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クリニック向けコラム
作成日:2025.08.26
更新日:2026.01.02
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

医師国保と厚生年金の加入判断ポイント|クリニック専門税理士が解説

8分で読めます
医師国保と厚生年金の加入判断ポイント|クリニック専門税理士が解説

医師や従業員が入れる保険の結論

医師国保は「医療保険(医師等の国民健康保険組合)」の枠組みであり、厚生年金は「年金(被用者の公的年金)」です。つまり、医師国保=健康保険の代替になり得ても、厚生年金の代替にはなりません。
クリニックでは「法人か個人か」「従業員の働き方」「社会保険の適用事業所に該当するか」で加入先が変わり、誤ると未加入・遡及・手続遅延が実務リスクになります。

税理士法人 辻総合会計(スタッフ約30名)では、医療機関の税務・労務の相談で「医師国保に入っているから社会保険は不要だと思っていた」「パートの加入要件がわからない」といった行き違いを頻繁に見ます。本記事では、制度の全体像と判断の順序を実務目線で整理します。

ここがポイント
本記事は制度の一般的な解説です。国保組合の規約や加入可否、個別の雇用契約・勤務実態、法人役員の取扱い等により結論が変わります。最終判断は、顧問税理士・社労士や所轄窓口への確認を推奨します。

医師国保とは何か(国民健康保険組合の一類型)

医師国保の位置づけ

国民健康保険は、被用者保険等に加入していない住民を対象とする医療保険で、市町村国保と、業種ごとに組織される国民健康保険組合から構成されます。医師国保は、この「国民健康保険組合」の枠組みで運営されるものです。
したがって、医師国保でカバーできるのは原則として医療保険領域であり、年金は別建てで考える必要があります。

医師国保で押さえる実務ポイント

  • 加入できる範囲(医師本人、従業員、家族の扱い等)は国保組合ごとの規約で異なります。
  • 保険料(組合費)も組合ごとの算定となり、所得・世帯・区分などの影響を受けます。
  • 傷病手当金・出産手当金の有無は「社会保険の健康保険」と同じとは限りません(国保は法定給付が異なり、独自給付の有無も組合・自治体で差があります)。

厚生年金とは何か(社会保険の中核)

厚生年金は「会社で働く人の年金」

厚生年金は、被用者(会社等に雇用される人)が加入する公的年金で、加入すると「基礎年金(国民年金)」に上乗せして厚生年金が終身で支給される仕組みです。健康保険とセットで扱われることが多く、一般に「社会保険(健康保険・厚生年金)」として加入管理します。

クリニックが注意すべき適用の考え方

  • 医療(クリニック)は、個人事業所でも一定条件で社会保険の適用対象になり得ます。
  • さらに制度改正により、短時間労働者の加入拡大が段階的に進んでおり、「うちはパート中心だから大丈夫」という前提が崩れやすい点が重要です。
ここがポイント
2025年6月13日に成立した年金制度改正法に関する厚労省資料では、短時間労働者の企業規模要件の縮小・撤廃や、賃金要件(いわゆる年収106万円の壁に関連)の撤廃方針、個人事業所の適用対象拡大(2029年10月施行)などが整理されています。最新の施行時期・対象範囲は、必ず公表資料で確認してください。

医師国保と厚生年金(社会保険)の違い

医師国保と社会保険は「どちらが得か」ではなく、まず加入義務の有無が起点です。比較の軸を整理すると判断が速くなります。

←横にスクロールできます→
比較項目医師国保(国保組合)社会保険(健康保険+厚生年金)
対象被用者保険等に加入していない人のうち、組合の規約に該当する者適用事業所に使用される正社員等+要件を満たす短時間労働者
カバー範囲医療保険(年金は別)医療保険+厚生年金(年金の上乗せ)
保険料負担原則、本人(世帯)側中心(組合規約で算定)原則、労使折半(事業主負担あり)
給付の考え方法定給付の枠組みが被用者保険と同一ではない(独自給付は組合差)傷病・出産等の給付が制度として整理されている(要件あり)
実務の論点規約確認が必須/年金は国民年金等の設計が必要適用判断、パート要件、給与計算・届出運用が必須

