
執筆者:辻 光明
代表税理士
経理に向いている人の特徴|月次締め・証憑確認・数字の違和感を見る

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結論:経理に向いている人は「正確そうな人」ではなく、締め・確認・説明を続けられる人
経理に向いている人を採用で見極めるとき、数字に強そう、几帳面そう、資格を持っている、という印象だけで判断すると入社後にズレが出ます。中小企業の経理は、月次締め、請求書・領収書の証憑確認、入金消込、支払予定、税理士や社内への確認、機密情報の管理が続く仕事です。
見るべきなのは、1円単位の作業を続ける集中力だけではありません。締切から逆算できるか、証憑の不足に気づけるか、数字の違和感を放置しないか、分からない処理を早めに相談できるか、権限と情報管理を守れるかです。
| 見る観点 | 経理で起きる場面 | 面接で確認すること |
|---|---|---|
| 月次締め | 売上・仕入・経費・給与の締め作業 | 期限から逆算して作業を進められるか |
| 証憑確認 | 請求書、領収書、契約書、振込明細 | 不足資料や記載漏れを確認できるか |
| 入金消込 | 売掛金、入金差額、振込名義違い | 差額や未入金を記録して追えるか |
| 数字の違和感 | 前月差異、残高不一致、重複計上 | 違和感を言語化して相談できるか |
| 情報管理 | 給与、取引先、口座、税務資料 | 見てよい情報と共有範囲を守れるか |
厚生労働省は、公正な採用選考について、応募者の基本的人権を尊重し、適性・能力に基づく基準で行うことを示しています。経理採用でも、性格の決めつけや家庭環境ではなく、経理業務に必要な行動を職務場面で確認します。

