
執筆者:安田 駆流
看護師紹介手数料の相場と抑え方【2026】

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看護師紹介手数料の相場は年収20〜25%が目安
結論からいうと、看護師を人材紹介会社経由で採用する場合、紹介手数料は理論年収の20〜25%前後を一つの目安として見る必要があります。年収400万円なら80万〜100万円、年収500万円なら100万〜125万円です。実際の料率や返金条件は契約によって変わるため、必ず個別契約書で確認します。
クリニック経営で問題になるのは、手数料そのものだけではありません。採用後に半年以内で退職した場合、返金条項があっても全額戻るとは限らず、求人を出し直す時間、面接対応、既存スタッフの残業、患者対応の混乱まで含めると、実質的な負担は請求書の金額より大きくなります。
厚生労働省は医療・介護・保育分野の職業紹介について、手数料や早期離職を含む実態把握を継続しています。2026年時点でクリニックが取るべき姿勢は、「紹介会社を使うか使わないか」の二択ではなく、紹介料を払う前に自院で整えられる条件を先に整えることです。
| 年収目安 | 手数料20% | 手数料25% | 経営上の見方 |
|---|---|---|---|
| 380万円 | 76万円 | 95万円 | パート採用や求人票改善と比較したい水準 |
| 450万円 | 90万円 | 112.5万円 | 半年以内退職時の再採用コストが重い |
| 520万円 | 104万円 | 130万円 | 分院・外来拡大時は採用予算として事前確保が必要 |
紹介手数料が高く見える理由とクリニック側のリスク
結論として、紹介手数料が高く見える最大の理由は、採用の成果が「入職時点」で評価されやすく、定着や人件費の回収まで一体で見られていないからです。クリニック側は、採用決定の瞬間ではなく、入職後6か月から1年で回収できるかを見ます。
人材紹介会社は候補者探索、面談、求人提案、日程調整などを担うため、緊急採用では有効な選択肢になり得ます。一方で、年収連動の成功報酬は、給与条件を上げるほど手数料も上がる構造です。採用が急ぎになるほど条件調整が粗くなり、結果として「高い給与で採ったのに業務範囲が曖昧」という状態が起きます。
クリニックでよくある失敗は、採用時の給与だけを見て、賞与、社会保険、残業、教育時間、既存スタッフとの均衡を後回しにすることです。たとえば新規採用者だけ時給や基本給を上げると、既存スタッフの不公平感が強まり、採用できても定着率が下がることがあります。
もう一つのリスクは、契約上の返戻金条項を過信することです。返戻対象期間、自己都合退職の扱い、勤務日数による按分、返金申請期限は会社ごとに異なります。採用前に確認すべきなのは、「いくら戻るか」だけでなく、「退職時に再採用するための予算と人員余力があるか」です。
紹介料を払う前に見直す3つの順番
結論として、紹介料を抑えたいクリニックは、いきなり媒体や紹介会社を変えるのではなく、求人票、賃金設計、直接募集の順で見直します。この順番を飛ばすと、媒体を増やしても応募者に伝わる条件が弱いままになります。
Step 1: 求人票を条件表として作り直す
求人票は「明るい職場です」といった印象表現より、勤務時間、診療時間との違い、休憩、残業、担当業務、教育体制、給与の決まり方を具体的に書くことが重要です。看護師なら採血、処置、検査補助、診療科特有の業務を分けます。医療事務なら受付、会計、レセプト、電話対応、電子カルテ入力を分けます。
Step 2: 賃金表を作り、既存スタッフとの均衡を見る
給与は求人票の見栄えだけで決めると、採用後に月次損益が崩れます。基本給、資格手当、職務手当、賞与、昇給時期、社会保険料まで含め、常勤とパートを同じ時間単価で比較します。税理士法人 辻総合会計グループでは、クリニック顧問先400社の相談経験を踏まえ、賃金表と月次損益を同時に確認します。
Step 3: 直接募集と紹介会社を役割分担する
ハローワーク、自院サイト、求人検索エンジン、医療系媒体は、低コストで継続募集を作る選択肢です。ただし、出稿しただけでは応募は増えません。求人票と賃金設計を整えたうえで、急ぎの欠員や専門職だけ紹介会社を使うと、成功報酬に依存しすぎない採用体制に近づきます。
