
執筆者:辻 勝
会長税理士
ベースアップ評価料の8月中間報告と実績報告|2026年版

ベースアップ評価料の8月中間報告と翌年実績報告とは
ベースアップ評価料の報告実務は、提出時期を先に押さえて月次でデータを蓄積することが最大のポイントです。特に事務担当者にとっての課題は、「8月に何を出すのか」「翌年に何を確認するのか」が混同しやすい点ではないでしょうか。2026年4月6日時点では、厚生労働省は令和8年度診療報酬改定のベースアップ評価料の詳細を「追って公開予定」としており、現時点で確認できる公表資料を前提に準備することが実務上重要です。
現行の公表資料では、ベースアップ評価料を算定している医療機関は、毎年8月に前年度分の賃金改善実績報告書を提出する流れが明示されています。一方で、2026年度改定では報告実務の整理が予定されており、本記事では「8月の中間確認」と「翌年の実績報告」という実務カレンダーの形で、今から準備すべき内容を整理します。
ベースアップ評価料の報告スケジュール2026を先に確認
ベースアップ評価料の報告スケジュール2026を考えるうえでは、「算定中の年度管理」と「提出年度の報告」を分けて考えるのが基本です。現行資料では、毎年8月に前年度の賃金改善実績報告書を提出する建付けです。そのため、2026年に実務担当者が行うべきことは、2025年度実績の提出準備と、2026年度分の途中管理を並行して進めることになります。
| 時期 | 主な実務 | 押さえるポイント |
|---|---|---|
| 2026年4月〜5月 | 2025年度実績の集計準備 | 賃上げ対象者、支給額、評価料収入を整理 |
| 2026年6月以降 | 令和8年度改定の新通知確認 | 様式変更、中間報告の扱い、提出先を確認 |
| 2026年8月 | 2025年度分の報告対応が中心 | 実績報告の期限管理が最優先 |
| 2026年9月〜2027年3月 | 2026年度分の月次管理 | 翌年報告に備えた証憑・一覧表の整備 |
| 2027年度 | 2026年度分の実績報告 | 改定後の新様式が出ればそれに従う |
ここで重要なのは、8月は「その年の途中経過をなんとなく報告する月」ではなく、原則として提出期限と対象年度が決まっている月だという点です。現場では「今年の賃上げ状況を聞かれる」と理解されがちですが、実務上は対象年度を明確に区切った報告が求められます。
ベースアップ評価料の中間報告8月で準備すべきデータ
ベースアップ評価料 中間報告 8月という検索は多いのですが、実務担当者が本当に知りたいのは「8月までに何を集めておけば困らないか」です。2026年度改定で報告の整理が見込まれる以上、形式にかかわらず、今から持っておくべきデータは共通しています。
1. 賃上げ対象職員の一覧
最初に必要なのは、評価料の対象となる職員の一覧です。職種、常勤・非常勤、対象月数、在籍期間を整理しておくと、あとから給与台帳と突合しやすくなります。入退職者が多い診療所ほど、この一覧の精度が報告の質を左右します。
2. ベースアップ評価料による原資額
次に、ベースアップ評価料の算定により得た収入を月別で把握します。レセプト請求額ベース、入金ベースのどちらで管理するかは院内ルールを決めて統一してください。原資の把握が曖昧だと、賃金改善との対応関係が説明しにくくなります。
3. 実際の賃金改善額
基本給の引上げ、毎月定額で支払う手当、夜勤手当の増額など、どの方法で賃金改善を実施したかを区分しておくことが大切です。2026年度改定資料では、夜勤手当増額に評価料収入を用いることを可能とする見直しも示されています。したがって、どの手当を賃上げ実績に含めるかの整理は、これまで以上に重要になります。
4. 証憑の保管
給与台帳、賃金台帳、就業規則や賃金規程の改定履歴、賞与支給一覧、届出様式の控え、修正履歴は必ず保存してください。報告書そのものだけでなく、説明できる裏付け資料を残しておくことが、後日の確認対応では有効です。
中間報告書の書き方と実績報告の違い
ベースアップ評価料の報告実務でよくある混乱は、「計画」「途中管理」「実績報告」が一つに見えてしまうことです。2025年運用では、賃金改善計画書と賃金改善実績報告書が別に整理され、地方厚生局のページでも提出期限が分けて案内されています。2026年度は制度見直しにより整理が進む見込みですが、考え方は次のように押さえると実務が安定します。
| 項目 | 中間管理で見る内容 | 実績報告で求められる内容 |
|---|---|---|
| 目的 | 年度途中の進捗確認 | 前年度の取組結果の報告 |
| 使う数値 | 見込み・途中集計 | 確定した年度実績 |
| 管理方法 | 院内の月次表で十分 | 所定様式への転記が必要 |
