税理士法人 辻総合会計グループ
無料相談
経営ブログに戻る
中小企業向けコラム
作成日:2026.02.27
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士

免税事業者インボイス2026|経過措置50%を税理士が解説

8分で読めます
免税事業者インボイス2026|経過措置50%を税理士が解説

結論:2026年10月から「免税のまま」は交渉が厳しくなる

免税事業者のままでいること自体は可能です。ただし、取引先(課税事業者)があなたからの仕入れで控除できる消費税が、2026年10月1日以降は「仕入税額相当額の50%」に縮小します(それまでは80%)。結果として「以前より損をする分を価格に反映してほしい」という交渉が増えやすくなります。

誰にとって何が問題かを一言でいうと、BtoBで課税事業者相手に売っている免税事業者ほど、「取引先の控除減=実質コスト増」を理由に価格・継続可否の交渉が起きやすい点が問題です。

免税事業者がインボイス登録しないと何が起きるか

免税事業者はインボイス(適格請求書)を交付できない

インボイス制度では、仕入税額控除の原則要件として「帳簿+適格請求書等の保存」が求められます。免税事業者は登録していない限り、適格請求書を交付できません。

取引先は「経過措置」で一部だけ控除できる

免税事業者等からの課税仕入れでも、一定期間は例外的に控除を認める経過措置があります。ポイントは控除率の段階的縮小です。

  • 2023年10月1日〜2026年9月30日:仕入税額相当額の80%
  • 2026年10月1日〜2029年9月30日:仕入税額相当額の50%

つまり、2026年10月からは同じ取引でも、取引先の控除額がさらに減り、交渉材料になりやすくなります。

ここがポイント
「50%時代」は、免税事業者が不利になるというより、課税事業者である取引先の控除できない消費税が増えることで、取引条件の見直し圧力が強まる局面です。特に外注費・業務委託費・仕入が大きい業種は影響が顕在化しやすい傾向があります。

経過措置50%とは:取引先の負担増を数字で理解する

取引先(課税事業者)が、免税事業者に税込11,000円(税抜10,000円+消費税1,000円相当)支払うケースをイメージします。

  • 80%控除なら:控除できるのは 1,000円×80%=800円
  • 50%控除なら:控除できるのは 1,000円×50%=500円

差は300円。取引先から見ると「同じ取引でも、2026年10月以降は実質300円コスト増」となり、これが値下げ要求や取引条件変更の根拠になりがちです。

免税事業者はどうする?判断の軸は「売上先」と「粗利構造」

結論として、免税維持が向くケースと、登録が向くケースははっきり分かれます。

免税のままが比較的成り立つケース

  • 売上先が一般消費者(BtoC)中心(相手が仕入税額控除を使わない)
  • 取引先が免税・簡易課税中心で、インボイス要請が弱い
  • 価格決定力が強く、値下げに応じない運用ができる
  • 値付けが「税込総額」で、取引先が税額相当を意識しにくい商流

登録(課税事業者化)を検討すべきケース

  • 売上先が課税事業者(BtoB)中心で、指名・継続の条件に登録が入り始めている
  • 2026年10月以降の値下げ要求を飲むと粗利が崩れる
  • 仕入・外注が多く、本則課税なら仕入税額控除の効果が大きい
  • 大口先が「登録しないなら取引見直し」と明示している

「登録する/しない」の比較表(2026年10月以降の実務目線)

←横にスクロールできます→
観点免税のまま(登録しない)登録する(課税事業者)
請求書適格請求書は出せない適格請求書を交付できる
取引先の控除経過措置:50%(〜2029/9/30)原則どおり控除可(要件充足で)
価格交渉「控除減」を理由に交渉されやすい交渉材料が減りやすい
自社の消費税原則納税なし申告・納税が必要
事務負担比較的軽い会計処理・申告の負担増
損得のカギ価格転嫁できるか仕入控除・簡易課税・特例の選択

中小企業の税務・経営相談

創業から成長期まで、企業のフェーズに合わせた税務・経営サポートを提供しています。

無料相談を申込む 📞 050-1808-9643

平日 9:15〜18:15(土日祝休業)

実務で迷わないための判断ステップ(免税事業者 どうする)

Step 1: 売上先を棚卸しする(BtoB比率)
売上のうち「課税事業者向け」が何%か、上位5社の方針(登録要請の有無)を確認します。2026年10月以降は、要請が強まる先が出やすいです。

Step 2: 値下げ圧力を試算する(50%控除の差額)
主要取引ごとに「税額相当×(80%-50%)=税額相当×30%」を目安に、取引先の実質負担増を概算し、値下げ要求余地を把握します。

Step 3: 登録した場合の納税額を2パターンで試算する

  • 本則課税(仕入税額控除を反映)
  • 簡易課税(みなし仕入率で計算)
    売上構成・仕入構造によって逆転します。会計ソフトの試算機能や税理士の簡易シミュレーションで早めに当たりを付けます。

Step 4: 期限と運用を決める(社内ルール化)
いつまで免税で粘るのか、どの条件(大口先の要請、粗利低下、取引減少)で登録に切り替えるのかを、あらかじめルール化します。

