
執筆者:辻 光明
代表税理士
若手社員がすぐ辞める原因|価値観のズレを面接と30日フォローで防ぐ

結論:若手社員の早期離職は、価値観そのものではなく「期待役割」と「成長環境」のズレを面接で確認すると減らせる
若手社員がすぐ辞める原因は、本人の価値観だけで片づけない方が安全です。実務では、入社前に聞いていた仕事内容と実際の役割、成長できると思っていた環境と現場の教育体制、相談してよい範囲、評価される行動がずれていることが早期離職につながります。
採用時には、価値観を性格診断のように分類するのではなく、職務に関係する期待役割、仕事観、成長環境、相談行動、定着条件を確認します。適性検査を使う場合も、点数で採否を決めるのではなく、面接質問と30日フォローの材料にします。
| 確認すること | 面接で聞くこと | 採用記録に残すこと |
|---|---|---|
| 期待役割 | 入社後にどんな役割を期待されると力を出しやすいか | 任せる仕事、教える仕事、まだ任せない仕事 |
| 仕事観 | 仕事で納得感を持ちやすい場面は何か | 仕事内容、評価、働き方の期待値 |
| 成長環境 | どのような教わり方で伸びやすいか | 教育担当、フィードバック頻度、習得順 |
| 相談行動 | 分からない時にどう動くか | 相談先、相談タイミング、報連相の例 |
| 定着条件 | 続けやすい職場条件は何か | 不安点、入社後フォロー、配置上の注意 |
厚生労働省は、新規学卒者の就職後3年以内離職状況を継続的に公表しており、若手の早期離職は多くの企業にとって採用後の重要課題です。一方で、公正な採用選考では、応募者の適性・能力に基づく基準で確認することが求められます。家庭環境や思想信条のような職務と関係しない事項ではなく、仕事に関係する行動と期待値を確認します。

