
執筆者:辻 光明
代表税理士
クラウド会計対応税理士の探し方|freee・MF確認術

クラウド会計に対応した税理士の探し方は、「候補の探し方」よりも先に、対応の定義を自分の中で決めることが重要です。単に「freeeやMFにログインできる」だけでは、月次の試算表が遅い・証憑整理が止まる・電子取引保存で迷う、といった実務トラブルが起きがちです。この記事では、freee・マネーフォワード(MF)対応かどうかを契約前に確認する具体的な手順をまとめます。
クラウド会計「対応」とは何を指すのか
「クラウド会計対応」と一口に言っても、対応範囲に段階があります。まずは以下のどこまで任せたいかを言語化してください。
- 入力支援:領収書・請求書の整理方法を設計し、仕訳の入力ルールを決める
- 月次監査:残高チェック、勘定科目の妥当性確認、試算表の作成
- 申告:法人税・消費税・所得税の申告、電子申告(e-Tax)まで
- 電子保存:電子取引データの保存ルール整備(電子帳簿保存法)
- 運用改善:自動連携(銀行・クレカ・POS等)の精度改善と例外処理の設計
国税庁の電子帳簿等保存制度の特設サイトでも、電子データでやり取りした取引情報(電子取引)には保存義務と保存方法がある点が示されています。クラウド会計を使うなら、入力だけでなく「保存・証跡」まで含めた設計が必要です。【電子帳簿等保存制度特設サイト|国税庁】
クラウド会計対応の税理士の探し方
探し方は複数ありますが、重要なのは「候補を広げつつ、早い段階で落とす」ことです。
1) 既存ユーザーの紹介・同業ネットワーク
同じ業種(例:クリニック、EC、建設、士業)でクラウド運用している先からの紹介は、運用の相性が合いやすいです。特に「毎月どこまでやってくれるか」「レスポンス速度」など、Webでは分からない要素が拾えます。
2) 税理士法人・事務所のWebで運用スタンスを読む
「freee対応」「MF対応」の表記だけでなく、以下が書かれているかを見ます。
- 記帳代行か、自計化支援か(どちらが得意か)
- 月次締めの期限(例:翌月○日まで)
- 利用ツール(ストレージ、証憑管理、チャット、ワークフロー)
- 電子取引保存への言及(あると運用成熟度が高い)
3) 面談前に「質問票」を送り、合わない候補を省く
面談は相互にコストがかかるため、先に質問票でふるい分けします(後述のチェックリストをそのまま使えます)。
freee・マネーフォワード対応かどうかの確認方法
ここからが本題です。契約前に、口約束ではなく「作業の実態」を確認します。
比較表:同じ対応でも中身が違う
| 確認項目 | 対応が浅い例 | 対応が深い例 |
|---|---|---|
| 連携設定(銀行・クレカ等) | 連携は顧客任せ | 初期設定・例外ルールまで設計 |
| 仕訳ルール | 都度相談 | 科目・摘要・消費税区分ルールを明文化 |
| 月次の締め | 期限がない/遅れがち | 翌月○日締め、残高チェック込み |
| 消費税区分 | 入力の都度手探り | 課税/非課税/不課税・控除判定を運用に組み込む |
| 電子取引保存 | 「とりあえずPDFで」 | 保存要件を踏まえ、検索性・証跡まで設計 |
| 電子申告(e-Tax) | 紙提出中心 | e-Tax前提で届出・運用を案内 |
面談で必ず聞く「5つの質問」
- 「freee(またはMF)で、月次のチェックはどこまで行いますか(残高・売上計上・未払/前払・役員報酬など)」
- 「連携の例外処理(Amazon、決済代行、返金、立替など)は誰がどう処理しますか」
- 「消費税区分の判断は、入力時点で誰がどう担保しますか(チェック方法はありますか)」
- 「電子取引(メール添付PDF、ダウンロード請求書など)の保存ルールはどう設計しますか」
- 「申告・届出は電子申告が前提ですか。開始届出などの手続きも支援しますか」
この5つに具体的に答えられない場合、「操作できるだけ」で運用が破綻する可能性が高いです。
ステップ形式:失敗しない選定手順(契約前チェック)
Step 1: 自社の前提を整理する(10分)
- 利用予定:freee / MF(どちらか、または移行予定)
- 記帳方針:自社入力(自計化)か、丸投げ(記帳代行)か
- 取引量:月の請求書枚数、カード明細行数、従業員数
- 追加要件:消費税申告、給与計算、年末調整、電子取引保存
Step 2: 候補に質問票を送る(当日)
上の「5つの質問」をメールで送って、回答の具体性とスピードを見ます。回答が抽象的、または「見てみないと分からない」が多い場合は要注意です。
Step 3: 30分の面談で画面ベースの確認をする
可能なら、実際のfreee/MFの運用(科目ルール、タグ、部門、証憑の紐付け方針)を説明してもらいます。口頭よりも、画面・チェックリストがある事務所の方が再現性が高いです。
Step 4: 見積の内訳と分界点を確定する
顧問料に含まれる範囲を、入力・月次・申告・電子取引保存に分けて明文化します。追加料金の条件(例:仕訳◯件超、部門管理、消費税申告、年末調整)も必ず確認します。
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契約前に確認したい注意点とリスク
「クラウド対応」でも起きやすい3つの落とし穴
- 記帳代行なのに、証憑の提出方法が整っておらず毎月遅れる
- 自計化支援のはずが、入力ルールがなく消費税区分が崩れる
- 電子取引保存が後回しになり、監査・調査時に説明コストが増える
守秘・権限・データの取り扱い
クラウド会計は権限設計が肝です。税理士側の権限(閲覧のみ、仕訳作成可、管理者権限など)と、退任時のデータ引継ぎ方針(バックアップ、エクスポート、証憑の保管)を契約書レベルで確認してください。
なお、税理士・税理士法人には職業倫理や義務が定められており、制度の概要は国税庁の税理士制度Q&Aでも整理されています。
よくある質問
Q: freeeとマネーフォワード、税理士側の対応差は出ますか?
Q: 電子取引の保存が不安です。税理士に丸投げできますか?
Q: 税理士が電子申告(e-Tax)に対応しているかはどう見分けますか?
まとめ
- クラウド会計の「対応」は段階があり、入力だけでなく月次・申告・保存まで範囲を定義する
- freee・MF対応の見極めは、5つの質問(例外処理、消費税区分、電子取引保存、e-Tax等)で具体性を見る
- 契約前に「含まれる業務」と「追加料金の分界点」を明文化してトラブルを防ぐ
- 電子取引保存は後回しにせず、国税庁の整理に沿って運用設計する
- 税理士制度・義務の基本も押さえ、権限設計とデータ引継ぎまで確認する
参照ソース
- 国税庁「税理士制度のQ&A」: https://www.nta.go.jp/taxes/zeirishi/zeirishiseido/qa/index.htm
- e-Tax「税理士等が関与先の納税者の電子申告等開始届出書を送信する…」: https://www.e-tax.nta.go.jp/toiawase/qa/kaishi/12.htm
- 国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」: https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/index.htm
- デジタル庁「電子署名法及び関係法令」: https://www.digital.go.jp/policies/digitalsign/digitalsign_law
この記事を書いた人

辻 光明
代表税理士
税理士 / 認定経営革新等支援機関
税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。
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