
執筆者:辻 光明
代表税理士
電子帳簿保存法2026の要件緩和と実務対応|税理士が解説

電子帳簿保存法2026で押さえる結論
電子帳簿保存法の「2026年改正」というより、2026年の実務は、令和6年1月以降の電子取引データ保存を前提に、過去の改正で整備された要件緩和(代替措置)を使い分けて運用を固めるフェーズです。中小企業では、制度理解よりも「取引データが漏れずに残り、税務調査で提示できる」状態を作れるかが勝負になります。
税理士法人 辻総合会計では、クラウド請求書・EC領収書・メール添付PDFなど現場の電子取引が増えたことで、保存ルールの未統一がリスクになる相談が増えています。本記事は、経理担当者が迷わない実務の型を提示します。
電子帳簿保存法2026とは(電帳法 2026の前提)
電子帳簿保存法は、国税関係帳簿書類(帳簿、請求書、領収書など)の保存を、一定要件のもとで電磁的記録(データ)で行えるようにする制度です。実務上は次の3区分で考えると整理しやすいです。
- 電子帳簿等保存:会計ソフト等で作成した帳簿・書類をデータのまま保存
- スキャナ保存:紙で受領した書類をスキャンしてデータ保存
- 電子取引:メール、EC、クラウド等で授受した取引情報(PDF、CSV等)をデータ保存
2026年は「電子取引の保存が当たり前の運用になっているか」を基準に、社内規程・フォルダ設計・権限管理まで含めて監査可能な状態を作る年だと捉えるのが現実的です。
2026年時点の要件緩和ポイント(電子帳簿 要件緩和)
要件緩和といっても「何でもOK」ではありません。ポイントは、可視性(見られる・探せる)と真実性(改ざんされない)の確保を、システムか運用で担保することです。
電子取引 保存 2026:検索要件と代替の考え方
電子取引では、受け取った請求書PDFや領収書データを、紙に印刷して保存するだけでは足りません。原則としてデータのまま保存し、税務調査等で求められた際に提示できる状態が必要です。
検索要件(取引年月日、取引先、金額などで検索できる状態)は重要ですが、全社で高機能な検索を一気に整備するのが難しい場合、国税庁のパンフレット等で示される「ダウンロードの求めに応じられる場合は検索要件の一部が不要となる」整理を踏まえ、まずは提示対応力を固める発想が有効です。検索は後から強化できるが、データが散逸すると戻せないためです。
スキャナ保存:タイムスタンプ・事務処理規程の使い分け
紙で受領した領収書・請求書をスキャンして原本を廃棄する場合、スキャナ保存の要件を満たす必要があります。典型的には、タイムスタンプ付与または訂正削除の履歴が残るシステム、加えて事務処理規程の整備などで真実性を確保します。
電子帳簿等保存:優良な電子帳簿と、まず守るべき最低ライン
会計ソフト等で作った帳簿をデータ保存する場合、通常の電子帳簿と、一定要件を満たす「優良な電子帳簿」に分かれます。優良な電子帳簿はハードルが上がる一方、制度上のメリットが設けられています。中小企業はまず、帳簿・証憑・電子取引が紐づく運用(例:取引単位で証憑リンク、月次で証憑欠落チェック)を先に作り、優良要件は段階的に検討するのが現実的です。
旧ルールと2026実務の違い(比較表)
「要件緩和」の理解を間違えると、保存そのものが不備になります。特に電子取引は紙に出せばOKからの発想転換が必要です。
| 項目 | 旧:紙中心の運用イメージ | 2026実務:データ前提の運用 |
|---|---|---|
| 電子取引(メールPDF等) | 印刷してファイル保存 | データで保存し、求めに応じて提示・提出できる |
| 検索性 | ファイル名頼み | 取引年月日・取引先・金額などで検索/抽出できる設計(または提示対応を優先して段階整備) |
| 真実性 | 紙の原本で担保 | タイムスタンプ、訂正削除履歴、事務処理規程などで担保 |
| 現場運用 | 担当者の属人的ルール | 入口→保存先→命名→チェックの標準化(引継ぎ可能な形) |
中小企業の税務・経営相談
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中小企業の実務対応ロードマップ(手順)
制度の理解だけでは運用が回りません。2026年に向けた落とし込みは、次の順番が最短です。
Step 1: 電子取引の入口を棚卸しする
