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介護事業経営コラム
公開日:2026.05.21
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士・公認会計士・中小企業経営コンサルタント

介護事業の資金繰り表の作り方|入金と賞与資金

11分で読めます
介護事業の資金繰り表の作り方|入金と賞与資金

介護事業の資金繰り表は、売上や利益を見るだけでなく、国保連からの入金日、利用者負担分の回収、給与支払、賞与、社会保険料、借入返済を月別に並べて作ります。介護報酬は請求から入金までに時間差があるため、帳簿上は黒字でも、給与や賞与の支払い時期に現預金が不足することがあります。資金繰りに不安がある事業者は、まず国保連入金と人件費支払のズレを見える化し、少なくとも6か月先までの資金残高を確認することが重要です。

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人件費、稼働率、加算、資金繰り、投資計画を、月次数字に合わせて整理します。

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介護事業で資金繰り表が必要になる理由

介護事業は、売上の多くが介護報酬で構成されるため、一般的な小売業や飲食業のように売上発生と同時に現金が入るわけではありません。サービス提供月、請求月、入金月がずれるため、月次試算表の利益だけでは資金繰りの安全性を判断しにくい業種です。

特に注意したいのは、給与、賞与、社会保険料、家賃、車両費、リース料、借入返済など、毎月または一定時期に必ず出ていく支払いです。売上が伸びていても、職員数の増加や処遇改善に伴う賃金増加が先行すると、資金残高が一時的に薄くなることがあります。

また、介護事業では収支改善と資金繰り改善を分けて考える必要があります。利益が出ている状態でも、入金が遅れ、支払いが先に来れば資金不足になります。一方で、資金残高が一時的に多く見えても、賞与や納税、借入返済を控えていれば安心とはいえません。

ここがポイント
資金繰り表は、単なる入出金予定表ではありません。将来の支払いに耐えられるか、借入や賞与原資をいつまでに準備すべきかを判断するための経営資料です。

資金繰り表に入れるべき主な項目

介護事業の資金繰り表では、入金と支出を「発生した月」ではなく「実際にお金が動く月」で整理します。会計上の売上や費用とはタイミングが異なるため、試算表をそのまま写すだけでは不十分です。

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区分主な項目確認するポイント
入金国保連入金支払日、返戻・保留、過誤調整の有無
入金利用者負担分口座振替日、未収金、現金回収の遅れ
入金補助金・助成金入金時期が確定しているか
支出給与・役員報酬支給日、月末締め翌月払いなどの条件
支出賞与支給月、対象者、処遇改善との関係
支出社会保険料・税金納付月、賞与に伴う負担増
支出家賃・車両・リース固定費として毎月発生する金額
支出借入返済元金返済と利息支払を分けて確認

この中でも、介護事業では国保連入金、給与支払、賞与資金の3つを最優先で整理します。売上が伸びている事業所ほど、人員増加や稼働率改善に伴い人件費が増えやすいため、入金予定よりも支払い予定を先に確認する姿勢が大切です。

実務上の注意点として、補助金や助成金は「採択された」「申請した」だけでは資金繰り表の確定入金に入れない方が安全です。入金時期が読みにくいものは、別枠で管理し、通常の運転資金とは分けて考えます。

国保連入金を資金繰り表に反映する方法

国保連からの介護給付費等の支払日は、各都道府県の国民健康保険団体連合会が公表する日程で確認します。2026年5月時点でも、請求受付日や支払予定日は各国保連の案内で確認する運用が基本です。資金繰り表では、サービス提供月ではなく、実際の入金予定月に金額を入れます。

たとえば、ある月に提供したサービス分を翌月に請求し、その後に国保連から入金される場合、売上発生月と現金入金月にはズレが生じます。このズレを見落とすと、月次試算表では売上が計上されているのに、通帳残高が増えていないという状態になります。

資金繰り表では、国保連入金を次のように整理します。

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確認項目見る資料資金繰り表への反映
請求額介護報酬請求データ、請求一覧入金予定額の基礎にする
返戻・保留国保連の帳票、請求ソフト入金予定額から除外または別管理
過誤調整過誤申立、調整額通知調整月の入金減少として反映
支払予定日国保連の支払日程入金月と日付を記載

返戻・保留・過誤調整があると、見込んでいた入金額と実際の入金額がずれます。特に複数事業所を運営している場合や、加算算定が多い場合は、請求額をそのまま資金繰り表に入れず、実入金ベースで確認する必要があります。

ここがポイント
国保連入金は比較的予測しやすい一方で、請求誤りや加算の算定ミスがあると入金額が変わります。資金繰り表には「請求額」ではなく「入金見込額」を入れるのが実務上の基本です。

給与支払と賞与資金を月次で管理する

介護事業の支出で最も大きくなりやすいのが人件費です。給与、賞与、法定福利費、処遇改善に伴う賃金改善分をまとめて見ることで、資金繰りの山を把握できます。特に賞与月は、通常月の給与に加えて大きな支払いが発生するため、数か月前から準備する必要があります。

資金繰り表では、給与支払を毎月の固定支出として入れるだけでなく、賞与予定月、社会保険料の増加、住民税や源泉所得税の納付も合わせて確認します。賞与を支給した翌月以降に社会保険料の負担が増えることもあるため、賞与支給月だけを見て判断しないことが大切です。

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支出項目管理方法注意点
毎月給与支給日ごとに記載月末残高ではなく支給日前残高を見る
賞与支給予定月に記載原資を何か月で積み立てるか決める
法定福利費納付月に記載賞与支給後の増加を反映する
処遇改善分配分ルールに沿って記載加算収入と賃金改善支出のズレを確認
源泉所得税・住民税納付月に記載納期特例の有無も確認する

