
執筆者:安田 駆流
採用・労務コンサルタント
パート看護師と常勤看護師のコスト比較【2026】

時給換算だけでは判断できない
結論として、パート看護師と常勤看護師は、時給換算だけでは比較できません。常勤には賞与、社会保険、教育、シフト安定性があり、パートには柔軟性がある一方でシフト調整や欠員対応の負担があります。
クリニックでは「午前診だけ足りない」「土曜だけ人が足りない」「常勤を採るほどではない」といった悩みが多くあります。このとき、時給が安いからパート、安定するから常勤、と単純に決めると、採用後の総コストが見えません。
| 比較項目 | パート看護師 | 常勤看護師 |
|---|---|---|
| 給与 | 時給中心 | 月給・賞与中心 |
| 社会保険 | 勤務条件で変動 | 原則加入 |
| シフト | 柔軟だが調整が必要 | 安定しやすい |
| 教育 | 短時間で分散しやすい | 集中的に育成しやすい |
社会保険と賞与を含めた比較
結論として、看護師の採用コストは給与額だけでなく、社会保険料と賞与を含めて比較します。パートでも勤務時間や収入によって社会保険の対象になる場合があり、常勤は賞与や昇給を含む年間負担で見ます。
パート看護師は時給で管理しやすい反面、勤務時間が増えると社保適用や扶養の問題が出ます。複数名のパートでシフトを組む場合、教育や連絡の手間も増えます。
常勤看護師は固定費が大きくなりますが、外来運営や処置、検査、在庫管理、後輩指導などを安定して任せやすい面があります。採用後の業務改善効果まで見ると、単純な給与比較では判断できません。
シフト安定性と教育コスト
結論として、シフト安定性は採用コストの一部です。パート中心の体制では、急な休みや曜日の偏りに対応するため、院長や主任の調整時間が増えます。常勤は固定費が高い一方、教育や引き継ぎが安定しやすくなります。
教育コストも見落とされがちです。パートが複数名いる場合、同じ説明を何度も行う必要があります。常勤なら一度に習得してもらいやすい一方、採用時の見極めを誤ると固定費の負担が大きくなります。
税理士法人 辻総合会計グループでは、看護師採用を「給与の高低」ではなく、診療体制、勤務時間、月次損益、資金繰りの観点から整理します。
採用前に作る損益シミュレーション
結論として、パートか常勤かを決める前に、12か月の損益シミュレーションを作ります。給与、社保、賞与、採用費、教育時間、残業削減効果、診療収入への影響を並べます。
Step 1: 必要な時間帯を洗い出す
午前、午後、土曜、繁忙時間帯ごとに不足時間を出します。
Step 2: パート複数名案を作る
時給、勤務日数、社保、教育時間、欠員リスクを見積もります。
Step 3: 常勤1名案を作る
月給、賞与、社保、担当業務、診療体制への効果を見ます。
Step 4: 既存スタッフとの均衡を見る
新規採用者の給与が既存スタッフに与える影響を確認します。
紹介会社を使う前の比較軸
結論として、パート・常勤の比較ができていない状態で紹介会社を使うと、採用条件がぶれます。必要なのは常勤なのか、特定曜日のパートなのか、主任候補なのかを決めてから募集します。
紹介会社を使う場合も、手数料は採用形態によって負担感が変わります。常勤の年収連動手数料は大きくなりやすく、パートでも契約条件を確認する必要があります。直接募集、ハローワーク、民間媒体、紹介会社を役割分担しましょう。
院内で確認する実務チェックリスト
結論として、パート看護師と常勤看護師のコスト比較を検討するときは、記事を読んで終わりにせず、院内の数字と運用に落とす必要があります。採用は人の問題に見えますが、実際には給与、社会保険、賞与、教育時間、診療体制、既存スタッフの納得感が同時に動きます。
まず、直近12か月の採用費を集計します。紹介会社手数料、求人媒体費、求人票作成、面接対応、入職後の教育時間を分けます。金額が見えないものは、院長、主任、事務長が使った時間を時給換算の目安で置きます。正確な原価計算でなくても、採用の重さを把握するには十分です。
次に、職種別の給与表を作ります。看護師、准看護師、医療事務、受付、リーダー職を分け、基本給、時給、資格手当、職務手当、賞与、昇給時期を並べます。新規採用者だけを高くするのか、既存スタッフも改定するのかを同時に見ないと、採用後の不公平感が残ります。
