
執筆者:安田 駆流
採用・労務コンサルタント
クリニック採用サイトを自前で作る判断基準【2026】

採用サイトは紹介料削減の一手段
結論として、クリニック採用サイトは紹介料を減らす一手段ですが、作れば応募が増えるものではありません。求人票、賃金表、勤務条件、写真、応募導線、更新体制がそろって初めて、直接募集の基盤になります。
人材紹介会社への成功報酬が重いと感じる場合、自院サイトや採用CMSで直接募集を育てる選択肢があります。ただし、制作費や運用工数を見落とすと、紹介料より安いはずの施策が中途半端になります。2026年は、採用サイトを「広告」ではなく「条件の原本」として使う視点が必要です。
| 判断項目 | 確認する内容 | 数字で見る項目 |
|---|---|---|
| 制作費 | 初期費用、写真、原稿 | 回収期間 |
| 運用工数 | 更新、応募対応、改善 | 月次時間 |
| 求人条件 | 給与、勤務時間、業務 | 応募率、辞退率 |
| 採用費比較 | 紹介料、媒体費、自社サイト | 1名あたり採用単価 |
自前構築に向くクリニック
結論として、自前採用サイトに向くのは、継続的に採用ニーズがあり、求人条件を更新できるクリニックです。年に1回だけ採用する場合は、制作費の回収に時間がかかる可能性があります。
看護師、医療事務、受付、非常勤医師など、複数職種で継続募集がある場合、採用サイトは条件の蓄積に向きます。院内写真、スタッフの声、勤務時間、教育体制、給与の考え方を整理できるため、紹介会社や媒体に頼る前の受け皿になります。
一方で、更新担当がいない、求人条件が決まっていない、給与表がない場合、採用サイトだけ作っても応募につながりにくくなります。先に求人票と賃金表を整え、その内容をサイトに反映する順番が安全です。
媒体併用と直接募集の分担
結論として、採用サイトは媒体や紹介会社の代替ではなく、併用する基盤です。ハローワークや民間媒体を見た応募者が、自院サイトで雰囲気や条件を確認する流れを作ります。
ハローワークには労働条件を正確に出し、民間媒体には見せ方を調整し、自院サイトには原本情報を置きます。媒体ごとに条件がずれないよう、採用サイトを更新元にする運用が有効です。
紹介会社を使う場合でも、自院サイトが整っていれば、候補者が入職前に情報を確認できます。これは候補者紹介を行うという意味ではなく、採用条件と職場情報を透明にするという意味です。
月次コストで投資回収を見る
結論として、採用サイトの判断は、制作費だけでなく月次コストで見ます。初期費用、保守費、写真撮影、原稿更新、応募管理、採用担当者の時間を含め、紹介料や媒体費と比較します。
Step 1: 年間採用人数を見積もる
看護師、医療事務、パート、常勤ごとに採用予定を出します。
Step 2: 紹介料・媒体費の現状を出す
過去1〜2年の採用費を整理します。紹介料は年収連動のため、職種ごとに分けます。
Step 3: 採用サイトの年間費用を出す
制作費を何年で回収するか、保守や更新費を含めて見ます。
Step 4: 応募後フローを決める
応募者対応、面接、見学、内定、入職までを院内で管理できるか確認します。
採用サイトに載せるべき内容
結論として、採用サイトには華やかなコピーより、応募者が判断できる条件を載せます。職種別の業務、勤務時間、給与、休日、教育体制、選考フロー、院内写真、スタッフ構成が基本です。
給与は「応相談」だけでは応募者が判断できません。幅を出す場合は、経験、担当業務、勤務条件でどう決まるかを書きます。勤務時間は診療時間と実際の勤務時間を分けます。教育体制は、未経験者と経験者で分けると伝わりやすくなります。
辻総合会計グループでは、採用サイト制作そのものを目的にせず、紹介料、媒体費、給与、採用後人件費を比較し、直接募集を育てるべきかを診断します。
院内で確認する実務チェックリスト
結論として、クリニック採用サイトを自前で作る判断基準を検討するときは、記事を読んで終わりにせず、院内の数字と運用に落とす必要があります。採用は人の問題に見えますが、実際には給与、社会保険、賞与、教育時間、診療体制、既存スタッフの納得感が同時に動きます。
まず、直近12か月の採用費を集計します。紹介会社手数料、求人媒体費、求人票作成、面接対応、入職後の教育時間を分けます。金額が見えないものは、院長、主任、事務長が使った時間を時給換算の目安で置きます。正確な原価計算でなくても、採用の重さを把握するには十分です。
