
執筆者:辻 光明
代表税理士
株の確定申告は必要?不要?特定口座の仕組み|税理士が解説

株の確定申告が必要かどうかは、「どの口座で取引したか」と「申告で得する調整(損益通算・繰越控除など)をするか」で決まります。特定口座(源泉徴収あり)だけで完結していれば、原則として申告不要にできます。一方、一般口座や特定口座(源泉徴収なし)で利益が出ている場合は、原則として確定申告が必要です。税理士法人 辻総合会計でも、口座の種類の取り違えによる申告漏れ相談が多いため、まずは全体像を押さえて判断できる形に整理します。
株の確定申告が必要・不要の早見表
まずは結論を早見で確認しましょう。ポイントは「源泉徴収ありの特定口座かどうか」です。
| 取引口座/状況 | 原則の扱い | 例外(申告が必要/した方がよい) |
|---|---|---|
| 特定口座(源泉徴収あり)で株の売却益が出た | 申告不要を選べる | 他口座と損益通算したい、損失の繰越控除をしたい場合は申告が必要 |
| 特定口座(源泉徴収なし)で株の売却益が出た | 原則、申告が必要 | (例外は個別事情。基本は申告前提で確認) |
| 一般口座で株の売却益が出た | 原則、申告が必要 | (例外は個別事情。基本は申告前提で確認) |
| NISA口座内の売却益・配当 | 非課税で申告不要 | 損失が出ても損益通算・繰越控除はできない |
特定口座とは?源泉徴収あり・なしの違い
特定口座は、証券会社等が取引損益の計算を行い、「特定口座年間取引報告書」でまとめてくれる仕組みです。ここで重要なのが「源泉徴収をするかどうか」です。
特定口座(源泉徴収あり)は「申告不要」を選べる
特定口座で源泉徴収を選択すると、譲渡益に対して証券会社等が税額計算と源泉徴収まで行います。その結果、源泉徴収口座内の上場株式等の譲渡による所得は、口座ごとに「申告する/申告不要」の選択ができます。
ただし、次で説明する損益通算・繰越控除を使う場合などは、申告が必要になります。
特定口座(源泉徴収なし)は「計算は楽だが、申告は原則必要」
源泉徴収なしは、損益計算の取りまとめはあるものの、納税は確定申告で行う前提になりやすい類型です。実務上は、一般口座と同様に「利益があるなら申告が必要」と理解しておくと判断ミスが減ります。
一般口座は自分で損益計算が必要
一般口座は、特定口座年間取引報告書のような整理が標準化されていないため、取得価額や手数料等を含めた計算を自分で行う必要があります。申告判断以前に、計算ミス・漏れが起きやすい点が注意です。
株の確定申告が必要なケース|いくらから?
ここでは「株 確定申告 必要」の検索意図に直結する、必要になる代表パターンを整理します。
1) 一般口座で売却益が出た
一般口座の上場株式等の譲渡益がある場合、原則として申告分離課税で確定申告を行う整理になります。口座区分が混在している人は、まず「どの口座で利益が出たか」を分解してください。
2) 特定口座(源泉徴収なし)で売却益が出た
源泉徴収が行われていないため、納税は申告で行う前提になります。特定口座年間取引報告書で金額の把握は容易でも、申告が不要になるとは限りません。
3) 給与所得者で、給与以外の所得合計が20万円を超える(目安)
給与所得者は、一定の要件のもとで「給与以外の所得合計が20万円以下なら申告不要」という枠組みがあります。逆にいえば、株の譲渡所得等を含む「給与以外の所得合計」が20万円を超える場合は確定申告が必要になりやすいです。
ただし、ここでいう「所得合計に含めないもの」も定められており、特定口座(源泉徴収あり)で申告不要を選択した譲渡所得等などは、合計に含めない扱いが示されています。判定は口座と選択状況で変わるため、「20万円」だけで機械的に判断しないことが重要です。
4) 損益通算・繰越控除を使う(申告が必要になる)
上場株式等に係る譲渡損失がある場合、確定申告により配当所得等(申告分離課税を選択したもの)と損益通算でき、控除しきれない損失は翌年以後3年間繰り越せます。この特例の適用には、確定申告が必要です。
申告不要でも「申告した方が得」なケース
「特定口座(源泉徴収あり)だから絶対に申告しない」が最適とは限りません。税理士法人 辻総合会計でも、次のケースは見直しの余地が大きいと感じます。
1) 他口座の利益と損失を相殺したい(損益通算)
A証券で利益、B証券で損失、といったケースでは、源泉徴収ありの特定口座内で完結していても、全体で損益通算するには確定申告が必要になります。申告により所得税が還付されることがあります。
2) 損失を翌年以後に繰り越したい(繰越控除)
