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採用・労務支援コラム
作成日:2026.05.11
安田 駆流

執筆者:安田 駆流

小規模クリニックの採用基準の作り方|院長の感覚を面接シートに変える

7分で読めます
小規模クリニックの採用基準を院長の感覚から面接シートに変えるアイキャッチ画像
無料適性検査 候補者の傾向を面接前に確認

結論:小規模クリニックの採用基準は「院長の感覚」を職務場面に分解して作る

小規模クリニックでは、院長や事務長の「この人は合いそう」「受付で感じがよさそう」という感覚で採用判断が進みやすくなります。感覚自体が悪いわけではありませんが、そのままでは面接官が変わったときに基準が揺れ、入社後に「思っていた仕事と違う」というミスマッチが起きやすくなります。

採用基準は、まず職種別の業務を分け、患者対応、確認行動、報連相、繁忙時対応、学習姿勢、定着条件を面接質問と採用記録へ変換して作ります。適性検査を使う場合も、合否を自動で決めるのではなく、院長の感覚を面接シートで確認する材料にします。

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院長の感覚採用基準に直すと面接で確認すること
感じがよい患者対応で説明、確認、引き継ぎができる不安な相手へどう説明したか
仕事が早そう繁忙時に優先順位を決められる複数業務が重なった時の対応
まじめそう確認行動と報連相を続けられる分からないことをどう相談したか
長く働いてくれそう勤務条件と業務範囲の期待値が合う続けやすい条件、合わない条件
院内に合いそう医師、看護師、受付との連携ができる他職種と連携した経験

厚生労働省は、公正な採用選考について、応募者の基本的人権を尊重し、適性・能力に基づく基準で行うことを示しています。小規模クリニックでも、印象だけで判断するのではなく、職務に関係する基準を明確にします。

ここがポイント
この記事は、院長・事務長が採用面接を兼務している小規模クリニック向けの実務整理です。採用基準を複雑な人事制度にするのではなく、1枚の面接シートと入社後30日フォローへ落とし込むことを目的にしています。

まず採用する職種を分ける

小規模クリニックの採用基準は、全職種共通で作ると曖昧になります。看護師、医療事務、受付、検査補助、管理職候補では、確認すべき場面が違います。最初に職種別基準を分けることで、院長の感覚を面接で確認できる項目に変換します。

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職種主な業務採用基準で見ること
看護師患者対応、処置前確認、医師への報告安全確認、報連相、優先順位
医療事務受付、保険証確認、会計、電話正確性、説明、学習姿勢
受付来院対応、待ち時間説明、予約変更対人対応、確認、引き継ぎ
検査補助案内、準備、結果受け渡し補助手順理解、確認、患者対応
リーダー候補シフト、教育、院内調整判断、共有、改善提案

まず「今回採用する人に任せたい仕事」を3つに絞ります。ここが決まれば、面接質問も適性検査の読み方も作りやすくなります。

院長の感覚を6つの基準に分ける

「合いそう」という感覚は、6つの基準に分解できます。小規模クリニックでは、人柄だけでなく、患者対応、確認行動、報連相、繁忙時対応、学習姿勢、定着条件の6つで見ます。

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基準見る場面面接質問例
患者対応不安、急ぎ、クレーム一次対応相手が不安そうな時、どう説明しましたか
確認行動保険証、会計、処置前、予約ミスを防ぐために必ず確認していたことはありますか
報連相医師、看護師、受付、事務長への共有判断に迷った時、誰に何を相談しましたか
繁忙時対応受付、電話、会計、診察準備が重なる複数の依頼が重なった時、どう優先順位を決めましたか
学習姿勢医療用語、院内ルール、電子カルテ新しい業務を覚える時、何をしていましたか
定着条件勤務時間、役割期待、教育体制長く続けやすい職場条件は何ですか

この6つを面接シートの見出しにすると、印象だけの面接から、職務場面を確認する面接へ変わります。

面接シートは点数より確認メモを重視する

採用基準を作るとき、点数化だけを先に作ると、なぜその点数なのかが残りません。小規模クリニックでは、点数よりも確認メモを残す方が運用しやすいです。

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項目評価メモに残すこと避けたい記録
患者対応どのような相手に、どう説明したか明るい、感じがよい
確認行動何を、どの順番で確認したかまじめそう
報連相誰に、何を、どのタイミングで共有したかチームに合いそう
繁忙時対応何を優先し、どこで相談したか忙しくても大丈夫そう
定着条件勤務条件と期待役割にズレがないか長く働きそう

