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クリニック向けコラム
作成日:2026.04.06
辻 勝

執筆者:辻 勝

会長税理士

ベースアップ評価料と物価対応料の違い|2026年改定を整理

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ベースアップ評価料と物価対応料の違い|2026年改定を整理

ベースアップ評価料と物価対応料の違いは何か

ベースアップ評価料と物価対応料の違いは、前者が職員の賃上げを目的とする評価であり、後者が光熱水費・食材料費・医療材料費・委託費など物件費の上昇に対応する評価である点です。2026年の診療報酬改定では、この2つが同じ「経営支援策」に見えやすいため、医療機関で混同が起きやすくなっています。

とくに院長や事務長にとっての問題は、「どの収入を何に使う前提で管理するのか」が曖昧だと、届出・賃金改善・収支見通しの判断を誤りやすいことではないでしょうか。現場でも、「どちらも経営が苦しいから出る加算」と理解してしまい、賃上げ原資と物価補填を一緒に見てしまう相談が増えています。

当法人でも、診療所・中小病院の報酬改定相談では、制度の名称よりも「人件費対応なのか、物件費対応なのか」を最初に切り分けることを重視しています。2026年改定では、この整理が実務の出発点です。

ベースアップ評価料とは|賃上げのための評価

ベースアップ評価料は、医療機関に勤務する職員の処遇改善、すなわち賃上げを診療報酬で支える仕組みです。2026年度改定では見直しが行われ、対象職員の範囲が拡大される方向が示されています。

ベースアップ評価料の目的

制度の中心は、継続的な賃上げの実施です。単なる一時金の補填ではなく、給与や賞与を含む賃金改善を支える設計である点が重要です。2026年度・2027年度に段階的な評価とされ、継続して賃上げを行う医療機関と、それ以外の医療機関で評価に差が付く構造になっています。

2026年改定で押さえたいポイント

外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)は、2026年6月から初診時17点、再診時等4点、訪問診療時79点または19点が基本水準です。さらに、継続的賃上げ実施施設では初診23点、再診6点など、より高い評価が設定されています。2027年6月以降は段階的に倍増する設計です。

また、対象となる職員については、事務職員や40歳未満の医師・歯科医師・薬局薬剤師も含める方向が示されており、従来より広い人材確保策として位置付けられています。

ここがポイント
ベースアップ評価料は「収入が増える制度」ではありますが、実務上は「賃金改善を行う体制」とセットで理解する必要があります。単純な利益確保の制度として扱うと、運用を誤りやすいため注意が必要です。

物価対応料とは|物件費高騰への対応

物価対応料は、2026年度以降の物価上昇に段階的に対応するため、新設される加算です。こちらは賃上げではなく、物件費の高騰に対応するための制度として整理するのが正確です。

物価対応料の対象になるコスト

厚生労働省の資料では、医療機関等が直面する人件費に加え、医療材料費、食材料費、光熱水費、委託費などの高騰を踏まえた対応として示されています。ただし、制度名としての「物価対応料」は、特に物件費上昇への段階的対応を明確化したものです。

2026年改定での主な点数

外来・在宅物価対応料は、2026年で初診時2点、再診時等2点、訪問診療時3点です。2027年はそれぞれ4点、4点、6点へ引き上げられる予定です。入院物価対応料も病棟区分ごとに設定されており、たとえば急性期一般入院料1では2026年58点、2027年116点とされています。

このように、物価対応料は賃金改善の届出制度というより、基本診療料等の算定に併せて算定する物価高対策として理解すると整理しやすいでしょう。

ベースアップ評価料と物価対応料の違い|比較表で整理

2つの制度は同時期に語られるため混同しやすいですが、目的と使途の考え方が異なります。まずは次の表で整理してください。

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項目ベースアップ評価料物価対応料
主な目的職員の賃上げ・処遇改善物件費高騰への対応
主な対象医療機関等に勤務する職員の賃金改善光熱水費、医療材料費、食材料費、委託費等の上昇
2026年外来初診の例17点(継続的賃上げ実施施設は23点)2点
2027年の扱い段階的に増額2026年の2倍水準予定
実務上の論点届出、賃金改善計画、対象職員の整理収支補填、費用上昇との対応関係の把握
制度理解の軸人件費対応物件費対応

現場での誤解として多いのは、「どちらも経営支援だから同じ財布で見ればよい」という考え方です。しかし、制度趣旨が異なるため、管理会計上も分けて認識する方が運用しやすくなります。

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物価対応料とベースアップ評価料は併算定できるのか

結論からいえば、2026年度改定の資料上は、両者は趣旨の異なる別建ての評価として設計されており、基本診療料等に併せて算定される物価対応料と、賃上げ対応のベースアップ評価料は、同じ改定の中で並行して位置付けられています。したがって、実務上は「どちらか一方だけ」というより、要件に応じて両制度を別々に理解し、管理することが重要です。