ベースアップ評価料と採用予算を分けずに考える
結論として、2026年のクリニック採用では、賃上げ対応と新規採用を別々に考えないことが重要です。ベースアップ評価料の届出や賃金改善計画を進める際、既存スタッフだけでなく、これから採用する職種の給与水準も同じ表で確認します。
既存スタッフに賃上げを行い、新規採用者にも相場に合わせた給与を提示する場合、月次人件費は二重に増えます。ここで「紹介会社の手数料」だけを削っても、給与体系が崩れていれば採用後の負担は残ります。採用予算は、紹介料、媒体費、給与、社保、賞与、教育時間を一つの表に置く必要があります。
たとえば看護師1名の採用を予定しているなら、採用費用を一時費用として見るだけでなく、入職後12か月の人件費増加と診療収入への影響を並べます。外来枠を広げられるのか、処置件数が増えるのか、院長の業務負担が減るのかまで見ると、採用すべき人数と時期が判断しやすくなります。
辻総合会計グループでは、診療報酬や施設基準の判断そのものを代行するのではなく、届出予定、賃金改善、月次損益、資金繰りへの反映を整理します。最終的な算定や届出の可否は、公式資料、厚生局、必要に応じて社労士等の専門家と確認してください。
税理士法人ができること、できないこと
結論として、当社が行うのは採用コスト診断、求人票・賃金設計、採用予算の整理であり、候補者紹介や応募者対応の代行ではありません。この線引きを明確にすることが、クリニック側にも安全です。
職業紹介事業は、求人者と求職者の間に入って雇用関係の成立をあっせんする事業です。有料職業紹介を行うには許可が必要です。そのため、税理士法人 辻総合会計グループでは、求職者のあっせんや内定までの一括請負に見える表現は使いません。
一方で、紹介会社を使う前段階の数字整理は、税理士法人が関与しやすい領域です。紹介料を払った場合の投資回収、直接募集に切り替えた場合の媒体費、求人票の給与条件、ベースアップ評価料との整合、採用後の社会保険料や賞与負担を、月次試算表に反映できます。
景品表示法の観点でも、価格や効果を過度に有利に見せる断定は避けるべきです。この記事で扱う削減策は、紹介会社を否定するものではなく、紹介料を支払う前にクリニック側で整えられる選択肢を増やす考え方です。
よくある質問
Q: 紹介会社を使わない方がよいのでしょうか?
Q: 手数料20〜25%という数字は確定ですか?
Q: 税理士法人に採用そのものを任せられますか?
Q: 既に紹介会社を使っている場合も見直せますか?
まとめ
- 看護師紹介手数料は年収20〜25%前後を一つの目安として見る
- 手数料だけでなく、早期離職、再採用、既存スタッフとの賃金均衡を含めて判断する
- 求人票、賃金表、直接募集の順で整えると、紹介会社依存を下げやすい
- ベースアップ評価料や賃上げ計画と採用予算は同じ表で管理する
- 税理士法人の支援範囲は採用コスト診断と賃金設計であり、候補者紹介ではない
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参照ソース
- 厚生労働省「職業紹介事業制度の概要」: https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/haken-shoukai01.html
- 厚生労働省「医療・介護・保育分野における職業紹介手数料等に関する資料」: https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001622750.pdf
- 厚生労働省「募集情報等提供と職業紹介の区分に関する基準」: https://www.mhlw.go.jp/stf/shoukaibosyuukubun.html
- 消費者庁「有利誤認表示」: https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/representation_regulation/advantageous_misidentification/
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