心に解説します。
- 株式売却に必要な書類と手続きの流れ
- 遺産分割協議と株式の現金化のポイント
- 株式売却後の申告と納税の手続き
株式売却に必要な書類と手続きの流れ
株式を売却する際には、名義変更を済ませておく必要があります。
売却手続きには、株式の評価額を確認し、証券会社を通じて売却の手続きを行います。その際、相続人全員の同意が必要な場合もあるため、遺産分割協議書を用意しておくとスムーズです。
遺産分割協議と株式の現金化のポイント
株式を売却して現金化する場合、遺産分割協議が関わります。
複数の相続人がいる場合、遺産分割協議書に基づいて株式の処分方法を決定します。遺産分割協議が円滑に進まないと、株式の売却が遅れる可能性があるため、早めの話し合いが必要です。
株式売却後の申告と納税の手続き
株式を売却した後は、所得税や住民税の申告が必要です。
売却益が発生した場合、それに応じた税金が課せられるため、証券会社から発行される売却報告書を基に申告を行います。申告期限を守ることで、税務上のトラブルを避けられます。
株式の評価方法と相続税に関する重要事項
株式の相続には、相続税額に関連する評価方法と重要事項があります。ここでは、主に以下3つについて解説します。
- 株式の評価額を決定する方法
- 株式相続にかかる税金の計算方法
- 相続税を軽減するための対策と注意点
株式の評価額を決定する方法
相続に際して、株式の評価額は重要なポイントです。
上場株式の場合、相続開始時の市場価格に基づいて評価されます。一方、非上場株式の場合は、会社の財務状況や利益などに基づいて評価されるため、税理士などの専門家に相談することが推奨されます。
株式相続にかかる税金の計算方法
相続税の計算では、相続した株式の評価額に基づいて課税額を決定します。
評価額が高いほど相続税が多くなるため、遺産分割や名義変更のタイミングを考慮しつつ、適切な税務処理を行うことが求められます。
相続税を軽減するための対策と注意点
相続税を軽減するためには、事前に生前贈与や遺言書の作成を行い、資産を分散させる方法があります。また、専門家に相談し、税務上の適切な対策を講じることが、相続税の負担軽減のポイントです。
生前に親の株式の名義変更を行う3つのメリット
生前に親の株式の名義変更を行った場合、以下の3つのメリットが考えられます。
- 贈与税を抑えながら財産をスムーズに引き継げる
- 相続時のトラブル回避とスムーズな遺産分割を実現
- 株の名義変更にかかる費用や手続きをあらかじめ管理できる
贈与税を抑えながら財産をスムーズに引き継げる
生前に株式の名義変更を行うことで、将来発生する相続税が抑えられるだけではなく、贈与税を抑えながら財産をスムーズに引継ぐげます。
相続時のトラブルを避け、スムーズな遺産分割の実施にも有効です。
相続時のトラブル回避とスムーズな遺産分割を実現
名義変更を生前に行うことで、相続時のトラブルを未然に防止できます。
特に、親族間の争いが起こりやすい相続の場合、事前に財産の整理をしておくことは重要です。以下の資料からも読み取れるように、相続では全国で訴訟にまで発展している件数が多くあります。
株の名義変更にかかる費用や手続きをあらかじめ管理できる
生前に名義変更を行うことで、手続きにかかる費用や時間をあらかじめ把握できます。
どれくらいの時間が必要なのか把握できれば、相続が発生した際の負担を軽減し、スムーズな相続手続きを進めることが可能です。
相続における名義変更で相続人が知っておくべき範囲は広い
生前に名義変更を行うことで、手続きにかかる費用や時間をあらかじめ把握できます。どれくらいの時間が必要なのか把握できれば、相続が発生した際の負担を軽減し、スムーズな相続手続きを進めることが可能です。
株式の相続にともなう名義変更は、上場株式と非上場株式で異なり、手続きの煩雑さや発生する費用もさまざまです。
名義変更を怠ると、法的リスクや税務上の問題が発生する可能性があるため、早めの対応が求められます。相続税の申告や配当金の受け取りを円滑に行うためにも、相続人は適切な手続きを理解し、確実に進めることを推奨します。
生前贈与に関する質問や、相続に関する悩みがある方は、お気軽に辻総合事務所まで問い合わせください。