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中小企業向けコラム
作成日:2026.02.27
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士

暗号資産 繰越控除とは?3年損失繰越と利確戦略|税理士が解説

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暗号資産 繰越控除とは?3年損失繰越と利確戦略|税理士が解説

暗号資産の繰越控除とは(結論)

暗号資産の繰越控除(損失繰越)とは、暗号資産取引で出た損失を翌年以降に繰り越し、将来の利益と相殺できる仕組みです。令和8年度税制改正大綱(財務省公表の大綱ページ)では、一定の暗号資産取引(特定暗号資産の譲渡等)について、3年間の損失繰越を可能とする方向性が示されています。

一方、現行制度では、暗号資産の利益は原則「雑所得」とされ、損失の繰越控除は認められていません(国税庁の暗号資産の取扱い参照)。このギャップが、投資家にとって最大の実務課題です。

仮想通貨 損失 繰越のインパクトと「今のルール」の限界

現行:暗号資産の損失は翌年に持ち越せない

現行では、暗号資産の利益は原則として雑所得(総合課税)で申告します。暗号資産の損益は同一年内で暗号資産同士の通算はできますが、損失を翌年へ繰り越すことはできません。

そのため、例えば「今年は大きく損したが、来年は利益が出そう」という状況でも、今年の損失を来年の利益とぶつけて税負担を下げることができず、税務上は不利になりがちです。

改正大綱の方向性:特定暗号資産で損失繰越を可能に

財務省の令和8年度税制改正大綱の掲載ページでは、特定暗号資産に係る譲渡等による損失について、一定要件のもとで繰越控除を認める趣旨が示されています。ここが制度化されれば、暗号資産の損失管理は「その年限り」から「数年単位の設計」へ変わります。

ここがポイント
注意:税制改正大綱は「方針」の段階で、具体的な適用開始時期・対象範囲・添付書類などは、法令改正(所得税法等)や通達等で確定します。実行前に必ず最新の条文・国税庁Q&A等を確認してください。

暗号資産 損益通算の範囲はどうなる?

暗号資産の「損益通算」は言葉が一人歩きしやすいので、整理します。

  • 暗号資産同士の損益通算:同一年内の暗号資産の利益と損失を相殺すること(現行でも実務上は行われています)
  • 他の所得(給与・事業など)との損益通算:暗号資産の損失を給与所得等と相殺すること(一般にハードルが高く、期待しすぎないのが安全です)
  • 繰越控除:暗号資産の損失を翌年以降に持ち越して将来の利益と相殺すること(大綱で方向性が示された論点)

結論として、今回のテーマで最も重要なのは、「暗号資産の損失を翌年以降に活かせるか」であり、損益通算の拡大がどこまで認められるかは制度設計の確定を待つ必要があります。

含み損の戦略的利確(損切り)で損失繰越を最大化する考え方

「含み損の戦略的利確」とは、保有中の暗号資産に評価損(含み損)がある場合に、税務上の損失として確定させる(売却・交換等)ことで、将来の利益と相殺できる状態を作ることです。株式投資でいうタックス・ロス・ハーベスティングに近い発想です。

1) 損失は確定しないと控除に使えない

暗号資産は、基本的に評価損(時価下落)だけでは所得計算上の損失になりません。売却や他通貨への交換などで譲渡等が成立し、損益が確定して初めて税務上の損失として扱われます。

2) 交換(例:BTC→USDT)も課税関係が生じ得る

暗号資産の世界では「円に戻していないから課税されない」という誤解が多いのですが、国税庁の整理では、暗号資産の交換等でも損益計算が必要になる場面があります。損切りを設計する際は、「売却」だけでなく「交換」も譲渡等に該当し得る点を前提に、取引履歴を整備します。

3) 同じ銘柄をすぐ買い戻すは要注意(形式だけの損失化)

含み損を確定させた直後に同じ銘柄を買い戻す取引は、制度が整った後ほど税務上の説明可能性が問われます。明確な禁止規定の有無とは別に、取引の合理性や記録(価格変動リスク管理、ポートフォリオ方針、取引所変更など)を残すのが実務的です。

