
執筆者:安田 駆流
採用・労務コンサルタント
クリニック試用期間中の解雇リスクと採用設計【2026】

試用期間は解雇しやすい期間ではない
結論として、試用期間は「自由に解雇できる期間」ではありません。クリニック側が期待した能力に届かないと感じても、採用時の説明、教育、評価、記録が曖昧なままでは、トラブルになりやすくなります。
採用ミスマッチを減らすには、試用期間中に判断するのではなく、求人票、面接、評価シート、入職後フォローを採用前から設計する必要があります。試用期間をリスク管理の最後の砦にするのではなく、採用設計全体の一部として扱います。
| 段階 | 確認すること | 記録するもの |
|---|---|---|
| 採用前 | 期待業務、勤務条件、給与 | 求人票、賃金表 |
| 面接時 | 経験、勤務可能日、職務適合 | 評価シート |
| 入職後30日 | 基本業務、勤怠、報連相 | 面談メモ |
| 入職後90日 | 継続可否、教育状況 | 評価記録 |
採用前に期待役割を書面化する
結論として、試用期間中のトラブルを減らすには、採用前に期待役割を書面化します。看護師なら採血、処置、検査補助、患者対応、医療事務なら受付、会計、電話、レセプト補助など、担当範囲を明確にします。
「経験者だから分かるはず」「医療事務だから全部できるはず」という前提は危険です。診療科、システム、患者層、院内ルールが変われば、経験者でも教育が必要になります。求人票と面接で期待役割をそろえます。
給与条件も重要です。試用期間中の給与、本採用後の給与、昇給時期、評価項目が曖昧だと、入職後に不満が出ます。賃金表と評価シートをつなげることで、説明できる条件になります。
入職後30日・60日・90日の評価
結論として、試用期間中は一度の面談で判断するのではなく、30日、60日、90日の節目で評価します。問題がある場合も、本人に具体的に伝え、改善機会を設けた記録を残すことが重要です。
Step 1: 30日評価
勤怠、基本業務、患者対応、報連相を確認します。未経験者なら教育計画どおり進んでいるかを見ます。
Step 2: 60日評価
担当業務を広げられるか、ミスの傾向、チーム連携、患者対応の安定度を確認します。
Step 3: 90日評価
本採用後に任せる業務、給与条件、追加教育、配置変更の必要性を確認します。
評価は責めるためではなく、採用時の期待と実際の差を埋めるために行います。院長だけで抱えず、主任や教育担当の記録も残します。
社労士・弁護士確認が必要な場面
結論として、解雇や雇止めを検討する段階では、早めに社労士・弁護士へ確認します。税理士法人は採用コストや月次損益の整理はできますが、解雇の可否判断を代替することはできません。
問題行動、勤怠不良、能力不足、患者トラブルなどがある場合、事実、注意指導、改善機会、本人説明の記録が重要になります。感情的に判断すると、後で説明が難しくなります。
辻総合会計グループでは、採用支援を候補者紹介や労務判断ではなく、採用条件、賃金設計、採用コスト、専門家連携の整理として行います。
採用ミスマッチをコストで見る
結論として、試用期間中のミスマッチは、紹介料や求人媒体費だけでなく、教育時間、既存スタッフの負担、患者対応への影響としてコスト化されます。採用前に評価設計を作ることは、法務リスクだけでなく経営リスクの管理でもあります。
早期離職や試用期間トラブルが続く場合、給与水準、求人票、面接、教育体制のどこかに原因があります。採用後に対処するより、採用前に条件を整える方が費用対効果は高くなります。
院内で確認する実務チェックリスト
結論として、クリニック試用期間中の解雇リスクと採用設計を検討するときは、記事を読んで終わりにせず、院内の数字と運用に落とす必要があります。採用は人の問題に見えますが、実際には給与、社会保険、賞与、教育時間、診療体制、既存スタッフの納得感が同時に動きます。
まず、直近12か月の採用費を集計します。紹介会社手数料、求人媒体費、求人票作成、面接対応、入職後の教育時間を分けます。金額が見えないものは、院長、主任、事務長が使った時間を時給換算の目安で置きます。正確な原価計算でなくても、採用の重さを把握するには十分です。
次に、職種別の給与表を作ります。看護師、准看護師、医療事務、受付、リーダー職を分け、基本給、時給、資格手当、職務手当、賞与、昇給時期を並べます。新規採用者だけを高くするのか、既存スタッフも改定するのかを同時に見ないと、採用後の不公平感が残ります。