メール(添付PDF)、クラウド請求書、EC(Amazon等)、カード明細、交通系ICの利用明細など、「取引情報がデータで来る経路」を一覧化します。ここで漏れると保存漏れが起きます。
Step 2: 保存先を一本化し、ファイル命名ルールを決める
フォルダ構成(例:年→月→取引先、または年→月→種別)を決め、命名は最低限「日付_取引先_金額_内容」など検索しやすい形に統一します。検索機能を持つシステムを使う場合も、入口で揺れないルールが重要です。
Step 3: 真実性の担保をシステムか規程で決める
改ざん防止は、(1)訂正削除履歴が残る、(2)タイムスタンプ、(3)事務処理規程+運用統制、など複数の選択肢があります。自社の体制(人手・IT)に合わせて選びます。
Step 4: 月次で「保存漏れ・突合」を回す
請求書発行側(売上)と受領側(仕入・経費)で、保存漏れが出やすいのは受領側です。月次で「未回収の証憑」「カード明細と領収書の突合」などのチェックを組み込み、作業者が変わっても同じ品質にします。
Step 5: 税務調査対応(提示・提出)を想定してテストする
税務職員からの「ダウンロードで提示して」「この期間・この取引先だけ抽出して」等に、何分で対応できるかを一度リハーサルします。ここで詰まるポイントが、そのまま改善点です。
よくあるミスと、今すぐできる対策
- メール添付PDFを個人の受信箱に放置し、退職・異動でアクセス不能になる
- 対策:共有メール/自動転送/保存先連携を設計し、保存責任者を明確化
- EC領収書を都度ダウンロードせず、後から取得できなくなる
- 対策:月次でEC・カード明細の取得日を固定し、取得できたかチェック
- スキャン画像の保存先がスマホ内・個人クラウドに散在する
- 対策:スマホ撮影は保存先を指定し、アップロード完了までを手順化
- 「要件緩和=何でもOK」と誤解し、検索・提示ができない
- 対策:まずは提示できることを最優先し、検索は段階整備
よくある質問
Q: 電子取引は、印刷して紙で保存していれば足りますか?
Q: 小規模で件数が少ない場合でも、検索要件を全部そろえる必要がありますか?
Q: スキャナ保存をすると、原本は捨ててもいいですか?
Q: 2026年に向けて、まず何から着手すべきですか?
まとめ
- 2026年の実務は電子取引データ保存を前提に、要件緩和を正しく使い分ける段階
- まずは「入口の棚卸し」→「保存先の一本化」→「月次チェック」で保存漏れを止める
- 検索性は重要だが、データ散逸の防止と提示対応力を優先し、段階的に強化する
- スキャナ保存は、タイムスタンプや訂正削除履歴、事務処理規程などで真実性を担保する
- 属人化を避け、担当交代しても回る運用(ルール・権限・チェック)を作る
参照ソース
- e-Gov法令検索「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」: https://laws.e-gov.go.jp/law/410AC0000000025/
- 国税庁「パンフレット(過去の主な改正を含む)」: https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/08.htm
- 国税庁「電子取引関係」: https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/01.htm
- 国税庁「電子取引データ保存要件チェックシート(PDF)」: https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/pdf/0024011-003_02.pdf
- 国税庁「電子帳簿保存法一問一答(電子取引関係)(PDF)」: https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/00023006-044_03-5.pdf
この記事を書いた人

辻 光明
代表税理士
税理士 / 認定経営革新等支援機関
税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。
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