新型コロナウイルス感染症の影響もあり近年、増加しているオンライン診療。
これからオンライン診療をはじめていきたいと考えている開業医もいるのではないでしょうか。オンライン診療は届出を行うことで、厚生労働省の要件に応えつつ、収益の向上をめざせます。
そこで、この記事ではオンライン診療の開業方法や届出について、オンライン診療のメリットについて紹介します。
近年、注目されている訪問診療の開業については、以下の記事を参考にしてください。
オンライン診療の開業
オンライン診療を開始するためには、施設基準を満たす必要があります。
以下では、オンライン診療の施設基準、届出についてまとめています。
オンライン診療の施設基準
医療機関が基本診療料を算定するためには、基本診療料に関わる施設基準に基づいた届出を提出する必要があります。
情報通信機器を利用して診療を行う際には、適切な診療体制が確立されていることが必要です。また、厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に従う体制を備えている保険医療機関であることが求められます。
【情報通信機器を用いた診療に係る施設基準】
1)情報通信機器を用いた診療を行うにつき十分な体制が整備されているものとして、以下のア〜ウを満たすこと。
ア 保険医療機関外で診療を実施することがあらかじめ想定される場合においては、実施場所が厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」に該当しており、事後的に確認が可能であること。
イ 対面診療を適切に組み合わせて行うことが求められていることを踏まえて、対面診療を提供できる体制を有すること。
ウ 患者の状況によって当該保険医療機関において対面診療を提供することが困難な場合に、他の保険医療機関と連携して対応できること。
2)オンライン指針に沿って診療を行う体制を有する保険医療機関であること。
出典:基本診療料の施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて|厚生労働省
オンライン診療の届出
オンライン診療の届出は、医療機関が患者にオンラインで診療を行う際に厚生労働省に対して行う手続きです。医師と患者が対面せずに診療するため、医療機関は届出を提出し、安全性や適切な診療を確保するための基準を遵守することが求められます。
オンライン診療開業時に提出する書類は、以下の2つです。
届出するメリット
厚生労働省が定めた施設基準を満たして届出を行うことで、医療機関にはメリットがあります。
- 厚生労働省が推奨している
- 収益アップが図れる
厚生労働省は届出の提出を義務付けてはいませんが、診療報酬改定後の施設基準に合った体制の構築に努めることを強く推奨しています。
そのため、オンライン診療をはじめるのであれば、厚生労働省の意向を考慮し、施設基準に適した体制を整えた上で、届出を行うことがおすすめです。
また、届け出た保険医療機関は以下の診療報酬を算定できます。
【情報通信機器を用いた場合の点数】
初診料 | 251点 |
再診料 | 73点 |
外来診療料 | 73点 |
2022年度の診療報酬改定で、オンライン診療の初診における点数が251点になりました。以前の214点と比べて、37点増加しています。
オンライン診療によるクリニックのメリット
対面で診察する方がよいのでは?と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。
ここでは、オンライン診療を行うクリニック側のメリットを紹介します。
メリット①患者さんの少ない時間の収益アップを見込める
診療科や患者層、地域の特性によって大きく異なりますが、一般的なクリニックは午前中のほうが混雑する傾向があります。
逆に、平日の15〜17時くらいは、比較的空いていることが多いです。とくに新型コロナウイルスの感染拡大以降、受診を控える傾向があり、午後の診療時間に患者がほとんど来ず、診療時間を短縮する医療機関もあるようです。
空いている時間帯にオンライン診療を取り入れれば、クリニックの収益を増やすことが期待できるでしょう。
メリット②好きな時間に診療を行える
オンライン診療なら、診療時間を柔軟に設定することができます。
近年、患者のニーズに応じて土日や夜間に診療を行う医療機関が増えてきました。
しかし、土日や夜間に開院する場合、スタッフの確保が難しいことがあります。とくに家庭を持つ看護師は、土日や夜間の勤務を敬遠しがちです。それに、給与の割り増しなどで対応すると、人件費が増加してしまいます。