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クリニックの加入判定:現場で迷わない手順

以下は「誰がどの保険に入るか」を最短で決めるための実務フローです。制度は複雑ですが、順序を固定するとブレが減ります。

Step 1: 事業形態を確定する(法人/個人)

法人は社会保険の適用が前提になりやすく、役員・従業員の区分整理が重要です。個人でも、業種・人数等で適用となるケースがあるため、「個人=任意」と決めつけないことが第一歩です。

Step 2: 従業員の雇用区分と勤務実態を棚卸しする

特にパート・アルバイトは、契約上の所定労働時間と賃金設計を整理します。短時間労働者の加入要件として、一般に次のような要件が整理されています(例:週20時間以上30時間未満、所定内賃金月額8.8万円以上、2か月超の雇用見込み、学生除外)。
また、契約上20時間未満でも実労働が2か月連続で週20時間以上となり、その後も続く見込みがある場合は、3か月目から加入対象となる考え方が示されています。

Step 3: 社会保険の適用拡大(最新動向)を踏まえて判定する

2024年10月には、従業員数51~100人規模の企業等で働くパート・アルバイトが新たに適用となった整理があります。さらに、2025年成立法の説明資料では、企業規模要件の段階的撤廃や賃金要件の撤廃方針等が示されており、今後「該当者が増える」前提で設計しておくと安全です。

Step 4: 医師国保の可否は「規約」で最終確認する

医師本人が医師国保に加入できるか、従業員が加入できるか、家族の扱いなどは組合規約で差が出ます。社会保険の適用がある従業員まで医師国保で運用できるとは限りません。ここを曖昧にすると、後からの切替・遡及で負担が膨らみます。

よくある質問

Q: 医師国保に入っていれば、厚生年金には入らなくてよいですか? ▼

A:

一般論として、医師国保は医療保険であり、厚生年金の代替ではありません。勤務形態や適用事業所該当性により、厚生年金(社会保険)加入が必要なケースがあります。医師国保と厚生年金は「同列の選択肢」ではない点が重要です。
Q: パートは何時間から社会保険に入りますか? ▼

A:

典型的には、週の所定労働時間が20時間以上30時間未満で、所定内賃金月額8.8万円以上、2か月超の雇用見込み、学生ではない、といった複合要件で整理されています。加えて、適用拡大の対象となる事業所規模の区分も関係します。最新の適用範囲は改正により変動するため、公表資料での確認が必要です。
Q: 個人クリニックでも社会保険は強制ですか? ▼

A:

条件次第で強制適用となり得ます。特に医療は、個人事業所でも一定の人数要件等で適用対象になり得る点が論点です。さらに、2029年10月施行の適用対象拡大(当分の間の経過措置を含む)も示されているため、早めの制度設計が有効です。

まとめ

  • 医師国保は医療保険(国保組合)であり、厚生年金の代替ではない
  • クリニックの加入判断は「法人/個人」「適用事業所」「雇用区分(特にパート)」の順で整理する
  • パートの加入は週20時間等の複合要件で判定し、勤務実態の継続でも加入対象になり得る
  • 2024年以降の適用拡大、2025年成立法の方向性(企業規模要件・賃金要件等の見直し)を前提に設計する
  • 医師国保の可否・給付・保険料は組合規約で差があるため、必ず最終確認する

参照ソース

  • 厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00021.html
  • 厚生労働省「社会保険適用拡大 特設サイト(対象となる事業所・従業員)」: https://www.mhlw.go.jp/tekiyoukakudai/koujirei/jigyonushi/taisho/
  • 厚生労働省「国民健康保険制度」: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/koukikourei/index_00002.html

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

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