
執筆者:辻 光明
代表税理士
顧問税理士の変更手順と最適タイミング

顧問税理士の変更とは?まず結論(トラブル回避の全体像)
顧問税理士の変更とは、顧問契約を適法に終了させ、会計・税務データと申告体制(電子申告の委任関係など)を新税理士へ切り替える手続きです。問題になりやすいのは「感情的な対立」ではなく、資料・データの引渡し遅延、電子申告の委任が残る、未払報酬の精算の3点です。今の税理士に不満があっても、手順を踏めば円滑に変更できます。
税理士法人 辻総合会計でも、顧問変更は「段取り」で成否が決まる相談の代表例です。以降、実務上の要点だけに絞って解説します。
顧問税理士を変更するベストなタイミング(決算・申告・年末調整で判断)
結論として、最もトラブルが少ないのは「申告が終わった直後〜次期の入力が本格化する前」です。期中変更も可能ですが、引継ぎコストが増えやすい場面があります。
| タイミング | メリット | デメリット・注意点 | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| 申告提出後(法人税・所得税) | 区切りが明確で引継ぎが楽 | 税務調査対応の分担を決める必要 | 「とにかく揉めずに替えたい」 |
| 決算2〜3か月前 | 次期体制を早めに整えられる | 決算整理の途中で資料不足が出やすい | 現税理士の対応遅延が深刻 |
| 期中(売上急増・融資前) | 早期に改善できる | 二重作業が増えやすい | 月次が崩れて資金繰りが不安 |
| 年末調整・法定調書の直前 | 原則おすすめしない | 期限業務が集中しミスリスク | 例外:現税理士が業務不可 |
顧問税理士の変更手順(引き継ぎで失敗しないステップ)
以下は、一般的な法人・個人事業どちらにも使える実務手順です。ポイントは「先に新税理士を決めてから、旧税理士へ解約通知」です。
Step 1: 変更理由と要件を整理する(新税理士の選定基準)
- 不満点を「レスポンス」「料金」「提案力」「業務範囲」「担当者品質」に分解します
- 次の顧問に求める条件(医療・クリニック特化、クラウド会計、消費税の判定力など)を言語化します
ここが曖昧だと、替えても同じ不満が再発します。
Step 2: 現契約の解除条件を確認する(解約予告・違約金・精算)
- 契約書の「解約予告期間(例:1か月前まで)」を確認
- 月額顧問料の範囲(記帳代行、年末調整、償却資産申告、給与計算など)を棚卸し
- 未払・前払がある場合の精算ルールを確認
ここで解約日が決まります。
Step 3: 新税理士と「受任範囲」「移行スケジュール」を合意する
- どこからどこまでを新税理士が担当するか(期首から?月次から?申告から?)
- 会計ソフト(freee / マネフォ / 弥生 / 勘定奉行等)の移行方法
- 追加費用が出る典型(過去月の遡り、消費税区分の再判定、在庫・棚卸調整)
Step 4: 旧税理士へ解約通知(書面推奨)と資料返還の段取り
- 解約通知はメールでも良いですが、後日の証跡のため文章で残します
- 返還対象をリスト化します(後述)
感情的なやり取りを避け、「事務連絡」として淡々と進めるのがコツです。
Step 5: 電子申告(e-Tax)の委任関係を解除・再設定する
電子申告を税理士に任せていた場合、委任関係が残っていると「誰が何を提出できるか」が曖昧になります。e-Taxには委任関係の登録・解除の考え方があり、解除方法も案内されています。
また、税理士が税務代理を行う場合は税務代理の権限を示す手続(税務代理権限証書の提出)が案内されています。
実務上は、新税理士側が「何を提出し直す必要があるか」をチェックリスト化してくれます。
Step 6: 引継ぎパッケージを作り、期限業務の担当を確定する
最低限、次の「引継ぎパッケージ」を揃えるとトラブルが減ります。
- 会計データ一式(仕訳・元帳・試算表・補助科目内訳)
- 証憑の保管状況(紙・スキャン・電子帳簿保存法対応の有無)
- 申告書控え(法人税/所得税、消費税、地方税、償却資産、年末調整関係)
- 税務署等からの通知書・納付書・予定納税(予定納税がある業種は要注意)
- 役員報酬・給与データ、社会保険の状況(給与計算を外注している場合は特に)
- 税務調査・問い合わせ履歴(進行中案件がある場合)
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「トラブルになりやすい論点」チェック(変更前に潰すべき5つ)
- 会計ソフトの権限:旧税理士が管理者だと、ログイン権限移管で止まることがあります
- 決算整理の途中:未処理(棚卸、前払費用、未払計上、減価償却、消費税区分)が残ると責任分界が曖昧
- 消費税:簡易課税・インボイス・経過措置など、前提がズレると修正が大きくなりがち
- 年末調整・法定調書:期限が固定のため「どちらがやるか」を先に決める
- 税務調査:調査が来た場合の窓口、立会、資料作成、報酬を取り決める
よくある質問
Q: 顧問税理士を変更すると税務署に何か届出が必要ですか?
Q: 期中に変更すると、決算・申告が二重で費用がかかりますか?
Q: 旧税理士との関係が悪く、連絡したくありません。新税理士に任せられますか?
Q: e-Taxの委任解除はどう進めればいいですか?
まとめ
- 顧問税理士の変更は「契約解除」「資料・データ返還」「電子申告の切替」がセット
- ベストなタイミングは原則「申告後〜次期開始前」。年末調整直前は避ける
- トラブル原因は感情よりも、資料返還の曖昧さと責任分界の不明確さ
- e-Taxの委任関係は解除・再設定を行い、提出体制を明確化する
- 調査対応・期限業務(消費税、年末調整など)の担当を事前に書面で決める
参照ソース
- 国税庁「税務代理の権限の明示」: https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/zeirishi/annai/001.htm
- e-Tax(国税電子申告・納税システム)「委任関係の登録について」: https://www.e-tax.nta.go.jp/uketsuke/delegation_relationships.htm
- e-Tax(国税電子申告・納税システム)「委任関係の解除方法について教えてください。」: https://www.e-tax.nta.go.jp/toiawase/qa/kanbenka/43.htm
この記事を書いた人

辻 光明
代表税理士
税理士 / 認定経営革新等支援機関
税理士法人 辻総合会計の代表。クリニック開業支援・医療法人設立・クラウド会計導入を得意とし、オンラインでの税務顧問サービスを推進。
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