
執筆者:辻 光明
代表税理士
顧問税理士の選び方|料金相場と失敗回避5つ

結論:顧問税理士は「目的・体制・業務範囲」で選ぶ
顧問税理士選びで最も多い失敗は、「月額顧問料の安さ」で決めてしまい、期待していた支援(節税提案・資金繰り・融資・管理会計)が受けられないことです。顧問契約は毎月の伴走型サービスであるため、料金だけでなく、対応範囲と体制(誰が担当するか)を先に固めるのが合理的です。
また、税務代理・税務書類の作成・税務相談といった税理士業務は、税理士等に法律上の位置づけがある領域です。実務では、記帳代行だけでなく、申告・税務調査対応・経営判断の材料づくりまでを一体で考えることで、顧問料の「高い・安い」の評価軸が明確になります。
本記事では、料金相場の見方と、失敗しない5つのポイント、面談で確認すべき質問リストまでを整理します。
顧問税理士とは:依頼できる業務とスポットの違い
顧問税理士の基本(毎月の伴走支援)
顧問税理士(顧問契約)は、月次で会計・税務を確認し、年次の申告だけでなく、途中経過の意思決定を支える形が一般的です。典型的には次の業務が含まれます。
- 月次試算表の作成・レビュー、会計処理の助言
- 税務相談(節税の考え方、役員報酬、消費税、源泉など)
- 決算・申告(法人税、消費税、所得税等)
- 税務調査の事前準備・立会い支援(契約範囲による)
- 予実管理、資金繰り、融資資料の助言(提供有無は事務所差が大きい)
スポット契約との違い(必要な時だけ依頼)
一方、スポット契約は「決算申告だけ」「税務調査だけ」など、単発の業務委任です。コストは抑えやすい反面、月次の改善や先回りの提案が起きにくく、結果的に税負担やキャッシュフローが不利になることもあります。
顧問料の料金相場:内訳と見積りの見方
料金は「顧問料+決算料+オプション」で考える
顧問料は月額だけを見ても比較になりません。総額は「月額顧問料(12か月)+決算申告料+年末調整・法定調書等」で見てください。さらに、記帳代行や給与計算、税務調査立会いは別料金のことが多いです。
当法人の受任実務からみる目安(規模別)
以下は、税理士法人 辻総合会計が中小企業・クリニック支援で受けることが多い価格帯を、比較の目安として整理したものです(地域・業種・資料整備状況で変動します)。
| 事業規模の目安 | 月額顧問料(税務顧問中心) | 決算申告料(年1回) | 備考 |
|---|---|---|---|
| 小規模(売上〜3,000万円程度) | 2万円〜5万円 | 15万円〜30万円 | 記帳代行は別料金になりやすい |
| 中規模(売上3,000万〜2億円程度) | 4万円〜10万円 | 25万円〜60万円 | 消費税・部門別管理の有無で差が出る |
| クリニック等(人件費比率が高い) | 5万円〜12万円 | 30万円〜70万円 | 給与・社保、医療特有論点で工数増 |
見積りで必ず確認したい内訳
- 月次面談の頻度(毎月/隔月/オンラインのみ)
- 記帳代行の有無(入力、領収書整理、データ連携)
- 年末調整、法定調書、償却資産申告、給与支払報告書
- 税務調査の立会い(時間課金か、定額か)
- クラウド会計・請求・POSなど連携支援
失敗しない5つのポイント
1. 依頼目的が一致しているか(税務だけか、経営までか)
「申告を正しく出したい」のか、「融資・資金繰り・利益計画まで見たい」のかで、合う事務所は変わります。面談では、直近1年でどんな支援を受けたいかを3つに絞って伝えると、提案内容の質が見えます。
2. 業務範囲が契約書で明確か(追加料金の境界)
口頭説明だけだと、後から「それは別料金です」となりがちです。顧問契約書に“含まれる業務/別料金の業務”が明記されているかを確認してください。
3. 担当体制が適切か(誰が、どの頻度で対応するか)
税理士本人がどこまで関与するか、担当変更の頻度、繁忙期の連絡速度などは、満足度を左右します。実務では「初回だけ所長、以降は担当者のみ」というケースもあるため、担当者同席の面談が望ましいです。
4. 話しやすさと説明力(専門性を“翻訳”できるか)
専門用語を並べるだけでは経営判断に使えません。月次試算表を見て「次に何を変えるべきか」を、数字と行動に落として説明できるかが重要です。相性は軽視されがちですが、長期契約ほど影響が大きくなります。
5. IT対応とセキュリティ(クラウド連携・権限管理)
