
執筆者:辻 光明
医療事務採用コストの考え方【2026】

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医療事務採用は教育コストまで見る
結論として、医療事務の採用コストは給与や求人媒体費だけでは判断できません。受付、会計、電話、レセプト、電子カルテ入力をどこまで任せるかによって、教育時間と既存スタッフの負担が大きく変わります。2026年時点で採用を検討するなら、入職後3か月の教育コストまで含めて予算化することが重要です。
医療事務は「未経験可」と書きやすい職種ですが、実務では患者対応、会計、電話、予約管理、返戻対応などが同時に発生します。未経験者を低い給与で採っても、主任や院長が教育に多くの時間を使えば、実質的なコストは上がります。経験者採用も同じで、診療科や電子カルテが違えば即戦力とは限りません。
| 採用タイプ | 見えやすい費用 | 見落としやすい費用 |
|---|---|---|
| 未経験者 | 給与、求人媒体費 | 教育時間、受付ミス対応、会計確認 |
| 経験者 | 給与、紹介料 | 院内ルール習得、電子カルテ差、既存職員との均衡 |
| パート | 時給、交通費 | シフト穴埋め、社保適用、教育の分散 |
経験者と未経験者の採用条件の違い
結論として、経験者と未経験者は給与だけで差をつけるのではなく、入職後に任せる業務と教育計画を分けて求人票へ反映します。経験者には何を評価するのか、未経験者にはどこまで教えるのかを明確にしないと、面接時の期待値がずれます。
経験者採用では、医療事務経験年数だけで判断しないことが大切です。診療科、レセプト経験、返戻対応、電子カルテ、予約システム、電話対応、会計締めまで確認します。小児科、整形外科、内科、自由診療では患者対応の質も変わります。
未経験者採用では、最初から全業務を任せる前提にしない方が安全です。初月は受付と患者案内、2〜3か月で会計補助、半年でレセプト補助など、段階を分けます。教育担当者の時間も人件費ですから、採用予算に含める必要があります。
税理士法人 辻総合会計グループでは、医療事務1名を採用した場合の給与、社保、教育時間、既存スタッフの残業削減効果を月次損益に落とします。採用判断は感覚ではなく、初年度の費用として見ることが大切です。
受付・会計・レセプトを分けて書く
結論として、求人票では「医療事務業務全般」とまとめず、受付、会計、レセプト、電話、電子カルテを分けて書きます。応募者は自分の経験が合うかを判断しやすくなり、クリニック側も面接で確認すべき項目が明確になります。
受付は患者対応、保険証確認、予約確認、問診票の案内などです。会計は診療後の精算、領収書、次回予約、未収金対応などが含まれます。レセプトは診療報酬請求に関わるため、経験の有無と教育体制を慎重に見ます。
電話対応も重要です。予約変更、症状相談、クレーム、業者対応が混在します。未経験者にとっては負担が大きいので、誰が一次対応を教えるのか、難しい電話を誰に引き継ぐのかを決めておきます。
試用期間と評価項目の作り方
結論として、試用期間を「合わなければ終了する期間」と考えるのは危険です。試用期間中も労働契約は成立しており、評価の根拠と教育の記録が必要です。採用前に30日、60日、90日の確認項目を作っておきます。
Step 1: 初月の到達点を決める
受付の基本動作、患者案内、電話の一次対応など、無理のない範囲で到達点を決めます。
Step 2: 2か月目の担当範囲を決める
会計補助、電子カルテ入力補助、予約管理など、教育担当者が横で確認できる業務に広げます。
Step 3: 3か月目の評価を記録する
遅刻欠勤、患者対応、入力ミス、報連相、チーム連携を具体的に記録し、本人へフィードバックします。
評価項目は採否判断のためだけではありません。既存スタッフが教育で疲弊しないよう、誰が何を教えるかを分担するためにも使います。
医療事務採用を月次損益に落とす
結論として、医療事務採用は「受付が足りないから採る」だけでなく、月次損益にどう効くかを確認します。残業削減、会計待ち時間の短縮、レセプト精度、院長や看護師の事務負担軽減がどの程度あるかを見ます。
たとえば月給22万円の医療事務を採用する場合、法定福利費、賞与、交通費、教育時間を加えると年間負担は給与額より大きくなります。一方で、受付体制が整えば患者対応が安定し、院内のクレームや残業が減る可能性があります。効果は保証できませんが、採用前に仮説を置くことはできます。
辻総合会計グループでは、採用支援を候補者紹介ではなく、採用コスト診断・賃金設計・求人票整理として扱います。応募者対応や媒体運用は貴院または専門業者が行い、当社は数字と条件の整合を確認します。
院内で確認する実務チェックリスト