3つ目に、求人票の原本を一つにします。ハローワーク、民間媒体、自院サイト、紹介会社向けに別々の条件を書くと、更新漏れが起きます。給与、勤務時間、業務範囲、試用期間、休日、社会保険の条件は、一つの原本から展開する運用にしてください。
4つ目に、入職後90日までのフォローを決めます。初月に教えること、2か月目に任せること、3か月目に評価することを決めるだけで、教育担当者の負担が見えます。採用時点でここまで決まっていない場合、応募者の能力以前に院内の受け入れ設計が不足している可能性があります。
税理士法人 辻総合会計グループでは、これらの確認を採用コスト診断として整理します。候補者紹介、応募者対応、面接代行、媒体運用代行は行わず、採用条件、賃金設計、月次損益、ベースアップ評価料や社労士連携との整合を確認します。
| チェック項目 | 確認する資料 | 未整備の場合のリスク |
|---|---|---|
| 採用費 | 紹介料、媒体費、面接時間 | 採用単価が把握できない |
| 賃金表 | 基本給、手当、賞与 | 既存スタッフとの不公平感 |
| 求人票原本 | 業務、時間、給与 | 媒体ごとの条件ずれ |
| 90日フォロー | 教育計画、評価メモ | 早期離職と教育疲れ |
税務・労務・採用を分けて考えない
結論として、採用の失敗は「応募が来ない」だけではありません。採用できた後に人件費が増えすぎる、既存スタッフが不満を持つ、社保や雇用契約の確認が遅れる、教育担当者が疲弊する、といった形でも表れます。だからこそ、税務・労務・採用を同じ表で見ます。
税理士が見るべきなのは、採用した場合の月次利益、資金繰り、賞与原資、紹介料の回収期間です。社労士が見るべきなのは、雇用契約、社会保険、労働時間、就業規則、試用期間です。媒体や紹介会社が見るべきなのは応募者との接点です。それぞれの役割を混ぜると、責任範囲が曖昧になります。
この記事で扱う内容は、採用成果を保証するものではありません。あくまで、クリニックが紹介会社に依存しすぎず、自院で説明できる採用条件を整えるための実務整理です。推測値や概算は目安として扱い、最終判断は個別の状況に応じて確認してください。
比較表を作るときは、採用できた場合だけでなく、採用できなかった場合の機会損失も置いてください。看護師不足で検査枠や処置枠を減らしているなら、給与負担だけを見ると判断を誤ります。逆に患者数が伸びない前提なら、常勤化を急がず段階的にパート時間を増やす方が安全な場合もあります。
よくある質問
Q: パート看護師の方が必ず安いですか?
Q: 常勤看護師を採る基準はありますか?
Q: 税理士法人はどこまで支援しますか?
まとめ
- パートと常勤は時給だけで比較しない
- 社会保険、賞与、教育、シフト調整を含める
- 12か月の損益シミュレーションで比較する
- 紹介会社を使う前に必要な雇用形態を決める
- 採用条件は既存スタッフとの均衡も確認する
参照ソース
- 厚生労働省「職業紹介事業制度の概要」: https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/haken-shoukai01.html
- 厚生労働省「募集情報等提供と職業紹介の区分に関する基準」: https://www.mhlw.go.jp/stf/shoukaibosyuukubun.html
- 厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/
- 厚生労働省「ベースアップ評価料関係」: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00053.html
- 消費者庁「有利誤認表示」: https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/representation_regulation/advantageous_misidentification/
この記事を書いた人

安田 駆流
採用・労務コンサルタント
社会保険労務士
税理士法人 辻総合会計グループの社会保険労務士。採用後トラブルの予防、就業規則、雇用契約、勤怠・給与計算まわりの労務実務を支援している。
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