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中小企業向けコラム
作成日:2026.02.27
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士

防衛特別法人税の節税対策|2026決算の要点を税理士が解説

8分で読めます
防衛特別法人税の節税対策|2026決算の要点を税理士が解説

防衛特別法人税とは(2026年からの法人税上乗せ)

防衛特別法人税とは、令和8年4月1日以後に開始する事業年度から、各事業年度の所得に対する法人税が課される法人に追加で課される新しい国税です。税率は4%で、計算の土台となる「基準法人税額」から年500万円を控除した金額に4%を乗じて算定します。

ポイントは、「利益(所得)」に直接4%をかけるのではなく、法人税額(一定の税額控除を適用しないで計算した法人税額)を起点にして法人税に上乗せされる点です。国税庁の解説では、防衛特別法人税額が0でも申告が必要と明記されています。

ここがポイント
防衛特別法人税は、法人税・地方法人税の申告書と一体の様式ですが、別表一等で記載欄が別葉になるため、提出漏れに注意が必要です。税額が0でも「0」と記載して提出します。

当記事では「防衛増税 決算対策」という検索意図に合わせ、2026年決算(2026年4月以後開始事業年度の決算)に向けて、中小企業が押さえるべき節税の論点を実務ベースで整理します(税理士法人 辻総合会計の現場で多い相談類型も交えて解説します)。

防衛特別法人税の計算式と年500万円控除の意味

計算の全体像(ざっくり把握)

防衛特別法人税は、概ね次の考え方です。

  • 基準法人税額 = 所得に対する法人税額(ただし所得税額控除等、一定の税額控除は使わない前提で計算)
  • 課税標準法人税額 = 基準法人税額 − 基礎控除額(年500万円)
  • 防衛特別法人税額 = 課税標準法人税額 × 4%

この「年500万円控除」があるため、基準法人税額が年500万円以下なら、防衛特別法人税は原則として0になります(ただし申告は必要)。

税額控除が効きにくい構造に注意

防衛特別法人税の基準法人税額は、所得税額控除・外国税額控除など、国税庁資料で列挙される一定の税額控除を含めずに計算する仕組みです。つまり、普段の法人税で効く税額控除があっても、防衛特別法人税の「土台」を直接は下げない場合があり、想定より上乗せが出るケースがあります。

中小企業への影響:どれくらい増える?(比較表)

中小企業でよくある「基準法人税額ベース」で簡易試算すると、上乗せイメージは次のとおりです(概算・端数等は無視)。

←横にスクロールできます→
基準法人税額(年)基礎控除(年500万円)控除後防衛特別法人税(×4%)備考
300万円0円0円申告は必要
500万円0円0円申告は必要
600万円100万円4万円実務では少額でも別表対応
1,000万円500万円20万円追加納付のインパクトが顕在化
2,000万円1,500万円60万円役員報酬・設備投資の判断に影響

「数万円なら大丈夫」と見える一方で、決算直前に利益がブレる業種(建設、医療関連、IT受託など)では、想定外に基準法人税額が跳ね、上乗せが出ることがあります。2026年からは、法人税の着地点だけでなく、基準法人税額500万円ラインを意識した決算着地管理が重要です。

2026年の決算対策(防衛増税を踏まえた節税ポイント)

ここからが実務の核心です。防衛特別法人税そのものを「ゼロにする」ことだけが目的ではなく、通常の法人税・資金繰り・金融機関評価まで含めて最適化します。

1) 利益調整の王道:費用計上の精度を上げる

決算対策で最も再現性が高いのは、計上漏れの防止です。代表例は次のとおり。

  • 未払費用(社会保険料の会社負担分、外注費の検収済・未請求分 など)
  • 棚卸資産の評価(過大計上の是正、評価損の検討)
  • 修繕費と資本的支出の区分(税務上の取扱いに留意)

「防衛特別法人税を下げたい」より先に、「法人税の課税所得が適切か」を点検するだけで、基準法人税額が下がり、結果として上乗せも抑えられることが多いです。

2) 設備投資・少額資産の扱いを再点検する

中小企業の決算対策では、少額減価償却資産の特例等を含め、投資時期と償却の設計が重要です。防衛特別法人税の計算は法人税額ベースなので、課税所得を圧縮できる施策は、結果として上乗せ抑制につながり得ます。