採用記録は、あとで読み返した時に「職務に関係する何を確認したのか」が分かる形にします。

適性検査を使う場合の読み方

適性検査は、採用基準を補助する道具です。結果をそのまま採否に使うのではなく、面接で確認する質問に変換します。

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検査結果で気になる傾向面接で確認する質問採用後フォロー
慎重さが低い確認漏れを防ぐために何をしていましたかチェックリストと相談先を決める
対人負荷が高い不安や怒りがある相手にどう対応しましたか受付・電話の引き継ぎルールを決める
変化が苦手急な予定変更にどう対応しましたか例外対応の相談基準を作る
自己主張が弱い判断に迷った時、誰へどう相談しましたか相談してよいタイミングを明文化する
学習に時間がかかる新しい業務をどう覚えましたか30日間の教育項目に分ける

適性検査の結果は、院長の感覚を裏付けるものではなく、面接で確認する論点を増やすものとして使います。

小規模クリニック向けの面接シート例

面接シートは、1枚で運用できる形にします。すべての質問を聞く必要はありませんが、職種に合わせて3から5問を選びます。

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見る基準質問メモ欄
患者対応不安そうな患者さんやお客様に説明した経験はありますか事実、工夫、相手の反応
確認行動ミスを防ぐために続けていた確認はありますか手順、頻度、相談先
報連相判断に迷った時、誰に何を伝えましたか共有相手、内容、タイミング
繁忙時対応複数業務が重なった時、どう優先順位を決めましたか優先基準、相談、引き継ぎ
学習姿勢新しい仕事を覚える時、最初に何をしましたかメモ、質問、復習
定着条件続けやすい職場条件と、続けにくい条件は何ですか勤務条件、役割期待、教育

「はい・いいえ」で終わる質問ではなく、過去の具体的な行動を聞きます。

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入社後30日フォローまで決める

採用基準は、採用したら終わりではありません。面接で見えた不安点は、入社後30日のフォロー項目にします。

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期間確認すること
初日相談先と禁止事項個人情報、会計、処置前確認
1週目業務の流れ受付、電話、申し送り、診察前後
2週目繁忙時対応どこで手が止まったか、誰へ相談したか
3週目学習状況覚える量、分かりにくい手順
30日期待値のズレ業務範囲、勤務条件、教育体制

採用前の基準と入社後フォローがつながると、早期離職の兆候に早く気づけます。

辻総合会計グループで支援できること

辻総合会計グループでは、クリニック採用を人事だけの問題としてではなく、人件費、教育負担、診療体制、受付オペレーション、定着コストまで含めて整理します。採用基準を作る場合も、面接シート、採用記録、入社後30日フォローを、院内の実務に合わせて設計することが重要です。

公正採用と個人情報の注意点

厚生労働省は、採用選考では応募者の適性・能力に基づく採用基準を明確にすること、応募書類や面接で就職差別につながるおそれのある事項を含めないことを示しています。家庭環境、思想信条、病歴など、職務遂行と関係しない事項を採用基準にしない運用が必要です。

個人情報保護委員会は、個人情報の取扱いについて事業者が守るべき考え方をガイドラインで示しています。適性検査や面接メモを扱う場合は、閲覧者、保存場所、保存期間、削除方針を決めます。

FAQ

Q: 小規模クリニックでも採用基準は必要ですか?
必要です。人数が少ないほど、1人の採用ミスマッチが診療体制や教育負担に影響します。複雑な制度ではなく、1枚の面接シートから始めます。
Q: 院長の感覚は使わない方がよいですか?
感覚を捨てる必要はありません。ただし、患者対応、確認行動、報連相、繁忙時対応、学習姿勢、定着条件に分けて記録します。
Q: 適性検査の結果で採否を決めてよいですか?
検査結果だけで決める使い方は避けます。面接で確認する論点と、入社後30日フォローの材料として使います。
Q: 医療事務と看護師で同じ採用基準にしてよいですか?
共通部分はありますが、確認する場面は分けます。医療事務は受付、会計、電話、保険証確認、看護師は患者対応、処置前確認、医師への報告が中心です。
Q: 面接で聞いてはいけないことはありますか?
家庭環境、思想信条、病歴など、職務遂行に必要な適性・能力と関係しない事項は採用判断に使わない運用が必要です。

参考資料

この記事を書いた人

安田 駆流

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