次に、職種別の給与表を作ります。看護師、准看護師、医療事務、受付、リーダー職を分け、基本給、時給、資格手当、職務手当、賞与、昇給時期を並べます。新規採用者だけを高くするのか、既存スタッフも改定するのかを同時に見ないと、採用後の不公平感が残ります。
3つ目に、求人票の原本を一つにします。ハローワーク、民間媒体、自院サイト、紹介会社向けに別々の条件を書くと、更新漏れが起きます。給与、勤務時間、業務範囲、試用期間、休日、社会保険の条件は、一つの原本から展開する運用にしてください。
4つ目に、入職後90日までのフォローを決めます。初月に教えること、2か月目に任せること、3か月目に評価することを決めるだけで、教育担当者の負担が見えます。採用時点でここまで決まっていない場合、応募者の能力以前に院内の受け入れ設計が不足している可能性があります。
税理士法人 辻総合会計グループでは、これらの確認を採用コスト診断として整理します。候補者紹介、応募者対応、面接代行、媒体運用代行は行わず、採用条件、賃金設計、月次損益、ベースアップ評価料や社労士連携との整合を確認します。
| チェック項目 | 確認する資料 | 未整備の場合のリスク |
|---|---|---|
| 採用費 | 紹介料、媒体費、面接時間 | 採用単価が把握できない |
| 賃金表 | 基本給、手当、賞与 | 既存スタッフとの不公平感 |
| 求人票原本 | 業務、時間、給与 | 媒体ごとの条件ずれ |
| 90日フォロー | 教育計画、評価メモ | 早期離職と教育疲れ |
税務・労務・採用を分けて考えない
結論として、採用の失敗は「応募が来ない」だけではありません。採用できた後に人件費が増えすぎる、既存スタッフが不満を持つ、社保や雇用契約の確認が遅れる、教育担当者が疲弊する、といった形でも表れます。だからこそ、税務・労務・採用を同じ表で見ます。
税理士が見るべきなのは、採用した場合の月次利益、資金繰り、賞与原資、紹介料の回収期間です。社労士が見るべきなのは、雇用契約、社会保険、労働時間、就業規則、試用期間です。媒体や紹介会社が見るべきなのは応募者との接点です。それぞれの役割を混ぜると、責任範囲が曖昧になります。
この記事で扱う内容は、採用成果を保証するものではありません。あくまで、クリニックが紹介会社に依存しすぎず、自院で説明できる採用条件を整えるための実務整理です。推測値や概算は目安として扱い、最終判断は個別の状況に応じて確認してください。
よくある質問
Q: 採用サイトを作れば紹介会社を使わなくて済みますか?
Q: 採用サイトに給与を詳しく書くべきですか?
Q: 税理士法人に採用サイト制作を依頼できますか?
まとめ
- 採用サイトは紹介料削減の一手段だが万能ではない
- 継続採用があるクリニックほど自前構築と相性がよい
- 媒体や紹介会社と併用し、条件の原本として使う
- 制作費、運用工数、採用費を月次で比較する
- 求人票と賃金表を整えてからサイトへ反映する
参照ソース
- 厚生労働省「職業紹介事業制度の概要」: https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/haken-shoukai01.html
- 厚生労働省「募集情報等提供と職業紹介の区分に関する基準」: https://www.mhlw.go.jp/stf/shoukaibosyuukubun.html
- 厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/
- 厚生労働省「ベースアップ評価料関係」: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00053.html
- 消費者庁「有利誤認表示」: https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/representation_regulation/advantageous_misidentification/
- ハローワークインターネットサービス「事業主の方へのサービス」: https://www.hellowork.mhlw.go.jp/enterprise/ent_top.html
この記事を書いた人

安田 駆流
採用・労務コンサルタント
社会保険労務士
税理士法人 辻総合会計グループの社会保険労務士。採用後トラブルの予防、就業規則、雇用契約、勤怠・給与計算まわりの労務実務を支援している。
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