ただし、投資はキャッシュアウトを伴います。節税額(法人税+防衛特別法人税の抑制)と、資金繰り・借入条件を同時に見て判断してください。

ここがポイント
「設備投資=節税で得」という単純化は危険です。投資の必要性、稼働率、資金繰り、リースと購入の比較まで含めた意思決定が前提になります。

3) 役員報酬・賞与・退職金:制度上の制約を理解して動く

  • 役員報酬は原則として期中に自由に増減できず、損金算入要件(定期同額給与など)に制約があります。
  • 決算賞与は、支給要件と損金算入要件(未払計上の可否など)を満たす運用が必要です。
  • 役員退職金は効果が大きい一方で、支給理由・金額の相当性、株主総会議事録などの証憑整備が必須です。

防衛特別法人税だけを目的に動かすと、法人税側で否認リスクが出ます。税務調査耐性とセットで設計してください。

4) 繰越欠損金・税額控除の見込み管理(効く税を分ける)

防衛特別法人税は一定の税額控除を除外して基準法人税額を計算するため、「法人税で効く対策」と「防衛特別法人税の土台に効きにくい対策」が混在します。

実務では、次の2段階で見積もると判断がぶれません。

  • 法人税(+地方法人税)を通常どおり試算
  • その上で、防衛特別法人税を別途試算(基準法人税額の定義に従う)

「税額控除があるから大丈夫」と思っていたのに、防衛特別法人税が発生して資金繰りが狂う、という事故を防げます。

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実務の進め方:防衛特別法人税を織り込んだ決算対策手順

Step 1: 事業年度の開始日を確認する

令和8年4月1日以後に開始する事業年度が対象です。まず自社の期首(例:4月決算、3月決算など)を確認し、対象年度かどうかを確定します。

Step 2: 期末2〜3か月前に基準法人税額の概算を出す

試算表から利益着地を見積もり、法人税の概算とともに基準法人税額を推計します。年500万円ラインをまたぐかが、決算対策の優先順位を左右します。

Step 3: 決算対策メニューを資金繰り込みで選定する

費用計上の精度向上、投資、賃上げ、在庫圧縮など、キャッシュ影響を並べて検討します。節税額だけで意思決定しないことが重要です。

Step 4: 申告書(別表)対応を前提にスケジュールを組む

防衛特別法人税は申告書一体様式ですが別葉の提出漏れに注意が必要です。税額0でも申告が必要なので、顧問税理士・経理体制で締切逆算の運用に切り替えます。

よくある質問

Q: 防衛特別法人税は、利益(所得)に4%をかける税金ですか? ▼
いいえ。基本は「法人税額(基準法人税額)−年500万円」に4%をかけて計算する法人税の上乗せです。利益に直接4%をかける設計ではありません。
Q: 基準法人税額が500万円以下なら、何もしなくてよいですか? ▼
税額は0でも、原則として防衛特別法人税の確定申告書の提出が必要です。別表の該当欄に「0」と記載して提出します(提出漏れに注意)。
Q: 税額控除(外国税額控除など)がある会社は、防衛特別法人税も下がりますか? ▼
一部の控除は防衛特別法人税でも考慮され得ますが、基準法人税額の計算では一定の税額控除を含めない扱いが示されています。法人税側の試算とは別に、防衛特別法人税を分けて見積もるのが安全です。
Q: 決算対策として、何から手を付けるべきですか? ▼
まずは計上漏れの洗い出し(未払費用、棚卸、区分判定)で課税所得を適正化し、そのうえで投資や人件費施策を資金繰り込みで検討する順番がお勧めです。個別事情で最適解が変わるため、早めの試算が有効です。

まとめ

  • 防衛特別法人税は2026年4月1日以後開始事業年度から、法人税に上乗せされる新税(税率4%)
  • 計算は「基準法人税額−年500万円」を土台にするため、500万円ラインが実務上の分岐点
  • 税額控除があっても、基準法人税額の定義により上乗せが残ることがあるため、法人税試算と分けて見積もる
  • 決算対策は、計上漏れ防止→投資・人件費施策を資金繰り込みで選定→申告別表対応まで含めて運用設計する
  • 税務上の取扱いは個別事情で異なるため、最終判断は顧問税理士等と確認が必要

参照ソース

  • 国税庁「防衛特別法人税が創設されました(令和7年5月)」: https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/0025004-109_1.pdf
  • e-Gov法令検索「我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法」: https://laws.e-gov.go.jp/law/505AC0000000069

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士

税理士 / 認定経営革新等支援機関

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

記事の内容は法令の改正等により変更される場合があります。 最新の情報については、関係省庁の公式サイト等でご確認ください。

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