繰越控除は「損失が出た年に申告して、その後も連続して申告する」ことが実務上の要点です。翌年以後に利益が出そうな人ほど、損失年の申告が将来の節税につながります。
3) 配当の課税方式を選びたい(申告分離課税など)
上場株式等の配当等は、総合課税に代えて申告分離課税を選択できます。配当を申告する場合は、申告方式の選択が絡むため、全体の税率や控除関係を踏まえて検討が必要です。
4) NISAの利益は申告不要。ただし損失が出ても使えない
NISA口座内の配当等や譲渡益は非課税です。一方で、NISA内で損失が出ても損益通算・繰越控除はできません。「今年はNISAで損したから他の利益と相殺したい」という発想は成立しない点が重要です。
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株の確定申告のやり方|特定口座年間取引報告書で進める手順
実務では、特定口座年間取引報告書を起点にするとミスが減ります。代表的な流れを整理します(電子申告/紙いずれでも考え方は同じです)。
Step 1: 取引口座を棚卸しする
- 一般口座 / 特定口座(源泉徴収あり) / 特定口座(源泉徴収なし) / NISA を分ける
- 証券会社が複数ある場合は全社分を集める
Step 2: 特定口座年間取引報告書を確認する
- 年間の譲渡益(または譲渡損)
- 源泉徴収税額(源泉徴収ありの場合)
- 配当等を口座受入している場合は、その金額や控除額欄
Step 3: 申告するかの意思決定をする
- 申告が必要(一般口座の利益、特定口座源泉徴収なしの利益 等)
- 申告した方が得(損益通算、繰越控除、配当の申告方式検討 等)
- 完全に申告不要で終える(源泉徴収あり特定口座のみで、調整不要)
Step 4: 確定申告書等作成コーナー等で入力し提出する
- 株式等の譲渡・配当は、申告分離課税として入力する場面が中心
- 繰越控除を使う場合は、付表等の添付が必要になる
よくある質問
Q: 株の確定申告はいくらから必要ですか?
Q: 特定口座(源泉徴収あり)なら、確定申告は本当に不要ですか?
Q: 株で損した年は確定申告した方がいいですか?
Q: NISAで利益が出ました。確定申告は必要ですか?
まとめ
- 株の申告要否は、まず口座区分(一般/特定口座・源泉あり/なし)で決まる
- 特定口座(源泉徴収あり)は原則申告不要を選べるが、損益通算や繰越控除を使うなら申告が必要
- 一般口座・特定口座(源泉徴収なし)の利益は、原則として申告が必要
- 給与所得者の「20万円基準」は口座と選択状況で扱いが変わるため、機械判断は危険
- 迷ったら、特定口座年間取引報告書を集めて「申告が必要」か「申告した方が得」かを分けて判断する
参照ソース
- 国税庁「特定口座制度(No.1476)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1476.htm
- 国税庁「株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)(No.1463)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1463.htm
- 国税庁「給与所得者で確定申告が必要な人(No.1900)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1900.htm
- 国税庁「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除(No.1474)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1474.htm
- 国税庁「上場株式等の配当等に係る申告分離課税制度(No.1331)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1331.htm
- 国税庁「NISA制度(No.1535)」: https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1535.htm
- 国税庁「確定申告書等作成コーナー(特定口座年間取引報告書)」: https://www.keisan.nta.go.jp/r1yokuaru/ocat3/ocat33/cid1066.html
この記事を書いた人

辻 光明
代表税理士
税理士 / 認定経営革新等支援機関
税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。
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