
執筆者:辻 光明
代表税理士
ストレス耐性を面接でどう見るか|病歴を聞かずに確認する行動質問例

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適性検査の結果をもとに、面接で確認すべき強み・注意点・職場適応の仮説を整理します。
結論:ストレス耐性は「病歴」ではなく、業務上の対処行動で確認する
面接でストレス耐性を見たいときに、病歴、通院歴、服薬、家庭事情、家族の支援状況を聞くのは避けます。確認すべきなのは、応募者の健康状態そのものではなく、募集職種で起きる業務上の負荷に対して、どのように優先順位をつけ、相談し、改善したかです。
中小企業の採用面接では、次のように置き換えると安全に確認しやすくなります。
| 聞きたいこと | 避けたい聞き方 | 置き換える質問 |
|---|---|---|
| 繁忙時の対応 | ストレスに強いですか | 複数の依頼が同時に来たとき、どのように優先順位を決めましたか |
| 相談行動 | メンタルは大丈夫ですか | 困ったとき、どの段階で誰に相談しましたか |
| ミス後の立て直し | 落ち込みやすいですか | 失敗後に、再発防止のため何を変えましたか |
| 継続力 | 長く続けられますか | 負荷が高い業務を続けるために工夫したことはありますか |
厚生労働省は、公正な採用選考について、応募者本人に責任のない事項や本来自由であるべき事項を把握しないことを示しています。ストレス耐性の確認も、職務に関係する行動事実に限定するのが基本です。

