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クリニック向けコラム
作成日:2026.04.06
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

医療事務の採用が難しい理由と対策|税理士が解説

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医療事務の採用が難しい理由と対策|税理士が解説

医療事務の採用が難しい理由とは

医療事務の採用が難しい最大の理由は、クリニック側が求める業務水準に対して、応募者が感じる負担や勤務条件の制約が大きいからです。とくに院長や事務長にとっては、受付・会計・レセプト・電話対応を担える人材を確保したい一方で、応募者から見ると「土曜勤務がある」「患者対応のストレスがある」「時給が他業種と比べて突出して高いわけではない」という点が障壁になりやすいのではないでしょうか。

実際、厚生労働省の一般職業紹介状況では、令和7年10月の有効求人倍率は1.18倍、新規求人倍率は2.12倍で、人手確保が簡単とはいえない雇用環境が続いています。医療事務は資格必須の仕事ではありませんが、受付対応力、レセプト理解、PC入力の正確性が同時に求められるため、単純な事務職より採用の難易度が上がりやすい職種です。

当法人でもクリニックの人件費や採用相談を長年見てきましたが、「応募はあるのに面接で合わない」「経験者を求めるほど応募が減る」というケースは少なくありません。まずは、難しい理由を構造的に整理することが重要です。

医療事務求人が集まらない主な原因

条件が応募者目線になっていない

医療事務の求人では、院内では当然と思っている条件が、求職者には負担に映ることがあります。代表例は、午前・午後の分断勤務、土曜勤務、繁忙時間帯の残業、レセプト時期の業務集中です。

求職者は「通いやすさ」「勤務時間の読みやすさ」「急な休みに対応できるか」を重視します。そのため、仕事内容だけを並べても応募は増えません。働きやすさを言語化することが必要です。

経験者前提の採用要件が厳しすぎる

「レセプト経験必須」「電子カルテ経験者のみ」「即戦力限定」とすると、母集団が一気に狭まります。とくに小規模クリニックでは教育余力が乏しいため経験者を求めがちですが、結果として募集が長期化し、現場負担がさらに重くなる悪循環に陥ります。

厚生労働省の職業訓練資料でも、医療事務分野は再就職支援や実践コースの対象になっており、未経験から育成する発想は制度的にも一般的です。未経験者を排除しすぎると、採用市場の現実と合わなくなります。

他業種と比較されやすい

医療事務は安定感のある職種ですが、接客ストレスや専門用語対応がある一方で、賃金条件だけで見れば一般事務や販売職と比較されやすい面があります。応募者は「責任の重さに対して見合う条件か」を見ています。

ここがポイント
医療事務は資格の有無よりも、接遇、正確性、継続勤務のしやすさが採用成功の鍵です。資格保有を強く打ち出すより、教育体制や業務分担を示したほうが応募につながることがあります。

医療事務の時給相場はどのくらいか

医療事務の時給相場を考える際は、公的統計と実際の求人票を分けて見るのが実務的です。賃金構造基本統計調査は賃金水準の確認に有用ですが、現場感のある募集条件はハローワーク求人の方がつかみやすいです。

ハローワーク掲載例では、東京都三鷹市のクリニックの医療事務パートが時給1,300円、埼玉県さいたま市の皮膚科クリニックでは平日1,300円・土曜1,500円の求人が確認できます。地域差はあるものの、直近のクリニック実務では、パート時給1,200円台後半から1,500円前後を一つの目安として考えると実態に近いでしょう。

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募集条件の見方低めに見えやすい例応募が増えやすい例
時給設定一律1,100円台平日1,300円前後、土曜加算あり
条件表示経験者のみ未経験可、研修あり
働き方シフト不透明週2〜3日、曜日固定相談可
訴求内容業務羅列のみ教育体制、駅近、残業少なめを明記

時給を上げれば必ず採用できるわけではありませんが、相場より低い条件で「即戦力」を求めると、応募が集まりにくいのは当然です。税務や人件費の観点でも、採用空白による機会損失と時給引上げコストを比較して判断する必要があります。

医療事務を未経験で採用する方法

未経験採用は「業務分解」が前提

未経験者を採るなら、「受付」「会計」「電話」「レセプト補助」を最初から全部任せる前提をやめることが重要です。育成型採用では、最初の1〜2か月で何をどこまで覚えてもらうかを決めておく必要があります。

Step 1: 初期業務を限定する

最初は受付、保険証確認、予約対応など患者接点の基本業務に絞ります。

Step 2: マニュアルとOJT担当を固定する

教える人が毎日変わると、未経験者は定着しにくくなります。担当者を決め、言い方や手順を統一します。

Step 3: レセプトは補助から入る

いきなり総括まで任せず、チェック補助や入力補助から段階的に広げます。

未経験者に向く人物像を明確にする

未経験採用で重視すべきは、資格よりも接遇姿勢、正確性、継続勤務の見込みです。たとえば、販売・介護・保育など対人業務経験者は、患者対応に適応しやすい傾向があります。

