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クリニック向けコラム
作成日:2026.04.06
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

クリニック開業減少の理由2026|税理士が解説

8分で読めます
クリニック開業減少の理由2026|税理士が解説

クリニック新規開業が減っている理由とは

結論からいうと、2026年時点でクリニックの新規開業が減っているように見えるのは、開業コストの上昇、規制・実務負担の増加、そして承継シフトが同時に進んでいるためです。開業希望の医師にとって問題なのは、以前より「開業すること」自体が難しいのではなく、開業後に安定経営へ乗せるまでのハードルが上がっている点です。

厚生労働省の医療施設動態調査では、2024年の一般診療所は総数105,207施設で、前年より313施設の純増でした。一方で、開設7,035施設に対し廃止6,501施設と差は大きくなく、新規開業が増え続ける局面ではなくなっていることが読み取れます。つまり、件数がゼロになったのではなく、「増えにくい市場」に変わったと理解するのが実務的です。

ここがポイント
「開業が減っている」という表現は、必ずしも毎年一方向に減少しているという意味ではありません。実務では、開業件数そのものよりも、開設件数と廃止件数の差が縮小しているか、開業後の損益分岐点が上がっているかを見るほうが重要です。

クリニック開業数の推移から見えること

開業数の推移を見ると、2026年の論点は「開業件数」より「純増余地」です。2024年は一般診療所の開設が7,035施設、廃止が6,501施設で、増加幅は限定的でした。人口減少が進む地域では、患者数の自然増が見込みにくく、同じ診療圏で新規参入しても取り分の奪い合いになりやすくなります。

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指標2024年の状況実務上の見方
一般診療所総数105,207施設市場自体は維持されている
開設数7,035施設新規参入は一定数ある
廃止数6,501施設退出も多く純増余地は小さい
純増313施設「増える市場」ではなくなりつつある

この数字からいえるのは、2026年の開業判断では「まだ開業できるか」ではなく、「どの地域・診療科・体制なら勝てるか」を先に設計する必要があるということです。

開業 減っている 理由を誤解しないこと

よくある誤解は、規制強化だけで開業が止まっていると考えることです。実際には、規制だけでなく、資金調達、人材採用、内装・医療機器価格、電子カルテやセキュリティ対応まで含めた総コストの上昇が背景にあります。初期投資と固定費の両方が重くなったことが、最も大きな変化です。

新規開業に影響する規制とは何か

2026年の開業では、単に物件を借りて診療を始めればよい時代ではありません。保健所対応、厚生局への届出、個人情報保護、サイバーセキュリティ、オンライン資格確認、労務管理など、開業時に整理すべき論点が増えています。医療法人で開業する場合は、都道府県ごとの認可・届出実務も関係し、スケジュール管理がより重要になります。

規制の影響は「禁止」より「準備負担」の増加

新規開業 規制 影響という検索意図で見落とされがちなのは、規制が開業を直接禁止するというより、準備コストを押し上げる点です。たとえば次のような対応は、いまや実務上ほぼ必須です。

  • 個人情報・サイバーセキュリティ体制の整備
  • オンライン資格確認やレセプト関連のIT整備
  • 雇用契約、就業規則、勤怠管理の整備
  • 感染対策や医療安全の文書化
  • 医療法人化する場合の認可・定款・会計対応
ここがポイント
規制対応は「開業時だけ」の論点ではありません。開業後も監査、届出、更新、研修、情報管理が続くため、院長一人で抱えず、税理士・社労士・行政書士・ベンダーの役割分担を初期から決めておくことが重要です。

コスト上昇が開業を難しくしている理由

コスト面では、建築費、内装費、医療機器、賃料、人件費の上昇が同時に進んでいます。国土交通省は建設工事費デフレーターを継続公表しており、医療施設に限らず建設関連コストの上昇圧力が続いていることが確認できます。加えて、2026年には医療機関向けに賃上げ・物価上昇支援事業が示されており、行政もコスト増を政策課題として認識しています。