3つ目に、求人票の原本を一つにします。ハローワーク、民間媒体、自院サイト、紹介会社向けに別々の条件を書くと、更新漏れが起きます。給与、勤務時間、業務範囲、試用期間、休日、社会保険の条件は、一つの原本から展開する運用にしてください。
4つ目に、入職後90日までのフォローを決めます。初月に教えること、2か月目に任せること、3か月目に評価することを決めるだけで、教育担当者の負担が見えます。採用時点でここまで決まっていない場合、応募者の能力以前に院内の受け入れ設計が不足している可能性があります。
税理士法人 辻総合会計グループでは、これらの確認を採用コスト診断として整理します。候補者紹介、応募者対応、面接代行、媒体運用代行は行わず、採用条件、賃金設計、月次損益、ベースアップ評価料や社労士連携との整合を確認します。
| チェック項目 | 確認する資料 | 未整備の場合のリスク |
|---|---|---|
| 採用費 | 紹介料、媒体費、面接時間 | 採用単価が把握できない |
| 賃金表 | 基本給、手当、賞与 | 既存スタッフとの不公平感 |
| 求人票原本 | 業務、時間、給与 | 媒体ごとの条件ずれ |
| 90日フォロー | 教育計画、評価メモ | 早期離職と教育疲れ |
税務・労務・採用を分けて考えない
結論として、採用の失敗は「応募が来ない」だけではありません。採用できた後に人件費が増えすぎる、既存スタッフが不満を持つ、社保や雇用契約の確認が遅れる、教育担当者が疲弊する、といった形でも表れます。だからこそ、税務・労務・採用を同じ表で見ます。
税理士が見るべきなのは、採用した場合の月次利益、資金繰り、賞与原資、紹介料の回収期間です。社労士が見るべきなのは、雇用契約、社会保険、労働時間、就業規則、試用期間です。媒体や紹介会社が見るべきなのは応募者との接点です。それぞれの役割を混ぜると、責任範囲が曖昧になります。
この記事で扱う内容は、採用成果を保証するものではありません。あくまで、クリニックが紹介会社に依存しすぎず、自院で説明できる採用条件を整えるための実務整理です。推測値や概算は目安として扱い、最終判断は個別の状況に応じて確認してください。
また、試用期間の評価は採用担当者だけで完結させない方が安全です。教育担当、受付責任者、看護主任など、実際に一緒に働く人の記録を集めると、本人へ伝える改善点が具体的になります。感情的な評価ではなく、業務ごとの事実を残すことがトラブル予防につながります。
よくある質問
Q: 試用期間中ならすぐ解雇できますか?
Q: 試用期間は何か月がよいですか?
Q: 税理士法人は試用期間中の評価に関与しますか?
まとめ
- 試用期間は自由に解雇できる期間ではない
- 採用前に期待業務と給与条件を書面化する
- 30日、60日、90日の評価記録を残す
- 解雇判断は社労士・弁護士へ確認する
- ミスマッチは採用コストとして予防する
参照ソース
- 厚生労働省「職業紹介事業制度の概要」: https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/haken-shoukai01.html
- 厚生労働省「募集情報等提供と職業紹介の区分に関する基準」: https://www.mhlw.go.jp/stf/shoukaibosyuukubun.html
- 厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/minimumichiran/
- 厚生労働省「ベースアップ評価料関係」: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00053.html
- 消費者庁「有利誤認表示」: https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/representation_regulation/advantageous_misidentification/
この記事を書いた人

安田 駆流
採用・労務コンサルタント
社会保険労務士
税理士法人 辻総合会計グループの社会保険労務士。採用後トラブルの予防、就業規則、雇用契約、勤怠・給与計算まわりの労務実務を支援している。
ご注意事項
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