
執筆者:辻 光明
代表税理士
越境EC消費税2026|輸出免税と還付申告を税理士が解説

越境EC(海外販売)の消費税は「輸出免税」が基本
越境ECの消費税は、結論から言うと「日本から海外へ輸出している販売」であれば、原則として輸出免税(消費税0%)の対象になります。一方で、免税の適用には「輸出した事実を示す証明書類」を整備・保存する必要があり、ここが実務のつまずきポイントです。
特にShopifyなどで海外向けにD2C販売を始めた事業者は、決済・配送・通関が分業化されているため、証憑が散らばりがちです。輸出免税が否認されると、国内課税売上として消費税が発生し、利益が一気に削られることがあります。
越境ECの「輸出免税」とは(越境EC 輸出免税)
輸出免税の考え方
消費税は「内国消費税」なので、海外で消費されるものには課税しない、という整理です。国税庁も、輸出取引等に該当する場合は消費税が免除されるとしています。参照:国税庁「輸出取引の免税」。
越境ECで典型的なのは「国内からの輸出として行われる資産の譲渡(商品販売)」です。これに該当すれば、売上は原則0%(免税)で計上します。
免税の適用に必要な「証明」が最重要
輸出免税の適用には、取引が輸出取引であることの証明が必要です。輸出許可書(電磁的記録を含む)など、取引形態に応じた書類を整理し、原則7年間保存します。参照:国税庁「輸出取引の免税」。
越境ECでは「自社で輸出申告していない」「フォワーダーや配送会社が通関している」ケースも多く、書類設計をしないと証明が弱くなります。
海外販売の消費税が「還付」になる仕組み(海外販売 消費税 還付)
還付の原理は「売上0%×仕入10%」の差
輸出免税(売上0%)でも、仕入や経費の支払には消費税が含まれます。結果として、課税仕入の消費税(仕入税額控除)が売上側より大きくなり、差額が控除不足還付として戻ることがあります(いわゆる還付申告)。
ただし、還付を受けるには「課税事業者」であることが前提です。免税事業者は、原則として申告納税の対象外であり、仕入税額控除もできないため、還付も受けられません。参照:国税庁「免税事業者と仕入税額の還付」。
還付が出やすい越境ECの典型例
- 広告費(海外向けSNS広告等)や外注費が先行し、売上が伸びる前の立ち上げ期
- 国内仕入(原価)比率が高い物販型D2C
- 在庫を国内で抱え、発送量が増えるほど国内課税仕入が増えるモデル
一方で、還付スキームを狙いすぎると調査リスク(証明不備・名義不整合・実態不一致)が上がります。還付は「出るべくして出る」状態を、証憑で堅く作るのが王道です。
Shopify海外販売の税務でよくある誤解(Shopify 海外 税金)
Shopifyの設定画面で税率を0%にしていても、それだけで輸出免税が確定するわけではありません。税務上は「誰が」「どこからどこへ」「どの名義で」輸出したか、そしてそれを証明できるかが全てです。
また、越境ECでは次の誤解が頻発します。
| 項目 | 誤解(よくある) | 実務のポイント |
|---|---|---|
| 輸出免税 | 海外の顧客に売れば自動で0% | 輸出取引の証明書類の整備・保存が必要 |
| 還付 | 売上が少なくても必ず戻る | 課税事業者であること、仕入税額控除要件を満たすことが前提 |
| 通関 | 配送会社がやるので自社は関係ない | 名義・輸出許可情報・発送記録を入手できる設計が必要 |
| 記帳 | 決済画面の履歴だけで足りる | インボイス・帳簿・輸出関連書類の突合が必要 |
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輸出免税・還付申告の実務手順(還付申告のやり方)
ここからは、越境ECで「輸出免税を適用し、必要に応じて還付申告まで行う」ための流れを、実務の観点で整理します。
Step 1: 取引が「輸出取引」に該当するか整理する
- 日本国内の倉庫(自社・3PL)から、海外の顧客へ発送しているか
- 取引条件(インコタームズ等)と名義が、輸出の実態と整合しているか
- 役務提供(デジタルサービス等)の場合は、免税対象外となるケースがないか
まずは「物販(資産の譲渡)」か「役務」かを切り分け、物販であれば輸出免税の枠に入るか確認します。
Step 2: 輸出の証明書類を型として揃える(越境EC 輸出免税)
輸出免税の適用には証明が必要で、取引類型に応じて輸出許可書等を保存します。国税庁は、輸出許可書(電磁的記録を含む)や、郵便物の場合の引受けを証する書類等の保存を示しています。参照:国税庁「輸出取引の免税」。
越境EC(宅配便・EMS・国際郵便等)で実務上そろえたい代表的なセットは次のとおりです。
- 受注情報(注文番号、購入者、配送先国、商品名、数量、金額)