「医療事務資格必須」よりも、「接客経験歓迎」「PC入力に抵抗がない方」「長期勤務を希望する方」と書いた方が、対象が広がりやすくなります。

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応募を増やす求人票の書き方と対策

求人票の改善は、採用コストを大きくかけずにできる施策です。応募を増やしたいなら、条件面と見せ方を同時に見直すべきです。

応募を増やす記載ポイント

  • 「未経験可」だけでなく、研修期間や教育方法を書く
  • 土曜勤務の頻度を具体的に書く
  • 午後のみ、週2日など応募しやすい働き方を示す
  • レセプト経験がなくても応募可能かを明確にする
  • 駅近、残業の少なさ、スタッフ構成を具体的に書く

時給以外で差がつくポイント

応募者は総額条件だけでなく、現場の雰囲気や続けやすさを見ています。たとえば「お子さまの学校行事に配慮」「急なお休みはスタッフ間で調整」「土曜は時給加算あり」といった情報は、応募率を左右します。

ここがポイント
小規模クリニックほど、給与だけで大手と競うのではなく、通勤のしやすさ、シフト柔軟性、教育の丁寧さで差別化する方が現実的です。

採用で失敗しないための実務上の注意点

採用を急ぐあまり、面接で確認すべき点を曖昧にすると、早期離職につながります。医療事務では次の確認が重要です。

  • 土曜勤務や繁忙時間帯に対応可能か
  • 接客ストレスへの耐性があるか
  • PC入力スピードと正確性に問題がないか
  • 長期勤務を前提としているか
  • レセプト未経験でも学ぶ意思があるか

よくある相談として、「感じがよかったので採ったが、電話対応と会計で混乱し辞めてしまった」という例があります。面接では経験の有無だけでなく、忙しい時間帯の対応イメージを具体的に質問することが大切です。個別の労働条件や社会保険の取扱いは医院の規模や勤務形態で異なるため、最終的には就業条件通知書で明確にする必要があります。

よくある質問

Q: 医療事務は本当に未経験でも採用できますか? ▼
可能です。実際に厚生労働省の医療事務分野の職業訓練でも、未経験者を前提としたコースが設けられています。ただし、採用後は受付、会計、電話対応などを段階的に教える設計が必要です。
Q: 医療事務の時給相場はいくらくらいですか? ▼
地域差はありますが、直近のハローワーク掲載例ではクリニックのパートで時給1,300円、平日1,300円・土曜1,500円といった水準が見られます。相場より低い条件で経験者限定にすると、応募が集まりにくくなります。
Q: 応募が来ないときは、まず何を見直すべきですか? ▼
まずは「経験者必須」の条件と、勤務時間の見せ方です。未経験可への見直し、曜日固定相談可、研修ありの明記だけでも反応が変わることがあります。

まとめ

  • 医療事務の採用が難しいのは、業務負荷と勤務条件に対して応募者が慎重になりやすいため
  • 経験者前提の求人は母集団を狭め、募集長期化の原因になりやすい
  • 時給相場は地域差があるが、直近のハローワーク求人では1,300円〜1,500円前後が一つの目安
  • 未経験採用では、業務分解と教育体制の明示が重要
  • 応募を増やすには、時給だけでなくシフト柔軟性や働きやすさの見せ方を改善する

参照ソース

  • 厚生労働省「一般職業紹介状況(令和7年10月分)について」: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_66201.html
  • 政府統計の総合窓口 e-Stat「令和6年賃金構造基本統計調査」: https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?tclass1=000001224440&toukei=00450091&tstat=000001011429
  • 厚生労働省「医療事務分野」: https://www.mhlw.go.jp/content/001073995.pdf
  • ハローワークインターネットサービス「医療事務【パート】(東京都三鷹市)」: https://www.hellowork.mhlw.go.jp/kensaku/GECA110010.do?action=dispDetailBtn&kJKbn=1&kJNo=1317003347061&screenId=GECA110010
  • ハローワークインターネットサービス「医療事務(埼玉県さいたま市)」: https://www.hellowork.mhlw.go.jp/kensaku/GECA110010.do?action=dispDetailBtn&fullPart=2&jGSHNo=Ld5ICA4dZ%2FBgGXIXS6zA5Q%3D%3D&kJKbn=1&kJNo=1105005091661&newArrived=2&screenId=GECA110010&shogaiKbn=0&tatZngy=1

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

記事の内容は法令の改正等により変更される場合があります。 最新の情報については、関係省庁の公式サイト等でご確認ください。

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