実務上の注意点として、賞与は「利益が出たら払う」ではなく、資金繰り表上で支給可能額を確認してから決めるべきです。処遇改善加算を原資とする賃金改善も、入金時期と支給時期がずれるため、通常資金と混同しない管理が必要です。

介護報酬と人件費を月次で見える化

6か月先までの資金繰り表を作る手順

介護事業の資金繰り表は、最初から複雑な表を作る必要はありません。まずは通帳残高を起点に、入金予定と支出予定を月ごとに並べ、各月末の予想残高を確認します。最低でも3か月、できれば6か月先まで作ると、賞与、納税、借入返済の山が見えやすくなります。

作成手順は次のとおりです。

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手順作業内容使用する資料
1現在の預金残高を入力する通帳、ネットバンキング
2国保連入金予定を入れる請求データ、支払日程
3利用者負担分の回収予定を入れる請求書、口座振替データ
4毎月の固定支出を入れる給与台帳、賃貸借契約、リース契約
5賞与、納税、保険料を入れる賞与予定、納税予定、社会保険資料
6借入返済を入れる返済予定表
7月末残高と最低残高を確認する資金繰り表

ポイントは、月末残高だけでなく、給与支給日前後の残高を見ることです。月末には資金が残っていても、月中の給与支払日に不足するケースがあります。介護事業では、月中の資金ショートを防ぐため、日付単位で確認すべき月を見極めることが重要です。

最初の表は月次で十分ですが、資金残高が薄い月、賞与月、納税月、借入返済が重なる月は、週次または日次の資金繰り表に分解します。資金繰りが厳しい月だけ細かく見ることで、管理負担を増やしすぎずに実用的な表になります。

資金不足が見えたときに確認すること

資金繰り表を作る目的は、不足が起きてから慌てることではなく、不足する可能性を早めに把握することです。予想残高が薄い月が見えたら、売上、請求、支出、借入、賞与、納税の順に確認します。

まず、国保連請求に返戻や保留がないかを確認します。次に、利用者負担分の未収金や口座振替不能がないかを確認します。支出面では、人件費率、固定費、車両費、リース料、借入返済の負担が重くなっていないかを見ます。

資金不足が見込まれる場合は、次のような対応を検討します。

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状況確認すること対応の方向性
入金が予定より少ない返戻、保留、未収金請求精度と回収管理を見直す
給与支払後に残高が薄い人員配置、人件費率シフト、稼働率、加算取得を確認
賞与月に不足する賞与原資、処遇改善配分支給額と積立計画を見直す
借入返済が重い返済予定、金利、元金金融機関への説明資料を整える
黒字なのに資金がない売掛、未収、借入返済利益と現金のズレを分析する

実務上の注意点として、資金不足が見えた段階で、すぐに借入だけを考えるのは危険です。借入は時間を買う手段ですが、赤字構造や請求漏れ、人件費率の問題が残っていると、返済負担がさらに重くなります。

一方で、資金ショート直前になってから金融機関に相談すると、説明資料を整える時間が足りません。資金繰り表、月次試算表、介護報酬の入金予定、賞与資金の見込みをそろえておくことで、早めに選択肢を検討しやすくなります。

まとめ

介護事業の資金繰り表は、国保連入金と人件費支払のズレを見える化するための経営資料です。利益が出ているかどうかだけでなく、いつ入金され、いつ支払うのかを月別に整理することで、資金不足の予兆を早く把握できます。

  • 介護事業では、サービス提供月、請求月、入金月がずれるため、試算表だけでは資金繰りを判断しにくい
  • 資金繰り表には、国保連入金、利用者負担分、給与、賞与、社会保険料、借入返済を入れる
  • 賞与月や納税月は、月次表だけでなく週次または日次で残高を確認する
  • 返戻、保留、過誤調整がある場合は、請求額ではなく実入金見込額で管理する
  • 資金不足が見えたら、借入の前に請求精度、人件費率、固定費、返済負担を確認する

資金繰り表を継続して作ると、賞与資金をいつから積み立てるべきか、借入返済に無理がないか、国保連入金の変動に耐えられるかが見えやすくなります。6か月先の資金残高を毎月確認することが、介護事業の安定経営につながります。

よくある質問

Q: 介護事業の資金繰り表は月次だけで十分ですか?
通常時は月次表で十分ですが、給与支払日や賞与月に残高が薄くなる場合は週次または日次で確認した方が安全です。特に給与支給日前後、賞与支給月、納税月、借入返済が重なる月は、月末残高だけでは判断できません。
Q: 国保連入金は請求額をそのまま資金繰り表に入れてよいですか?
請求額をそのまま入れるのではなく、返戻、保留、過誤調整を考慮した入金見込額で管理するのが実務的です。入金予定額と実入金額に差が出た場合は、原因を翌月以降の資金繰り表に反映します。
Q: 賞与資金はどのように準備すればよいですか?
賞与予定額を支給月に一括で考えるのではなく、数か月前から月次で必要額を積み立てる考え方が有効です。処遇改善加算を原資とする場合も、加算入金と賃金改善支出の時期がずれるため、通常の運転資金と分けて管理します。
Q: 資金繰りが不安なとき、最初に用意すべき資料は何ですか?
まず、直近の試算表、通帳残高、国保連入金予定、給与台帳、賞与予定、借入返済予定表を用意します。これらを並べると、利益の問題なのか、入金と支払いのタイミングの問題なのかを切り分けやすくなります。

参照ソース

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士・公認会計士・中小企業経営コンサルタント

公認会計士 / 税理士 / 認定経営革新等支援機関

代表クラウド会計導入支援経理DX支援資金繰り支援

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

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