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中小企業向けコラム
作成日:2026.02.27
辻 光明

執筆者:辻 光明

代表税理士

株の損失繰越を確定申告で使う手順|税理士が解説

8分で読めます
株の損失繰越を確定申告で使う手順|税理士が解説

株の損失繰越(繰越控除)とは、株式の売却などで出た損失を、翌年以降3年間にわたり繰り越し、将来の利益や配当等と相殺できる制度です。問題になりやすいのは「その年に損が出たのに申告しなかった」「翌年は取引がなく申告を止めてしまった」などで、繰越の権利が途切れるケースです。本記事では、株の損失繰越の対象・計算・手続(e-Tax含む)を税理士法人 辻総合会計の実務目線で解説します。

株の損失繰越(繰越控除)とは:3年間の相殺ルール

株(上場株式等)の譲渡で生じた損失は、確定申告により、その年の上場株式等の配当等(申告分離課税を選択したもの等)と損益通算でき、通算しても控除しきれない損失は翌年以後3年間、繰越控除できます。

  • まず当年:譲渡益や(条件を満たす)配当等と損益通算
  • 余った損失:翌年以後3年間、利益・配当等から順次控除
ここがポイント
「繰越」は自動ではありません。損失が出た年に確定申告をし、さらに翌年以後も(取引がなくても)連続して申告して繰越をつなぐ必要があります。

対象になる取引・ならない取引(まずここでミスが出ます)

制度の中心は「上場株式等」です。注意点として、次のようなケースは対象外・制限があります。

  • 一般株式等(非上場株など)と上場株式等は区分が異なり、相互に控除できない(上場の繰越損失を一般株式等の利益から引けない等)
  • いわゆる相対取引など、制度の対象外の取引態様では損益通算・繰越控除ができない
  • NISA口座(非課税口座)内の売却損は損益通算・繰越控除ができない

この「どの区分の損益か」を最初に整理すると、申告の迷いが大きく減ります。

株の損失繰越の計算:どれだけ戻る?の考え方

株の損失繰越は「税額が直接戻る制度」ではなく、「将来の課税対象となる利益を減らす制度」です。結果として、将来の税負担(約20.315%)を軽くできます。

具体例:損失30万円を翌年の利益と相殺(損失繰越3年 計算)

  • 2026年:上場株式等の譲渡損失 30万円
  • 2027年:上場株式等の譲渡益 20万円
  • 2028年:上場株式等の譲渡益 15万円

この場合、

  • 2027年:20万円を相殺し、課税対象の譲渡益は0円。繰越残は10万円
  • 2028年:残10万円を相殺し、課税対象は5万円

「損失が出た年に申告しておけば、利益が出た年に自動的に救われる」わけではなく、連続申告で繰越の権利を維持するのが核心です。

比較表:損失繰越をする場合/しない場合

←横にスクロールできます→
項目損失繰越をする損失繰越をしない
損失年の対応確定申告して繰越の権利を作る申告しないと原則、将来相殺できない
翌年以後利益・配当等と相殺できる(最長3年)利益が出ると通常どおり課税
申告の継続原則、連続して申告が必要(取引なしでも)不要
実務の注意点付表・明細書、区分管理が重要そもそも節税余地が減る

株 損失 繰越 やり方:確定申告(e-Tax)での手順

ここからは実務の手順です。特定口座(源泉徴収あり)でも、損失繰越をしたい場合は申告が必要になるケースが多いです。特定口座年間取引報告書を手元に用意して進めるのが基本です。

Step 1: 取引区分を確認する(上場株式等か、NISAか等)

  • 取引口座(特定口座/一般口座/NISA)を確認
  • 上場株式等の譲渡損失か、一般株式等かを確認
  • 配当も相殺したい場合、申告分離課税を選ぶか検討(配当の受け取り方法・源泉徴収の状況で最適が変わります)

Step 2: 必要書類をそろえる(付表と明細書が要点)

損益通算・繰越控除の適用には、確定申告書に加え、次の書類(付表・明細書)の添付が必要になります。

  • 「確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」
  • 「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」