| ミスの出やすい点 | 入退職者の反映漏れ | 対象期間の取り違え |
つまり、8月の実務は単なる「書き方」の問題ではなく、年度を通じた管理の結果です。現場では「まず様式を見てから考える」流れになりがちですが、実際には先に集計表を作っておくほうが効率的です。当法人でも、毎月更新する一覧表を1枚用意し、給与改定額・対象人数・評価料収入を並べて管理する方法をおすすめしています。
ベースアップ評価料の報告を漏れなく進める手順
報告期限直前に慌てないためには、次の順序で進めるのが実務的です。
Step 1: 届出区分と算定期間を確認する
外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)のみか、(Ⅱ)や入院ベースアップ評価料を含むのかで、使う様式や確認項目が変わります。まずはどの評価料を、いつから算定しているかを一覧にしてください。
Step 2: 対象年度の給与データを月別に集計する
賃上げの対象職員ごとに、改定前後の給与、支給月、在籍月数を集計します。賞与を含めるかどうか、定額手当の扱いをどうするかも院内で統一しておくと後工程が楽になります。
Step 3: 評価料収入との対応関係を確認する
算定額に対し、賃金改善額がどう対応しているかを確認します。過不足がある場合は、理由を説明できるようメモを残しておくと安心です。「支給したつもり」ではなく、数字で説明できる状態が必要です。
Step 4: 地方厚生局の最新様式を確認する
2026年度は改定年のため、様式差替えや記載要領の更新に注意が必要です。厚生労働省本省ページだけでなく、所轄の地方厚生局ページも確認してください。
Step 5: 提出前に年度の切り分けを再確認する
8月提出分が何年度の実績を対象にするのか、途中で区分変更や計画修正があったかを再確認します。年度途中の変更がある場合、1つの報告書にまとめる必要があるケースもあるため、前年の取扱いを参考に早めに確認しておくと安全です。
2026年に事務担当者が注意したいポイント
2026年は改定年であるため、前年と同じ感覚で動くと見落としが出やすい年です。特に次の3点は注意が必要です。
制度詳細が未公表の部分を前提にしすぎない
2026年4月6日時点で、厚生労働省は令和8年度改定後のベースアップ評価料の詳細を追って公表するとしています。したがって、「今年は必ず8月に新しい中間報告書が出る」と断定して動くのではなく、まずは現行の実績報告スキームを基に準備するのが安全です。
8月提出と月次管理を分けて考える
8月の提出物だけを意識すると、年度途中の給与改定や人員増減を取りこぼします。実務では、毎月の管理表を整え、その結果を8月に転記するイメージが適切です。ブックマークされる記事や院内マニュアルが役立つのは、まさにこの運用部分です。
管轄ごとの案内差を確認する
提出先は地方厚生局であり、専用メールアドレスや案内文の出し方は管轄ごとに確認が必要です。厚生労働省本省ページで制度全体を押さえつつ、最終的な提出実務は所轄局のページで確認する運用が確実です。
よくある質問
Q: ベースアップ評価料の8月中間報告は、2026年も必ず新様式で出ますか?
Q: 実績報告の提出時期はいつですか?
Q: 中途で区分変更した場合は別々に報告しますか?
Q: 今から準備するなら何を最優先にすべきですか?
まとめ
- ベースアップ評価料の報告実務は、8月提出と月次管理を分けて考えると整理しやすい
- 2026年4月6日時点では、令和8年度改定後の詳細は未公表で、現行実績報告の流れを前提に準備するのが安全
- 実務上必要なのは、対象職員一覧、賃上げ額、評価料収入、証憑の4点セット
- 区分変更や計画修正があっても、年度全体を1つの報告書にまとめる取扱いが重要
- 個別の算定区分や人員構成により必要資料は異なるため、最終提出前には所轄の地方厚生局案内を確認する
参照ソース
- 厚生労働省「ベースアップ評価料等について」: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000188411_00053.html
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
- 関東信越厚生局「ベースアップ評価料に係る『賃金改善計画書』及び『賃金改善実績報告書』について」: https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kantoshinetsu/shinsei/baseup.html
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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