ただし、個別の算定可否や施設基準、届出要否、包括範囲との関係は、通知・疑義解釈・地方厚生局の案内で最終確認すべきです。とくに病院と診療所、医科と歯科、訪問看護では整理が異なります。

よくある誤解

  • ベースアップ評価料を取っていれば、物価対応料の管理は不要
  • 物価対応料も賃上げ原資に自由に回せる
  • 2026年は点数が小さいので重要度が低い

この3つは誤解になりやすい論点です。点数の大小だけでなく、制度趣旨に沿った説明責任を持てるかが大切です。

2026年改定で医療機関が行う実務対応の手順

比較だけで終わらせず、院内実務に落とし込むことが必要です。特に中小規模の診療所では、院長・事務長・社労士・税理士の役割分担を早めに決めると進めやすくなります。

Step 1: 制度を人件費対応と物件費対応に分けて整理する

ベースアップ評価料は賃上げ、物価対応料は物価高対応という原則を、院内で共通認識にします。ここが曖昧だと、その後の試算がぶれます。

Step 2: 2026年・2027年の点数影響を概算する

外来件数、再診件数、訪問診療件数、入院基本料の区分ごとに、年間の増収見込みを試算します。2027年に増額予定の項目もあるため、単年度だけでなく2か年で見ることが重要です。

Step 3: ベースアップ評価料は賃金改善計画と整合させる

職員の範囲、昇給・手当・賞与への反映方法、夜勤手当との関係などを確認します。継続的賃上げ実施施設かどうかの整理も早めに進めます。

Step 4: 物価対応料は固定費・変動費の上昇と照合する

光熱水費、材料費、外注費、給食委託費など、実際に上昇している費目との関係を見える化します。月次試算表と対比すると判断しやすくなります。

Step 5: 通知・疑義解釈・地方厚生局資料で最終確認する

制度は改定概要だけでなく、告示、通知、疑義解釈で実務が固まります。見込みの段階で動きすぎず、最終文書を確認する姿勢が大切です。

ここがポイント
制度の名称が似ていなくても、改定説明では「賃上げ・物価対応」と一括で説明されるため、院内説明資料ではあえて2列比較にして配布すると誤解が減ります。

よくある質問

Q: ベースアップ評価料と物価対応料は同じ制度ですか? ▼
いいえ、同じではありません。ベースアップ評価料は職員の賃上げを支える評価、物価対応料は光熱水費や材料費などの物価上昇に対応する評価です。2026年改定では両方が並行して示されているため、目的別に分けて理解する必要があります。
Q: 物価対応料は2027年も同じ点数ですか? ▼
いいえ、2026年改定の概要資料では、2027年は2026年の2倍となる予定の設計が示されています。たとえば外来・在宅物価対応料は初診2点から4点、再診2点から4点へ引き上げ予定です。
Q: ベースアップ評価料は誰の賃上げに使う制度ですか? ▼
2026年改定では対象職員の範囲が拡大され、事務職員や40歳未満の医師・歯科医師・薬局薬剤師も対象に含める方向が示されています。ただし、経営者や役員等は除かれます。
Q: まず何から確認すればよいですか? ▼
最初に確認すべきなのは、自院にとって増収要因が「人件費対応」なのか「物件費対応」なのかを分けて把握することです。その上で、届出、施設基準、賃金改善計画、月次収支への影響を順に確認すると整理しやすくなります。

まとめ

  • ベースアップ評価料は職員の賃上げを目的とする評価である
  • 物価対応料は光熱水費や材料費など物件費高騰への対応である
  • 2026年改定では両制度が並行して示されるため混同しやすい
  • 実務では人件費対応と物件費対応を分けて管理することが重要である
  • 個別の算定要件や届出実務は通知・疑義解釈で最終確認すべきである

参照ソース

  • 厚生労働省「ベースアップ評価料等について」: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00053.html
  • 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定説明資料等について」: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_71068.html
  • 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要 1.賃上げ・物価対応(賃上げ)」: https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001669200.pdf
  • 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定の概要 2.賃上げ・物価対応(物価対応)」: https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001672521.pdf

この記事を書いた人

辻 勝

辻 勝

会長税理士

税理士 / 行政書士

税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。

ご注意事項

本記事の内容は、公開日時点における一般的な情報提供を目的としており、 特定の個人や法人に対する専門的なアドバイスを構成するものではありません。

税務・会計・法務等に関する具体的なご相談については、 必ず資格を持った専門家にご確認ください。 本記事の情報に基づいて行われた判断や行動により生じた損害について、 当事務所は一切の責任を負いかねます。

記事の内容は法令の改正等により変更される場合があります。 最新の情報については、関係省庁の公式サイト等でご確認ください。

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