Step 3: e-Tax(確定申告書等作成コーナー)で入力する

作成コーナーでは、申告する所得の選択等で「株式等の譲渡(売却)、配当、利子」を選び、金融・証券税制の画面から株式の譲渡所得を入力します。画面案内に沿って入力すると、必要な付表や明細書が自動作成される設計です。

Step 4: 翌年以後も連続して申告して繰越を維持する

ここが最重要です。翌年以後、利益が出なかった年や取引がなかった年でも、繰越を続けるために申告が必要になります。途中で申告を止めると、残っている繰越損失を使えなくなるリスクがあります。

ここがポイント
「前年の損失を繰り越す」こと自体が申告事項です。取引がない年でも、繰越を維持したい場合は申告を継続してください。

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よくある落とし穴:株 損失 確定申告で失敗しないチェックポイント

特定口座(源泉徴収あり)でも申告すべき場面がある

源泉徴収あり特定口座は「申告不要」を選べる仕組みがありますが、損失繰越をしたい場合や、口座をまたいで損益通算したい場合、配当と通算したい場合などは申告を検討します。申告不要のままだと、繰越に必要な「損失が生じた年の申告」ができません。

配当との損益通算は「申告の選択」で結果が変わる

上場株式等の配当等と損益通算するには、配当側で申告分離課税を選択するなど条件があります。配当の受け取り方法(総合課税・申告分離・申告不要)で有利不利が変わるため、年の状況(所得、他の控除、住民税など)も含めて判断します。

NISAの損失は相殺・繰越できない

NISAは非課税メリットが大きい一方で、損失が出ても税務上はなかったものとして扱われ、損益通算・繰越控除ができません。制度上の仕様なので、申告でどうにかすることはできません。

よくある質問

Q: 株の損失繰越は、損した年に申告しないとどうなりますか? ▼
原則として、損失が生じた年に確定申告をしていないと、翌年以後に繰り越して控除する手続ができません。損失年の申告で「繰越の起点」を作るのが必要です。
Q: 翌年に取引がない(利益も損もない)場合でも申告が必要ですか? ▼
はい。繰越控除は連続して申告することが要件となるため、取引がない年でも繰越を維持したい場合は申告が必要です。
Q: 複数の証券会社口座がある場合、損益通算できますか? ▼
できます(上場株式等の範囲内など区分要件はあります)。口座ごとに分かれている損益を通算するには、原則として確定申告で合算して申告します。
Q: NISA口座の売却損を、課税口座の利益と相殺できますか? ▼
できません。NISA口座内の損失は損益通算・繰越控除の対象外です。

まとめ

  • 株の損失繰越は、上場株式等の譲渡損失を最長3年間繰り越して利益・配当等と相殺できる制度
  • 損失が出た年に確定申告し、翌年以後も申告を継続して繰越を維持するのが要点
  • 必要書類は付表(繰越控除用)と譲渡所得等の計算明細書。e-Taxでは入力により自動作成される
  • NISAの損失は対象外、一般株式等と上場株式等は区分が異なり相互に控除できない
  • 配当との損益通算は申告方法の選択で結果が変わるため、年ごとに検討が必要

参照ソース

  • 国税庁「No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1474.htm
  • 国税庁「確定申告書等様式コーナー(株式等譲渡益課税関係)」: https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/denshi-sonota/kabushikijoto/2105/01.htm
  • e-Tax「作成コーナーで『株式等の譲渡所得』を入力したい(FAQ)」: https://www.e-tax.nta.go.jp/toiawase/faq/nyuryoku/03.htm
  • 国税庁「確定申告書等作成コーナー(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除)」: https://www.keisan.nta.go.jp/r7yokuaru/cat2/cat21/cat219/kabushikijototokurei/sochiho37_12_2.html

この記事を書いた人

辻 光明

辻 光明

代表税理士

税理士 / 認定経営革新等支援機関

税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。

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本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

記事の内容は法令の改正等により変更される場合があります。 最新の情報については、関係省庁の公式サイト等でご確認ください。

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