クラウド会計、請求、銀行連携、電子帳簿保存法の運用など、IT前提の体制かを確認してください。加えて、データ授受(共有ドライブ、メール添付)や権限管理、二要素認証など、情報管理の方針も確認すると安心です。
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依頼の手順:面談で確認すべき質問リスト
顧問税理士選定は、比較軸を揃えるほど成功確率が上がります。以下の流れで進めると判断がぶれにくくなります。
Step 1: 現状を棚卸しする(1枚で可)
売上規模、従業員数、会計ソフト、資料の整備状況、困りごと(例:消費税、資金繰り、役員報酬)を簡単にまとめます。
Step 2: 候補を3者程度に絞る
国税庁の案内等も参考にしつつ、業種対応(クリニック、建設、ITなど)や距離感(訪問・オンライン)で候補を整理します。
Step 3: 面談で質問する(例)
- 料金に含まれる業務、別料金となる業務は何ですか
- 月次は誰が担当し、面談頻度はどうなりますか
- 節税提案はどのタイミングで、どのように行いますか
- 税務調査が入った場合の支援範囲と費用はどうなりますか
- クラウド連携や電子帳簿保存法への対応方針はありますか
Step 4: 見積りを“総額”で比較する
月額×12+決算料+年末調整等を同条件で並べ、相談回数やレスポンス基準も合わせて比較します。
Step 5: 契約前に「引継ぎ」と「解約条件」を確認する
解約予告、データ返却、過年度資料の取扱いなどを事前に確認します。税理士変更は珍しくないため、出口条件までがセットです。
よくある質問
Q: 顧問料が安い税理士を選べば問題ありませんか?
A:
月額が安いこと自体は問題ではありません。ただし、面談頻度、相談手段、担当者の経験、記帳代行の有無などが限定されている場合があります。比較は「業務範囲と体制」を揃え、総額で判断するのが安全です。Q: 税理士変更はいつが良いですか?
A:
実務上は、期首(決算月の翌月)や決算前3〜6か月が進めやすい傾向にあります。決算直前は引継ぎ工数が増え、追加費用が発生しやすいため、早めに候補選定と資料整理を行うとスムーズです。Q: 顧問契約でどこまで相談できますか?
A:
契約内容次第です。税務相談は含まれることが多い一方、融資支援、補助金、労務、相続、M&Aなどは別サービスとして設計されることがあります。契約書・見積書で範囲を明確にしてください。Q: 税理士に依頼するとき、準備しておく資料はありますか?
A:
直近2期分の決算書・申告書、総勘定元帳、試算表、給与資料、借入金返済予定表、会計ソフトの状況(クラウド可否)を用意すると、見積りと提案の精度が上がります。まとめ
- 顧問税理士は「目的・業務範囲・体制(誰が担当か)」で選ぶと失敗しにくい
- 料金比較は月額だけでなく「年額総額(顧問料12か月+決算料+年次業務)」で行う
- 失敗回避の要点は、契約書の範囲明確化、担当体制、説明力、IT対応の確認
- 面談では質問リストで比較軸を揃え、条件を同一化して見積りを取る
- 税理士変更も視野に、引継ぎ・解約条件まで含めて契約設計する
参照ソース
- 国税庁「税理士制度のQ&A」: https://www.nta.go.jp/taxes/zeirishi/zeirishiseido/qa/index.htm
- 国税庁「税理士をお探しの方へ」: https://www.nta.go.jp/taxes/zeirishi/search/search.htm
- 衆議院「税理士法」: https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_housei.nsf/html/houritsu/01019510615237.htm
免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別事情により最適解は異なります。顧問契約の締結・変更は、具体的な資料と状況を踏まえて税理士へご相談ください。
この記事を書いた人

辻 光明
代表税理士
税理士 / 認定経営革新等支援機関
税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。
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