- 決済情報(入金日、決済手数料、返金履歴)
- 発送情報(送り状番号、発送日、配送先、重量)
- 通関関連(輸出許可情報の写し・ステータス、インボイス、パッキングリスト等)
- 売上計上資料(売上台帳、取引先情報、突合表)
ポイントは「税務調査で見せる順番」を想定して、注文→決済→発送→通関→売上計上が一連で追える状態にすることです。ここができると、輸出免税の説得力が段違いに上がります。
Step 3: 仕入税額控除(インボイス・帳簿)を固める
還付の前提は、課税仕入の消費税を控除できることです。適格請求書(インボイス)や帳簿保存の要件を満たしているか、仕入・経費を科目ごとに点検します。越境ECは広告・外注・ツール費用が多いため、科目別に「請求書の保存状況」を確認すると早いです。
Step 4: 消費税申告(還付申告)で必要な添付書類を確認する
控除不足還付税額がある還付申告書を提出する場合、申告書に加えて所定の添付書類が必要となる旨が国税庁で示されています。参照:国税庁「確定申告書等に添付することとなる書類」。
実務では、申告書・付表・添付書類の整合(輸出売上の根拠、課税仕入の内訳、課税売上割合など)がチェックポイントになります。e-Tax提出でも、添付の考え方は同じなので「添付が必要な還付申告」に該当するかを先に判断します。
Step 5: 物流・通関フローの見直し(税関手続)
輸出手続の全体像や通関実務は税関の案内(輸出入手続)も参照しつつ、誰が輸出者として申告しているか、輸出許可情報を入手できるかを設計します。参照:税関「輸出入手続」。
特に、3PLが一括で通関している場合は、取引単位の証明が弱くなることがあります。還付を継続して受ける予定なら、初年度から設計を整えたほうが後で楽です。
越境ECの消費税で注意すべきリスクとチェックポイント
免税の証明不足(輸出したが説明できない)
輸出免税は「0%」なので、税務署側の目線では本当に輸出か?が第一関門です。送り状番号だけでなく、輸出許可情報・帳簿・取引情報が繋がっているかが重要です。
免税事業者のまま「還付が出る」と誤認
免税事業者は還付を受けられません。還付を見込む事業計画の場合、課税事業者選択などの意思決定が必要になります(ただし、課税選択は原則として一定期間の継続が伴うため慎重に)。
名義と実態のズレ(輸出者・売主・在庫所有者)
海外販売でも、在庫所有や輸出名義が別法人・別事業者になっていると、輸出免税の主張が難しくなることがあります。契約書・取引条件・請求関係を含めて整合させるのが安全です。
返品・返金(チャージバック)処理
越境ECは返品率が高い商材もあります。売上計上・返金・在庫戻りの処理が崩れると、輸出売上の証明が弱くなり、還付計算にもズレが出ます。月次で「売上=決済=発送」の突合を回すのがおすすめです。
よくある質問
Q: 越境ECなら、売上は全部「不課税」や「非課税」になりますか?
Q: 免税事業者でも海外販売なら消費税の還付を受けられますか?
Q: Shopifyの注文履歴と配送会社の追跡番号だけで、輸出免税の証明になりますか?
Q: 還付申告のとき、何か添付書類は必要ですか?
まとめ
- 越境ECの物販は、原則として輸出免税(消費税0%)の整理が基本
- 輸出免税は「輸出の証明書類」を整備・保存できるかが核心
- 海外販売は売上0%でも国内仕入に消費税が乗るため、条件次第で還付(控除不足還付)が起こりうる
- ただし還付を受けられるのは課税事業者が前提で、免税事業者は原則不可
- Shopify×物流×通関の分業構造を前提に、証憑回収ルートを最初に設計する
参照ソース
- 国税庁「No.6551 輸出取引の免税」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6551.htm
- 国税庁「No.6613 免税事業者と仕入税額の還付」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6613.htm
- 国税庁「No.6615 確定申告書等に添付することとなる書類」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6615.htm
- 税関「輸出入手続」: https://www.customs.go.jp/tsukan/index.htm
この記事を書いた人

辻 光明
代表税理士
税理士 / 認定経営革新等支援機関
税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。
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