価値観のズレを「性格」ではなく「仕事の期待値」に分解する
価値観という言葉は広いため、そのまま面接で聞くと抽象的になります。採用で見るべきなのは、職務に関係する期待値です。
| 抽象的な見方 | 採用で確認する見方 | 面接質問例 |
|---|---|---|
| 最近の若手は続かない | どの仕事なら継続しやすいか | これまで続けやすかった仕事や活動は何ですか |
| 成長意欲があるか | どんな教わり方で伸びるか | 新しいことを覚える時、どのような進め方が合いますか |
| 指示待ちかどうか | 分からない時の相談行動 | 判断に迷った時、誰へどのタイミングで相談しましたか |
| 安定志向か挑戦志向か | 変化や負荷への向き合い方 | 急な変更があった時、どう優先順位を立てましたか |
| 会社に合うか | 仕事内容、評価、教育の期待値 | どんな評価やフィードバックがあると働きやすいですか |
「合う・合わない」で終わらせると再現性がありません。仕事の場面に置き換えて聞くと、採用後に何をフォローすべきかまで見えます。
早期離職が起きやすい5つのズレ
若手社員の早期離職は、入社前に伝えた情報と入社後の実態がずれるほど起きやすくなります。
| ズレ | 入社前の認識 | 入社後の実態 | 面接で確認すること |
|---|---|---|---|
| 期待役割 | 補助業務から始める | すぐ一人で対応する | 最初に任せる仕事の範囲 |
| 成長環境 | 丁寧に教えてもらえる | 忙しくて聞きづらい | 教育担当と質問ルール |
| 評価 | 頑張れば見てもらえる | 何が評価されるか分からない | 評価される行動の説明 |
| 負荷 | 自分のペースで覚える | 繁忙期に一気に覚える | 繁忙期、期限、作業量 |
| 相談 | 困ったら聞ける | 誰に聞けばよいか分からない | 相談先と報連相の基準 |
面接では良い面だけを伝えるのではなく、忙しい時期、覚える量、失敗しやすい場面も説明します。候補者側の不安を先に聞くことが、入社後のフォロー設計になります。
面接質問に変換する
価値観を聞くときは、人生観や家庭事情ではなく、過去の仕事・学習・活動での行動を聞きます。
| 見たいこと | 面接質問 | 避けたい聞き方 |
|---|---|---|
| 期待役割 | 前職や学校活動で、任されてやりがいを感じた役割は何ですか | どんな人生を送りたいですか |
| 仕事観 | 仕事で納得感を持てた指示や評価はどんなものでしたか | 会社に忠誠心はありますか |
| 成長環境 | 新しい業務を覚える時、どの順番だと進めやすいですか | 根性はありますか |
| 相談行動 | 分からないことを相談した具体例を教えてください | 人間関係で悩みはありますか |
| 定着条件 | 長く続けるために、最初の1カ月で確認したいことは何ですか | 結婚や家庭の予定はありますか |
職務遂行に関係しない質問を避け、仕事の場面での行動確認に寄せます。採用記録にも、印象ではなく確認した事実を残します。
適性検査を使う場合の見方
適性検査は、若手社員を「辞めやすい人」と決めつける道具ではありません。面接で確認する質問と、入社後に支援する項目へ変換します。
| 検査結果で気になる傾向 | 面接質問 | 30日フォロー |
|---|---|---|
| 変化への負荷が高い | 急な変更があった時、どう対応しましたか | 業務変更時の説明を厚くする |
| 自己主張が弱い | 困った時に相談した経験はありますか | 相談してよい基準を初日に伝える |
| 対人負荷が高い | 初対面や電話対応で困った経験はありますか | 対応範囲と引き継ぎ先を決める |
| 完璧主義が強い | 締切と品質がぶつかった時、どう調整しましたか | 優先順位を一緒に確認する |
| 学習に時間がかかる | 新しい仕事を覚える時の工夫はありますか | 習得順を細かく分ける |
結果は採否判定ではなく、期待役割と成長環境のすり合わせに使います。
採用記録の書き方
採用記録は、あとから入社後フォローに使える形で残します。
| 避けたい記録 | 書き換え例 |
|---|---|
| 若いので成長しそう | 新しい業務を覚える時、メモ、実演、確認の順で進めると回答 |
| 価値観が合いそう | 評価される行動として、期限を守ることと相談の早さを重視すると確認 |
| すぐ辞めなさそう | 継続条件として、初月の業務量、相談先、フィードバック頻度を確認 |
| コミュニケーションが良い | 分からない時に先輩へ相談し、メモを残した経験を確認 |
採用記録が具体的だと、入社初日から教育担当へ引き継げます。
入社後30日フォローに変換する
面接で確認した不安点は、入社後30日のフォロー項目にします。
| 期間 | 確認すること |
|---|---|
| 初日 | 期待役割、相談先、最初に覚える仕事、禁止事項 |
| 1週目 | 分からないことを相談できているか、メモの取り方 |
| 2週目 | 仕事量、期限、優先順位のズレ |
| 3週目 | 評価される行動が伝わっているか |
| 30日 | 継続条件、教育負担、配置や業務範囲の修正 |
早期離職を防ぐには、採用前の確認で終わらせず、入社後に実際のズレを拾う仕組みが必要です。
辻総合会計グループで支援できること
辻総合会計グループでは、若手採用を採用単体ではなく、人件費、教育負担、業務分担、定着コストまで含めて整理します。採用基準、面接質問、採用記録、30日フォローをつなげることで、入社後の現場負担を見える化できます。
公正採用と個人情報の注意点
厚生労働省は、採用選考では応募者の適性・能力に基づく採用基準とすること、応募書類や面接で就職差別につながるおそれのある事項を含めないことを示しています。若手採用でも、家庭環境、思想信条、病歴など、職務遂行と関係しない事項を採用判断に使わない運用が必要です。
個人情報保護委員会は、個人情報の取扱いについて事業者が守るべき考え方をガイドラインで示しています。適性検査や面接メモを扱う場合は、閲覧者、保存場所、保存期間、削除方針を決めます。
FAQ
Q: 若手社員の早期離職は価値観の問題ですか?
Q: 面接で価値観を聞いてもよいですか?
Q: 適性検査で辞めやすい人を見抜けますか?
Q: 早期離職を防ぐには何から始めればよいですか?
Q: 採用記録には何を残せばよいですか?
参考資料
- 厚生労働省「公正な採用選考の基本」 https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/basic.html
- 厚生労働省「事業主の皆様へ 採用選考の具体的な方法」 https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/methods.html
- 厚生労働省「公正な採用選考に関するよくある質問」 https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/question.html
- 厚生労働省「採用・選考時のルール」 https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudouseisaku/chushoukigyou/saiyou_senkou_rule.html
- 厚生労働省「新規学卒者の離職状況」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000137940.html
- 厚生労働省「職場情報の提供制度」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000122234.html
- 個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」 https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/
- 個人情報保護委員会「要配慮個人情報とは」 https://www.ppc.go.jp/all_faq_index/faq4-q011
この記事を書いた人

辻 光明
代表税理士
税理士 / 認定経営革新等支援機関
税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。
ご注意事項
本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。
税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。
記事の内容は法令の改正等により変更される場合があります。 最新の情報については、関係省庁の公式サイト等でご確認ください。

