
執筆者:辻 勝
会長税理士
物価対応料2026とは?算定要件と2027倍増|税理士が解説

物価対応料とは?2026年の新設加算の結論
物価対応料とは、令和8年度(2026年度)・令和9年度(2027年度)の物価上昇に段階的に対応するため、基本診療料や調剤基本料等の算定に「併せて」算定できるよう新設される加算です。外来・在宅(初診/再診等/訪問診療)、入院、歯科、調剤、訪問看護といった領域ごとに設計され、さらに令和9年6月以降は所定点数(所定額)が「200%」に引き上げられる運用が示されています。
クリニック経営の観点では、初診・再診の回転数がそのまま影響しやすい一方で、「算定できる日・できない日」「包括との関係」を外すと取りこぼしが発生します。ここでは、税理士法人 辻総合会計が、院長先生・事務長の現場目線で算定ポイントを整理します。
物価対応料(診療報酬改定2026)の位置づけ:点数引上げとの違い
2026改定の「物価対応」は、大きく2層で説明すると理解が早いです。
- 既存の基本診療料(初・再診料、入院基本料等)の「点数引上げ」
- それとは別に、基本診療料等の算定に「併せて」算定する(新設)物価対応料
つまり、物価高対応が「基本点数の底上げ」だけで完結せず、別建ての上乗せ枠が用意されるイメージです(最終的な点数は告示・通知等で確定)。
比較表:クリニックが混同しやすい3つの物価高対応
| 施策/項目 | 何を補う制度か | クリニックの実務インパクト | 位置づけ |
|---|---|---|---|
| 基本診療料の点数引上げ | 初・再診料等そのものの底上げ | 自動的に請求に反映されやすい | 診療報酬(本体) |
| 物価対応料(新設) | 物価上昇に段階的対応する上乗せ | 算定できる日の判定が必要 | 診療報酬(加算) |
| 物価上昇支援事業(給付等) | 経営改善・体制確保のための給付 | 申請・要件が別枠(都道府県等) | 補助・給付(事業) |
物価対応料の算定要件(クリニック):初診・再診・訪問診療の要点
資料では「物価対応料(1日につき)」として、外来・在宅の区分が提示されています。クリニックの主戦場はここです。
外来・在宅物価対応料(初診時)
- 「入院中の患者以外」に対して初診を行った場合に算定
- 初診料の算定が立つ日を前提に設計されているため、初診の定義(同月再初診等)を通常どおり厳格に
外来・在宅物価対応料(再診時等)
- 「入院中の患者以外」に対して再診、または短期滞在手術等基本料1を算定すべき手術/検査を行った場合に算定
- ここは誤解が多く、再診だけでなく「一定の手術/検査」も含み得るため、対象行為の院内リスト化が有効です
外来・在宅物価対応料(訪問診療時)
- 在宅療養で通院困難な患者に訪問診療を行った場合に算定
- 訪問診療の算定日単位で設計されているため、往診・訪問看護等との整理(算定日/算定区分)が重要
2027年倍増スケジュール:令和9年6月から「200%」に
物価対応料は「段階的対応」とされ、資料上、令和9年6月以降は所定点数(所定額)の100分の200(=200%)に相当する点数(額)を算定するとされています。
- 2026年度(令和8年度):所定点数で運用開始(想定)
- 2027年6月以降(令和9年6月〜):所定点数が2倍(200%)
ここで実務上効くのが、「いつから2倍になるか」を会計・レセコン・分析資料に正しく反映することです。月次推移の分析で、2027年6月を境に外来単価が変化するため、前年同月比較が歪みます。
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クリニックの算定ポイント:レセプト運用を外さない手順
算定を安定させるには、「要件を読み替える」より「機械的に判定できる形」に落とし込むのが近道です。
Step 1: 対象日を定義する(初診/再診/訪問診療)
初診料・再診料・訪問診療料の算定日と、物価対応料の紐づき(同日算定)を整理します。包括(初再診が包括される点数)でも「同様に対応」とされるため、包括の多い診療科ほど早めの確認が必要です。
Step 2: レセコン設定・点数マスタ更新を二段構えにする
点数確定後のマスタ更新は当然として、確定前でも「算定要件に該当する患者フラグ/診療行為フラグ」を作ると、導入初月の取りこぼしが減ります。
Step 3: 監査観点のチェックリストを作る
- 「入院中の患者以外」要件の確認(誤って入院患者へ付与しない)
- 同日複数科受診・同日複数来院の扱い(1日につき、の解釈)
- 訪問診療と外来の重複日(算定日整理)
Step 4: 月次で算定率をモニタリングする
初診件数に対する物価対応料(初診)の算定率、再診件数に対する算定率を見える化し、改定月〜3か月は毎月点検します。税理士の立場では、売上の季節変動ではなく算定漏れが原因のケースを現場でよく見ます。
税理士が見ている実務論点:会計処理・資金繰り・値上げ判断
物価対応料は「物価上昇への対応」を目的とするため、院内では「材料費・外注費・光熱費が上がっているが、価格転嫁できない」という文脈で議論になりがちです。ここでの注意点は次のとおりです。
- 診療報酬の上振れ=利益の上振れとは限らない(材料費・委託費・賃上げ等も同時に増える)
- 2027年6月の2倍化は、月次PLの前年差分析を歪めるため、前年差ではなく「単価×件数×算定率」で分解する
- 自費価格やオプションの値上げ判断は、保険収入の変動(改定・季節要因)と切り分けて検討する
よくある質問
Q: 物価対応料は、初診料・再診料を算定すれば自動で付くのですか?
Q: 2027年に倍増と聞きました。いつから2倍ですか?
Q: 訪問診療でも算定できますか?
Q: 点数(何点か)はもう確定していますか?
まとめ
- 物価対応料は、2026年度・2027年度の物価上昇に対応するため、基本診療料等に「併せて」算定できる新設加算
- クリニックでは外来・在宅(初診/再診等/訪問診療)が主な対象で、「1日につき」の扱いを含め運用設計が要点
- 令和9年6月以降は所定点数(所定額)が200%となるため、2027年6月を境に月次分析・マスタ更新が重要
- 導入初期は算定漏れが出やすいので、件数に対する算定率モニタリングが有効
- 本記事は一般情報であり、最終点数・詳細運用は告示・通知・疑義解釈および個別状況により異なります。必要に応じて専門家へご相談ください
参照ソース
- 厚生労働省(中医協資料)「個別改定項目について」: https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001639439.pdf
- 厚生労働省「令和7年度 医療機関等における賃上げ・物価上昇支援事業について」: https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_69485.html
この記事を書いた人

辻 勝
会長税理士
税理士 / 行政書士
税理士法人 辻総合会計の会長。40年以上の実務経験を持ち、相続税・事業承継を専門とする。多くの医療法人・クリニックの顧問を務める。
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