ストレス耐性という言葉をそのまま使わない
「ストレス耐性がありますか」と聞いても、面接で有効な情報は得にくいです。候補者は「あります」と答えやすく、採用側も印象評価に寄りやすくなります。
代わりに、募集職種で実際に発生する負荷を分解します。
| 負荷の種類 | 職場で起きる例 | 面接で見る行動 |
|---|---|---|
| 量の負荷 | 問い合わせ、来客、締切が重なる | 優先順位づけ、周囲への相談 |
| 対人負荷 | 顧客対応、クレーム、意見対立 | 感情的にならず事実を整理する力 |
| 変化の負荷 | 新しいシステム、担当変更、急な予定変更 | 学び直し、確認、メモ化 |
| 責任の負荷 | ミスが許されにくい作業、金額確認 | ダブルチェック、早めの報告 |
この表を使うと、ストレス耐性を人格評価ではなく、職務行動として確認できます。
NG質問と置き換え質問
1. 病歴・通院歴に踏み込まない
| NG質問 | 問題になりやすい理由 | 置き換え質問 |
|---|---|---|
| これまでメンタル不調になったことはありますか | 病歴や健康情報に触れる可能性がある | 忙しい時期に、業務を進めるために工夫したことはありますか |
| 通院や服薬はありますか | 要配慮個人情報に触れる可能性がある | 勤務上、事前に確認しておきたい条件はありますか |
| 体調を崩しやすい方ですか | 職務と関係しない健康推測になりやすい | 業務量が増えたとき、どのように周囲へ相談しますか |
個人情報保護委員会は、病歴などを要配慮個人情報として説明しています。採用面接では、職務上必要な範囲を超えて健康情報を聞かない設計にします。
2. 家族・生活環境で判断しない
| NG質問 | 問題になりやすい理由 | 置き換え質問 |
|---|---|---|
| 家族は仕事を応援してくれますか | 本人に責任のない事項に近い | 勤務可能な曜日・時間帯を確認させてください |
| 家庭の事情で休むことはありますか | 家族状況を把握する質問になりやすい | 事前に分かる勤務調整が必要な場合、どのように共有できますか |
| 一人暮らしですか、実家ですか | 生活環境を採否判断に使うおそれがある | 通勤時間と出勤可能時刻を確認します |
確認したいのは、家庭の中身ではなく、勤務条件と連絡方法です。
3. 精神論で評価しない
| NG評価 | なぜ弱いか | 行動ベースの確認 |
|---|---|---|
| 打たれ強そう | 面接官の印象に過ぎない | 指摘を受けた後に何を改善したか |
| 根性がありそう | 職務基準として説明しにくい | 負荷が高い時期をどう乗り切ったか |
| 繊細そう | 人格評価・決めつけになりやすい | 情報が不足したときにどう確認したか |
不採用記録にも「弱そう」「不安」ではなく、「繁忙時の優先順位づけに関する具体的な経験を確認できなかった」のように書きます。
使える行動質問例
ストレス耐性を確認したいときは、過去行動を聞きます。以下は、職務に関係する範囲で使いやすい質問例です。
| 見たい行動 | 質問例 | 深掘り |
|---|---|---|
| 優先順位づけ | 複数の仕事が同時に重なったとき、どう順番を決めましたか | 誰に相談しましたか、何を後回しにしましたか |
| 相談行動 | 自分だけでは判断できない場面で、どう動きましたか | 相談する前に何を整理しましたか |
| 立て直し | 失敗した業務と、その後の改善行動を教えてください | 同じミスを防ぐために何を変えましたか |
| 対人対応 | 相手が感情的になった場面で、どう対応しましたか | その後、上司や同僚にどう共有しましたか |
| 変化対応 | 新しい業務やツールを覚えた経験を教えてください | 最初の1週間で何をしましたか |
| 継続行動 | 負荷が高い仕事を続けるために工夫したことはありますか | どのタイミングで休憩や相談を入れましたか |
質問は「できますか」ではなく、「過去にどうしたか」で聞きます。応募者の自己評価よりも、実際の行動を確認できます。
適性検査の結果を使うときの注意点
適性検査で「ストレス耐性」「感情安定性」「変化対応」などの項目が出ることがあります。ただし、その結果をそのまま採否に使うのではなく、面接質問の仮説に変換します。
| 検査結果の見方 | 面接での使い方 | 記録例 |
|---|---|---|
| 変化対応が低め | 新しい業務を覚えた経験を聞く | 新システム導入時にメモを作って確認していた |
| 対人負荷に注意 | 意見対立やクレーム対応の経験を聞く | 顧客対応後に上司へ事実共有していた |
| 計画性が低め | 締切が重なった場面の優先順位を聞く | タスクを書き出し、当日中の相談をしていた |
| 慎重さが高め | スピードとのバランスを聞く | ダブルチェック範囲を決めて対応していた |
検査結果は候補者を分類するものではありません。面接で確認する質問を作るための補助資料として扱います。
面接メモの書き方
ストレス耐性に関する面接メモは、人格ではなく行動で残します。
| 避けたい記録 | 書き換え例 |
|---|---|
| ストレスに弱そう | 繁忙時の優先順位づけについて、具体的な過去経験を確認できなかった |
| メンタルが不安 | 自己判断で進めた後に相談が遅れた経験があり、報連相の支援が必要 |
| 打たれ弱い | 指摘を受けた後の改善行動について、再発防止策の具体例が少なかった |
| 仕事を抱え込みそう | 困ったときの相談タイミングが遅れやすい傾向があるため、初月は定例確認が必要 |
採用する場合も、不採用にする場合も、職務要件との関係が分かる記録にします。
採用後フォローへのつなげ方
面接で確認したストレス対処の傾向は、採用後のフォローにも使えます。ただし、本人を監視するためではなく、早めに相談できる環境を作るために使います。
| 面接で見えたこと | 入社後フォロー |
|---|---|
| 忙しい時に優先順位づけで迷いやすい | 初月は朝礼後に優先順位を確認する |
| 相談するまで抱え込みやすい | 週1回の短い面談を固定する |
| 変化対応に時間がかかる | 手順書と実務練習をセットにする |
| 指摘後の立て直しに支援が必要 | フィードバック後に次の行動を一緒に決める |
採用後フォローに使う場合も、検査レポート全体を広く共有するのではなく、教育上必要な行動メモへ変換します。
FAQ
Q: 面接で「ストレスに強いですか」と聞いてはいけませんか?
Q: 健康状態を確認したい場合はどうすればよいですか?
Q: 適性検査でストレス耐性が低く出たら不採用にできますか?
Q: 面接メモにはどこまで書いてよいですか?
Q: ストレス耐性の質問は全候補者に同じように聞くべきですか?
参考資料
- 厚生労働省「公正な採用選考の基本」 https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/basic.html
- 厚生労働省「事業主の皆様へ 採用選考の具体的な方法」 https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/methods.html
- 厚生労働省「公正な採用選考に関するよくある質問」 https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/question.html
- 厚生労働省「採用・選考時のルール」 https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudouseisaku/chushoukigyou/saiyou_senkou_rule.html
- 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」 https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/
- 個人情報保護委員会「要配慮個人情報とは」 https://www.ppc.go.jp/all_faq_index/faq4-q011
この記事を書いた人

辻 光明
代表税理士
税理士 / 認定経営革新等支援機関
税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。
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