以前より重くなった固定費

特に重いのは、開業時の一時費用ではなく、毎月出ていく固定費です。

  • 看護師・医療事務の採用単価上昇
  • テナント賃料や共益費の上昇
  • 電子カルテ、予約、問診、セキュリティの月額費用
  • 借入金利上昇による返済負担増

このため、同じ売上予測でも、以前より損益分岐点が高くなっています。開業計画書では、満額売上の見込みよりも、患者数が計画比80%でも資金繰りが回るかを先に確認すべきです。

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承継シフトで「ゼロから作る開業」が相対的に減る

2026年に特に重要なのが承継シフトです。厚生労働省の医師統計では、診療所に従事する医師の平均年齢は60.1歳で、年齢階級では60〜69歳が最も多く、70歳以上も23.8%を占めています。つまり、今後は高齢院長の引退や世代交代が続きやすく、地域によっては「新規開業」より「既存クリニックの引継ぎ」のほうが合理的になっています。

承継と新規開業の違い

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項目ゼロから新規開業承継開業
初期投資高くなりやすい抑えやすい
患者基盤一から構築既存患者を引継げる可能性
採用立ち上げ負担が大きい既存スタッフ維持も可能
リスク立ち上がり赤字が重い引継ぎ条件の精査が必要

承継は万能ではありませんが、2026年の市場では有力な選択肢です。開業件数が減るというより、開業の形が「新設」から「承継」へ移っていると考えると実態に合います。

2026年に開業判断をする手順

Step 1: 診療圏ではなく損益分岐点を先に確認する

患者数予測だけでなく、家賃、人件費、返済額、システム費を入れて月次収支を作成します。

Step 2: 新設か承継かを同時比較する

物件取得費、内装費、機器更新費、既存患者の引継ぎ可能性を比べます。

Step 3: 規制対応の担当を決める

保健所、厚生局、労務、会計、IT、個人情報保護を誰が担うか明確にします。

Step 4: 余裕資金を厚めに確保する

開業後6〜12か月の赤字耐性を持たせ、想定外の採用費や改修費に備えます。

当法人でも、以前は「良い立地が見つかったらまず出店」という相談が多くありましたが、近年は「新設と承継のどちらが安全か」「固定費がどこまで耐えられるか」という相談が中心です。現場感覚としても、2026年は勢いだけで開業する局面ではありません。

よくある質問

Q: 2026年でもクリニックの新規開業は可能ですか? ▼
可能です。ただし、建築費、人件費、IT費用、規制対応コストが上がっているため、以前より精密な事業計画が必要です。診療圏の良し悪しだけでなく、固定費耐性の確認が重要です。
Q: 開業が減っているなら承継のほうが有利ですか? ▼
一般論では有利になりやすいです。既存患者、スタッフ、設備を引き継げる可能性があるためです。ただし、老朽化設備、賃貸条件、未収金、評判などのデューデリジェンスは欠かせません。
Q: 規制の影響で個人開業は不利になっていますか? ▼
直ちに不利とはいえませんが、個人情報管理、労務、IT、届出実務などの負担は増えています。院長一人で抱え込む前提の開業は厳しくなっています。

まとめ

  • 2026年にクリニック開業が減っているように見える主因は、コスト上昇、規制対応負担、承継シフトの3つ
  • 一般診療所は依然として開設されているが、開設数と廃止数の差は大きくなく、純増余地は小さい
  • 診療所医師の高齢化が進んでおり、今後は新設より承継が現実的な選択肢になる地域が増える
  • 規制は開業禁止ではなく、準備と運営の実務負担を重くする形で影響している
  • 個別の開業判断では、診療圏より先に損益分岐点と資金繰りを確認することが重要

参照ソース

  • 厚生労働省「令和6(2024)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況」: https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/24/
  • 厚生労働省「令和6(2024)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」: https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/24/
  • 国土交通省「建設工事費デフレーター」: https://www.mlit.go.jp/statistics/details/t-other-2_tk_000362.html

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

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