年末調整は、1年間の所得税の過不足を調整し、正確な税額を確定するために必要な手続きです。しかし、年末調整の書類の作成や準備に必要な書類がわからない、不安に感じる方も多いのではないでしょうか。
本記事では、年末調整の方法や必要な書類の書き方のポイントをわかりやすく解説します。
年末調整とは年税額を精算する手続き
年末調整とは、1年間に納めた所得税の額と実際の税額を調整し、過不足を正す手続きです。年末に会社が従業員の給与や控除に基づいて正確な税額を計算し、税務署に報告します。給与で納めている源泉所得税は税金の前払いであり、年末調整をすることで所得税の過払い分は還付され、不足分は追加徴収されます。従業員は、確定申告を行う必要がない場合がほとんどです。給与所得者にとっては、年末調整が重要な節税手続きとも言えます。
年末調整できる対象者と条件
年末調整はすべての従業員が対象ではなく、一定の条件を満たした従業員のみです。年末調整が必要な人とその対象となる条件について詳しく解説します。
年末調整が必要な人
年末調整は、会社に勤務している従業員のうち、1年間を通じて同じ会社に勤めている場合や、年末時点で勤務している従業員が主な対象です。例えば、アルバイトやパートでも、雇用期間が一定期間を超える場合や、収入が一定額を超える場合には年末調整が必要となります。退職した場合でも、年末に再度雇用された場合などは対象です。
対象となる条件
例えば、給与所得者であり、給与所得控除後の所得が103万円以下ではないことが基本的な条件です。また、複数の会社から給与を受け取っている場合、メインの勤務先でのみ年末調整を行う必要があります。副業をしている場合や、一時的な収入がある場合なども、場合によっては年末調整の対象外となり、別途確定申告が必要です。
年末調整と確定申告の違い
年末調整と確定申告は、どちらも所得税に関する手続きですが、目的がやや異なります。年末調整は会社が従業員に代わって行う手続きで、通常は従業員が自ら税務署に申告する必要はありません。一方で、確定申告は個人が直接税務署に対して行う手続きで、複数の収入源がある場合や医療費控除、寄附金控除などを受ける際には必要です。年末調整で調整しきれない所得や控除がある場合、確定申告が必要と言えます。
年末調整の必要書類
年末調整を行う際には、従業員が会社へ提出する書類と、会社が税務署や市区町村へ提出する書類があります。それぞれの書類を正確に用意し、提出することが重要です。
従業員が会社へ提出する書類
従業員が年末調整に必要な書類として提出するのは、主に「扶養控除等(異動)申告書」「保険料控除申告書」「基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」などです。これらの書類には、控除を受けるために必要な情報を記載するため、記入ミスがないように注意が必要です。
その他、保険料控除を受けるための控除証明書や住宅借入金等特別控除申告書が必要な場合もあります。保険料の控除証明書は、マイナンバーを通じて情報収集できる場合もあるため、スムーズに作業を進めるためにも対応しているか確認しておきましょう。
会社が税務署へ提出する書類
会社は、従業員の年末調整作業完了後、以下の書類を取りまとめ税務署へ提出します。
- 給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表
- 源泉徴収票
- 不動産の使用料等の支払調書
- 報酬、料金、契約金および賞金の支払調書
- 不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書
- 不動産等の譲受けの対価の支払調書
会社が市区町村へ提出する書類
会社は、従業員の年末調整作業完了後、以下の書類を取りまとめ市区町村へ署へ提出します。
- 給与支払報告書(総括表)
- 給与支払報告書(個人別明細書)
自分でできる年末調整に必要な書類の書き方【記入例】
ここでは、実際の申告書の雛形をもとに必要事項について解説します。
扶養控除等(異動)申告書
この申告書(上記は令和6年分)は、給与所得者が扶養控除や配偶者控除などの所得控除を受けるために必要な書類です。主に扶養親族の情報を記入します。
- 基本情報: 勤務先の情報や自分の氏名、住所、マイナンバーなどを記入します。
- 扶養親族の情報: 扶養親族の氏名、マイナンバー、生年月日、続柄などを記入します。
- 障害者、寡婦、ひとり親、勤労学生: 該当する場合はチェックを入れます。
令和5年分に変更があれば修正し、現状の最新情報で令和6年を記載します。
参考:A2-1 給与所得者の扶養控除等の(異動)申告|国税庁
保険料控除申告書
この申告書は、生命保険料、地震保険料、社会保険料、小規模企業共済等掛金の控除を受けるための書類です。
- 基本情報: 勤務先の情報や自分の氏名、住所を記入します。
- 生命保険料控除: 保険会社名、保険の種類、契約者、受取人、支払った保険料などを記入します。
- 地震保険料控除: 地震保険の保険料を記入します。
- 社会保険料控除: 支払った社会保険料を記入します。
- 小規模企業共済等掛金控除: 小規模企業共済やiDeCoなどの掛金を記入します。
基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書
この申告書は、基礎控除、配偶者控除、所得金額調整控除を受けるための書類です。
- 基本情報: 勤務先の情報や自分の氏名、住所を記入します。
- 基礎控除申告書: 自分の所得金額を記入します。
- 配偶者控除等申告書: 配偶者の氏名、マイナンバー、所得金額などを記入します。
- 所得金額調整控除申告書: 23歳未満の扶養親族や特別障害者がいる場合、その情報を記入します。
参考:A2-4 給与所得者の基礎控除、配偶者(特別)控除及び所得金額調整控除の申告|国税庁
年末調整によくあるQ&A
年末調整のときによくある質問について解説します。
年末調整はパートでも必要ですか
パートでも一定の収入があれば年末調整が必要です。年間の収入が103万円を超える場合は、年末調整の対象となります。ただし、103万円以下であっても、源泉徴収されている月があれば、年末調整することで税金が還付されます。
年末調整のやり方がわからないときはどうすればよいですか
年末調整の書き方や手順がわからない場合、まずは会社の総務や経理部門に相談するのが良いでしょう。そのうえで、不明点が解消されない場合には税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
年度途中で退職した場合はどうすればよいですか
年度途中で退職した場合、原則として退職時点で年末調整は行われません。そのため、確定申告を行って精算する必要があります。
年末調整が必要ない人はいますか
年末調整が必要ないのは、主に自営業者や給与所得が一定額に満たない場合、または年間を通じて会社に勤めていない場合です。これらの人は確定申告が必要となります。
わかりやすい申告方法は年末調整と確定申告どっちがいいですか
年末調整は会社が従業員からの申告をもとに行うため、特に複雑な手続きは必要ありません。一方、確定申告は自分で手続きする必要があるものの、医療費控除などの追加の控除を受けたい場合は確定申告を行う方が、税金還付の可能性があります。
年末調整の書き方がわからないときは国税庁のサイトや専門家の活用を検討しよう
年末調整の書き方がわからない場合や、自分では難しいと感じる場合、国税庁のサイトや税理士などの専門家の活用が非常に有効です。特に、税務に関する書類は複雑で、正確な記入が求められるため、誤りがあると追加の税金が発生する可能性もあります。