経理採用で最初に決める5つの基準
経理職の採用基準は、会社の規模、会計ソフト、税理士との分担、月次決算の頻度、請求・入金管理の複雑さで変わります。最初に、任せたい業務を5つに分けます。
| 基準 | 具体的な業務 | 教育で補えること |
|---|---|---|
| 締切管理 | 月次締め、支払日、請求書回収 | 社内カレンダー、チェックリスト |
| 正確性 | 仕訳入力、証憑照合、残高確認 | 会計ソフトの操作、勘定科目ルール |
| 確認行動 | 不明点、例外処理、差額の確認 | 相談先、承認フロー |
| 数字の違和感 | 前月比較、重複、漏れ、残高不一致 | レポートの見方 |
| 情報管理 | 給与、口座、取引先、税務資料 | 権限設定、保存ルール |
「経理経験者だから大丈夫」と決めず、どの業務をどの深さで経験してきたかを確認します。入力中心の経験と、月次締めや入金消込まで担当した経験では、入社後に任せられる範囲が違います。
月次締めを見る質問
月次締めを見ると、経理担当者としての段取り力が分かります。期限が迫ったときに場当たり的に処理するのではなく、資料回収、入力、確認、修正、報告までの順番を組めるかを確認します。
| 質問 | 良い回答で見たい点 | 追加で聞くこと |
|---|---|---|
| 月次締めで、どの作業を先に進めていましたか | 請求書回収、売上確認、経費精算などの順番を説明できる | 遅れそうな時は誰に連絡しましたか |
| 締切前に資料が揃わない時、どう対応しましたか | 未着資料をリスト化し、仮締めと確定処理を分けられる | どの時点で上長や税理士に共有しましたか |
| 月次締め後に修正が出た経験はありますか | 原因と再発防止を分けて話せる | 次月から何を変えましたか |
面接では「締切を守れますか」ではなく、締切までの具体的な手順を聞きます。締め作業の順番を説明できる候補者は、入社後も業務の引き継ぎがしやすいです。
証憑確認を見る質問
証憑確認は、経理の正確性が最も出やすい場面です。請求書や領収書を見るとき、金額だけでなく、日付、取引先、税区分、承認、支払条件、添付不足を確認できるかを見ます。
| 質問 | 確認したい行動 | 注意したい回答 |
|---|---|---|
| 請求書や領収書で、どこを確認していましたか | 金額、日付、取引先、支払条件、承認を確認できる | とにかく入力していた、とだけ答える |
| 証憑が不足していた時、どう対応しましたか | 不足内容を整理し、依頼先と期限を決められる | 自分の判断だけで処理する |
| 前月と金額が大きく違う支出があった時、どう見ていましたか | 理由を確認し、必要ならメモを残せる | たまたまだと思って流す |
証憑確認は「細かい性格かどうか」ではなく、会社の支払・税務・会計資料を守る行動として確認します。
入金消込と売掛管理を見る質問
入金消込は、経理未経験者や入力中心の経験者との違いが出やすい業務です。振込名義違い、手数料差引、分割入金、未入金、過入金をどう整理するかを聞きます。
| 質問 | 良い回答で見たい点 | 採用後フォロー |
|---|---|---|
| 入金と請求額が一致しない時、どう確認しましたか | 差額、振込名義、手数料、請求書番号を確認できる | 消込ルールを表にする |
| 未入金を見つけた時、どのように共有していましたか | 営業・担当者・上長へ事実ベースで共有できる | 督促判断は担当部署と分ける |
| 複数の請求をまとめて入金された時、どう処理しましたか | 請求明細と入金額を照合できる | 取引先別の照合手順を教える |
入金消込の経験が浅い候補者でも、数字の差を放置しない姿勢、確認先を整理する姿勢があれば、教育計画を立てやすくなります。
数字の違和感を見る質問
経理に向いている人は、数字が合わない時に焦って隠すのではなく、どこが違うのかを分けて確認できます。前月差異、残高不一致、重複計上、未払・前払の漏れなどを言語化できるかを見ます。
| 場面 | 質問 | 評価の観点 |
|---|---|---|
| 前月比較 | 前月と比べて大きく変わった数字を見た時、何を確認しましたか | 取引量、単価、計上時期を分けられるか |
| 残高確認 | 現金・預金・売掛金の残高が合わない時、どう探しましたか | 期間、取引先、入力重複を切り分けられるか |
| 重複計上 | 同じ請求書を二重に処理しそうになった経験はありますか | 防止策を説明できるか |
| 税理士確認 | 自分で判断できない処理をどう相談しましたか | 事実、資料、質問を整理できるか |
「ミスをしない人」を探すだけでは不十分です。ミスや違和感に気づいた後、早く共有し、再発防止に変えられるかを確認します。
情報管理を見る質問
経理は、給与、口座、取引先、税務資料など機密性の高い情報に触れます。採用時は、守秘義務という言葉を知っているかよりも、実務でどのように共有範囲を守ってきたかを聞きます。
| 質問 | 確認したいこと | 良い回答例 |
|---|---|---|
| 給与や口座情報など、限られた人だけが見る資料を扱った経験はありますか | 情報の種類と共有範囲を分けられる | 閲覧権限と保存場所を決めていた |
| 社内から数字を聞かれた時、どのように対応していましたか | 回答してよい範囲を確認できる | 上長確認が必要なものは即答しない |
| 個人情報を含む資料を送る時、何に注意していましたか | 宛先、添付、パスワード、保存先を確認できる | 送信前チェックをしていた |
個人情報保護委員会は、個人情報の取扱いについて事業者が守るべき考え方をガイドラインで示しています。経理採用では、情報管理を「まじめそう」ではなく、具体的な確認行動として見ます。
面接シートに入れるならこの8問
経理職向けの面接シートは、職務場面に沿って8問に絞ると運用しやすくなります。
| 目的 | 質問 |
|---|---|
| 月次締め | 月次締めで、どの作業を先に進めていましたか |
| 資料回収 | 締切前に資料が揃わない時、どう対応しましたか |
| 証憑確認 | 請求書や領収書で、どこを確認していましたか |
| 入金消込 | 入金と請求額が一致しない時、どう確認しましたか |
| 未入金 | 未入金を見つけた時、どのように共有していましたか |
| 数字の違和感 | 前月と比べて大きく変わった数字を見た時、何を確認しましたか |
| 相談行動 | 自分で判断できない処理をどう相談しましたか |
| 情報管理 | 限られた人だけが見る資料を扱う時、何に注意していましたか |
最後の質問は、経理の経験年数よりも、自社で任せる範囲と候補者の確認行動が合うかを見るために使います。
採用記録の書き方
採用記録は、印象ではなく職務行動で残します。
| 避けたい記録 | 書き換え例 |
|---|---|
| 几帳面そう | 請求書の金額、日付、支払条件、承認を確認していた経験を確認 |
| 数字に強そう | 前月差異の原因を、取引量、単価、計上時期に分けて確認した経験あり |
| まじめそう | 月次締めで未着資料をリスト化し、期限前に関係者へ依頼した経験あり |
| 口が堅そう | 給与・口座情報の閲覧権限と保存場所を分けて扱った経験を確認 |
不採用理由にする場合も、入社後フォローにする場合も、職務に関係する行動として残します。
公正採用と個人情報の注意点
厚生労働省は、採用選考では応募者の適性・能力に基づく採用基準を明確にすること、応募書類や面接で就職差別につながるおそれのある事項を含めないことを示しています。経理採用でも、家庭環境、思想信条、病歴などを採用判断に使わない運用が必要です。
個人情報保護委員会は、病歴などの要配慮個人情報について、不当な差別や偏見が生じないよう特に配慮を要する情報として説明しています。ストレス耐性や細かさを見たい場合も、健康状態や家庭事情ではなく、月次締め、証憑確認、入金消込、相談行動、情報管理の職務場面で確認します。
FAQ
Q: 経理は簿記資格があれば採用してよいですか?
Q: 未経験者でも経理として採用できますか?
Q: 適性検査の結果はどう使えばよいですか?
Q: 経理のミスを減らす採用基準はありますか?
Q: 採用後の定着には何が効きますか?
参考資料
- 厚生労働省「公正な採用選考の基本」 https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/basic.html
- 厚生労働省「事業主の皆様へ 採用選考の具体的な方法」 https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/methods.html
- 厚生労働省「公正な採用選考に関するよくある質問」 https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/question.html
- 厚生労働省「採用・選考時のルール」 https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudouseisaku/chushoukigyou/saiyou_senkou_rule.html
- 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」 https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/
- 個人情報保護委員会「要配慮個人情報とは」 https://www.ppc.go.jp/all_faq_index/faq4-q011
この記事を書いた人

辻 光明
代表税理士
税理士 / 認定経営革新等支援機関
税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。
ご注意事項
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