
執筆者:辻 光明
代表税理士
少額減価償却40万円へ|2026改正の活用法を税理士が解説

少額減価償却(40万円)改正で何が変わる?
少額減価償却資産の特例は、中小企業者等が一定の資産を取得したときに、通常の減価償却ではなく「取得した年に一括で損金(経費)にできる」制度です。現行は「30万円未満」が基準ですが、令和8年度税制改正の大綱では、これを「40万円未満」へ引き上げる方針が示されています。
「PCやタブレット、医療機器周辺の備品など、値上がりで30万円を超えがちな設備」を導入する中小企業・個人事業主にとって、購入タイミング次第で当期損益と税額が大きく変わります。一方で、年300万円枠や対象要件の確認を怠ると、後日の否認リスクもあります。
少額減価償却とは(2026でも使う前提の基礎)
現行:30万円未満の資産を「その年に損金算入」できる特例
現行のタックスアンサーでは、取得価額が30万円未満の減価償却資産を一定期間に取得し事業供用した場合、要件のもとで取得価額相当額を損金算入できると整理されています。さらに、適用を受ける事業年度における取得価額合計は年300万円が上限です。
「10万円未満」「一括償却資産」との関係を整理する
少額減価償却の実務は、似た制度が並ぶため混同が起きがちです。判定は「税込/税抜経理」「資産の単位」「取得日と事業供用日」など、細部が効きます。
| 区分 | 金額基準(1単位) | 経費化の方法 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| 少額の資産(通常) | 10万円未満 | 取得時に費用処理(原則) | 税抜経理なら税抜で判定することが多い |
| 一括償却資産 | 20万円未満 | 3年で均等償却 | 即時全額ではない |
| 少額減価償却資産の特例 | 現行30万円未満(改正後は40万円未満へ見直し予定) | 取得年に一括損金算入 | 年300万円枠、対象要件、明細添付が重要 |
少額減価償却2026:30万円→40万円のポイント
改正の方向性:基準額を40万円未満へ引上げ(大綱ベース)
令和8年度税制改正の大綱には、「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」について、対象となる取得価額を40万円未満(現行:30万円未満)へ引き上げる旨が記載されています。
この方針どおり法令化されれば、これまで30万円超で「通常の減価償却」になっていた資産が、40万円未満なら「取得年に一括損金」へ寄せられる可能性が高まります。
いつから?(2026年4月改正の扱い方)
実務上は「いつ取得・いつ事業供用したものから適用か」が最重要です。現行の国税庁資料では適用期間が「平成18年4月1日から令和8年3月31日まで」と明示されており、ここが境界になります。
そのため、購入や納品が3月・4月にまたがる設備は、契約書・請求書・検収・使用開始日を含めて、どのルールになるか事前に組み立てる必要があります。
30万円と40万円の違い:節税効果を数字で見る
ケース:35万円のPCを導入(耐用年数4年想定)
- 改正前(30万円未満が対象)
35万円は特例対象外になり、原則は減価償却(例:4年)で按分。購入年の経費は一部にとどまりやすい。 - 改正後(40万円未満が対象になれば)
35万円が特例対象に入る可能性があり、取得年に35万円全額を損金算入できる余地が生まれます。
この差は「当期の利益圧縮=当期の税負担の前倒し軽減」につながります。特に、決算直前の投資や、金融機関向けに利益の見え方を調整したい局面では、会計・税務の両面で影響が出ます。
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中小企業が即時償却を最大化する活用手順
ここからは、税務否認を避けつつ、制度メリットを取り切るための実務手順です。
Step 1: 「対象者」要件を先に確認する
- 青色申告か
- 資本金・出資金、グループ関係
- 常時使用する従業員数(現行基準と改正後の見直し可能性)
対象者から外れていると、購入金額だけ調整しても意味がありません。
Step 2: 「資産の単位」と「判定金額(税込/税抜)」を固める
- 分割できないセット品を無理に分けるとリスクが上がります
- 税込経理なら税込、税抜経理なら税抜での判定が論点になりやすい
この段階で、30万円/40万円の境界に入るかをシミュレーションします。
Step 3: 「取得日」と「事業供用日」を証憑で固定する
- 請求書日付だけでなく、納品・検収・使用開始を整合させる
- 3月末・4月頭は要注意(適用関係が変わり得る)
Step 4: 年300万円枠を月次でモニタリングする
特例は「1件の上限」だけでなく、事業年度合計で上限があるため、複数投資をすると枠超過が起きます。月次で「累計取得価額」を管理し、枠に入る資産から優先的に適用する設計が有効です。
Step 5: 申告添付(明細)と勘定科目運用を統一する
国税庁資料では、損金経理に加え、確定申告書等への「少額減価償却資産の取得価額に関する明細書」添付が必要とされています。経理処理だけで完結せず、申告までがワンセットです。
注意点:40万円になっても危ない処理は残る
重複適用はできない(制度の取り合わせ)
国税庁資料では、少額減価償却資産の特例は、租税特別措置法上の特別償却・税額控除・圧縮記帳との重複適用ができない旨が明記されています。設備投資系の税制を併用する場合は、どれを優先するか設計が必要です。
貸付け用途・中古・リース等の論点も拾う
対象資産にはソフトウェア等の無形資産も含み得る一方で、用途や取引形態(リース等)で取扱いが変わります。現場では「購入したつもりが実質リース」「社用と私用が混在」などが否認の温床です。
よくある質問
Q: 少額減価償却40万円は、誰でも使えますか?
Q: 2026年3月に買うか、4月に買うかで変わりますか?
Q: 年300万円を超えたらどうなりますか?
Q: 申告で何か書類が必要ですか?
まとめ
- 少額減価償却資産の特例は、取得年に一括で損金算入できる制度
- 令和8年度税制改正の大綱で、基準を30万円未満→40万円未満へ引上げ方針が示されている
- 現行では年300万円枠、対象要件、申告時の明細添付などが重要
- 2026年3月・4月をまたぐ投資は、取得日と事業供用日の管理が最重要
- 税制優遇の併用可否や用途・取引形態も含め、事前に税理士へ確認すると安全
参照ソース
- 財務省「令和8年度税制改正の大綱(3/9)」: https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2026/08taikou_03.htm
- 国税庁「No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5408.htm
この記事を書いた人

辻 光明
代表税理士
税理士 / 認定経営革新等支援機関
税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。
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