結論として、医療事務採用コストの考え方を検討するときは、記事を読んで終わりにせず、院内の数字と運用に落とす必要があります。採用は人の問題に見えますが、実際には給与、社会保険、賞与、教育時間、診療体制、既存スタッフの納得感が同時に動きます。
まず、直近12か月の採用費を集計します。紹介会社手数料、求人媒体費、求人票作成、面接対応、入職後の教育時間を分けます。金額が見えないものは、院長、主任、事務長が使った時間を時給換算の目安で置きます。正確な原価計算でなくても、採用の重さを把握するには十分です。
次に、職種別の給与表を作ります。看護師、准看護師、医療事務、受付、リーダー職を分け、基本給、時給、資格手当、職務手当、賞与、昇給時期を並べます。新規採用者だけを高くするのか、既存スタッフも改定するのかを同時に見ないと、採用後の不公平感が残ります。
3つ目に、求人票の原本を一つにします。ハローワーク、民間媒体、自院サイト、紹介会社向けに別々の条件を書くと、更新漏れが起きます。給与、勤務時間、業務範囲、試用期間、休日、社会保険の条件は、一つの原本から展開する運用にしてください。
4つ目に、入職後90日までのフォローを決めます。初月に教えること、2か月目に任せること、3か月目に評価することを決めるだけで、教育担当者の負担が見えます。採用時点でここまで決まっていない場合、応募者の能力以前に院内の受け入れ設計が不足している可能性があります。
税理士法人 辻総合会計グループでは、これらの確認を採用コスト診断として整理します。候補者紹介、応募者対応、面接代行、媒体運用代行は行わず、採用条件、賃金設計、月次損益、ベースアップ評価料や社労士連携との整合を確認します。
| チェック項目 | 確認する資料 | 未整備の場合のリスク |
|---|---|---|
| 採用費 | 紹介料、媒体費、面接時間 | 採用単価が把握できない |
| 賃金表 | 基本給、手当、賞与 | 既存スタッフとの不公平感 |
| 求人票原本 | 業務、時間、給与 | 媒体ごとの条件ずれ |
| 90日フォロー | 教育計画、評価メモ | 早期離職と教育疲れ |
税務・労務・採用を分けて考えない
結論として、採用の失敗は「応募が来ない」だけではありません。採用できた後に人件費が増えすぎる、既存スタッフが不満を持つ、社保や雇用契約の確認が遅れる、教育担当者が疲弊する、といった形でも表れます。だからこそ、税務・労務・採用を同じ表で見ます。
税理士が見るべきなのは、採用した場合の月次利益、資金繰り、賞与原資、紹介料の回収期間です。社労士が見るべきなのは、雇用契約、社会保険、労働時間、就業規則、試用期間です。媒体や紹介会社が見るべきなのは応募者との接点です。それぞれの役割を混ぜると、責任範囲が曖昧になります。
この記事で扱う内容は、採用成果を保証するものではありません。あくまで、クリニックが紹介会社に依存しすぎず、自院で説明できる採用条件を整えるための実務整理です。推測値や概算は目安として扱い、最終判断は個別の状況に応じて確認してください。
よくある質問
Q: 医療事務は未経験者でも採用できますか?
Q: 経験者なら高めの給与を出してもよいですか?
Q: 税理士法人に医療事務採用を相談する範囲はどこまでですか?
まとめ
- 医療事務採用は給与だけでなく教育時間まで含める
- 経験者と未経験者は任せる業務と評価項目を分ける
- 受付、会計、レセプト、電話対応を求人票で明確にする
- 試用期間は評価記録と教育計画を前提に運用する
- 採用前に月次損益と既存スタッフの負担軽減を確認する
参照ソース
- 厚生労働省「職業紹介事業制度の概要」: https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/haken-shoukai01.html
- 厚生労働省「募集情報等提供と職業紹介の区分に関する基準」: https://www.mhlw.go.jp/stf/shoukaibosyuukubun.html
- 厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/
- 厚生労働省「ベースアップ評価料関係」: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00053.html
- 消費者庁「有利誤認表示」: https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/representation_regulation/advantageous_misidentification/
この記事を書いた人

辻 光明
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