
執筆者:辻 勝
会長税理士
ベースアップ評価料の計画書不要?2026届出書類を新旧比較

ベースアップ評価料の賃金改善計画書は2026年どうなるのか
ベースアップ評価料の届出を2024年度に担当した方にとって、2026年度で一番気になるのは「賃金改善計画書をまた作るのか」という点ではないでしょうか。結論からいうと、2026年度改定では、2024年度のように賃金改善計画書そのものを前面に作成・提出する運用から、改定後の届出様式に整理される方向が明確になっています。つまり、担当者の実務感覚としては「計画書単独の作成作業は不要になり、届出書類の中で必要事項を整理して提出する」と理解すると整理しやすいでしょう。
特に問題になりやすいのは、2024年度に従来版様式で対応した担当者ほど、「今年も同じ別添の計画書を作るはず」と思い込みやすい点です。2026年度は届出様式そのものが見直されており、書類名称と記載の流れが変わっています。ここを取り違えると、古い様式で準備を進めてしまうおそれがあります。
2024年度と2026年度の届出書類の違い
2024年度は「賃金改善計画書」を含む従来版が基本
2024年度のベースアップ評価料では、厚生労働省の特設ページでも、従来版様式を用いる場合の必要シートとして「別添2 届出書」「様式95~97」に加え、(別添)賃金改善計画書の記載が明示されていました。実務では、届出書本体と計画書の両方を意識して作成する必要があり、特に診療所ではこのシート作成が負担になりやすかったといえます。
また、令和7年度の運用でも、地方厚生局の案内では「令和7年度賃金改善計画書」を6月に提出する必要があるとされており、2024年度から続く仕組みでは、計画書の作成・提出が明確に求められていました。前年の担当者が「計画書ありき」で記憶しているのは自然です。
2026年度は改定後様式ベースに整理
一方で、2026年度改定後の地方厚生局の案内では、ベースアップ評価料の届出書類として、無床診療所や歯科診療所は「ベースアップ評価料(1)専用届出様式」、評価料(2)や入院ベースアップ評価料では「別添2及び様式95~98」が案内されています。さらに、実績報告についても「病院簡略化版」「診療所簡略化版」「訪問看護ステーション簡略化版」といった簡略化された報告様式が掲示されています。
ここで重要なのは、2026年度の案内では、2024年度に前面に出ていた「賃金改善計画書」を独立した中心書類として読むよりも、改定後の届出様式に必要情報を落とし込む運用へ移っている点です。実務上は「計画書という名前の別シートを別途組み立てる」という発想から、「最新様式で必要欄を埋める」という発想に切り替えた方がミスを防ぎやすくなります。
賃金改善計画書が不要といえる理由
「単独の計画書作成」から「届出様式への記載」へ移った
2026年度で「計画書が不要」といわれる背景は、ベースアップ評価料の考え方自体がなくなったからではありません。賃金改善の内容や期間を示す必要は引き続きあります。ただし、その示し方が、2024年度のような独立した計画書中心の運用から、改定後の届出様式に集約される形へ見直されている点がポイントです。
つまり、不要になったのは「賃金改善を計画すること」ではなく、「旧来の計画書様式を前提にした事務負担」です。この違いを理解しておかないと、「計画自体が不要になった」と誤解してしまいます。
実績報告は引き続き重要
届出簡素化といっても、ベースアップ評価料による収入を職員へ還元する原則は変わりません。実績報告書は引き続き必要であり、しかも2026年度は簡略化版様式が用意されています。したがって、届出時の負担は軽くなっても、賃金改善の実行と検証まで含めて管理する必要がある点は変わらないと理解すべきです。
税理士法人 辻総合会計でも、制度が簡素化されるほど「何を残し、何を省略できるのか」が逆に分かりにくくなるという相談をよく受けます。届出の時点では簡便でも、後で説明できない状態は避ける必要があります。
2026年の届出手順と担当者の実務ポイント
まず確認すべき書類
2026年度に初めて、または改定後様式でベースアップ評価料を届け出る場合は、次の順で確認すると整理しやすくなります。
Step 1: 管轄の地方厚生局ページで最新様式を確認する
診療所・病院・歯科・訪問看護で使う様式が異なります。前年のExcelを流用しないことが重要です。
Step 2: 自院が評価料(1)だけか、評価料(2)や入院も含むかを判定する
評価料の区分で必要書類が変わります。無床診療所では専用届出様式で足りるケースがあります。