ここがポイント
負担軽減策として知られる「2割特例」は、適用できる課税期間が2026年9月30日までの日の属する各課税期間に限られます。つまり、2026年10月以降は「登録しても2割特例で軽くする」発想が使いにくくなる点に注意が必要です。

現場のよくある相談(匿名ケース)

制作業のAさん(免税、売上の9割が法人向け)は、2025年時点では「登録しない」方針でした。しかし、上位2社から「2026年10月以降は控除50%になるので、単価見直しの相談をしたい」と予告を受けました。

Aさんは、(1)値下げに応じる場合の粗利、(2)登録して本則・簡易課税で納税した場合の手残り、(3)請求書運用の追加コストを並べ、最終的に「単価維持が条件なら登録、単価が下がるなら取引先入替も視野」という方針に整理。結果、主要先とは条件を維持しつつ登録、その他は価格改定を実施して収益性を守りました。

よくある質問

Q: 免税事業者はインボイス登録しないと取引できなくなりますか? ▼
法律上「登録しないと取引できない」わけではありません。ただし、取引先が課税事業者の場合、2026年10月以降は仕入税額控除が50%に縮小するため、価格・契約条件の見直しや、取引先の方針変更が起きる可能性は高まります。
Q: 経過措置50%はいつまで続きますか? ▼
免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置は、2026年10月1日から2029年9月30日までが50%です。その後は原則として仕入税額控除ができない取扱いになります(個別の例外や要件は要確認)。
Q: 2026年10月から登録しても、2割特例は使えますか? ▼
2割特例は、適用できる期間が2026年9月30日までの日の属する各課税期間です。したがって、2026年10月以降の課税期間では2割特例を前提にした資金繰り計画は立てにくくなります。
Q: 免税のままでも、請求書や領収書の書き方は変える必要がありますか? ▼
適格請求書(登録番号等の記載があるもの)は交付できません。一方で、これまでどおり請求書・領収書の発行自体は可能です。取引先が求める記載(取引年月日、内容、税込金額、軽減税率対象の区分など)を満たしつつ、「インボイスではない」ことが誤解されない運用が重要です。

まとめ

  • 免税事業者のままでいることは可能だが、2026年10月1日から経過措置が50%となりBtoBは交渉が増えやすい
  • 影響の本質は「取引先の控除減=実質コスト増」で、値下げ要求・契約見直しの材料になりやすい
  • 判断は「売上先(BtoB比率)」「粗利構造(仕入・外注の多寡)」でほぼ決まる
  • 登録する場合は、本則課税・簡易課税の試算で手残りを比較し、運用コストも織り込む
  • 2割特例は2026年9月30日までの課税期間が対象のため、2026年10月以降は別の設計が必要

参照ソース

  • 国税庁「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6498.htm
  • 国税庁「インボイス制度とは」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice_kojin_01.htm
  • 国税庁「インボイス制度に関するQ&A(免税事業者等からの仕入れに係る経過措置)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/113.pdf
  • 国税庁「2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要」: https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/kaisei/202304/01.htm

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士

税理士 / 認定経営革新等支援機関

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

記事の内容は法令の改正等により変更される場合があります。 最新の情報については、関係省庁の公式サイト等でご確認ください。

シェア:
経営ブログに戻る

お電話でのご相談

050-1808-9643

受付時間 9:15〜18:15(土日祝休業)

Webお問い合わせ

おすすめコラム

税金のクレジットカード払いは得?ポイントと手数料の損益分岐点|税理士が解説

税金のクレジットカード払いは得?ポイントと手数料の損益分岐点|税理士が解説

メルカリ税金いくらから?申告ライン|税理士が解説

メルカリ税金いくらから?申告ライン|税理士が解説

ふるさと納税限度額シミュレーション2026|年収・家族別早見表

ふるさと納税限度額シミュレーション2026|年収・家族別早見表

人気コラムランキング

1
経理効率化ツール5選|中小企業の導入手順まで税理士が解説

経理効率化ツール5選|中小企業の導入手順まで税理士が解説

2
顧問税理士の選び方|料金相場と失敗回避5つ

顧問税理士の選び方|料金相場と失敗回避5つ

3
創業融資の自己資金はいくら必要?|税理士が解説

創業融資の自己資金はいくら必要?|税理士が解説

4
決算だけ税理士に依頼は可能?費用と注意点|税理士が解説

決算だけ税理士に依頼は可能?費用と注意点|税理士が解説

5
freeeとマネーフォワード比較|どっちを選ぶ?税理士が解説

freeeとマネーフォワード比較|どっちを選ぶ?税理士が解説

CONTACT

無料相談のご案内

税務顧問・会社設立・創業融資・クラウド会計など、お気軽にご相談ください。初回相談は無料です。

ご相談だけでも歓迎です。お気軽にお問い合わせください。

050-1808-9643
平日 9:15〜18:15

© 2026 税理士法人 辻総合会計グループ. All rights reserved.

プライバシーポリシー

お電話はこちら

050-1808-9643

050-1808-9643

無料相談する

平日 9:15〜18:15