
執筆者:辻 光明
代表税理士
飲食店設備投資2026|40万円厨房機器の経費判断|税理士が解説

結論:40万円未満でも「全額経費」とは限りません
飲食店の設備投資でよくある誤解が「40万円未満の厨房機器は全額経費にできる」です。結論として、40万円は即時費用化の基準ではありません。実務上の分岐点は主に「10万円未満」「20万円未満」「30万円未満(特例)」で、40万円の機器は通常、減価償却(資産計上)になるケースが多いです。
税理士法人 辻総合会計では、飲食店を含む中小事業者の設備投資相談を多数受けてきました。現場で最も多いトラブルは「年末に買ったのに経費にならない」「30万円特例を使えると思っていたが要件外」など、制度の境目の勘違いです。本記事では、厨房機器の経費化ルールと、2026年(特に2026年3月末)に向けた注意点を具体例で解説します。
厨房機器は「経費」か「減価償却」か:まずは資産区分を確認
厨房機器が減価償却資産になる基本
厨房機器(冷蔵庫、製氷機、食洗機、フライヤー等)は、多くの場合1年以上使うため、原則は「減価償却資産」として資産計上し、耐用年数に応じて費用化します。
一方で、少額の資産については、一定条件で「取得時に費用化」または「簡便な償却」が認められます。ここが節税・資金繰りの観点で重要です。
1単位で判定するのが落とし穴
少額判定は「通常1単位として取引される単位」で行います。例えば、テーブルと椅子がセットで取引されるならセットで判定します。部品を無理に分割して30万円未満に見せると否認リスクが高いので注意が必要です。
2026年版:金額別(10万・20万・30万)でわかる処理ルール
以下は法人を中心にした整理です(個人事業も考え方は近く、所得税側に同様の枠組みがあります)。
| 取得価額(1単位) | 主な処理 | 特徴 | 飲食店での例 |
|---|---|---|---|
| 10万円未満 | 全額費用(損金/必要経費) | 資産計上せず当期費用化 | 小型ミキサー、温度計など |
| 10万円以上20万円未満 | 一括償却資産(3年均等)または通常償却 | 3年均等で簡便、除却しても原則3年継続 | 18万円の真空包装機など |
| 30万円未満(中小の特例) | 全額費用(年300万円まで) | 青色申告等の要件あり。期限・適用要件に注意 | 29.8万円の冷蔵ショーケースなど |
| 30万円以上 | 通常の減価償却 | 原則は資産計上。40万円もここ | 40万円の業務用食洗機など |
ポイントは次の2つです。
- 30万円未満を「中小企業者等の特例」で全額費用化できる可能性がある
- それでも対象外・枠超過なら、通常は減価償却(または20万円未満なら一括償却資産の選択)
「30万円未満の特例」は2026年3月31日まで(現行情報)
国税庁のタックスアンサーでは、取得価額30万円未満の減価償却資産について、中小企業者等が一定要件を満たす場合に取得価額相当額を損金算入できる特例が示されています。また、適用期限は「令和8年3月31日までに取得等して事業の用に供した場合」と整理されています。
ここが実務で極めて重要で、買った日ではなく事業の用に供した日(使い始めた日)で判定します。2026年3月に購入しても、納品・設置が4月になれば対象外になる可能性があります。
40万円未満の厨房機器を「できるだけ有利に」処理する実務手順
「40万円未満なら全額経費」という結論は誤りになりやすい一方で、投資の設計次第でキャッシュフローに配慮した処理は可能です。ここでは判断と処理の手順をステップで整理します。
Step 1: 1単位(セット/一式)を確定する
請求書・見積書の「一式」表記は要注意です。通常の取引単位が何か、セット売りか、単品かを整理します。
Step 2: 取得価額でルート分岐(10万/20万/30万)
- 10万円未満:当期費用
- 10万円以上20万円未満:一括償却資産(3年)も検討
- 30万円未満:中小の特例の要件を満たすなら当期費用化
- 30万円以上:通常の減価償却
Step 3: 「事業供用日」を証拠化する
検収書、設置完了報告、写真、稼働開始日(メニュー提供開始日)など、供用の根拠を残します。3月末が絡む投資ほど重要です。
Step 4: 年間枠(年300万円)・重複適用不可を確認する
30万円特例には年300万円の上限(法人の場合)があります。複数台導入や店舗拡張で超えやすいので、投資計画の時点でシミュレーションします。
Step 5: 仕訳・固定資産台帳・別表明細の整合を取る
「経費に落としたのに台帳に載っている」「台帳にはあるが別表に明細がない」などは税務調査での指摘ポイントです。会計ソフトの固定資産設定と申告書添付書類の整合まで含めて管理しましょう。
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厨房機器の耐用年数と「減価償却」の現実(節税との付き合い方)
40万円の厨房機器は、原則として資産計上して耐用年数で償却します。飲食店に多い資産は「器具・備品」や「建物附属設備」に分類され、国税庁の耐用年数表に従って処理します。
たとえば、ちゅう房用品のうち「陶磁器製・ガラス製」は耐用年数2年、「その他」は5年など、資産の性質で年数が異なります。厨房機器は全部6年のように一律ではありません。実際の資産区分(附属設備か備品か、配管工事を含むか等)で償却年数・科目が変わるため、見積内訳の読み込みが重要です。
実務上は、次の設計が有効です。
- 工事と機器を分け、建物附属設備に該当する範囲を明確にする
- リース・割賦の会計処理と税務の整合を確認する(所有権移転の有無など)
- 既存設備の除却・廃棄を伴う場合は、除却損の論点も同時に検討する
よくある質問
Q: 40万円未満の厨房機器は、やはり全額経費にできませんか?
Q: 30万円未満の特例を使う場合、2026年はいつまでに何をすればいいですか?
Q: 18万円の機器は、全額経費と3年均等、どちらが得ですか?
Q: 中古の厨房機器でも同じ考え方ですか?
まとめ
- 「40万円未満=全額経費」は誤解になりやすく、分岐点は10万円・20万円・30万円が中心
- 30万円未満は中小の特例で全額費用化できる可能性があるが、要件・年300万円枠・供用日が重要
- 20万円未満は一括償却資産(3年均等)という簡便策も選択肢
- 40万円の厨房機器は原則として資産計上・減価償却。資産区分と耐用年数を見積内訳で確認する
- 分割して30万円未満は取引単位・実態で判定されるため、証憑と整合した処理が不可欠
参照ソース
- 国税庁「No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5408.htm
- 国税庁「No.5403 少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5403.htm
- 国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表(PDF)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/pdf/2100_01.pdf
この記事を書いた人

辻 光明
代表税理士
税理士 / 認定経営革新等支援機関
税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。
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