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旧制度と新制度(案)の比較

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項目現行(原則)見直し後(大綱ベースの方向性)
所得区分雑所得(総合課税が中心)特定暗号資産は分離課税を含む見直し方向
税率所得により累進(住民税含め高くなることがある)一定の暗号資産は一律税率を想定する議論
損益通算暗号資産内の通算が中心対象範囲は制度確定待ち
損失の繰越原則不可3年繰越を可能とする方向性

暗号資産 損失 控除を実務で通す手順(確定申告)

Step 1: 取引履歴を確定させる

取引所の年間取引報告書、CSV、オンチェーン履歴、手数料明細を集めます。国内外・複数取引所をまたぐ場合は、取り漏れが損益のズレにつながります。

Step 2: 計算方法(総平均法・移動平均法)を前提に損益を計算する

国税庁が公表している計算書(Excel)等を使い、取得価額と譲渡価額を整理します。計算方法の選択・継続適用は、後日の整合性に影響します。

Step 3: 暗号資産の損益を申告書へ反映する

現行では、原則として雑所得として申告し、必要に応じて収支内訳や明細を準備します。将来、繰越控除制度が導入された場合は、繰越の適用要件(連続申告、損失の繰越明細など)が設けられる可能性が高いため、初年度から形式を崩さないことが重要です。

Step 4: 損失が出た年は申告しておく

繰越控除は「損失が出た年に申告していない」と、翌年以降に持ち越せない設計になることが一般的です。制度が始まった後は、損失年こそ申告の優先度が上がります。

よくある質問

Q: 暗号資産の損失は給与所得と損益通算できますか? ▼
一般に期待しすぎない方が安全です。暗号資産の所得区分や制度設計により、他所得との損益通算が制限されることが多く、改正後も「暗号資産の枠内での通算・繰越」が中心になる可能性があります。最終的には改正法令・通達で確定します。
Q: 含み損があるだけで、繰越控除に使えますか? ▼
使えません。評価損(含み損)は原則として税務上の損失にならず、売却・交換などで損益を確定させる必要があります。戦略的利確(損切り)は「損失の確定」と「記録整備」がセットです。
Q: 3年繰越はいつから使える見込みですか? ▼
大綱で方向性が示されても、実際の適用開始は法改正・施行日で決まります。制度の前提となる法整備と合わせて進むため、最新の政府公表資料(財務省・国税庁)を都度確認してください。
Q: 海外取引所の取引も繰越控除の対象になりますか? ▼
制度確定前のため断定はできません。対象を「暗号資産取引業者」に対する譲渡等と整理する方向性が示されているため、取引の場(国内登録業者かどうか等)が要件に影響する可能性があります。取引所の属性で取り扱いが分かれるリスクを見込んで設計するのが現実的です。

まとめ

  • 暗号資産の繰越控除は「損失を将来に持ち越す」仕組みで、3年繰越が論点
  • 現行では暗号資産の損失は原則として翌年に繰り越せず、年またぎの税務設計が難しい
  • 含み損は放置しても控除に使えず、売却・交換で損失を確定させる必要がある
  • 制度導入後は「損失年の申告」と「取引履歴・計算根拠の保存」が重要になる
  • 対象範囲や適用開始は確定情報(財務省・国税庁)で必ず検証する

参照ソース

  • 財務省「令和8年度税制改正の大綱」: https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/08taikou_01.htm
  • 国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱い及び計算書について(令和7年12月)」: https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shotoku/kakuteishinkokukankei/kasoutuka/index.htm
  • 財務省(金融庁要望資料・参考)「暗号資産取引に係る課税の見直し(令和8年度税制改正要望事項)」: https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/request/fsa/08y_fsa_k_03.pdf

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士

税理士 / 認定経営革新等支援機関

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

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本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

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記事の内容は法令の改正等により変更される場合があります。 最新の情報については、関係省庁の公式サイト等でご確認ください。

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