その点、オンライン診療なら、少ないスタッフで実施でき、場合によっては医師1人だけで行うことも可能です。患者と医師が合意すれば、早朝や深夜に診療を行うこともできるでしょう。
地域の特性などの理由で、土日や夜間の診療ニーズが高いのに、看護師や事務スタッフを確保できず、平日のみ開院しているクリニックは少なくありません。しかし、オンライン診療を導入すれば、土日や夜間の診療が可能になります。
メリット③リピート率が上がる
「仕事や家事などで忙しくなった」や「引っ越しで通院が難しくなった」など、さまざまな理由で通院が困難になる患者さんも少なくありません。
オンライン診療なら、好きな場所で診療を受けることができます。そのため、医療機関側は患者の治療中断を防ぐことが可能です。
オンライン診療による患者のメリット
つぎにオンライン診療による患者側のメリットについても紹介します。
メリット①来院が不要になる
働く世代の患者さんの中には、仕事の都合などで平日にクリニックに行くことが難しい方もいるでしょう。しかし、オンライン診療を利用すれば、来院することなく診察を受けることができるため、平日でも診療を受ける機会が増えます。
また、高齢者の患者さんの場合、足の調子が悪く通院が困難なケースも多いです。オンライン診療を活用することで、通院の負担を軽減することが可能です。さらに、付き添いをしていたご家族の方にとっても、同行の必要がなくなるため、家族の負担も軽減できるでしょう。
そのため、毎回の通院にかかる移動時間が省け、遠くに住んでいる患者さんでも手軽に受診することが可能です。
多くの患者さんが医療機関を選ぶ際、交通の利便性を重視することが多いので、地理的な制約がないことはオンライン診療の大きな利点といえます。また、自宅で診察を受けることで、体力的にも心理的にも負担が軽減され、受診へのハードルを下げることが期待できるでしょう。
メリット②感染のリスクを抑えられる
オンライン診療を導入することで、来院する必要がなくなるため、新型コロナウイルス、インフルエンザ、風邪などの感染を防ぐ効果が期待できます。
近年、新型コロナウイルスの流行に伴って、感染症への懸念が高まっています。とくに、基礎疾患を抱えている方や高齢者の方は、感染すると重症化するリスクがあるため、リスクの高い接触機会をできるだけ減らしたいと考える方も多いでしょう。
新型コロナウイルスやインフルエンザが流行している時期には、感染リスクを最小限に抑えるために、オンライン診療が役立ちます。
メリット③待ち時間が減る
患者さんがクリニックに抱く不満の大半は、待ち時間が長いことだと言われています。対面での診察の場合、予約をしていても、多少の待ち時間が発生するのは避けられません。
一方、オンライン診療では、医療機関が設定した予約時間にビデオ通話が始まるため、待ち時間を大幅に短縮することが可能です。
オンライン診療をはじめるために準備するもの
前述したように、オンライン診療をはじめる際には施設基準を満たす必要があります。また、実際にオンライン診療をはじめるためには、以下の準備が必要です。
- システム
- インターネット
- 機器
システム
オンライン診療システムの導入が必要となります。
オンライン診療システムとは、オンライン診療を行うために必要な予約や決済、Web問診票などがすべて含まれたシステムのことです。
システムを導入することで、予約から決済までを一つのプロセスとしてまとめることができるため、効率的にオンライン診療を行うことが可能となります。
インターネット
オンライン診療を実施するためには、医療機関と患者さんの双方にインターネット環境が必要です。
インターネット接続の契約をする際には、料金だけでなく、通信の強度なども確認しておくとよいでしょう。
機器
パソコンやスマートフォンなどの情報通信機器は、オンライン診療には欠かせないツールです。
これらの機器は、患者さんとのコミュニケーションに使うだけでなく、メモを取ったり次回の診察日を予約したりするなど、さまざまな管理機能も備えています。
まとめ
昨今、新たな診療方法として増え始めたオンライン診療。
オンライン診療では、患者のリピート率の向上や診察時間の柔軟性など、クリニック側のメリットだけでなく、待ち時間の短縮や感染リスクの軽減といった患者側のメリットもあります。
必要な環境を整え、施設基準を満たせば、オンライン診療を始められます。オンライン診療をはじめたいと考えている方は、ぜひ記事を参考に検討してみてください。
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