Step 3: 賃金改善の開始月と算定期間を確認する
地方厚生局の2026年度案内では、算定開始月と賃金改善実施期間の始期・終期を記載する考え方が示されています。
Step 4: 実績報告まで見据えて内部資料を残す
提出書類が簡素化されても、給与改定の根拠、対象職員、増額幅の考え方は手元資料として保管した方が安全です。
古い様式を流用しないことが最重要
2024年度に作成したファイルをベースに更新すると、不要なシートや旧注記が残りやすくなります。現場では「前年ファイルのコピー」が最も起きやすいミスです。2026年度は届出書類の見た目が整理されている分、古い様式を使うと差戻しリスクが高まります。
新旧比較表で見る実務上の違い
| 項目 | 2024年度中心の運用 | 2026年度改定後の実務 |
|---|---|---|
| 届出の考え方 | 従来版様式+賃金改善計画書を意識 | 最新届出様式への記載中心 |
| 担当者の負担感 | シート構成が複雑で理解に時間がかかる | 専用届出様式・簡略化版で整理しやすい |
| 実績報告 | 従来版との連動を意識 | 簡略化版様式が案内されている |
| 実務上の注意点 | 計画書の作成漏れ・シート選択ミス | 最新様式確認漏れ・旧様式流用ミス |
| 管理すべき本質 | 賃金改善計画の作成 | 賃金改善内容を説明できる状態の維持 |
この比較から分かるように、2026年度は「賃金改善の管理が不要」になったのではなく、「届出の見せ方が簡素化された」と捉えるのが正確です。
ベースアップ評価料の届出簡素化で注意したい点
「不要」と「何もしなくてよい」は違う
検索では「ベースアップ評価料 計画書 不要」という表現が増えていますが、これは事務作業の整理を指すことが多く、制度上の説明責任まで消えるわけではありません。特に、後日実績報告や問い合わせがあった場合に、どの職種へどのように配分したかを説明できなければ実務上は困ります。
2026年度は最新情報確認が前提
厚生労働省の特設ページでは、令和8年度のベースアップ評価料の詳しい情報は追って公開予定とされています。したがって、2026年の届出を行う担当者は、厚労省の改定ページと管轄厚生局のページをセットで確認する運用が必要です。現場では、中央の制度説明よりも地方厚生局の掲載様式の方がそのまま実務に直結することが少なくありません。
よくある質問
Q: 2026年は賃金改善計画書を一切作らなくてよいのですか?
Q: 2024年度のExcelを修正して2026年度に使ってもよいですか?
Q: 届出が簡素化されたなら、実績報告も不要ですか?
まとめ
- 2024年度は賃金改善計画書を含む従来版様式の意識が強かった
- 2026年度は最新の届出様式に必要事項を整理する方向へ見直されている
- 「計画書不要」とは、賃金改善の管理不要ではなく届出事務の簡素化を意味する
- 実績報告や内部資料の保存は引き続き重要である
- 提出前には厚労省と管轄地方厚生局の最新様式を必ず確認する
参照ソース
- 厚生労働省「ベースアップ評価料等について」: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00053.html
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
- 厚生労働省「医療機関等における賃上げ・物価上昇支援事業について」: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_69485.html
- 北海道厚生局「ベースアップ評価料の施設基準等の届出について」: https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/hokkaido/shinsei/shido_kansa/hoken_shitei/index_00012.html
- 近畿厚生局「ベースアップ評価料の届出について」: https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kinki/gyomu/gyomu/hoken_kikan/shinryohoshuh04_00011.html
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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