
執筆者:辻 光明
代表税理士
フリーランス保護法と取適法で何が変わる?2026年対応|税理士が解説

フリーランス保護新法+取適法で何が変わる?
結論として、フリーランス保護新法(正式名称:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律、通称:フリーランス・事業者間取引適正化等法)は、「取引の適正化」と「就業環境の整備」をセットで義務化し、フリーランスの権利を契約実務として担保する法律です。
「口約束」「後出し条件」「支払遅延」「一方的な契約終了」など、個人事業主が構造的に不利になりやすい場面に、ルールと相談ルートが整備されました。
税理士法人 辻総合会計では、中小企業の顧問先・外注管理の見直し相談や、個人事業主の契約トラブルの整理を日常的に扱います。2026年時点では、施行後の運用が進み「契約書・発注書の整備」「支払管理」「募集表示(クラウドソーシング等)の表示」まで含めた体制づくりが重要です。
フリーランス保護法(取適法)の対象:誰が守られる?
この法律で保護される「フリーランス」は、一般用語の広さとは異なり、法律上は概ね「従業員を使わずに事業者として業務委託を受ける個人(特定受託事業者)」が中心です。
また、契約名が「業務委託」でも、実態が雇用(労働者性が強い)なら労働法が優先される点も重要です。
個人事業主が最初に確認すべき3点
- 自分が「従業員を使用していない」形で受託しているか(対象になりやすい)
- 相手が事業者として発注しているか(BtoBの委託か)
- 実態が雇用ではないか(指揮命令・時間場所拘束・代替性など)
取引面(取引適正化)で増えた「権利」と「発注者の義務」
取引面でのポイントは、「取引条件の明示」と「報酬支払の期日管理」、そして申出(通報)したことを理由に不利益取扱いを受けない仕組みです。
発注者側の体制整備が進むほど、フリーランス側も「言った言わない」から卒業し、交渉の土台を持てます。
よく問題になる場面と、法が狙う改善点
- 発注内容・報酬・納期が曖昧なまま着手してしまう
- 検収が長引き支払が遅れる/支払日が月末締め翌々月など極端に遅い
- 直前キャンセル・仕様変更が一方的に入る
- 申出や相談をしたら、次回から発注が止まる(報復的な扱い)
就業環境(ハラスメント・配慮・解除予告)で何が変わる?
この法律は「取引法」だけでなく、就業環境の整備も含む点が特徴です。具体的には、業務委託の場面でも、ハラスメント対策の体制整備が求められ、一定の契約では育児・介護等への配慮や、解除(打切り)に関する予告が論点になります。
特に、契約期間が長い(更新を含む)ケースでは、途中解除・更新拒否がトラブル化しやすいため、2026年は運用の成熟が求められます。
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比較表:新法で「フリーランスの立場」はどう変わった?
| 項目 | 従来(ありがちな実務) | 新法施行後(目指すべき実務) |
|---|---|---|
| 条件提示 | 口頭・チャット中心で曖昧 | 発注内容・報酬・納期等を明示し記録化 |
| 支払 | 検収・社内都合で遅れがち | 支払期日を設計し遅延リスクを管理 |
| 変更・中止 | 一方的変更や直前キャンセル | 変更・中止のルール(費用負担含む)を契約で明確化 |
| 相談・申出 | 相談したら取引停止が怖い | 申出を理由とした不利益取扱いを抑止 |
| 就業環境 | ハラスメント対応が曖昧 | 相談窓口・対応手順の整備が期待される |
フリーランス新法(2026)で損しないための実務ステップ
Step 1: 自分の「立場」を確定する
個人で受託していても、従業員を使っている場合や、消費者相手の取引中心の場合などは、法律上の範囲から外れることがあります。対象外でも、同様の観点で契約整備する価値は高いです。
Step 2: 発注前に「明示されるべき条件」をテンプレ化する
最低限、業務内容、成果物、報酬、支払日(または支払条件)、納期、検収方法、修正回数、著作権・利用範囲、再委託可否、キャンセル時の扱いを文面で残します。
契約書でなくても、発注書・メール・チャットでも「後で確認できる状態」にするのが肝です。
Step 3: 証跡を残す(修正指示・追加作業・検収)
トラブルの多くは「追加作業の扱い」と「検収の長期化」です。日付入りの指示、納品、検収OKの連絡を保存し、追加作業は都度「追加見積」または「追加条件」を確定します。
Step 4: 困ったら申出・相談ルートに接続する
取引の問題は、公正取引委員会・中小企業庁の枠で整理される場面があります。就業環境(ハラスメント等)の問題は、労働局等の相談が関係することがあります。
最初から全面対決にせず、「事実関係の整理(時系列・証拠)→相談→是正」の順に進めると解決率が上がります。
よくある質問
Q: フリーランス新法は2026年に新しく始まった制度ですか?
Q: 発注者から「契約書は出せない」と言われたらどうすればいいですか?
Q: 取適法の対象外(従業員あり等)でも意味はありますか?
Q: 相談先はどこを見ればいいですか?
まとめ
- フリーランス保護新法(取適法)は「取引の適正化」と「就業環境の整備」をセットで進める法律
- 2026年は施行後の実務が進み、条件明示・支払管理・募集表示の運用品質が問われる
- 個人事業主は、条件の記録化と証跡保存で交渉の土台を作る
- 長期契約は解除・更新・配慮の論点が出やすく、条項と通知手順を事前に固める
- 困ったときは論点を切り分け、適切な相談ルートに接続する
参照ソース
- 公正取引委員会「フリーランス・事業者間取引適正化等法」: https://www.jftc.go.jp/fllaw_limited.html
- 中小企業庁「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」: https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/law_freelance.html
- 厚生労働省「フリーランス・事業者間取引適正化等法(就業環境整備等)」: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/bunya/freelance_00006.html
この記事を書いた人

辻 光明
代表税理士
税理士 / 認定経営革新等支援機関
税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。
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